作 「まあ、まだ直前だけどね」
秋 「何があるか楽しみです」
作 「僕は中学の頃から毎年夏に確実に体調を崩してたよ…」
秋 「…ご愁傷様です」
第三十四話始まります。
IS学園の一学期も全て終わり、いよいよ明日から夏休み。学園の中は浮かれた空気に包まれていた。まあ、学生だしね。
「今の所、決まってるのはフランス行き位?」
「そうじゃないかな。まあ、デートはしたくなったら一緒に出掛ければ良いだけだし」
僕はシャルロットと部屋で夏休みの予定を話していた。
「フランス行きは三日後だよね?」
「そうだよ、お父さん達がそこから一週間夏休み取るんだって」
「…迷惑だったのかな?」
「そんなことないよ! 去年も僕が長期休暇だった時、一週間位は仕事を休んでいたし。今年はいつもより早く取るだけだって」
ちなみに僕達のフランス行きの日程はシャルロットの両親の休みに合わせる形になっている。シャルロット曰く「一秋にはフランスを楽しんでもらいたいな」だそうだ。
人生初の海外旅行なのですごく楽しみだ。隣にシャルロットが居るからなおさら。
「まず、明日は準備の為に買い物だね。お父さん達にお土産用意しないとだし」
「何が良いかな?」
「お義母さんは何か探すけど、お父さんは頼まれている物があるんだ」
「へえー、何?」
「えーっとね、山代屋って所の佃煮だって。なんでも大学時代に友人に勧められて食べてそこから日本食にはまったって話だよ」
「へえ。…でも、お店の場所が分かんないな」
「それなんだよね…。ネットとか黛先輩、楯無さんや虚さんにも聞いたんだけど知らないって」
「山田先生は? 山田先生のお父さんとシャルロットのお父さん昔からの知り合いだろ?」
ていうか、僕がデュノアさんを紹介してもらったのって山田さんだったし。
「そっか、そうだね。今から…はもう遅いし、明日の朝にでも聞いてくるよ」
「とりあえずはこんな感じ? …それじゃ、他に夏休み何する?」
「一秋は予定無いの?」
「そうだね、お盆にお墓詣り行くのと…そうだ、夏祭りが有った」
「夏祭り?」
「そうそう。束姉と箒ちゃんの実家の篠ノ之神社でね。そこで僕がやらないといけない事があるんだよ」
「ああ、流鏑馬だね」
「正解。…って、何で知ってんの?」
僕の記憶が間違っていなければこの話はしていないはずだ。
「入学早々ここでしたんでしょ? 黛先輩が映像を残していたからそれを見せてもらったんだよ」
「ああ、そうなんだ…」
本当に何時の間に撮っていたんだろ? まあ、説明の手間が省けたから良いか。
「それの練習っていうか、感覚を取り戻さないとだからその前の4、5日は予定を入れられないかな」
「分かった。それじゃあさ、一緒に夏祭り行こうよ!」
「そうしようか。他には…まあ、ゆっくり決めれば良いか」
「だね」
話が一段落付いた時、ドアがノックされた。
「ん? 誰だろ。どちら様ですか?」
「その声はシャルロットね。今時間大丈夫?」
「鈴? どうしたの?」
「ちょっと相談をね。私以外にもいるわよ」
「分かった、今開けるよ」
シャルロットがドアを開けるとさっき話していた鈴ちゃん以外に箒ちゃん、簪さん、セシリアさん、ラウラさんがいた。所謂いつものメンバーだ。
「突然だからお茶位しか用意できないけど…座って」
シャルロットが椅子を勧める。この部屋には勉強机の椅子二つと、備え付けのテーブルの所にある椅子三つの計5つある。なので、入って来た五人に椅子を勧めて、僕達はベットに座る。
「…気にしなくて良いよ。押しかけたのはこっちだし」
「前もって言ってくれれば何か作って用意しておけたんだけどね」
「それは少し惜しい事をしたな」
「そうねー、一秋のお菓子が食べれるならもったいない事をしたわね」
何度か食べた事のある箒ちゃんと鈴ちゃんはそう言う。
「そんなに美味いのか?」
「ぜひ一度食べてみたいですわ」
「私も。…そういや、お姉ちゃんも食べてお店のと間違えたって言ってたような…」
これはまだ食べた事の無いセシリアさん、ラウラさん、簪さんの反応。
「そういや、初めて生徒会室に行った時にお土産として持って行って楯無さん達にそんな事言われてたね、一秋」
「そうだったね。お菓子作りは結構してるからねー。お菓子作り含めて料理は経験だからね、数作ればだれでもそこそこ行けるよ。後はレシピ通り作る事だね」
基本は大事だね。ISも料理も。
「それで、相談って何?」
いや、なんとなく察しはつくんだけど
「…って言っても多分一夏の事だとは思うんだけど」
「だよねえ」
「夏休みだから少しでも距離を近づけたいって事?」
シャルロットの言葉に頷く五人。
「でも、僕は一夏と出会って二か月しか経ってないから具体的な事は言えないよ。多分月並みな事だけだよ?」
