IS~僕の兄は織斑一夏~   作:ピーナ

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セシリアの登場ですよ~


第二話 電話帳は案外分厚くない

休み時間も終わって、二時間目が始まったんだけど… 横の夏兄の様子がおかしい。具体的に何がおかしいかというと、凄い周りを気にしている。

授業中なんだし、しっかり聞かなくても良いのかな? ただでさえ、僕達は他の子より出遅れているのに。

たしか、それなりの名門の女子校になると中学の頃からISの勉強があるんだとか。

そうじゃなくても、ISを専門に教える塾も存在するらしく、IS学園に入る子は少なからずISについて勉強してくる。

当然、少し前までただの学生だった僕達はISについてはまったくと言っていいほど知らない。ISVSというゲームのおかげで、ISの機種を知っているくらいだ。まあ、大体の男子がこんなレベルだと思う。

専門的な事は予習してかないと、本気でついていけない。

…予習しておいてよかった。勉強は好きじゃないんだけどなー。

ちなみに勉強は好きじゃないが、苦手じゃない。ていうか、勉強の好きな学生なんていないだろうよ。

でも、テストは得意だ。突破方法は一夜漬けとヤマを張る事。ヤマを張る事にかけては右に出る人間はいないと思っている。伊達に中学時代にテスト前に神と崇められていない。

 

「織斑君、二人とも何か分からない所ありますか?」

 

山田先生がそう聞いてきた。

夏兄の行動で聞いてきたのだろうか? だとしたらかなり面倒見の良い人だなー。かなり良い先生なんではなかろうか。

 

「いんや、問題無いですよー。まだ、予習の範囲内ですし」

 

僕は素直に答えたのだが、夏兄は、

 

「ほとんど全部分かりません!」

 

と自信満々に言いやがった。そんなに堂々言う事じゃないよ。驚きすぎて、机に頭を打ったじゃないか!

 

「え、えっと…織斑君以外で、今の段階で分からないって人はいますか?」

 

山田先生がそう聞くが、反応は無い。

 

「…織斑兄、入学前の参考書は読んだか?」

 

冬姉がそう聞いている。入学前の参考書って凄い分厚かったんだよね。ほどよい厚さだから、枕にぴったりだった。

 

「古い電話帳と間違えて捨てました」

 

自信満々でいう事じゃねえよ!ていうか、家に電話帳ってあったっけ?

 

「必読と書いてあっただろうが馬鹿者」

 

出席簿アタックを夏兄に食らわせた冬姉の一言。確かに、あの本の表紙には大きく必読って書かれていた。まあ、参考書なんだし、デザインなんて二の次なのだろうけど、それでもあのデザインは最先端過ぎるだろうよ。

 

「あとで再発行してやるから一週間以内に覚えろ。いいな」

「い、いや、一週間であの分厚さはちょっと…」

「やれと言っている」

 

冬姉怖えー。あの目線の前で何か出来るのは春姉だけだな。

 

「…はい。やります」

 

ほら、夏兄も勝てないし。

 

「織斑弟。教えてやれ」

「僕の出来る範囲で良ければ」

 

僕も勝てるわけないので、逆らわない。

まあ、家族だし、二人だけの男子だし助けあわないとね。でも、出来る範囲も限られてくるから箒ちゃんにも手伝ってもらおうかな。

 

「ISはその機動力、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった『兵器』を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。そうしないための基礎知識と訓練だ。理解ができなくても覚えろ。そして守れ。規則とはそういう物だ」

 

そうなんだよな、ISはとんでもなく強力な兵器。本来は宇宙開発用なのに。

この事を考えると、僕の武術の師匠で箒ちゃんと束姉のお父さんである、柳韻先生の言葉を思い出す。

柳韻先生は、

 

