IS~僕の兄は織斑一夏~   作:ピーナ

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秋 「零式艦上戦闘機ですね、分かります」
作 「ゼロ戦ね。今回の話に全く関係ないよね」
秋 「分かってますよ。…はあ」
作 「まあ、元気出して」

第二十九話始まります


第二十九話 レイセン

色々な事があった臨海学校も終わり、IS学園にもテスト期間が訪れようとしていた。

臨海学校にて距離をより縮めた僕とシャルロットは今、

 

喧嘩中である。

 

原因は臨海学校最終日、もうバスに乗って帰るだけの時の事だった。

銀の福音のパイロット、ナターシャ・ファイルスさんに僕がデレデレして、なおかつ、頬にだけどキスされた。

すぐに謝ればよかったんだろうけど、僕は前日の疲れが抜けてなくて帰りのバスの間ぐっすり眠っていた。

僕だって健全な男子高校生ですよ。美人に話しかけられたらデレデレします。そういう物でしょ?

…まあ、何を言っても言い訳にしかならないわけで。そして、全面的に僕が悪いわけで。

普通に怒ってくれるなら、まだ何とかしようが有りそうなんだけど、口すらきいてくれないので、謝るきっかけすら掴めない。言ってしまえば冷戦状態である。

その事を考えすぎて授業が頭に入ってこないし、訓練にも集中できていない。

…このままは嫌だなあ。こういう時に考えてしまうのはネガティブな事。このまま仲直りができずに別れてしまうという事。考えたって仕方ないのに、こんな事ばかり考えてしまう。

しかし、実際の所どうすれば良いんだろう。今の僕にとってのIS学園最大の難点がここに発覚した。それは『同性の友人に相談が出来ない』という事だ。

だって、今一番身近にいる同年代の同性の人間って、恋愛事の相談に全く向かない夏兄だけなんだぜ? どうしようも無いよ。

というより、今思うと、そういう相談できそうな友人がいない。…数馬位か? 基本僕が相談受ける方だったからなー。…ホント、どうしよう。

 

 

 

シャルロットサイド

 

臨海学校の最後の最後でちょっとした事があったので、僕と一秋は今、喧嘩中だ。

普通に怒りを表していれば、ここまで長引かなかったと思うけど、僕は『無視する』という手段を取った。取ってしまった。今はお互いが引っ込みの付かない状況だと思う。

こうなってしまった原因は僕のちょっとしたやきもち。一秋だって男の子だから、綺麗な人に目がいったり、デレデレするのは分かる。でも、出来るなら一秋には僕だけを見ていて欲しい。そんな独占欲。

…いつから、僕はこんなに面倒な女の子になったんだろう? って、そんなの考えるまでもない。一秋と付き合い出してからに決まってる。でも、『好きな人には自分だけを見ていて欲しい』っていうのは当たり前じゃないかな?

それはそれとして、目下の問題は「こじれた今の状態をどうやって元に戻すか」だ。幸い、ここはIS学園、相談できそうな人はたくさんいる。

まずは…

 

ケース1 同級生たち

 

皆に相談しよう。確実に一夏の事が好きなあの5人なら大丈夫だろう。

 

「…という訳なんだけど、僕はどうすれば良いかな?」

「「「「「未だに、一夏(さん)に気持ちを気付いてもらえない当てつけか、それは!」」」」」

 

いきなり大きな声で言われた。

 

「そ、そんなつもりないよ! やっぱりこういう事って友達に相談するものじゃない?」

「まあ、確かに…。と言ってもねえ」

 

全員が顔を見合わせる。

 

「わたくし達自身が恋愛の経験が無いのでアドバイスのしようがない、というのが現状ですわね」

「…ごめん、力になれない」

 

皆口々に申し訳なさそうに謝る。

 

「ううん、気にしないで。僕も話を聞いてもらいたかったって所もあるから」

「…そうだ、先輩に相談と言うのはどうだ?」

「そうだね、行ってみるよ。ありがとう、皆」

 

僕は皆にそう言ってから次の相談相手に会いに行く事にした。

 

ケース2 先輩

 

次に僕が向かったのは新聞部。パッと面識がある先輩という事で、思い浮かんだのは新聞部の副部長、黛薫子先輩だった。

先輩とは僕がIS学園に転校してきてすぐにインタビューを受けたのを皮切りに、何度か取材を受けたり、ここら辺のデートスポットを教えて貰ったりしている。多分この学園で一番親しい先輩の一人だ。

