秋 「うんあるよ。名前はそのままだからね」
作 「一応、他の案もあったんだけどね」
秋 「例えば?」
作 「ここだと、ネタバレになるし後書きでね」
第十九話始まります。
「開始10分でリナルディさんの撃墜、そこから織斑君たちは2対1でボーデヴィッヒさんとの戦闘に突入…。完全にあの二人のペースですね」
管制室のモニターに映る映像を見ながら真耶はそう呟いた。
「リナルディの撃墜はある意味必然だな。まさか、ボーデヴィッヒを無視して二人とも自分の方に突っ込んでくるとは思わなかっただろう」
「まったくね。そのまま撃墜まで二人にペースを握られっぱなしだったし」
「何処までが織斑君達の予定通り何でしょう?」
「先の先を優先するのが篠ノ之流の教えだからな。先手を取ってペースを握るのは最初から決めていた事だろう」
「ひょっとすると、最初にどちらかを集中的に狙うのは始める前に決めていた事かもしれないわね。流れを手にするという意味では、数の上での有利は重要な要素だから」
「戦いの中でも、織斑兄の最初の一太刀がリナルディのリズムを乱したな」
「そうね」
「あのー…織斑先生、それはどういう事ですか?」
そう聞くのは、今回このトーナメントに参加していなくて、管制室の教師のサポートを仕事として言われた3人の代表候補生、セシリア、鈴、シャルロットだった。
「では、オルコットに聞くが、白式の『零落白夜』の長所は?」
「エネルギー無効による事実上の一撃必殺ですわ」
「じゃあ、次は鈴ちゃんね。逆に『零落白夜』の短所は?」
「とんでもない燃費の悪さ…かな」
「その通りだ。そして、デュノア。織斑兄がこの試合リナルディに最初に放った一撃は?」
「たしか、『零落白夜』を発動させた一撃で…あっ!」
「シャルロットちゃんは気付いたみたいね」
「「どういう事(ですの)?」」
まだ気付いていない二人が、そう聞いた。
「えーっと、最初一夏は『零落白夜』を発動させた一撃だったよね? でも、今は発動していない。つまり、一夏は自由に『零落白夜』のオンとオフを切り替えられるって事だから…」
「…『零落白夜』の短所がなくなるって事?」
「それは大げさな表現ですが、短所をある程度カバーできるって事になりますわね」
「それだけじゃなくて、もし普通に格闘戦している時に発動されたら…」
「今までよりもはるかに怖いですわね」
「でも、違ったわよね?」
「多分、そこまでの精度はまだなんじゃないかな? でも、一番最初にそれを見せたから相手のリナルディさんとボーデヴィッヒさんはそれを頭に置いて戦わないといけない。…ですよね?」
「「そういう事だ(ね)」」
千春と千冬は声を合わせてそう言った。
「なるほど、私達の時に比べて、ラウラ・ボーデヴィッヒが接近戦を避けている感じがあるのはそれが理由ね」
「そうですね。一夏さんと白式は武装的に接近戦しかできませんから、安全を選ぶなら距離を取って戦うでしょう」
「でも、それは二人にとっては想定通りだったって事だね」
「…ねえ、セシリア。これは全部一秋の考えよね?」
「それしか考えられませんわ。一夏さんは体が先に動くタイプですから。シャルロットさんはこんな彼氏をみてどう思います?」
「何事にも真剣に打ち込む一秋はカッコイイなって思うよ。ただ、あまりに真剣過ぎて僕の相手をあんまりしてくれなかったのは少し寂しいかな。まあ、埋め合わせに今度買い物に付き合ってくれるって言ってくれたけどね」
「…聞いたわたくしが、馬鹿でしたわ」
「…シャルロットと一秋ってもう、完全にバカップルよね」
惚気るシャルロットと、それにうんざりする二人。この光景は最近のIS学園でよく見られるようになっている。
「青春だな」
「青春ねー」
「青春ですねー」
口々に教師たちがそう言う。彼女達の目の前にあるモニターでは激闘が繰り広げられていた。
今の所、戦いは僕の予想通りに進んでいる。
先手を取ってリナルディさんを落とした所も、その後の2対1でのボーデヴィッヒさんの所も。
