作 「ホント、気付いたら年越してたからね」
シャ「今年もよろしくお願いします」
作 「一秋、君の嫁さんはよくできた子やな」
秋 「でしょう? …ってシャルロット顔真っ赤にしてどうしたのさ?」
作 「あー…、まだこういうのに慣れてないんな。これからは気を付けよ」
第二十一話始まります。
さて、五反田兄弟と別れた僕とシャルロットはお昼ご飯を食べるためにレゾナンスのフードエリアに来ていた。
レゾナンスのフードエリアは世界各国の料理が食べられる。これはレゾナンスの広告なのだが、その広告が過大ではないレベルでいろんな国の料理が食べられる。
値段もリーズナブルな所から高校生では無理なレベルの高級店まである。
「それで、何食べる? 確かフランス料理を出す店もあったと思うけど」
「一秋のおすすめのお店ってあるの?」
「おすすめ…って言われても友達と来てここで食べる物なんてファストフードばっかだったし。あ、でも中学時代誰かがここのイタリアンのお店が値段そこそこで美味しいとか言ってたな。名前は忘れたけど。でもたしか見たら一発でイタリアンの店だって分かるらしいよ」
「へえー。…ねえ、それってあそこかな?」
シャルロットの指差した方向を見ると、行列こそ出来ていないもののそこそこ店内が混んでいるお店だった。お昼ご飯にしては少し早めだったのだが、それでこれくらい人が入っているのなら人気のあるお店なんだと思う。
…しかし、一発で何の料理を出している店か分かるなー。赤、緑、白の三色の看板に大きく店名が書かれているし、その店名も『板理庵』って名前だし。
「多分そうだと思うよ。あそこにする?」
「うん。評判がいいなら食べてみたいしね」
そういうわけで、僕達はそのお店に入っていった。
「一秋さんとシャルロットさんはお昼の様ですね」
「…しかし、何料理か一発で分かる看板だな」
「だが、広告とはインパクトが必要なんだろう? なら、あの看板は正解ではないか」
「…それは置いておくとして、あの店評判は凄く良いらしいわ。入った事は無いけど」
「私はここが出来た時にお姉ちゃんと来た。かなり美味しかった」
「私も中学の友達と何回か来ましたけど、学生の懐にも優しくて美味しいお店でした」
さて、追跡組は合流した五反田兄弟を含めて8人に膨れ上がっていた。
さて残り二人の男性陣はというと…。
「…なあ、弾。俺達の今の状況客観的にみるとどうなんだろうな?」
「言っても良いけど…聞きたいか?」
「いや、言わなくても周りの目でなんとなく分かる」
「「はあ…ここから、逃げ出したい」」
ネガティブの真っただ中だった。ただ、周りを行く男性からしたら、美少女の見本市状態の中に居る男子二人なので「贅沢言うな、爆ぜろ!」と思ってるはずだ。
「んー、美味しい! 評判になるのも納得だよ」
「たしかに。こりゃ、美味いわ」
僕達は料理を楽しみながら、話していた。
ちなみに、メニューは僕がタリアテッレと呼ばれる平麺を使ったミートソース、シャルロットがたっぷりチーズのカルボナーラだ。
「一秋のボロネーゼも美味しそうだね」
シャルロットはそう言った。ちなみにボロネーゼはミートソースのイタリアの言い方。ミートソースは和製英語らしい。
それはさておき、どうしようか僕は少し考えた後、自分のフォークにパスタを巻きつけて、
「気になるなら一口どうぞ」
そのまま左手を下に添えてシャルロットの方へ差し出す。
しかし、シャルロットは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「どしたのさ?」
「は、恥ずかしいよ。憧れがあったとはいえ、人前で『はい、あーん』は…」
最後の方は何とか聞き取れるほどの小さい声だった。
ただ、無意識下でやっていたけど、そう言われるとこっちも恥ずかしくなってきた。
「ま、まあ、シャルロット、はい、あーん…」
「あ、あーん…」
ゆっくり咀嚼して飲み込むシャルロット。
「どうだった?」
「うん…美味しいとは思うんだけど、恥ずかしさと嬉しさで味があんまり分かんなかった」
