IS~僕の兄は織斑一夏~   作:ピーナ

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作 「ついに福音戦が始まったね」
秋 「そうですね」
作 「こっから、バトルが続くのか…」
秋 「そういや、前の話のあとがきでバトルが苦手って言っていましたね」
作 「苦手だねー」
秋 「頑張ってくださいね」

第二十五話始まります。


第二十五話 銀の福音

交戦エリアまでの飛行の時、僕は改めて紅椿の性能に驚いていた。

ある程度白式が出力の補助をしているとはいえ、デットウエイトを持ちながら黒鷹よりも速い速度で飛ぶ。…言葉にしてみたけどなんて化物?

いや、今は集中しないと。僕は衛星から送られてくる情報から、交戦ポイントを割出し、その座標を箒ちゃんに送った。

そこから少しして、

 

「見えた!」

 

そう言ったのは箒ちゃんだった。前方を僕達からみて横切るように超高速で移動している銀の福音とついに遭遇した。

 

「じゃあ、一撃目は作戦通りにね」

「おう」

 

夏兄からは返事が来たけど箒ちゃんからは答えが出ない。

 

『ほ、本当にするのか?』

 

プライベートチャンネルで箒ちゃんが聞いてくる。

 

『そうだよー、役得じゃん箒ちゃん』

『だからと言って抱き着くなどと…』

 

何故箒ちゃんが抱き着く羽目になったのか、それは僕が考えた作戦を成功させるための手段のためである。

今回の作戦の根幹は一撃必殺。それを出来る武器はある。なら考えるのは当てる手段だ。

そこで思いついたのは単純明快『相手が気付けないほどのスピードで最初の一撃を加える』だった。

紅椿はデットウエイトを加算してもかなりの出力を持っている。それに白式の推進力を加えてさらに速くしようという訳だ。+αで、梓鷲のフルパワーで発動させた瞬時加速も使う。

 

『女は度胸って言うでしょ?』

『少し違う気がするが…。まあ、中々出来る事ではないからな。分かった』

 

箒ちゃんも納得したようだ。

 

「準備はいい?」

「「おう(ああ)」」

「じゃあ、行くよ、3、2、1」

 

カウントが終わったタイミングで箒ちゃんがさらにスピードを上げる。僕は梓鷲のフルパワーを白式のスラスターに向けて放つ。

そのエネルギーを得た二人はものすごいスピードで飛ぶ。多分客観的に見たら僕の体勢も相まって光の矢に見えるんじゃないかな。

 

「うおおおお!!」

 

雄たけびを上げて突っ込む夏兄。

しかし、銀の福音はそれをあざ笑うかのように体を一回転させて紙一重で避けた。

福音の特徴的な外観になっている翼、あれが高出力の多方向推進装置、マルチスラスターになっているらしい。

一応、展開装甲もマルチスラスターの役割は出来るけど、あの精度で出来るかと言われたら今の僕には出来ない。…暴走って聞いていたから闇雲に動いているのかと思ったけど、めっちゃ理性的じゃん。

三人の息を合わせて当たらないと。

とりあえず、超音速移動は止められた。

と言っても高速戦闘なのは変わらない。ここからが第二ラウンドだ。

 

「敵機確認。迎撃モードに移行」

 

オープンチャンネルで流れる音声は抑揚のない機械音だった。

次の瞬間、翼を広げその一部装甲が開き、いくつもの光の弾丸が放たれた。

多量の光弾の弾幕が張られる。つーか、単体でこれだけの弾幕って有りかよ。

しかも、

 

「ぐっ!?」

 

着弾と同時に爆発するから、なおたちが悪い。

 

「箒、左右から同時に攻めるぞ! 左は頼む! 一秋は援護を!」

「了解した! 行くぞ、一夏!」

「了解。任せてよ」

 

夏兄と箒ちゃんは複雑な回避機動を描きながら銀の福音に攻撃を仕掛ける。僕は二人に襲いかかる光弾を撃ち落としながら、福音に向かって攻撃をする。

しかし…当たらない。かすりさえしない。

高い回避能力を持ちつつ、攻撃も出来る。福音のあの翼型のマルチスラスターはかなり実戦的なものだったらしい。

 

「一夏、私が隙を作る! 後は頼むぞ! 一秋は援護を頼む!」

 

その言葉と共に、箒ちゃんは突撃を掛ける。展開装甲を生かした方向転換や急加速で間合いを詰めての連続攻撃にさしもの福音も回避だけでは凌げなくなってきた。

この距離は自分が不利だと悟った福音は一度一気に距離を取り、

 

「La…♪」

 

甲高いマシンボイスと共に全方位にすべての砲門を開いて攻撃した。その数36.