「武器、兵器なんて物は要は使う人間の使い方だ。束の作ったISだってそうだ。お偉いさん方は強力な兵器としか見ていない。束は宇宙開発の為に作った。しかし、そんな物歴史をひも解いてみればいくらでもある。興味があるなら調べていると良い。そして、自分で自分なりの答えを見つけなさい。きっと君の糧となる」

 

と言った。

その言葉が気になった僕は色々自分で調べてみた。

自分の習っている弓でさえ、本来は狩猟用だったはずだ。でも、戦争で使われ、人を殺す武器としての一面も持っている。

調べれば調べるほど、今自分たちが暮らしている中でもたくさんの技術が過去戦いに使われていた事を知った。

僕は柳韻先生の問いに自分の答えははっきり出せてない。

柳韻先生の使い方次第という言葉はその通りだと思う。

なら僕はそれを踏まえ、自分の武道の技術と今ならISとどう向き合い、どう扱っていくか。それが、僕の考えるべき事だと思う。

 

 

二限目を終え、僕は夏兄と話している、話題はさっきの夏兄の馬鹿発言について。

 

「夏兄さ、何で電話帳と間違えんのさ。類似点なんか分厚い所だけじゃん」

「いや、時期的に新しい電話帳くる頃だったし」

「てか、家に電話帳があった事を僕は初めて知ったよ」

「マジで!?」

「普通、使わないでしょ。それに、電話帳に大きく必読とは書かれてないでしょ?」

「まあ、マスコミやら何やらが家に殺到していた時の事だし疲れてたんだよ、きっと」

 

まあ、あれは疲れるよね。

 

「でも、それは責任転嫁だよね。原因は夏兄の不注意だし」

「ぐっ、何も言い返せねえ…」

「…まあ、冬姉に頼まれたし出来る範囲で勉強、手伝うよ」

「頼むぜ、一秋」

 

夏兄との話が一段落したところで、

 

「ちょっと、よろしくて?」

「へ?」

「は?」

 

話しかけられた。一限目の休みと同じで皆牽制し合ってるのに度胸あるなー。

見ると金髪縦ロールの女子が居た。

縦ロールの女子なんて初めて見た。えーっと、たしか…オルコットさんだったかな? 流石に自己紹介だけで名前を覚えきるのは無理だ。

 

「訊いてます? お返事は?」

「あ、ああ。訊いてるけど…どういう用件だ?」

「まあ! なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

うーん、こういう手合いの人は多いんだよね。女尊男卑の権化みたいな人。冬姉とかが偉ぶるんならともかくさ。冬姉も春姉も束姉もそんな事が全くないので、僕はこの手の人種は好きではない。

見る限り、夏兄もそんな感じだと思う。

 

「悪いな。俺、君が誰か知らないし」

 

いやいや、自己紹介してたでしょ! あっ、冬姉達の登場の衝撃でその後の自己紹介が吹っ飛んだんだな。それは仕方ないな。

 

「わたくしを知らない? このセシリア・オルコットを? イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」

 

自信満々だなー。まあ、代表候補生だし仕方ないか。あれ、なるの凄い難しいらしいし。

 

「あ、質問いいか?」

「ふん。下々のものの要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

おおー、お嬢様かとは思っていたけど、本物の貴族か。そりゃ、すげえ。

 

「代表候補生って、何?」

 

その言葉に聞き耳を立てていたクラスメイト達はずっこける。オルコットさんは唖然。僕は…まあ、予想通りだったので問題ない。

 

「夏兄、冬姉が日本の国家代表だったのは知ってるよね」

「当たり前だろ」

「代表候補生は読んで字の如く国家代表の候補の人たち。簡単に言えばエリートだね」

「そう、エリートなのですわ!」

 

おお、立て直した。

 

「それにしても、極東の島国はこうまで未開の地なのかしら。常識ですわよ、常識。テレビがないのかしら…」

 

そこは否定したい所だけど、凄いめんどい事になりそうだし、やめとこう。

 

「本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくする事だけでも奇跡…幸運なのよ。その現実をもう少し理解していただける?」

