IS~僕の兄は織斑一夏~   作:ピーナ

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作 「これで、福音戦が完結! 戦闘シーンは疲れるよ。のんびりしたの書きたい」
秋 「お疲れ様です。疲れているのは僕達もですけどね」
シャ「そうですよ」
作 「まあ、次回からはまた、イチャイチャするんでしょう?」
秋・シャ「「ええ、まあ」」
作 「末永く、爆発しろ!」

第二十七話始まります。


第二十七話 これが僕達の愛の結…もとい、切り札

先の戦いの地点から南に10キロの海上50メートルの所に福音は膝を抱えた状態で佇んでいた。

それはまるで母胎にいる胎児の様だ。

そこから、10キロほど離れた所でISのステルスモードを発動させた状態のIS学園一年生の専用機持ち達が居た。

 

「…片翼が破壊されているな」

「私が見た時はそうではなかったから、あの後、一秋が壊したのだろう」

「三人で出来なかったことを一人で、ってどんな無茶をしたのよ!」

「だから、一秋さんの怪我の方が大きかったのですね」

「…黒鷹の方が白式よりも防御は優れているはず。なのに一秋君が一夏よりも大きな怪我をしてたのは…」

「無茶したから…なんだね。一秋のバカ…。でも、今はそういう事を言ってる場合じゃない。行こう、皆!」

 

シャルロットの言葉に皆が頷く。ここから彼女たちの反撃が始まる。

 

 

「開戦の合図は私達からだな。しっかりやるぞ簪」

「…もちろんだよ。ラウラ」

 

偶然今回の試験で遠距離戦パッケージを持ち込んでいた二人の遠距離攻撃からこの戦いの火蓋はきられた。

肩に80口径のレールガン『ブリッツ』を装備し、遠距離からの攻撃に対応できるように四枚の物理シールドをもつ砲戦パッケージ『パンツァー・カノーニア』を装備しているラウラ。

背部の荷電粒子砲『春雷』と同型の荷電粒子砲『雷華』を両腕に装備し、さらに8発×6門の打鉄弐式の目玉武装『山嵐』もさらに2門増設されている火力増加パッケージ『百火』を装備している簪。

レールガンと荷電粒子砲とミサイルで弾幕を二人が張るが、福音はそれを卓越した機動性と片翼とはいえ、その二人を凌駕する弾幕で迎撃をしながら二人に近付いていく。

のこり数百メートルになって福音がさらに急加速でまずはラウラに右手を伸ばした。

しかし、そんなラウラの顔には焦りは無い。ラウラは口元をにやりと歪ませながら、

 

「―セシリア!」

 

その声と共にラウラと福音の間に一条のレーザーが降り注ぐ。

今回、強襲用高機動パッケージ『ストライク・ガンナー』を装備しているセシリアは、その機体の名前の由来でもある『ブルー・ティアーズ』をスカート状の腰部に接続しそれをスラスターとして使用している。

その事で落ちた火力をいつもの『スターライトMKⅢ』よりも大型のBTレーザーライフル『スターダスト。シューター』で火力を補っている。

上空から最高速で急襲したセシリアは反転し、福音を捉えて撃つ。

 

『敵機Bを認識。排除行動に入る』

 

セシリアの攻撃を回避しながらオープンチャンネルで福音の機械音がそう告げる。しかし、その行動には移れなかった。

 

「遅いよ」

 

福音の真後ろから別の機体が攻撃する。

それは先刻のセシリアの急襲の時その背中にステルスモードでいて背後をとったシャルロットだった。

二丁のショットガンの近接攻撃に姿勢を崩す福音。しかし、すぐに体勢を立て直し、反撃をする。

射撃の雨がシャルロットに襲い掛かるが、

 

「おっと。悪いけど、それくらいじゃ、『ガーデン・カーテン』は破れないよ」

 

二枚の実体シールドと二枚のエネルギーシールドから成る防御パッケージ『ガーデン・カーテン』を装備したシャルロットには届かない。

その間に距離を取り直したラウラと簪の攻撃と高機動射撃を行うセシリア、さらに持ち前の『高速切替』で一番近い距離で応戦するシャルロット。

四者の攻撃でじりじりと消耗していく福音。

 

『…優先順位を現空域からの離脱を最優先に変更』

 

それと共に四方八方に光弾を放つ福音。そして次の瞬間全スラスターを開いて強行突破での離脱を図る。

 