「そんなものなのか?」
「そんなものなんです。…なら、一秋もやってみる?」
そう言って、パスタをフォークに巻きつけてさっきの僕と同じことをしてくるシャルロット。
「はい、あーん…」
「あーん…」
シャルロットに食べさせてもらったカルボナーラは美味しかった。美味しかったのだが…マジで味がよく分からなかった。感情って味覚にまで影響するんだね。
しかも、よくよく考えるとお互いが間接キスしてるし。この後のももれなくそうなるし。
「ゴメン、たしかに味よく分からないわ」
「ふふ、僕の言った通りだったでしょ」
そのまま残りのを食べ進める。しかし、今自分の使っているフォークがシャルロットも一瞬だけとはいえ使ったという事で、間接キスになっている事をどうしても意識してしまって、味は最後までよく分からなかった。
お昼ご飯を食べた僕達はレゾナンスの中のお店を色々見て回った。
今までの僕だったら絶対に寄りつかない、アクセサリーや女性の衣類のお店も見ている。
現在、僕達はパワーストーンのアクセサリーのお店に来ている。
しかし…色とりどりで綺麗なのだが、若干目が痛い。
「シャルロット、フランスにもこういう文化ってあるの?」
「どうなんだろ? でも、こういうのに思いを込めるのって世界中で昔からありそうだけど」
そう言われてみれば日本で言う所の勾玉とかも今のパワーストーンの考え方の原型か。
「まあ、こういうのはお守りの要素をもったアクセサリーとでも思えば良いんじゃない?」
「そうだねー」
そのままお店の中を見ていたのだが、シャルロットの目線がある一つの商品に釘付けだった。それは鮮やかなピンク色と深い青色で作られたブレスレットだった。
えーっと、『使用石:アパタイト&インカローズ 効果:成就した愛をしっかりと継続させる』か…。うん、シャルロットが欲しくなるよく分かる効果だね。
僕はあんまりこういうのを信じない。まあ、それ抜きにしても、綺麗だとは思うんだけどね。
値段は…結構するな。少なくとも普通の高校生が気軽に買えるレベルじゃない。
が、僕は普通の高校生じゃない。
実は、束姉に頼まれて黒鷹を使ったISのデータの収集をしたり、実験装備の試用をしたりしていた。その報酬として結構な額のお金をもらった。
額に驚いて束姉に聞いたら、
「良いんだよーそれはかずくんの働きへの私が思う正当な報酬だから貰っておいて。昔、私もIS関係で貰ったお金を貰い過ぎたって思った時にジュールのおじさんと真のおじさんに『金は貰える時は貰っておきなさい。それで自分の必要な時に使いなさい。研究、協力してくれた人への報酬でもかまわないし、家族や友人と遊んだりするときでもかまわないのだから』って言われたからさ、それから貯まる一方でこれくらいは平気だよ」
と言われた。ちなみにどれくらい貯まっているのかを聞いたら、
「んーと通帳がカンストする位だよ」
と答えていた。一体通帳って何ケタでカンストするんでしょうか? つーか、束姉普通に銀行に預けていたのね。どっかに金庫があるのかって思ってた。
…ひょっとするとIS発表後の日本経済の回復は束姉のお蔭なのでは? あながち間違っていない気がする。
それはさておき、こういう理由で僕はこの数か月の間に貯金が凄い増えた。そして、IS学園ではほとんど金を使う事が無い。なのでガンドコ貯まっていく。こういう所が使いどころでしょ。
「シャルロット、さっきからずっと見てるけどあれが欲しいの?」
「えっ?…違うよ、見てただけ」
その反応は欲しいと言ってるのと同じだと思う。
「まあ、そう言うならそれで構わないけど、僕が初デートの記念にプレゼントしたいからさ。そんなに気になるなら良いかなって思ってね」
「嬉しいけど、悪いよ。結構値段するし。今日のお昼も一秋が全部出したし」
「気にしないでよ。僕が買いたいんだからさ。それにお金なら束姉の頼まれごとでかなりの額貰ってるからさ」
そう言って僕はそのブレスレットを二つ持っていく。こういうのはお互いが持ってこそだろうよ。
それに、彼女とおそろいの何かって憧れない?