「そうか。それはラッキーだ」

 

まあ、男である僕達が代表候補生であるオルコットさんとクラスが同じなのはある意味奇跡なのだが、それが幸運かどうかは疑問が残る。だって、面倒なんだもんこの人。今は矛先が夏兄に向いているから良いけど、それがいつこっちに向くか分からないし。

 

「…馬鹿にしていますの? 大体、あなたISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。男でISを操縦できると聞いていましたから、少しくらい知的さを感じさせるかと思っていましたけど、期待はずれですわね。もう一人の方は何も言いませんし」

「俺に何かを期待されても困るんだが」

「いやー、二人で話しているし邪魔するのはどうかなと」

「ふん、まあでも? わたくしは優秀ですから、あなたのような人間にも優しくしてあげますわよ」

 

…イギリスと日本じゃ優しいって言葉の意味が違うのかな? 僕の知っている優しいって言葉と違う。後、別に優秀じゃなくても優しくすることは出来ると思う。

 

「ISのことでわからないことがあれば、まあ…泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

「あれ?俺も倒したぞ」

 

おおー、オルコットさんも夏兄もすげー。よくあんなのに勝てたね。

 

「わ、わたくしだけと聞きましたが?」

「女子だけで、っていう事じゃないのか?」

「あ、あなたはどうなんですの?」

「僕? いや、無理無理。むしろ二人ともよく春姉に勝てたね。そっちの方が驚きだよ」

「は? 一秋、お前の対戦相手千春姉だったのか? それは無理だ。仕方ねえよ」

「だよね」

 

二人で頷く。後、聞いていたらしい箒ちゃんも頷いている。

 

「…どうして、千春先生だと無理なんですの? 『ブリュンヒルデ』の千冬先生ならともかく」

「あれ? オルコットさん、知らないの? 春姉は冬姉の唯一の練習相手だよ。武道でもISでも。力量は本人たち曰く互角らしいし」

「「「「「ええーっ!?」」」」」

「「おわっ!?」」

 

あれ、皆知らなかったの?てっきり有名な事かと思ってた。

僕達兄弟は四人とも篠ノ之流という武術を修めている。篠ノ之流を簡単に言い表すと『総合古武術』となる。徒手空拳や剣術、弓術、槍術などの有名所から、棒術、杖術、鎖鎌術のマイナー所、果てはよく分からないオリジナルの武道も存在する、とんでも流派である。

冬姉、夏兄、箒ちゃんは剣術を、束姉は薙刀を主に習っていたけど、春姉は結構な数の武器を使いこなしていた。いくつ使えるか覚えていない。

いうならば、冬姉は一点集中型で極め、春姉は器用さ、要領の良さで色々なものを使いこなす、タイプの違う天才だ。夏兄は冬姉寄り、僕は春姉寄りだ。

それに、僕にはもう一つ不利な要素があるそれは…

 

「それに…」

 

言おうとしたらチャイムが鳴った。普通なら話の腰を折りやがってと思う所だが、GJチャイム。

 

「っ…! また後で来ますわ! 逃げない事ね! よくって!?」

 

良くない。なので、逃げようと思う。夏兄は頷いたからすべてを任せよう。

そう思い、次の授業の準備をする。この時はまさかこの後、自分があんな事に巻き込まれるとは思ってなかったんだ。




セシリア登場回でした。
篠ノ之流は完全にオリジナル設定です。

ちなみに千冬対千春の戦闘の場合、千春が基本有利とされる、槍や薙刀を使って互角になります。なので近接戦闘だと千冬に軍配が上がります。
何でもアリだと、手数の多さで千春有利になりますが、それでも互角です。
どの距離でも戦えるというのは選択肢の多さです。しかし、選べるものが多いという事は選択に手間取る可能性もあるという事です。これが千春の強さであり弱さです。逆が千冬になります。

次回は…どこまで進むんでしょうかね。とりあえずまだ、原作に沿って進みます。
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