「させるかぁ!」

 

離脱しようとした福音の進行方向上の海面が膨れ上がり、そこから箒とその背中に乗った鈴が現れた。

 

「離脱する前に叩き落とす!」

 

全力で突撃を掛ける箒。その背中から飛び降りた鈴はすぐさま両肩の衝撃砲を戦闘状態にする。

衝撃砲は機能増幅パッケージ『崩山』によってさらに二門追加されている。計四門の衝撃砲が火を噴く。

距離を縮めていた箒がブラインドの役割を果たし、衝撃砲の発射の直前で射線上から退いた事で、衝撃砲を福音に直撃させることが出来た。

だが、それだけでは足りない。これだけで銀の福音は終わらない。

 

『銀の鐘、最大稼働―開始』

 

マシンボイスと共に相手に絶望を告げる鐘の音が鳴り響く。

先ほどとは比べ物にならないほどの密度の弾幕が全員に襲い掛かる。

 

「皆、僕の後ろに!」

 

そう言って弾幕の矢面に立つシャルロット。展開装甲の自動発動を使っていない箒と機動力の低い状態の鈴、簪がその後ろに下がる。

 

「この…攻撃は流石に辛いね。でもっ! セシリア! ラウラ! 簪!」

「言われずとも!」

「お任せになって!」

「ロックオンは出来ている!」

 

弾幕を避けながら攻撃の態勢を整えていたセシリアとラウラと簪が攻撃を再開する。特に簪のミサイル全弾発射で福音に隙が出来る。

隙を見せた福音に鈴が突撃を掛ける。

 

「もう一つの翼貰うわよ!」

 

被弾しながらも、衝撃砲を放ちながら距離を詰めていく鈴。そして、斬撃がついに翼を捉えた。

 

「や、やった!―ぐっ!?」

 

しかし、破壊まで至らず、逆に福音の回し蹴りを食らう。脚部スラスターで加速されたその一撃は鈴を一撃で海に落とす。

しかし、鈴は堕ちながら、

 

「…掛かったわね」

 

と呟く。

 

「もらったっ!」

 

その後ろに詰めていた箒が二刀で斬りかかる。福音はそれを咄嗟に両手で受け止めた。

刀身からエネルギーが放出され、福音の装甲を焼き切っていくが。福音はそれもお構いなしで、両腕を最大まで広げた。

 

「なっ!?」

 

予想外の行動に驚きの声を上げる箒。

そして、福音は火花を散らしながらもまだ稼働している片翼の砲門を箒に向ける。

 

「箒! 武器を離して!」

 

誰かがそう言った。しかし、箒は離さない。

砲門から光弾が発射される直前、箒は脚部の展開装甲を発動させて、エネルギーを纏った蹴撃を福音の残った翼をもぎ取った。

ついに両の翼を失った福音は海へと落ちていく。

彼女たちが自らの勝利を確信した、その瞬間…福音の墜ちた海上が光に包まれ爆発した。

その大きなエネルギーの奔流の中には自らを抱くような格好の福音の姿があった。

 

「一体、何が…」

「!? まずい! これは『第二形態移行』だ!」

 

いち早く気が付いたラウラがそう叫ぶ。

次の瞬間、さっきとは比べ物にならない速さで福音がラウラを掴む。そして、破壊された翼部分からエネルギーの翼が生えた。

 

「ラウラを離して!」

 

ラウラを助けようと、接近する簪。

 

「よせ! 近づくな! 逃げろ! こいつは―」

 

ラウラの言葉は最後まで続かず、エネルギーの翼に抱かれる。刹那、エネルギーの弾雨のゼロ距離攻撃がラウラに襲い掛かる。そして、全身をずたずたにされて海へと墜ちていくラウラ。

しかし、これは絶望の始まりにしか過ぎなかった。

 

 

 

シャルロットサイド

 

 

僕達は6人の力を合わせて、銀の福音を倒したはずだった。…そう、『はず』だった。

福音は二次形態移行をして、僕達に襲い掛かる。

その数の利をあっさりと覆すほど二次移行した福音の性能は圧倒的だった。

一人、また一人と傷つき墜ちていく。

…僕がこんな事を…

 

「言わなきゃ…良かったかな…」

「違うぞ! シャルロット!」

 

オープンチャンネルになっていたらしく、その声が聞こえた箒から僕に叱責の声が聞こえてきた。

 

「私達は私達でここに来ることを選んだ。シャルロットはそのきっかけだけだ。気にするな」

「…ありがとう、箒。少し気が楽になったよ」

「なに、さっきの礼さ。行くぞ、シャルロット! 援護は頼む」

「うん!」

 

箒は加速して高機動の格闘戦に突入していく。僕は福音の機動を阻害していくように援護をする。

射撃はセシリアほどじゃないけど、それでも、これくらいはしてみせる!