「それでも構わない」
「というより、あのバカが気付かないからこっちもどうしようもないのよ」
「…藁にもすがりたいとはこの事」
「皆の事を知ってるし、相談にも乗ってもらったから何とかできたらいいんだけど…一秋、なんかない?」
「無い」
「「「「「「即答!?」」」」」」
僕の短い答えに皆が声を合わせて突っ込む。
「正直、実の兄にこう言うのはどうかと思うけど、無いね。普通なら『告白しろよ』とか『積極的に』とか言えるけど、夏兄にはそれも通用しないからね」
素で「で、どこに買い物に行くんだ?」って言うからなー。
「…強敵だね」
「恋愛事に関してだけだけどね。ていうか、それが無かったらもう絶対に彼女出来てるよ」
正確に数えた訳じゃないけど、中学の三年間で少なくとも40人は告白されてたはずだ。月一ペースの計算でも間に合わないけど、こんな感じだった。
「それで、皆に僕から言えるのは、多分何とかする方法は二つだけ。一つは消極的だけど、少しずつ地道にアピールしていく事。ただ、これは夏兄の場合『おっ、良い奴だな』止まりの可能性が特大だよ」
ちなみに一般の男子高校生ならば『こいつ、俺に気が有るんじゃね?』になるとは思う。普通ならこれだけで良いと思う。
「もう一つは超積極的に行く方法」
「? それはダメなのではないか?」
「積極的なくらいじゃ、ね。だから超を付けたんだけど。…例えば、シャルロット」
「ん? なに、一秋?」
「僕は君が好きだ。付き合って欲しい」
「もう付きあ…ああ、なるほど。うん、こちらこそよろしくお願いします」
「と、まあ大体こういうOKの返事が返ってくるかNOの返事が返ってくる。ただ、夏兄の場合『俺も好きだぞ。で、どこに付き合えば良いんだ?』となる。この好きは恋愛のそれじゃなくて、友情とかの方ね」
「…それは、中学時代いっぱい見てきたわ」
昔を思い出すように鈴ちゃんが呟いた。…たしかにそうだったなあ。
「という訳でただ積極的なだけはダメなんだ。だから超積極的に。…シャルロット」
「な、何かな?」
「僕は貴女を世界で一番愛しています。いつ生まれたか自分でも分からない。それほど自然に生まれた物です。でも、この気持ちに偽りは無いしこれからもこの気持ちは変わらない。…この気持ち受け取ってくれますか?」
「…僕も、同じ気持ちです。貴方を知って、貴方の事を考えている内にどんどん僕の心の中が貴方への想いでいっぱいになっていきました。もう、この想いを自分の中で抑えていたくない。だから、貴方の気持ちを受けとめます。だから、僕の気持ちも受けとめてください」
例えで言ったけど、本気でやり過ぎた。皆若干ぼーっとしてるし。
「なあ、シャルロット、僕やり過ぎた?」
「みたいだね。例えだって分かってたけど、つい答えるのにも力が入っちゃったよ」
「あの言葉は例えで言ったけど、そこにある気持ちは嘘偽りの無い僕の気持ちだよ。シャルロットを世界で一番愛してるのはね」
その僕の言葉(結果的には追撃)でシャルロットは顔を真っ赤にして黙ってしまう。可愛いなー。ぎゅって抱きしめたくなる。まあ、皆に冷やかされるだろうからやらないけど。…へたれって言わないでよ?
しかし、このままだと話が進まないな。僕はパンパンと手を叩きこっちに意識を向けさせる。
効果は有ったようで皆はこっちに意識を向けた。ありがとう、冬姉。
「とまあ、こうやって例をやってみたんだけど、どうだった? 僕としては少し芝居がかってたかなと思うんだけど」
「「「「「…無理」」」」」
皆が口を合わせて言った。
「うーん、でも夏兄に気持ちをちゃんと伝えるためにはここまではっきり言わないと伝わらないよ。鈴ちゃんはその事良く知ってるでしょ? さっきも実例上げたし。…まあ、でもこの手段は正直最終手段かな。シビレを切らせたら使えば良いさ。まだ、僕ら高校一年だし焦る事は無いよ」
恋はそれぞれの早さで進める物だと思う。
僕達みたいに電光石火の恋もあれば時間を掛けてゆっくりお互いの想いを深めていくのもある。
そこには正解は無くて、すべてが正解だ。
「そうだね。僕達は僕達の皆と一夏は皆と一夏の早さで進めて行けば良いと思うよ」
「まあ、夏兄と一緒のスピードだったら亀並だと思うけどね」
「なら、僕達はウサギだね」
ウサギとカメだね。まあ、童話の中のウサギみたいにサボったりはしないけどね。
「…結局、結果としてはまずは少しずつ一夏に異性として見てもらって、恋愛対象に見て貰わないとって事からなのよね」
「果てしない道ですわ」
「長い道だ」
「…しかも楽じゃない」
「困難ばかりだな」
「でも、悪くないでしょ? そう言うのもさ」
皆が頷く。皆なんだかんだ言ってこの状況を楽しんでいるみたいだ。なんていうか…青春してる。
