シャ「はい、問題無いですよ。もう回復しました」
作 「僕が見てあげようか? なーんて…」
秋 「人の彼女になにしようとしてんだ!」
作 「ちょっ、じょうだ…アベシ!」
…十八話始まります。
夏兄と冬姉、春姉と一緒に負傷した、シャルロット、鈴ちゃん、セシリアさんを保健室に連れて行った。
皆意識は有ってケガもそこまで酷くは無い。
ただ、ISは三人とものが損傷が酷く、今度の学年別トーナメントには間に合わないらしい。
多分、専用機達が自分の乗り手を身を挺して守ったんだと思う。
「…良かった。大きなケガが無くて」
「ゴメンね一秋。心配かけて」
「どうしてこうなったのか教えてくれる?」
シャルロットが僕と夏兄が行く前に会った事を教えてくれた。
ボーデヴィッヒさんがシャルロット達三人の事や、僕や夏兄の事を侮辱したから、全員がキレて3対1のバトルが始まったのだった。
三人とも冷静じゃ無かったらしく、終始ボーデヴィッヒさんにペースを握られて戦っていて、全員がボロボロにされた。
「そっか…。うん、決めた」
「何を?」
「僕が勝手にシャルロットの仕返しをしとくよ。学年別トーナメントでね」
「あはは、嬉しいよ。ありがとう」
そう言って笑うシャルロット。
「…私達の事も気にして欲しいわよね」
「全くですわ…」
同じ部屋に居たセシリアさんと鈴ちゃんがそう言った。
「何か二人の周りの空間がピンク色なのよね」
「ですわね」
「「あ、あはは…」」
若干ニヤニヤしている二人に、笑ってごまかす僕とシャルロット。
「じゃ、じゃあ僕はジュースでも買ってくるよ」
そう言って僕は保健室を出た。
保健室から出て、僕は近くの自販機に向かった。
…一回深呼吸する。自分が思っているよりも、この出来事にイライラしている。
ボーデヴィッヒさんの事もそうだけど、何より自分の事にだ。
こんな状態でシャルロットの前には居たくない。
「秋君」
「…春姉、どうしたの?」
「今、凄く頭に来てるでしょう?」
「正直言うと…ね。シャルロットがケガをして、怒りのままボーデヴィッヒさんを攻撃しようとしてさ。僕はさっき怒りのままに攻撃しようとしてたんだよ。武道を修める人間としては最低だと思う」
『怒りに任せた戦いに意味は無い』これは篠ノ之流の教えではあるんだけど、僕の力の使い方の指針になっている。
そういう意味では、今回の事は自分で自分の誓いを破ってしまった。
「でも、ただの15歳の男の子である秋君はそれをどう思うの?」
「全然、間違った事はしていないって自信を持って言えるよ。ボーデヴィッヒさんと相対した時も言ったけど、僕は大切な人を傷つけられているのを見てじっとしていられるほど、冷めた人間じゃないよ」
「なら、それで良いんじゃない? 秋君が自分を律して武道に打ちこんでいるのは知っているけど、それが足かせになって大切な人一人の為に動けないんじゃ意味ないわよ」
「ありがとう、春姉。おかげで少し落ち着いた。シャルロットの所に戻るよ」
僕はそう言って走り出した。
保健室にいたシャルロット達4人にジュースを渡してそれを飲みながら話していたら、たくさんの生徒が文字通り保健室に雪崩れ込んできた。制服のリボンを見る限り皆一年生の様だった。
「「「「「「「「「「織斑君! これ!」」」」」」」」」」
全員が一斉に一枚のプリントを出す。…これ、暗い所でやったら絶対にホラー映像だな。ってそれは置いておいて。夏兄が近くの人のプリントを借りて読みだした。
「えーっと、なになに…『今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行うため、二人組での参加を必須とする。なお、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締め切りは一週間後で用紙を職員室に持ってくるように』だって」
もしかしてこの前のクラス対抗戦での乱入騒ぎと、今日の僕とボーデヴィッヒさんの出来事を踏まえたのかな? 後者はともかく、前者はあり得るな。『より実戦的な』って書いてあるし。
「「「「「「「「「「織斑君! 私と組んでください!」」」」」」」」」」
全員が言葉を合わせて、そう言った。…やっぱり耳が痛い。
と言っても、シャルロット以外の女の子と組む気は全くないんだけどさ。でも、シャルロットは参加できないし…あっ、そうだ。
「「僕(俺)は、夏兄(一秋)と組むからさ。ゴメン!」」
おお、偶然夏兄とかぶってしまったぜ。
「まあ…兄弟で組むなら…」
「誰か他の女の子と組むよりも…」
皆口々に言いながら帰っていった。ふう、一段落した。
「一秋、頑張ってね」
「まあ、シャルロットは見ててよ。僕のカッコいい所をさ」
「…うん!」
シャルロットは僕の言葉で笑顔になってくれる。それが僕にはとっても嬉しい事で。
「さてと、夏兄、厳しく行くよ」