少しずつ出力を上げていく箒と僕の攻撃で思うような回避機動が取れない福音。そして、箒の打突が福音を捉えたと思った時、

 

「なっ!?」

 

ガクンッ、と突然箒の動きが落ちた。まさか…エネルギー切れ!? 

福音がこの隙を逃すわけも無く箒の首を右手で掴む。

 

「やらせない!」

 

僕は福音の放つ光弾もお構いなしに突撃する。使う武器は、ラファールの代名詞『灰色の鱗殻』。しかし、それは届かなかった。翼によって、杭の部分を破壊された。そして空いていた左手で僕の首を掴んだ。

 

「ぐっ、うっ…」

 

エネルギーの翼がどんどん輝きを増していく。一斉攻撃へのカウントダウンがもう秒読み状態になっていた時、僕の頭の中には一つの事が浮かんでいた。

 

  一秋に、会いたい。今すぐに会いたい。

 

「一秋…」

 

思わず、僕は彼の名前の口にしていた。

 

「一秋…」

 

もう一度言葉にして、輝きを増していく光の翼を見て僕は目を閉じた。覚悟半分、恐怖半分だと思う。

 

「一秋…」

 

三度僕は最愛の人の名前を呼ぶ。聞こえるはずもないのに…。

 

『呼んだ? シャルロット』

 

聞こえてきた言葉に目を開ける。すると、一条の強力なレーザーの狙撃が直撃し、吹き飛ぶ福音の姿が居た。

レーザーの放たれた方向をみると、そこには白と黒を纏った二人の男がいた。

 

 

 

「何か福音も凄い事になってるなー…」

 

狙撃をした後、僕と夏兄は福音

「二次移行って奴だな。まあ、俺達も同じだから、条件は同じだな」

「たしかに」

「にしても、黒鷹のワンオフ・アビリティー…ズルくねえ?」

「『鵬程万里』の事? いや、『零落白夜』の方がズルいでしょ。まあ、そんな事は終わらせてから話そうよ。夏兄は箒ちゃんと合流ね」

「分かった」

 

会話を終えた僕達はそれぞれ夏兄は箒ちゃんの所に、僕はシャルロットの所に行く。

 

「一秋…」

「シャルロット、本当にゴメン! 約束破って…」

「良いよ。こうやってまた一秋と一緒に話せているから。それにその事は今いう事じゃないでしょ? 福音を何とかしてからにしよ?」

「そうだね。シャルロットは…」

 

下がってて。そう僕が言おうとした時、

 

「僕も一緒に戦うよ!」

 

シャルロットが遮ってそう言ってきた。

 

「もう、待っているのは嫌なんだ」

「…分かった。それじゃあ、これ」

 

僕は持って来た武器を一つ手渡す。

 

「これは?」

「シャルロットのお父さんからだって。複合銃『オクスタン・ライフル』。レーザーと実弾両方を搭載した銃なんだって」

 

たしか、オクスタンってドイツ語だったような…。まあ、それは置いておいて。

 

「もしかして、一秋の右腕のも?」

「正解。シャルロットとお揃いって事で貰った」

 

そう今の僕の右腕にはパイルバンカー、しかも…

 

「でも、ずいぶん大きいね」

 

『灰色の鱗殻』とは違ってむき出しな代わりにかなり巨大化している。名前は無い。

 

「まあ、『灰色の鱗殻』の試作品らしいからね。その代わり威力は折り紙付らしいよ」

「そう言えば聞いたことがある気が…。でも、たしか取り回しが良くなくて、お蔵入りになったんじゃ…」

「らしいね。黒鷹には出力的な余裕があったから付けたんだけどね。っと、それと…シャルロット手を出して?」

「うん」

「『鵬程万里』発動」

 

僕は手を握ってから、ワンオフ・アビリティー『鵬程万里』を発動させた。

 