 

「失礼します。黛先輩いますか?」

「おっと、シャルロットちゃん、どしたん?」

「あら、シャルロット、どうしたの?」

「エレーヌ先輩も居たんですか。丁度良かった。相談に乗ってくれますか?」

「「良いわよ」」

 

エレーヌ・ブラン先輩は僕と同じフランス代表候補生で、僕の正体を知っていた人間の一人である。

エレーヌ先輩の両親はデュノア社で働いている技術者で、その縁で僕がお父さんに引き取られたころからお世話になっている。

赤毛のロングヘアーをポニーテールにしていて、活発な美人なのでデュノア社内でファンクラブができるほどの人気者だ。

ちなみに戦い方は、接近戦重視のバランス型。中でもバンカーの使い方には定評がある。これには両親が『灰色の鱗殻』の開発者なのが理由ではという噂がデュノア社とフランスの候補生の間で流れていたりする。

 

「…という訳なんですけど…」

「なるほどねえ、一秋君の行動に怒ってたらそこから抜け出せなくなった、と…」

「シャルロットと弟君が付き合ってるのは知ってたけど、今そんな状況になってたとはね。うーん…」

 

二人は少し考えた後、

 

「やっぱり、どっちかが歩み寄るっていうか、動くしかないんじゃない?」

「薫子もそう思う? 私もよ。…ゴメンね、ありきたりな答えしか出せなくて」

 

と、答えをくれた。

 

「いえ、相談に乗って貰ったのは僕のほうですし。ありがとうございます」

「そう言ってもらうと助かるわ」

「そうだ、シャルロットちゃん。織斑先生たちに聞くってのはどうかしら? 姉弟なんだし、良い答えくれそうじゃない?」

「そうですね、行ってみます。お茶、ごちそうさまでした」

 

僕はお茶のお礼を言って新聞部を後にした。

 

ケース3 お義母さん

 

新聞部から、お姉ちゃん達を探してとりあえずは職員室に向かったんだけど、最近凄い忙しかったらしく、体調を心配した先生達が早く部屋に戻したらしい。なので、僕は二人の部屋に向かった。その途中に電話が入った。相手は…お義母さん!? でも、今フランスは朝早くなんじゃ…。

 

「どうしたの、お義母さん? フランスはまだ朝早くじゃないの?」

『少し早く目が覚めたから、久しぶりにシャルロットの声を聞こうと思ってね。元気にしてる?』

「うん、元気だよ」

『うーん、少し元気ないわね…』

「そ、そうかな?」

『なんとなくだけどね。ふふーん、恋の悩みね』

 

本当、ウチのお義母さんは鋭い。曰く「私の恋愛レーダーからは逃れられないのよ」らしい。

 

「…ならさ、少し話聞いてくれるかな?」

『良いわよ。今日は出社遅くても大丈夫だし、何より娘の頼みですもの』

「ありがとう、お義母さん。えっとね…」

 

僕はお義母さんに今の状態をざっくりと話す。

 

「…という感じなんだけど」

『ふふ、なるほどね~』

「どうしたの?」

『いや、昔ね、ジャンヌにも同じような理由で今のシャルロットと一秋君のような感じになって相談されたな、って思い出してね』

 

どうやら、お母さんとお父さんも同じような感じになったらしい。

 

「へえー。その時、お義母さんは何て答えたの?」

『その時? そのままで良いんじゃないって言ったはずよ。だって、二人を良く知っている私から見たらそれくらいで壊れるようには見えなかったし。まあでも、これは私が二人の事を知ってたからこういう答えになった訳だから、あなた達には当てはまらないかもだけど』

「…お義母さんなら、もしこういう事になったらどうするの?」

『そうねえ…』

 

お義母さんは10秒くらい黙って考えた後、

 

『今の私なら待つわね。あの人、そういうのに弱いから、多分、すぐに『僕が悪かった! 許してくれ!』って言うんじゃないかしら』

「あはは、その絵が目に浮かぶよ」

『でも、付き合ったばかりの頃なら、まずは話すわね』

「話す?」

『そうよ。これからの為にもね』

「これから…」

『そう、これから。自分の思った事は声にして出さないと伝わらないわ。こういう時だからこそ、自分が相手に思ってる事を言葉にしてみる。そうすれば、解決もするだろうし、これからの為にもなるわ』

「ありがとう、お義母さん! 話してみるよ」

『頑張ってね、シャルロット』

「お義母さんも、仕事頑張ってね」

 

お義母さんにそう言った後電話が切れる。

でも、本当に良いタイミングで電話が来たなあ。ひょっとしてお義母さんってエスパー?

