秋 「そうですねー」
作 「まあ、頑張ってね」
秋 「この先は作者さん次第じゃないんですか?」
作 「まあ、その通りなんだけどね」
第二十四話始まります。
一夜明けて、臨海学校二日目、IS学園としての本番、ISの装備の各種テストを行うために花月荘近くのIS学園所有のビーチで四方が崖に囲まれている。入口も海中トンネルしか無いので、まるで秘密基地だ。
「では、各班に分かれてISの装備試験を始める。専用機持ちは各自各国から専用パーツが届いているからそれのテストだ始めろ。…ああ、篠ノ之は残れ」
冬姉が何故か箒ちゃんだけ残れと言った。箒ちゃんを含めて全員が『何故?』と頭の上に?マークを浮かべている。
「理由は…束」
「ほいほーい、えーっと、箒ちゃんには私が新規開発したIS『紅椿』のテストパイロットをしてもらいます」
「…えっ?」
「「「「「えええーっ!?」」」」」
全員が驚きの声を上げる。箒ちゃんだけ驚きすぎて唖然って感じだけど。
「ね、姉さんどうして私なんですか!」
「理由はいくつかあるよ。まず、『紅椿』が分類上「第四世代」に所属する世界初の機体だから、私が最も信頼のおける人にテストをしてもらうため。これは技量や適性よりも私との関係性の問題。次にこの観点から行くと渡せる人間はちーちゃん、はるねぇ、いっくん、かずくん、箒ちゃんの五人になる。いっくんとかずくんは既に専用機を持っているし、ちーちゃんとはるねぇに渡すと日本政府に一応報告義務が出来ちゃうからね。それに教師の仕事もあるし」
「政府の方々はそれなりに話の分かる方が多いが頭が固い人物がいる事は否定できない」
「仕事の方はそこまで問題にならないんだけどね」
「いやいや、結構な量だよ。おっと話が逸れたね。まあ、私自身は日本という国は好きだから良い気もするんだけど、あまりにも先行した技術を日本だけに開示しちゃうと、問題が起こるからね。一応アラスカ条約の中に私の作ったISは無所属扱いになり、私の一存で色々決めれる、ってなっているんだけどね。念のためだよ。で、最後は…箒ちゃんのため」
「私の?」
「そう。箒ちゃんの価値は私が原因でとんでもない事になってる。それは箒ちゃんが思っているよりもずっと。誘拐して私を脅してISの技術を独占しようと考える奴がいるかもしれない。私が手の届く範囲なら絶対に守るし、ちーちゃんやはるねぇも守ってくれる。でも、それで箒ちゃんの自由を奪うのは嫌なんだ。なら自分で身を守る方法を私が用意しようって思ったんだ」
そういえば、束姉は自分の作った機体は自分が信頼のおける人にしか専用機として任せていない。
『白騎士』『暮桜』は冬姉、『白梅』は春姉、『白式』は夏兄、『黒鷹』は僕、そして『紅椿』は箒ちゃん。
多分だけど、束姉は親しい人が危険に晒されるのを極端に怖がる。
これは聞いた話なのだが、夏兄がさらわれた時、冬姉に連絡したのは直接見に行けなくてハッキングをしてみていた束姉だったらしい。その時の束姉の取り乱し様は付き合いの長い冬姉が「記憶に無い…というより初めて見た」というくらいだったらしい。
その事件の後、束姉が働きかけたからなのかどうかは分からないけど、家の周りで黒服の人を見かける事が一時増えた。
冬姉の事がほとぼりが冷めると共に減っていって一年もしないうちに居なくなったけど。
そういや、箒ちゃんも引っ越した場所でSPらしき人が自分の近くにいると言っていたな。たしか「姉さんに聞いたら、『おとーさんとおかーさんと箒ちゃんが心配だから。おとーさんは強いけどそれでももういい歳だからねー。あっこれはおとーさんには内緒だよ』って言っていたな」と笑って言っていた。