「それじゃ、少し僕は出掛けてくるかな」
「一秋、どこに行くの?」
「ちょっと夏兄の所に探りを入れにね。皆はガールズトークに花を咲かせててよ」
そう言って僕は部屋を出た。
僕は僕達の部屋から少しだけ離れた所に居る夏兄の部屋の前にいた。いくら兄弟でも部屋に入る時はノックする。それが最低限のマナーってものでしょ。
「夏兄、少し良い?」
「一秋か。どうしたんだ?」
「部屋が女の子達に占領されて少し出てきた」
「分かった、今開ける」
僕は夏兄の部屋に入る。そういえば入んのは結構久しぶりな気がするな。
「いやー、夏休みだね夏兄」
「そうだなー、なんだかんだ早かったな、ここまで」
「年明けて少ししてから、夏兄がISを動かしてから色々有ったよね」
「間違いなく俺達の人生の中で一番激動だった時間だな」
僕に関しては完全にとばっちりだけどね。
「入学していきなり決闘騒ぎで」
「箒や鈴に再開して」
「クラス代表戦で無人機に襲われて」
「転校して来たラウラにいきなり引っ叩かれて」
「僕はシャルロットと付き合いだして」
「ラウラのISが暴走したのを止めて」
「福音に負けて落とされて」
「と思ったら二次移行して」
「生徒会に入れられて」
「俺はいつの間にか景品にされていて。…今年厄年なんじゃねえの、俺」
そもそもは夏兄の不注意からだと思うんだけど、それでもここに入ってからはそう思える位事件に巻き込まれてるからね。
まあ、それは僕も同じなんだけど、僕はそんな事全然思っていない。だって、シャルロットと結ばれたんだし。
「まあ、そう思えるような事ばっかりだったよね。それを少しでもいいように思える様に彼女でも作れば? 僕はさっき挙げたのも全部含めてでも今年はシャルロットに会えて結ばれて幸せと想えてるからさ」
「一秋を見てるとそう思えるよ。…って言っても、俺なんかを好きになる奴いるか?」
いや、居るよ。僕が知ってるだけでも6人。
「それに、そういう感じに女子を意識した事も無いしな…」
「最近良く話す子達は? 箒ちゃん達」
「良い奴らだよな。でも、そういうように考えた事ねえな。皆可愛いとは思うんだけど、それよりISでのライバルであり友人って感じだ」
…こりゃ、強敵だ。皆が不憫だよ。
「じゃあ、試しに今考えてみたら?」
「うーん、今は止めとく」
「どうして?」
「姉さん達も言ってたけど、俺はさ、一点に集中する方が向いてる、っていうよりそれしかできない。今はISの事に集中したいんだよ。俺の大切な人を護る為にな」
こりゃ、皆に悪いけど僕は夏兄側だわ。ここまでやる気になってる夏兄を止める事は僕には出来ないよ。多分姉さん達も。6人を応援はするけど夏兄をそそのかすのは止めよう。
「恥ずかしい事言うねえ。そんじゃ、まずは一年の中の模擬戦で勝率上げてかないとね」
茶化すのはするけど。
「…そこからだよなあ。家族を守るにしても俺より強いし。まあ、精進あるのみだな」
「僕もそう簡単には追いつけさせないけどね」
「分かってるよ。目標は高い方が良いだろ?」
「なら、僕じゃなくて、冬姉にしなよ」
「…高すぎる目標は心が折れる」
「それで、折れてちゃだめだよ。夏兄の大切な人の中には姉さん達も入るでしょ?」
「ですよねー。…そういやさ」
話題を変える夏兄。なんだろ?
「ひょっとして、一秋の目標って姉さん達か?」
…何故ばれた。つーか、こんなとこで妙な鋭さを発揮するなよ!
「どうしてそう思うの?」
「俺は、人が努力するのには目標がいると思う。テストとかでもそうだろ? 「赤点避けたい」ってのも「良い点取りたい」ってのも目標だ。ISの場合だと国家代表とかそういうのになりたいになると思う。俺の場合は大切な人を守りたいって奴だ。それで、一秋はなんだろうなって結構前から考えてたんだけど、今日あっさり千冬姉の名前を出したからさ。千冬姉が、というより姉さん達が目標にするには高すぎるってのは俺らが一番知ってる。なのにあっさり名前を出したからそう思ったのさ」
「まあ、夏兄には言ってもいいか。そうだよ、僕の目標、って言うか夢は姉さん達を倒すって事。これはISに乗ったからじゃなくてずっと前から思ってた事なんだよ。皆には内緒だよ?」
「分かってる。…これで、気になってた事が一つ解決されたぜ。あの姉さん達に追いつき追い越そうとしてんだから努力をするのは当たり前だな」
「小さい頃からの夢だからね。だから、前を向いて努力を続けるだけだよ」
「俺も負けてられないな・…っと、もうすぐ消灯時間だな」
「ホントだ。それじゃ、僕は帰るよ。おやすみ、夏兄」
「おお、おやすみ」
僕は夏兄の部屋を後にした。
さて、明日から夏休み。シャルロットと一緒に過ごす初めての長期休暇。目一杯楽しみますか。
次回から夏休みのお話が出来ると思います。