生産を済ませて、シャルロットの所に戻る。
「シャルロット、これ」
僕は買ったブレスレットの入っている袋をシャルロットに渡した。
「あ、ありがとう…」
「うん。じゃあ行こうか」
僕達はお店を後にした。
「好きな人とご飯の食べさせあいっことか、初デートでプレゼントもらうとか羨ましすぎよ!」
「二人は学校でもあんな感じなんですか?」
「そうですわね。あの空間に当てられて学園内のコーヒーや渋いお茶の消費量が増えているらしいですわ」
「…あの二人の近くに長時間いると胸焼けする」
「そういう事に疎い私でもそう感じるレベルだ」
「というより、一夏たちはまだだろうか」
今男性陣二人は女の子達に飲み物を買いに行っている。買いに行かせたわけではなく、純粋に男性陣がじゃんけんに負けただけだ。
「しかし、お二人ともどこかに寄るつもりでしょうか? 学園とは方向が違いますし」
「あちらに何かデートの出来る場所があるのか?」
「あっちには昔のままなら城址公園があった気がするが…」
「それです!」
大きな声を出す蘭。
「…何かあったっけ?」
「私もあの公園に何かあったか記憶に無いわね…」
「この辺の学校の女子校生で言われているおまじないなんですけどね…」
蘭の言葉に全員が頭を寄せる。
「売り切れのミックスベリー?」
「うん、クラスの子達に聞いたんだけど城址公園にあるクレープ屋でいつも売り切れているミックスベリーを恋人同士で食べると幸せになれるんだって」
「へえー、初めて聞いた」
僕達はその城址公園をのんびり歩きながら話していた。
「あっ、あそこかな?」
「そうだと思うよ」
バンを改造した移動式のクレープ屋を見つけて僕達は近付いて行った。
「すみませーん、クレープ二つください。ミックスベリーで」
「ごめんねー、ミックスベリーは今日は終わっちゃったんだよ」
「そうですか…」
シャルロットがお店の人と話している中で僕は屋台の中とかメニューを見ていたけど、ミックスベリーは無かった。もう一回メニューを見て…なるほどね。
さて…どうしようかな。…そうだ。
「シャルロット、僕のおススメでいい?」
「一秋、来た事あるの?」
「中学の時友達とね」
「じゃあ、お願いしようかな」
「買っておくから…。あそこのベンチで座って待っててよ。歩きっぱなしで疲れたでしょ」
「そうでもないよ。でも、ありがとう。待ってるよ」
そう言ってシャルロットはベンチに行った。
さて、朝みたいなナンパにあう前に早く行こう。
「という訳でストロベリーとブルーベリーを一つずつ」
「はいよ。兄ちゃんあの話気付いたんだね」
「いつも売り切れのミックスべりーの話ですか? これで良いんですよね」
「ああ、でもどうして彼女を先に行かせたんだい?」
「いやー、サプライズって良くないですか?」
「ははは、中々にカッコイイ事言うね」
「そうですかね?」
「サラッとそういう事をやっちゃってるからね。はいよ、お題は一つ分で構わないよ」
「良いんですか?」
「構わないよ。良い物を見せてもらったサービスだ」
「お兄さんこそそういうサービスをサラッとやってるじゃないですか。ありがとうございます」
お礼を言って僕はクレープ屋を後にした。
「お待たせシャルロット」
僕はシャルロットの左に座って右手に持っていたクレープを渡す。
「いただきます。…うん、美味しいね。これはストロベリー?」
「正解だよ」
「一秋のも同じ?」
「違うよ。食べる?」
「じゃあ、一口」
そう言ってシャルロットは僕のも食べる。
「これも美味しいね。こっちは…ブルーベリーだね」
「そうだよ。そんで、これでミックスベリーだよ」
「どういう事?」
「まず、あの店ミックスベリーは無いんだよ。それで、僕が買ってきたのは?」
「ストロベリーとブルーベリー…あっ、なるほどそれでミックスベリーなんだね」
「そういう事、つまりあのお店の『いつも売り切れているミックスベリーを食べると恋人と幸せになれる』っていうのは…」
「『ベリー系のソースを使った2つクレープを食べさせあいっこする』ってことなんだね。はい、一秋も僕の奴を食べて」
「それじゃ…、うん美味いね。甘い物は得意じゃないけど、ここのはいけるね」
「そっか」
僕達は色々な事を話しながらお互いのクレープを食べ進めていく。
今日の事、学校の事、お互いの事。
「ねえ、一秋?」
「ん、何?」
「一秋は今幸せ?」
「当然! 恋人とデートして幸せじゃなかったら一体幸せって何って事になるよ。ていうか、僕の横にシャルロットが居るだけでそれで十分に幸せだよ。シャルロットは?」
「僕もね、こうやって一秋の近くにいるだけで、幸せだよ。本当になんでもない事でも一秋と一緒ってだけで、凄い楽しいんだ。今もね、ただ公園のベンチに座って喋ってるだけの時間なのにこの時間が僕にとっては凄く幸せな時間なんだ」
シャルロットのいう事はとてもよく分かる。僕だってそうだ。
少しずつ茜色に染まっていく公園のベンチでクレープを食べながらおしゃべりをしている。ただ、それだけの事なのだ。
でも、それをシャルロットとしている。たったそれだけで『それだけの事』が『かけがえのない事』に変わるんだから、人への想いって凄い。
「そっか…。これからもっと僕達の幸せな時間は増えていくよ。絶対に」
「うん、そうだね。…そろそろ、学校に戻る?」
「もう大分と日も暮れてきてるし、そうするか」
僕達は寮への帰り道を歩いて行った。僕達の前の地面に夕陽で出来た僕達の影の手はしっかりと繋がれていた。
ちなみに夏兄に惚れている五人はやはり後をついて来ていたらしく、夕飯の時僕達は今日の事についてかなり積極的に聞かれた。
あけましておめでとうございます。
予定ではこれは年越し前に上げる予定でしたが、ちょっと忙しくてずれました。
今年もよろしくお願いします。