作 「正直、思い浮かばなかった」
シャ「どうしてですか?」
作 「多分、この話を考え出したのがクリスマスイブだから」
秋・シャ「「ああー…」」
第二十話始まります。
波乱だらけの学年別トーナメントが終わった数日後の休日、僕はIS学園最寄りのバス停近くの公園にある噴水の前に一人でいた。
今日は僕とシャルロットの初デートの日なのだが、今僕は一人でいる。
何故かというと、前日にシャルロットが「どこかで待ち合わせしようよ。その方がデートっぽいでしょ?」と言ったからだ。
まあ、確かに寮から一緒に出掛けるよりもデートらしさはあると思う。いうなれば形式って奴ですね。
「しかし、遅いな…」
僕はそう呟いた。
待ち合わせは9時だったのだが、もう10分過ぎている。
待つ時間もデートの一部とは言うけれど、シャルロットの性格的に連絡も無しに遅れてくるって事もあんまり考えられない。
…なんか面倒事に巻き込まれたのかな? 心配なので来た道を戻る。幸いと言っていいと思うけど、この公園からIS学園までは一つしかルートが無いから行き違う事もない。っていうか、シャルロットはここに来てまだ少ししか経っていないから裏道とか使わず、普通に大きな道を使って来るとは思うけど。
少しIS学園に向かって歩くと、シャルロットがいた。いかにもチャラそうな雰囲気の男達に囲まれて。
…まあ、シャルロットが可愛いのは当然だし、ナンパされるのも分かるよ。でもさ、なんで…なんで今日なんだよ!
さっさとシャルロットを助けてデートに行こう。
「まったく、遅いから心配したよ。さっ、行こう」
一気に近付きつつ、僕はシャルロットの手を握りその場から立ち去ろうとしたけど、
「あのさあ、こっちが誘おうとしてるのに邪魔しないでくれる?」
チャラ男の一人が行き道を防いで絡んでくる。
「いや彼女、僕の連れなんで」
「そんなん、知らねえよ」
「こっちだって、あんた等の事情なんて知らないですよ」
「お前状況分かって言ってる?」
「もちろん。チャラそうな人三人が僕の連れをナンパしてるんですよね。でも、たしか女性へのしつこい勧誘は条例違反ですから止めといた方が良いですよ? 後、香水がきついんで離れてください」
男女問わず香水のきつい人っているんだよね。というか、制汗スプレーか何かと勘違いして一回に大量に使う人。話によるとあれって自分の使う香水の匂いに慣れちゃって、必要以上に使うらしいんだよね。香水使った事無いから分かんないけど。
だから自分では気づかないけど、周りは凄い迷惑なんだよね。今みたいな開けた場所なら良いけど、電車とかバスとかの密室だとマジでしんどい。乗り物に弱い人なら乗り物酔いが促されてよりしんどいらしいし。
たしか、前に弾が「モテ男になる為に香水の付け方を勉強しよう!」とか言ってファッション誌買ってきた気がしたけど…忘れた。シャルロットに後で聞いてみるかな。
「テメエ、言わせておけば!」
そう言って三人は僕に殴りかかってくる。まあ、こんなの相手にならないけどね。
全員の鳩尾に一発づつ拳を叩き込んで、その場を僕達は立ち去った。
「シャルロット、大丈夫だった?」
「うん。ありがとう一秋」
ひとまず待ち合わせ場所の公園にあるベンチに座る僕達。
「にしても、僕は少しひやひやだったよ。いきなり一秋、挑発みたいな事言っちゃうんだもん」
「あの場をさっさと切り抜けたかったからねー。それじゃあ行こうか、シャルロット」
僕は立ち上がり、シャルロットに手を差し出す。だって、デートでしょ? なら、女の子とは手を繋ぐものでしょうよ。
「…うん!」
シャルロットは僕の手を握り立ち上がる。その時の彼女の顔は凄く嬉しそうだった。
そして、僕達は街に向かって歩いて行く。握った手は自然とお互いの指を絡めて、いわゆる恋人繋ぎになっていた。
「あれって手を繋いでるわよね」
「ああ、繋いでるな」
「繋いでますわね」
「…しかも、恋人繋ぎ」