「…分かりました。『紅椿』、お預かりします」
「固いよー。箒ちゃん」
「…ありがとう、姉さん」
「その言葉が聞けただけで、徹夜で仕上げた甲斐があるって物だよ。…まあ、多分私が専用機を渡さなくても適性Sだからどこかの国が専用機を用意したと思うけどねー」
「それでも、姉さんが用意してくれたものが一番に決まっています」
「ありがとう、箒ちゃん! …って抱き着くのは後後、今はやる事やらないとねー。皆も見るのは良いけど、やる事はやりながら見ようね」
「「「「「はいっ!」」」」」
束姉の言葉で各自がそれぞれの持ち場に行く。束姉は喋っている間もフィッティングを行っているが…そのスピードが凄い。
ちなみに専用機持ちは割と皆のんびり見ている。この後の効率を考えると、一度量子化してしまった方が楽なので今テストする奴を量子化している最中なのだ。僕と夏兄は完全に束姉の指示で動く事になっているので、そこまで待機だから見ている。
「姉さん、紅椿はどんな機体なんですか?」
「そうだねー、タイプとしては近接寄りの万能機だね。この中だと…らーちゃんのシュヴァルツェア
レーゲンが一番近いかな。設計はかずくんの黒鷹とほぼ同じだけどね。まあ、白式、黒鷹、紅椿の三つは兄弟機だから設計は似てるんだよ。厳密にいうと白式だけ少し違うけどね。武器の情報は送ってあるから今のうちに目を通してね…っと終わりー」
「姉さん、目を通す時間が無かったんですか…」
「ありゃ、失敗失敗。じゃあ、武器はテストの時に説明するから、機動のテストを行くよ。落ち着いて、箒ちゃんのイメージ通りに動くから」
束姉の言葉を聞いた箒ちゃんは深呼吸をした後、飛び立った。その急加速の余波で周りの砂が巻き上げられる。
速度は白式より、ちょっと下って所かな。白式は通常の状態で現行トップクラスの速さをを持っているから十分凄い。
「どう、箒ちゃん?」
「自分の思っている以上に動きます。まだ、機体に振り回されていますね…」
「そこは徐々に慣らしていかないとね。次は武器だね。呼び出して」
「はい」
返事の後箒ちゃんが呼び出したのは2本の日本刀の形をした近接ブレード。万能機と言っていたからあれがただのブレードな訳がない。
「まず右の雨月が対単一仕様、つまり一対一を想定して作った物だよ。突きに合わせてエネルギー刃が放出するよ。射程はアサルトライフル位。だから、黒鷹の梓鷲やブルーティアーズのスターライトMKⅢなんかには射程で負けるよ。射程に関してはるーちゃんやセッちゃんに聞くか、学園に帰って間合いを把握する方が良いかな。次に左の空裂は逆に対集団仕様、一対複数を考えて作ってあるよ。斬撃に合わせて帯状にエネルギー刃が発生するよ。その代わり射程は雨月に劣るから気を付けてね」
「なるほど…実際見てみたいので的を出して欲しいんですが…」
「おっけー」
そういうと束姉は訓練用の的を用意した。紅椿を纏った箒ちゃんはそれを斬り、突き、撃ち落としていく。
「凄い…」
何処からともなくそんな感想が漏れる。
確かに凄い。何処か一点なら上回っているISもあるだろう。でも、紅椿はすべての能力が高水準で纏まっている。恐らく現行のISの中で『世界最高』であるのは間違いないと思う。
「…一秋、お前今『どうやって紅椿に勝とうか』って考えていただろ」
「分かる?」
「皆みたいな凄いって思ってる目じゃ無かったし」
夏兄とそんな事を話している時、教師陣のいる方が慌ただしい。一体何事だ?