「…何か嫌な予感がするけれど、よろしくたのむよ一秋」
「二人での必殺技でも考える?」
「そうだな、それも面白いかもな」
さて、学年別トーナメントの仕様変更の発表があってから僕と夏兄は僕の考えた戦略とそれに合わせた練習メニューをどんどん消化していくと共に、機体調整とタッグ戦の為に思いついた実験的なプログラムの構築で時間を費やし、いつの間にかトーナメント当日を迎えていた。
あまりにトーナメントの方に集中しすぎたから、ちょっとシャルロットには悪い事をしたかな? だから、学年別トーナメントが終わったら買い物に付き合う事になった。
言ってしまえばデートって訳だ。
そうそう、夏兄の事を好きと僕が認識している残りの二人である箒ちゃんと簪さんはあの雪崩の後二人で保健室に来て、タッグを組んでもらおうとしたのだが、既に僕と組む事になっていたから夏兄は断った。だったらという事で、二人は組むことになったのだ。
「さて、組み合わせはどうなるかな?」
「俺としては、ボーデヴィッヒとさっさと当たりたい」
ボーデヴィッヒさんに敵意むき出しの夏兄がそう言う。
なんでも、ある日面と向かって「貴様が居なければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろうことは容易に想像できる。それの足手まといになった貴様を渡しは認めない」と言われたんだそうだ。
ISの世界大会『モンド・グロッソ』第二回ドイツ大会の決勝当日、応援の為に現地に来ていた夏兄は謎の組織にさらわれた。それが理由で冬姉は決勝を棄権、そのまま引退となった。
ちなみに、僕は『モンド・グロッソ』直前に体調を崩して入院していた。春姉もその付き添いで日本に残っていたので巻き込まれなかった。
…冬姉を棄権させてしまった事を夏兄はその時から自分で自分を責めていたし、事実を知る心無い人たちから責められていた。夏兄は完全に被害者なのに。
色々な事が分かるようになってくると、まずこの件で責めるべきは夏兄を誘拐した組織だし、それが出来ないなら、会場の警備をしていたドイツ軍やドイツ政府の責任だと思う。
だから、その事を踏まえると、この事件での協力を理由にその後冬姉がドイツ軍で一年教官をしたのは変な話だと今は思う。
落ち着いて考えたら、自分たちの警備のミスからの誘拐事件だから協力するのは当たり前だし、それを恩着せがましく言って、何かをさせるなんてどうかと思う。
「まあ、一番警戒すべき相手だから、疲労の無いうちに当たる方が楽と言えば楽だね。シャルロット達との時の戦闘の映像で大体のデータの洗い出しは出来たし、『AIC』についてもちゃんと攻略方法は考えたしね」
AICとはボーデヴィッヒさんのISに搭載されている特殊装備で言ってしまえば対象の動きを止める物だ。
「問題はタッグ相手が誰か? って事なんだよなー」
「たしかにね。一応、代表候補生のデータはある程度叩き込んであるからなんとかなるけど、一般生徒は流石にノーマークだからね」
「おっ、そろそろ発表か」
僕と夏兄はアリーナの控室に備え付けられたモニターに注目した。そこにはトーナメント表が映し出されていた。僕達の所にはこう表示されていた。
『Aブロック一回戦第一試合 織斑一夏&織斑一秋VSラウラ・ボーデヴィッヒ&ジュリア・リナルディ』
それを見て、夏兄は一言。
「ジュリア・リナルディって誰?」
「たしか4組の子でイタリアの代表候補生だったかな? クラスメイトの簪さんや同じヨーロッパの代表候補生のセシリアさん曰く『専用機こそ持ってないけれど実力は確か』らしいよ」
「…やっかいだな」
「だね。それでも、負ける気は無いけどね」
「彼女の為か?」
「もちろん! シャルロットの前でカッコつけるために頑張るよ」
「…本当はそれだけじゃねえだろ?」
「やっぱ、分かる?」
結構、こういう事を誤魔化すのには自信有ったんだけどな。
「当たり前だ、何年お前と兄弟やってると思ってんだ? それくらい気付くさ。理由もなんとなくだけど察せる。…ボーデヴィッヒの力の在り方だろ?」
「…正解。ボーデヴィッヒさんは冬姉の力しか見ていない。姉さんのその力がどこから来ているのかを理解していない。拠り所の、信念って言うか理念って言うかなんていえば良いのか分かんないけど、心の根っこにあるはずのそういう物の無い力なんてただの暴力だしそんな力は悲劇しか生まない」
「それをこの戦いで俺達が勝って理解させようって事か」
「そんな、大それたものじゃなくて、気付くきっかけになれば良いかなって思うんだよ。彼女の為に」
「浮気か?」
「そんなんじゃないよ。まあ、言ってしまえば冬姉の手伝い…になるかな?」
「なるほど。それじゃあ、俺もいつも以上に頑張らないとな」
さて、もうすぐ学年別トーナメントが始まる。
いよいよ、次回トーナメント開幕です。
イタリアの代表候補生、ジュリア・リナルディは恐らくここだけのオリキャラです。