「えっ、エネルギーが回復した!?」

『黒鷹のワンオフ・アビリティー『鵬程万里』の効果はエネルギーの変換、放出です』

「どういう事? ていうか、誰?」

『私はレイです。黒鷹のISコアの深層意識です。よろしくお願いします。シャルロットさん』

「よ、よろしくね、レイ」

 

シャルロットは戸惑っている様だが、返事を返した。

 

『で、『鵬程万里』の説明なのですが、あらゆるところで発生したエネルギー、たとえば移動の際の空気との摩擦、急減速時の運動エネルギー、果てには相手の攻撃の衝撃まで自分のエネルギーにし、別のエネルギーとして放出します。ただ、シールドエネルギーには出来ません』

「つまり…黒鷹は無限の航続力を持ってるって事?」

『たしかに、事実上はそうですね。移動に関してはエネルギーを使用せず出来ると思います』

「言うならば、常に瞬時加速に近い状態なんだね」

 

瞬時加速は放出したエネルギーをもう一度取り込んで圧縮する事で爆発的な加速力を得る。

今の黒鷹は移動に使ったエネルギーを『鵬程万里』の力で再度エネルギーとして使用しているから、似た状況である。

『零落白夜』が『1を0にする能力』なら、『鵬程万里』は『1を1として使い続ける能力』と言った所だ。

 

『そうですね。その放出も、移動、攻撃、防御はもちろんですが、先ほどみたいに相手に渡すという事も出来ます』

「まあ、まだ分かんない事も多いけどね」

「その辺は束さんに協力してもらって調べようよ」

「だね。…それじゃあ、行きますか!」

「うん!」

『一秋さん、シャルロットさん、ご武運を!』

 

僕達は既に夏兄と箒ちゃんが戦闘しているエリアに向かった。

 

「ゴメン、遅れた…って、箒ちゃんが輝いてる!?」

「本当、何があったの?」

 

思わず戦闘そっちのけで聞いてしまう僕達。

 

「私の紅椿のワンオフ・アビリティー『絢爛舞踏』だ。エネルギーの増幅と放出が能力らしい」

 

さっきので表すならば、『絢爛舞踏』は『1を10に増やす能力』って事か。…なんか、二人のに比べると地味だなあ。

 

「でも、後一撃が遠いぜ」

「なら、僕に任せてよ。夏兄達はアイツに弾幕張って」

「「「分かった」」」

 

そう言ってそれぞれが、全員で攻撃を始める。

 

「さて、行きますか!」

 

僕は鷲梓を拡散モードフルパワーで放ち、それを八咫烏に反射させて、展開装甲を展開した両手両足と二次移行によって、展開装甲化した背部の大型スラスターに当てて五か所同時の瞬時加速を行う。

 

「ぐっ…」

 

ISの操縦者保護を超えて感じるGに意識を持って行かれそうになるが、何とかつなぎ留め、突撃を掛ける。

三人の攻撃に気を取られていた福音の懐に入り、剣モードの鷲梓で一閃し福音は吹き飛ぶ。

 

「逃がさないよ!」

 

いつの間にか、福音の背後にいたシャルロットが、オクスタンライフルの実弾を放ち、こっちに押し戻す。

 

「さすが、シャルロット! 良い位置だよ。二次移行で追加されたこの肩の装甲の意味教えてやるよ!」

 

そう言い放った僕は両肩に新たに増えた装甲を展開する、そして、そこから、何条ものレーザーが放たれる。

その一発一発が福音の装甲を削っていく。

それを放ちながら僕は再び懐に飛び込んだ。

 

「取り回しは難しいけど、威力は折り紙つきだよ。それに…シャルロット!」

「分かってる!」

 

僕は相手をバンカーを放ちながら、シャルロットの方向に押し込んでいく。

シャルロットはそこにめがけて、オクスタンライフルのレーザーを照射する。

 

「これで!」

「終わり!」

 

そしてクロスする直前、シャルロットはブレードに持ち替えて、バンカーの最後の一発と同タイミングで切り裂いた。

この攻撃でついに福音は動きを止めた。

アーマーを失った福音のパイロットが海に落ちていくが、それは夏兄がキャッチした。

 

「…終わったね」

「ああ、そうだね。帰ろうか、シャルロット」

「うん」

 

こうして、福音との長くて短い戦いは終わった。

いつの間にか空は青から茜に染まっていた。




詰め込みに詰め込んだ、福音戦でした。
戦闘パートもさることながら、ワンオフ・アビリティーの名前も考えるのに手間がかかりました。
詳しい事は設定にて。
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