その後冬姉から告げられたことは想像の遥か上を行くものだった。
テストの中止、特殊任務、そして専用機持ちの集合。
状況を簡単に説明するとハワイで試験稼働をしていた軍用IS「銀の福音」が暴走。予定進路の近くにここが有ったのでIS委員会は学園の上層部を通じて、専用機持ちによる事態の鎮圧を依頼したとのことだ。
今はスペックを表示しての作戦会議中だ。代表候補生たちはそれぞれが意見を戦わせている。箒ちゃんと夏兄は付いていけてない。僕は聞いているだけ。
正直言うとね情報が少なすぎて話し様が無いのね。ぶっちゃけていうと今僕達が取れる方法は皆が話している零落白夜で一撃で落とす方法か足止めを何とかして全員で倒すかの二つくらいしかない。
僕としては前者をまず行い、失敗したらすぐさま後者への移行がベストだと思うけど、予備戦力が無くなるので、冗談抜きに失敗が許されない。
そういう意味では少数での攻撃はまだ一回で成功までいかなくてもそこそこのダメージさえ与えれば挽回の機会はある。
「織斑弟、一言も喋らないが意見は無いのか」
「皆と同じなので特に意見は無いです。これなら、たとえ一回目の攻撃で落としきれなくてもある程度のダメージさえ与えれば2度目3度目のチャンスが生まれると思いますし」
「秋君は失敗すると思っているの?」
「成功の確率は低いと思っています。高速戦闘の経験の無い夏兄とアメリカ・イスラエル両軍の監視を突破してきた銀の福音。どう考えたって成功の確率はそこまで高くないと思います。でも、完全な失敗も無いと思います。それなら次善の策を用意するべきでしょう」
「なるほどな。その次善の策とやらは後で決めるとして、まずは最初の作戦の人員を決めるとしようか。織斑兄は確定として…この中で最高速を出せる機体は? 束」
「そうだね、ベストを尽くすならセッちゃんかな。イギリスから強襲用の高機動パッケージが届いているから。時間を急ぐなら…箒ちゃんになる。紅椿の展開装甲を私がいじれば10分かからず用意が出来る。ブルーティアーズの高機動パッケージはまだインストールが終わっていないから、時間が掛かるし。現状で銀の福音の速さに付いていけるのはこの二機、いや、少し頑張れば黒鷹も付いていけるから三機だね」
「…分かった。出撃メンバーは織斑兄弟と篠ノ之だ。作戦開始は30分後。他の専用機持ちはサポートに回れ」
「ちょっと待って、何で僕まで?」
「この中で一番冷静に引き際を見極められる人間だからだ。それに、束も言っていたが黒鷹なら二人に付いていけるだろう」
「そうだね。流石に紅椿には劣るけど、それでも十分な速度は出せるよ」
「…本来なら全員で当たるのが正しいだろうが、それには時間が足りなさすぎる。一人でも人数が多い方が成功する確率も上がるだろう」
「…分かった」
何時の間にやら、この戦いの指揮を任されてしまった。重い責任だよ。本当に…。
そこから、30分は慌ただしい時間が流れた。夏兄は高機動戦のレクチャーを皆から、僕は黒鷹の最終チェックを箒ちゃんは束姉と一緒に紅椿のチェックをしていた。
「一秋!」
僕に話しかけたのはシャルロットだった。
「どうしたの、シャルロット?」
「大丈夫? 緊張していない?」
「大丈夫、緊張は少ししてるけど問題無いよ」
「絶対に、絶対に無事に帰って来てね」
「もちろんだよ。絶対に皆無事に帰ってくるよ。だから、待ってて」
「うん…」
「心配すんなって。危なくなったらすぐに戻ってくるから。引くタイミングは僕に任せれているんだし」
「そうだったね。じゃあ…」
その言葉の後、シャルロットは僕にキスをした。
「どうしたのさ?」
「ふふ、勝利の女神のキスだよ。一秋だけのだけどね。ご利益ありそうでしょ?」
「たしかに。…それじゃあ、行ってくるよ」
「頑張って!」
僕は夏兄と箒ちゃんのいる砂浜にシャルロットは旅館に向かった。
「出撃前に一秋から二人に言っておくことはあるか?」
「作戦会議の所ではああ言ったけどこれで決めるつもりで行くよ」
「「おう(ああ)」」
僕達はそれぞれのISを纏う。
「織斑一秋、黒鷹、行きます!」
「織斑一夏、白式、行くぜ!」
「篠ノ之箒、紅椿、出撃する!」
砂煙を舞い上げて僕達は出撃する。目標は沖合40キロの交戦予定ポイントである。
銀の福音戦が次回から始まります。
戦闘シーンは得意ではないので時間は少し開くと思います。