ボーデヴィッヒさんは僕よりも夏兄に恨みを持っているみたいで、かなり積極的に夏兄を狙ってきている。そのおかげで僕は割とやりたい放題出来る。
最初僕らがリナルディさんに集中攻撃をした時にボーデヴィッヒさんの足止めを僕がしていたんだけど、その時ですら彼女は夏兄狙いを止めなかった。
パートナーを助けるためじゃない。その目には夏兄しか映っていなかった。
まあ、そのおかげで戦いやすかったんだけど。正直言うと頭に血が上っている人ほど戦いやすい物は無い。というよりそういう人を含む冷静さを欠いた人と言うべきか。
今のボーデヴィッヒさんはまさにその状態で、ISの操縦、戦闘の技量は僕達よりも確実に上だけど、冷静さを欠いているから攻撃が読みやすい。
「夏兄、そろそろ決めに行こうよ。好きに突っ込んでいいよ。サポートは僕がするからさ」
「OK、じゃあ行かせてもらうぜ!」
そう言って、ボーデヴィッヒさんに突撃を掛ける夏兄。
若干生き生きしてんのはやっぱ、今回は窮屈な思いさせたかな? 夏兄には僕みたいな読みとか理詰めじゃなくて、感覚的、直感的な戦い方が合うしね。まだ、粗削りだけどさ。
ベストは夏兄には自由に戦ってもらって、それを僕がサポートするのが良かったんだろうけど、流石に代表候補生コンビはそれじゃ無理だ。僕達の腕が足りない。
実を言うと、今回のはけっこうな綱渡りだった。全体的に僕の立てた計画通りにいったから良かったけど、それ通りじゃなかったら苦戦は必至だったと思う。
「これでも食らっていろ!」
6本のワイヤーブレードを夏兄に向けて発射する。
「一秋、任せた!」
「はいよ、任された」
夏兄はそのままスピードを落とさず突っ込んでいく。僕はワイヤーブレードを梓鷲で迎撃する。
「そこまでは分かっている。本命はこっちだ!」
ボーデヴィッヒさんは肩にある大口径のレールカノンを展開し発射体制になった。しかし、夏兄はスピードを落とさない。
…まったく、無茶な要求してくれるよ。まあ、「任された」って言っちゃったし、やるしかないよね。
僕はすぐさま、一射放つ。それは、夏兄の肩ギリギリを通過して、発射直前のレールカノンの砲口に吸い込まれ、次の瞬間、レールカノンは破壊された。
「グッ!」
「我が兄ながら、まったくもって無茶な注文してくれるよ」
「我が弟ながら、そんな俺の無茶もあっさりやってくれるぜ。これで、決める!」
夏兄の一撃が決まるその瞬間、ボーデヴィッヒさんに異変が起こった。
ラウラサイド
私は戦うために生まれた。いや、戦いのために人の手で作られた。
生まれてから格闘を覚え、銃を覚え、兵器の扱いを覚え、それらを生かす戦略を覚えた。
そして、私にはそれらの素質が有った。だから、部隊でも常にトップにあった。
しかし、それは一変してしまう。ISの登場によって。
失敗の危険性の無い強化措置が失敗し、私はいつしか『出来損ない』の烙印を押されていた。
その状況が変わったのは教官としてやってきた一人の女性との出会いだった。
その女性の名前は織斑千冬。第一回『モンド・グロッソ』のブリュンヒルデにして『世界最強』。暗い闇の中で生きてきた私にとっての光。
私は彼女に師事し厳しい訓練に耐えてきた。気付けば再び部隊のトップに返り咲いていた。
ある時私は聞いた。「どうして教官はそんなに強いのですか?」と。
教官は、「そうだな…。私には二人弟が居る。二人を見ていると分かる時がある。強さとはどういうものか、その先に何があるのかを」
私にはよく分からなかった。
でも…その話をしていた時の優しい笑顔を、どこか気恥ずかしい表情を、私は否定したかった。教官は強く、凛々しく堂々としているのが教官だと思うからだ。
そう、だからそんな表情をさせるあの男たちに負けるわけにはいかない。だから…
(力が欲しい)
私の思いに呼応するようにどこかで声が聞こえた。
『願うか…? 汝、自らの変革を望むか…? より強い力を欲するか…?』
聞かれるまでも無い。得られるものがあるのなら、私など…空っぽで何もない私など何から何まですべてくれてやる!
だから、力を、唯一無二の絶対なそれを、比類なき最強を…私によこせ!