「ふむ、あの手の繋ぎ方はそう言うのか」
一秋・シャルロットカップルを観察する黒ずくめの6人がそう呟いた。
メンバーは…まあ、お察しの通りである。さて、さっきの会話に出てなかったもう一人はというと…。
「俺、今日は臨海学校の準備するつもりだったんだけど…」
他の5人と比べるとテンションが低かった。いや、他の5人のテンションが高いだけだと思うが。というより弟のデートを見てテンションは上がらない。
そのテンションの高い5人は1人をそっちのけで話している。
「シャルロットが羨ましいなー」
「まったくだ。誰もが気付かぬうちに二人が恋人同士になっていたからな」
「一秋さんも行動の一つ一つが紳士ですわね。今も車道側を歩いてらっしゃいますし」
「…紳士の国の淑女のお墨付きの紳士だね」
「あれが理想のカップルという物か。あそこの空間だけピンク色に見えるぞ」
こう色々言っているが、この5人の気持ちは一つ。
「「「「「羨ましい…」」」」」
そして、
「「「「「いつかきっと、私(わたくし)も一夏と…」」」」」
さてさて、僕とシャルロットがやって来たのはここら辺のターミナル駅の駅ビルそのものであり、地域最大級の品ぞろえを誇るショッピングモール『レゾナンス』。ちなみに新聞部調べの『デートで行ってみたいスポット』でも堂々の1位を獲得している。
「凄い広いね」
「一部じゃ『レゾナンスになければこの辺一帯を探してもない』とまで言われているからね。それじゃ、まず何買う?」
「決めてあるよ。まずは水着!」
「水着? なんでまた?」
「もうすぐ臨海学校じゃない」
「ああ、そういえばそうだった」
IS学園の臨海学校は一年生の夏休み前最後の二大イベントの一つである。ちなみにもう一個の方は…期末テストだ。
二泊三日で行われる臨海学校は大雑把にいうと、初日の自由時間と二日目のIS学園のスポンサー企業の試験装備のテストの二つが行われる。専用機持ちも新装備のテストをする。僕と夏兄は多分束姉が作った何かのテストをすると思う。
「もー、僕は学校の行事だけど、一秋と海に行けるのを楽しみにしてるのに…」
「ゴメン、どうしても学校の行事って捉えちゃってそこまで考えてなかったよ。でも、シャルロットと一緒に海に行けるって考えたら楽しみになって来た」
「でしょ? じゃあ、水着を買いに行こう! えーっと売り場は…2階だね」
売り場を確認してからシャルロットは僕を引っ張って歩き出した。
中学時代にも夏兄や鈴ちゃん、弾や蘭ちゃんとよく遊びに来た場所のはずなのに、今日は少し違って見えた。それはきっと僕と手を繋いで歩いている少女の、シャルロットの力だと思う。
もっと言うと、シャルロットと一緒に居れるという事かな。
そんな事を考えていたら、水着売り場に着いた。
ここで僕達は一度別れる。男女の売り場が完全に別々だったのと、シャルロットが「一秋には海でお披露目したいな」と言ったからだ。
たしかに同じ水着姿でもお店の中と白い砂浜じゃ砂浜の方が良い。
…ていうか、シャルロットに上目遣いでお願いされたら断れないって。
という訳で、僕は適当に水着を見て回る。
売り場の規模的に女性の方が大きいのだが、これは女尊男卑…というより、女性用の方がデザインが多いだけだと思う。
といっても水着になんて特にこだわりは無いし…。
「一秋じゃねえか。どうしたんだこんな所に?」
僕に話しかける男性の声。声の方を向くと、弾が居た。
「久しぶり、弾。もうすぐ学校で臨海学校があるんだ。その準備」
「一人でか?」
「違うよ」
「一夏は…近くにいないから違うって事は、まさか女の子か!?」
「そうだよ。ちなみに彼女だよ」
「マジかよ。一秋に彼女…は出来てもおかしくないか。むしろ、中学時代にあんなに告白されててできなかった方がおかしい」
「そうかな? そういえば、弾はどうしてここに?」