そのおかげで良い意見を聞けた。お義母さんには感謝しっぱなしだ。それに、お母さんとお父さんの昔話も聞けたしね。

さて、最後に二人のお姉ちゃん達に相談しに行こうかな。

 

ケース4 シスターズ

 

さて、僕の相談行脚も最後、一秋の実姉であり僕もお姉ちゃんと呼ばせてもらっている、IS学園教師、織斑千春、織斑千冬姉妹の部屋の前に来た。

教師の部屋は一人一部屋宛がわれているが、お姉ちゃん達は二人で使っている。どうしてなのか聞いたところ、「部屋は結構広いから二人でも窮屈という事は無いし、二人の方が落ち着く」との事だ。

部屋の前に来た僕はドアをノックして、返事を待つ。

少しして、

 

『はーい、どちら様?』

「僕です。シャルロットです。少し二人に相談があって…」

『秋君の事ね。良いわよ』

 

と返事が有ってドアが開かれた。

 

「さ、入って。座ってゆっくり話を聞くわ」

 

僕は二人の部屋に入る。そういや、お姉ちゃん達の部屋に入るのって初めてだな。

教員の部屋は僕達生徒が使っている部屋より少し広い。その分、指導に必要な書類とかのスペースもあるから結局は同じくらいになっているけど。

ただ、この部屋は二人部屋なのになぜかベットが一つしかない。大きさ的にクイーンサイズは有りそうだけど。

 

「ねえ、どうしてベットが一つしかないの?」

 

率直に疑問に思った事を聞いてみる。

 

「ああ、それは単純に発注ミスだ」

「私達がこの部屋に来た時からそうなのよ。千冬ちゃんとは小さい頃から一緒に寝ていたから別に気にする事が無いと思ってそのままにしておいたの」

「へえー」

 

兄弟姉妹の居ない僕にとっては二人の、いや、一秋と一夏を含めた仲の良い兄弟関係は凄く羨ましい。

 

「で、相談という事だが、最近上の空の一秋が関係あるのか?」

「うん。えーっとね…」

 

僕は二人に詳しく話す。他の時は箝口令が敷かれていたから言えなかったことも、二人なら言っても大丈夫。だって、事に当たったんだし。

 

「…という事なんだ」

「はあ、ナターシャの奴…」

 

ため息を吐く千冬さん。

 

「千冬さん、福音のパイロットの事知ってるの?」

「ああ、というより、私も姉さんも現役の頃は世界中から色々なIS乗りの挑戦を非公式に受けたからな。その事で知り合いになった人間もたくさんいる」

「私もモンド・グロッソに出ていないけど、出場選手のほとんどとは戦った事あるわよ」

「そうなんだ。見てみたかったなー。ん? でも、一秋は『姉さん達は出来る限り家に居てくれた』って言ってたけど」

「まあ、ほとんど日本でやらせてもらっていたからな。その辺は上手く調整してもらってな」

「日本に来る子達も『ブリュンヒルデ』の千冬ちゃんに挑戦したくて来るって感じだったし、気付いたら私の名前もいろんな所に知られていたし。その頃は『影のブリュンヒルデ』なんて言われてたわねー」

「しかし、それは事実だろう? 姉さんと私の対戦成績は五分だし、私達は公式、非公式問わず、お互い以外の相手には無敗だったのだから」

 

千冬さんの言葉に僕は唖然とする。

僕達今の一年生の専用機持ちはほぼ毎日誰かと模擬戦をしている。なんだかんだいって、大体皆の実力は拮抗しているので、誰かが勝ち続けるという事は無い。

ちなみに勝率は大体、一秋>ラウラ>簪>僕>鈴>セシリア>箒>一夏となっている。

一夏や箒はまだ、二次移行した白式や紅椿に慣れていないから勝率は高くないけど、接近戦に持ち込んだら強いし、鈴やセシリアも皆が衝撃砲やビットに慣れてきたから今は勝率が低くなってきたけど、強い事には変わりない。