そして、私は私では無くなった。
「夏兄、離れて! 何かがおかしい!」
そういうものの、ボーデヴィッヒさんのISから放たれた電撃に夏兄は吹き飛ばされた。
「ぐっ…!」
吹き飛ばされた夏兄は体勢を立て直して、僕の方に来た。
「何だよ、あれ…」
そう呟いた夏兄と僕の目線の先には、変形していくISに飲み込まれたボーデヴィッヒさんがいた。そして、その飲み込まれたボーデヴィッヒさんの持っている得物は…
「「雪片…」」
冬姉がかつて世界最強を取ったときの武器であり、冬姉の代名詞『雪片』。
「突っ込まないでよ、夏兄」
「…分かってる」
口ではこう言っているけど、絶対頭に来てるよね。夏兄、冬姉大好きだからなー。
かくいう僕も頭に来てるけどさ。
『非常事態発令! トーナメントの全試合は中止! 状況をレベルDと認定、鎮圧の為に教師部隊を送り込む! 来賓、生徒は今すぐ非難する事! 繰り返す―』
「こんな放送が流れてるけどさ、どうするよ?」
「聞くまでもねえだろ? …あれで決めるぞ」
「了解」
「それじゃあ、行くぜ!」
夏兄は瞬時加速で突っ込んでいく。
「気が早いよね…。展開装甲、展開!」
僕は高速で動きながら、夏兄の突撃を援護する。
ボーデヴィッヒさんは武器だけでなく攻撃も冬姉そのものだった。
「ただの真似じゃ、俺には届かねえ! 一秋!」
初段を雪片弐型で受け止め、蹴り上げる夏兄。
「はいよっと。たしかに真似だけじゃ意味ないよね。もう一丁夏兄!」
僕は梓鷲で攻撃しながら、近付きかかと落としの要領で叩き落とす。
「とりあえず、吹き飛べ!」
夏兄が雪片の横薙ぎで僕達の前の方に飛ばす。
「これで!」
「決める!」
「「TBストライク!」」
僕は梓鷲の剣モードで、夏兄は雪片で切り裂いた。丁度、ボーデヴィッヒさんの所でクロスして切り裂くように。
「まあ、こんなもんだろ。…っと」
エネルギー切れなのか、落ちかける夏兄。僕はそれを拾って一言。
「そこまで、忠実に再現しなくても…」
「わざとじゃねえよ。…って、ちょっと行ってくるわ」
そう言って、夏兄はボーデヴィッヒさんの所に行った。
丁度、僕達が切り裂いたところからISが割れて、ボーデヴィッヒさんが落ちそうだった所を夏兄がキャッチした。お姫様抱っこの形で。
…夏兄に惚れる人がこれ以上増え無い事を祈る。
戦いが終わって少しした後、僕は医務室のドアの前にいた。決して僕や夏兄、シャルロットがケガした訳では無い。
映像管理室で今日の映像のコピーをした後、部屋に戻る途中に春姉に冬姉を呼んできてほしいと頼まれていたからだ。
医務室のドアをノックする。
「誰だ?」
「僕だよ、冬姉。春姉が呼んでる」
「そうか。…そうだ、一秋。少し、ラウラの相手をしてくれ。頼んだぞ」
そう言って、ドアを開け、去っていく冬姉。…僕の返事も聞こうよ。
僕は部屋に入って、ボーデヴィッヒさんいるのベットの傍にあった椅子に座る。
…しかし、頼まれたけど相手ってなにすりゃいいのさ?
「織斑一秋。本当の強さとはなんなのだ?」
「本当の強さ…ねえ。抽象的だし答えなんていくつもあると思うけど、僕は心の持ち方だと思う」
「心の持ち方?」
「うん。人それぞれが自分の心に想う物、それが強さにつながるんじゃないかな? 力なんてものはその心に想う物を守ったり。達成するための手段なんじゃないかなって僕は思う」
「難しいな…」
「そうだね。…だから、まずは自分がどうありたいか、どうしたいかを考えれば良いんじゃないかな? そうすれば、見えてくると思うよ。まだまだ、子供で弱い僕が言うのもなんだけどさ」
「弱い? 私からしたら十分強いと思うんだが?」
「全然強くないよ。僕なんかまだまだだよ」
断言をした僕にボーデヴィッヒさんは唖然とした表情だ。
編入してから無表情だったボーデヴィッヒさんのそれを見て、変わったなあ、と思いながら僕は続ける。
「ただ、僕には夢っていうか目標があって、そのために努力をしてる。力はそのために必要なものだから自然と身についたものだよ。それに今は、大切な人も増えたしな。そんな人達を護りたい。これらが今の僕の強さを形作ってるものだね。参考になった?」
「…ああ」
「でも、これを鵜呑みにしちゃダメだよ。これはあくまで僕の強さを形作っているものであって、ボーデヴィッヒさんのじゃない。ボーデヴィッヒさんのは自分で見つけないと。…っと、こんな時間だ。また明日、学校でね」
そう言って僕は医務室を後にした。
翌日、ラウラさんは朝にシャルロット、セシリアさん、鈴ちゃんにちゃんと謝ると共に戦線布告をした。…もちろん、夏兄の事についてだ。
そこにいた3人+箒ちゃんと簪さんもそれを受け入れ、それぞれがそれぞれを名前で呼び合うようになった。偶然居合わせた僕もラウラさんにそう言われた。
派手に喧嘩して、仲直りして、恋のライバル兼友人になるって、マジで少年漫画みたいな展開だな。
シャ「それでTBって何の略なんですか?」
作 「元ネタはツインバードなんだけど、二人の場合だとまんまだけど、ツインブラザーズなんだよ。文法とかは気にしないでね」
秋 「たしかにまんまですね…。じゃあ、他の案は?」
作 「白式と黒鷹だから、W&Bアタック。ホワイトとブラックね。ちなみにブラックは鷹が鳥だからバードとダブルミーニングに偶然なった」
秋&シャ「「偶然って…」」
作 「そんな事言うと、初デートある事無い事恥ずかしい事書いちゃうよ?」
秋&シャ「「それは止めて~!」」