「俺は蘭の買い物のついでに付き合って来ただけだ。本当は友達と来るつもりだったらしいけど、その子急な用事が出来たんだと。だから俺が荷物持ちとナンパ避け。まあ、俺も暇だったしな。ついでに使うかもしれないから水着を見てたって訳だ」
「時間つぶし?」
「まあ、言ってしまえばな」
話しながら、僕達は適当に見回る。
蘭ちゃんへの気遣いを見ると弾もカッコイイと思うんだけどな。僕と共通の友人である数馬の見解は『弾はがっつき過ぎ。それが無ければモテる』だ。
女性用水着の売り場よりは狭いとはいえそこは流石はレゾナンス、男性用水着も結構な品ぞろえである。まあ、男性用水着なんて、ブーメランパンツか、ハーフパンツと同じ形のぐらいだけど。ちなみに僕にブーメランを履く度胸は無い。
「うーん…これでいいか」
僕が決めた水着は黒地にオレンジのラインが入った物だった。
「一秋、お前少し好み変わったか? お前去年使ってた水着は黒の無地の奴だっただろ」
「あー、中1の時に買ったあれね。でも、それだけでしょ?」
「いや、お前私服も真っ黒だっただろ。黒じゃない時も黒に近い寒色系だったし。今日の服だってそうだろ?」
「否定が出来ない…」
今日の服だって、黒のTシャツにネイビーブルーのデニムのパンツだし。
「なっ? そんなお前がラインだけとはいえ、暖色の入った物を選んだだから、そう思うのも仕方ねえよ」
「…かもね。まあ、会計済ませてくるよ」
オレンジはシャルロットの専用機の色だし、なにより僕にいつも笑顔をくれる彼女にぴったりな色だと思う。
僕はその色を含んだものを無意識で選んでいた。これは、それだけ心の奥でシャルロットの事を深く想っている…って事で良いのかな? 恋人なんて初めてだからよく分からない。
まあ、こんな事はのんびりゆっくり考えれば良いさ。まだ高校入ったばっかだし。
水着を買った僕は女性用水着の売り場の入口近くにあるベンチに座って待つ事にした。弾も蘭ちゃん待ちらしく、同じベンチに座って僕達はお互いの近況を話し始めた。
「ぶっちゃけ、IS学園ってなにやってんの?」
「うーん、IS関係の事の授業は2~3割って所かな。一応高校だからね。それ以外は普通の授業だよ。それに、普通の高校より授業時間が多い」
「マジで?」
「マジで。確か藍越って50分×6時限でしょ? IS学園は60分×6時限だよ。しかも土曜日も2時限ある」
「それを聞くと行きたいとは思えねえ…」
勉強の好きな高校生なんていないのだ。それと同じで授業が多いのが嫌なのはみんな同じなのだ。
だが、意外とあっという間に慣れてしまう。人間の適応力は凄い。
「お兄、次の店行こう! …って、一秋さん!?」
「久しぶり、蘭ちゃん」
僕を見つけて驚きの声を上げる蘭ちゃん。そして、周りをきょろきょろ見回す。
「ああ、今日は夏兄とは来てないから近くにはいないよ」
「そうなんですか…」
「一秋はデートなんだとよ」
「本当ですか!」
「何で言うのさ…。まあ、そうだよ」
「お待たせ、一秋」
僕に呼ぶ声が。弾と蘭ちゃんが声の方を向く。そして、もう一回僕の方に向きなおして
「か、一秋、あの金髪の子がお前の彼女か?」
「うん、そうだよ」
「か、一秋さん、一体どこでお知り合いになったんですか?」
「知り合いになった経緯は結構複雑だからパス。出会ったのは学校だよ」
と話しているとシャルロットがこっちに来た。
「一秋、友達?」
「うん、中学時代からのね。男の方が五反田弾で女の子の方が五反田蘭。兄妹だよ」
「そうなんだ。僕はシャルロット・デュノアです。よろしくね弾、蘭ちゃん」
「それじゃ、僕達は行くよ。またね、弾、蘭ちゃん。あ、そうそう…」
僕は二人に近付いてから、
「多分だけど、近くに夏兄や鈴ちゃん達が居ると思うから探してみれば?」
そう言って、僕達は二人と別れた。
僕とシャルロットの手は自然と恋人繋ぎになっていた。
書いていたら思った以上に長くなったので分けました。
年内に続きかけるかなあ…。