 

「くっ…、だが、押し切る!」

 

箒ちゃんはそれをかいくぐりさらに迫撃する。

隙が出来た。

しかし、夏兄は福音とは真逆の、海面に全速力で向かっていた。そして、一発の光弾を打ち消した。

よく見ると、その海面には一隻の船が浮かんでいた。

 

「先生達の海域封鎖が完璧じゃなかったって事かよ!」

「このタイミングで…」

 

二人はそう呟く。

そして、流れはさらに悪い方向に。

雪片から放たれていた零落白夜の光が消える。そして、移動から全力を出していた紅椿の武器も消えていく。

間の悪い事に福音は一番近い箒ちゃんに狙いを定めて一斉射をしようとしている。

 

「箒ちゃん! あぶな…」

「箒ぃぃぃ!」

 

僕の言葉を遮り、夏兄は叫びながら箒ちゃんの前に飛び出た。

箒ちゃんをかばうように抱きしめ、その背中に斉射を食らう夏兄。

 

「一夏、一夏っ、一夏ぁっ…」

 

涙声で夏兄に呼びかける箒ちゃん。

 

「箒ちゃん、夏兄を連れて引いて。殿は僕が引き受ける」

「一秋!?」

「さっき、武器が消えていたって事は具現維持限界でしょ? それなら、早く下がらないと。幸い僕はまだ、エネルギーが残ってるし、足止め位は出来るよ」

「しかし!」

「早く! 夏兄を治療しないと!」

「…分かった。絶対に戻って来いよ、一秋」

「シャルロットとも約束したし、そのつもりだよ」

 

僕の言葉を聞いた箒ちゃんは夏兄を抱えて戦線を離脱した。

 

「さて、アンタにはもう少しだけ、付き合ってもらうよ」

 

勝ち目なんて多分一割にも満たない。この先にあるのは敗北という絶望しかない第三ラウンドが幕を開ける。

 

 

 

それから、数分。って、まだ数分しか経っていない。

福音はもちろんピンピンしている。ISにこの表現が正しいのかは分からないけど。

まあ、なんとか何発かかすらせて焦げ跡は作らせたんだけど。

それに比べて僕はボロボロだ。ISのアーマーにはあちこちヒビが入っているし、エネルギーにも全く余裕は無い。

 

「でも、もう少し時間を稼がないとね」

 

箒ちゃんはもう、戦域を抜けていると思う。さっき見つけた船も同様だ。

でも、確実性を求めるなら、もっと時間が欲しい。

交戦からそこそこ時間も経っているから、ある程度敵の能力も把握できたし。にしても、あの軍から来たあのスペックデータ、ある程度性能を隠すために低く書いてあったな。いや、文字や数字だけでは分からないって事か。

てことは、スペック上負けていても頑張れば僕にも勝ち目があるって事だね。

昔、どこかの誰かが言った「ISの性能差が戦力の差で無い事」を福音にも教えてやろうかね。

僕と福音の勝負はお互いが距離を取っての射撃戦だ。

点で当てる、言うならば狙撃なら勝てる自信があるけど、でたらめな回避性能を持つ福音に当てる事は正直難しい。っていうか、ほぼ無理。

だから、応戦の方法は拡散モードでの面制圧。しかし、マックス10のこっちに対し福音は36。こっちが放っても、相手の光弾でほとんどがかき消されてしまう。

何とか作れた焦げ跡はそんなのがかすめただけだ。

そんな事を考えている間にも戦いは、時間は容赦なく進んでいく。僕にとって悪い方向へと。

 

「この場を打開するには…これしかないか」

 

不利な射撃戦を打開する手段、それは接近戦を挑む事。上手くいけば大ダメージ、失敗すれば撃墜確実。絵にかいたようなハイリスクハイリターン。

 

「それでも、やるしかないか…。力を貸してくれよ、黒鷹」

 

自分と相棒に言い聞かせるように僕は呟いた。

一度大きく深呼吸をしてから僕は動き出す。

 

「まずは、動きを止めないとね。八咫烏!」

 

僕は今まで使わなかった八咫烏をすべて展開し、そこに向けて拡散モードの梓鷲を放つ。反射を繰り返して即席の檻を作る。

さながら、コロッセオの剣闘士の気分だ。これで相手はここから逃げられない。僕を落とさない限り。

 

「一矢報いさせてもらうよ!」

 

加速して、一気に間合いを詰める。福音は迎撃の為に光弾を撃つけど、それを紙一重で避ける。

光弾をかいくぐり、福音に肉薄する。

 

「まずはその厄介な翼を頂く!」

 

近接モードの梓鷲が福音の翼を捉えた。

しかし、福音は一枚翼を持っていかれたのにも関わらず、僕の右腕をがっちりと掴む。そして、

 

「La…♪」

 

甲高いマシンボイスが僕に敗北の知らせを渡す。

腕をがっちりと掴まれた僕はなす術もなく、光弾に飲み込まれる。

エネルギーシールドも、アーマーも役に立たない。

何十発もの衝撃に骨は軋み、筋肉は悲鳴を上げ、光弾の熱波で肌は焼かれる。

 

「ゴ…メン…シャ…ル…ロット…」

 

かすれていく意識の中僕は僕の最愛の人に届かない謝罪の言葉を口にした。

そして、海面にぶつかる衝撃で僕は完全に意識を失った。




さて、多分この作品で今までで一番文字数が少ないのではないかと思います。

話が変わりますが、バンプレストからシャルのフィギュアがプライズとして出ましたね。
もちろん取って来ましたよ。クレーンゲームは得意ではないのですが取れて良かったです。
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