それに相性だってある。例えばラウラは近接寄りの機体である、鈴、箒、一夏は得意だけど、手数の多いタイプである僕や簪は比較的苦手と言っていたように、皆、誰かしらを苦手としている。例外は一秋だけだ。一秋はこの事を「僕は強者じゃなくて巧者だから、苦手は無いかな。その代わり得意も無いけどね」と言っていた。

一年生の中で一番強いのは一秋だと思う。これは専用機持ちの模擬戦の結果からもあるけど、皆が口をそろえて「一番戦いにくい」と言うからだ。(ちなみに一番戦いやすいのは一夏)

技術もさることながら、とにかくペースを握るのが上手い。そして、距離を選ばず実力を発揮できる。

その一秋でも10回すれば3、4回は負ける。日によって負け越す事もある。

代表候補生でこれなのだ。国家代表レベルの戦いで、公式、非公式問わず無敗でいるなんて考えられない。

ただ、千冬さんは事実、公式では戦って負けは無い。あるのは第二回モンド・グロッソの時の不戦敗だけ。

千春さんもセシリアと鈴を訓練機のラファールを使って無傷で二人を落としたのを見ている。

それも考えると本当なんじゃないかなと思う。

 

「す、凄いね…」

「まあ、ISを開発段階から知っている事、下地としての武道の心得があった事など、色々な要素はあるが、やはり一番は身近に競い合える存在がいたからだな」

「そうねー。だから、皆が羨ましいわ。私達の頃はIS学園が無かったから」

 

環境として僕達はその頃に比べると恵まれてるんだね。

 

「…話が逸れたな。で、肝心の相談なのだが」

「そうねえ…。あっ、そうだ、丁度いい話があるわ。私達の父さんと母さんの話。聞く?」

 

千春さんの言う、両親の話が凄く気になったから僕は頷く。

 

「ウチの父さんと母さんもね、似たような事があったらしいわ。普通なら怒りそうな所だけど、ウチの母さん、少し変わってて『綺麗な人に目が行くのは仕方ない事よ。私も見ちゃうもの。それに、あの人が世界で一番愛してるのは私って信じてるから』ってニコニコしてたのよ」

「信じてる…」

 

僕はそう呟いた。

前者はちょっと変わってるなと思う。

たしかに、街中で綺麗な人を見かけたら僕も目が行く。憧れるという意味で。でも、それとこれは違うと思う。

ただ、最後の部分の『あの人が世界で一番愛してるのは私って信じてる』その部分を聞いて凄いと思った。

僕は一秋の事が大好きだ。愛してる。今は喧嘩してるけどそれは変わらない。これからも変わらない。一秋もそうだと思う。思いたい。

まだ僕は信じる事が出来ない。でも、いつかそうなりたいな。お互いがお互いを信じ、想い合える関係に。…考えたら恥ずかしくなってきた。

 

「ちなみにその話を父さんに聞いたら『男っていうのはそういう物だ。それに僕がこの世で愛しているのは母さんだけだよ。今は4人の子供達もだけどね』と言っていた」

「…一夏や一秋のって」

「「多分、遺伝ね(だ)」」

 

今、僕は会った事も無い一秋のお母さんへの尊敬がマックスになった。

天然フラグ建築能力持ちの人と結婚し、そのすべてを受け入れたんだから。

目指す人が増えたなあ。お母さんにお義母さん、お姉ちゃん達、それに一秋のお母さん。

いつか、そんな風になりたいな。いや、『なりたい』と思うだけじゃなくてそのために努力をしよう。そうすればきっと結果がついてくるさ。

 

「なにか、吹っ切れたみたいだな」

「うん! ありがとう、お姉ちゃん」

「良いのよ。頑張ってね、シャルロットちゃん」

 

僕はお礼を言って部屋を出た。

さっき決めた事の為にまずは一秋と仲直りしないとね。




予定では一話で終わらせるはずだったのですが、書いてたら思った以上に長くなったので2話に分けました。
がっつり、シャルロットメインのお話は初めてかな。
次回は…仲直り回になります。
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