秋 「更新がですか?」
作 「まあね。それと、二人が日本に帰ってくるのも」
秋 「ああ、確かに」
作 「夏休みはまだまだ続くけどね」
第三十九話始まります
フランス滞在最終日。僕達は昨日からシャルロットの生まれ育った街で過ごしている。
そこは、都会の喧騒から離れた静かな田舎町。パリとかで忘れていたけど、フランスってEU最大の農業国でもあるんだよね、たしか。
宿屋も一件しかないけど、そこのおかみさんの作るフランスの郷土料理は、デュノア家の屋敷のシェフが作った料理に引けを取らない位美味しかった。きっと、おかみさんの腕もあるだろうけど、食べる環境もあるんだと思う。郷土料理は、その場所で食べるのが一番って事だね。
そして、もうすぐ僕達は日本に旅立つ。最後にやる事は、シャルロットのお母さん、ジャンヌさんのお墓参り。
よく考えたら、僕ってお墓参り来た事無いなあ。つい最近まで、両親が亡くなってるのを知らなかった訳だし。
そんな事を考えていたら、お墓の前に来ていた。
シャルロットはお墓の前に跪く。
「お母さん。僕が日本に行く前に来たきりだから、二か月ぶりだね。僕は変わらず元気にやってるよ。お父さんとお義母さんも相変わらずだよ。いつもは一人で来てたけど、今日は紹介したい人が居るんだ。僕の…大切な人。その人に、一秋に出会って僕の世界は大きく変わったんだ。お母さんもきっと、見ててくれてるよね」
僕はそう言うのを口に出すのは気恥ずかしいので、言葉にはしなかった。
…初めまして、シャルロットのお母さん。是非一度お会いしたかったです。いろんな縁が有って、僕はシャルロットと付き合っています。僕自身が女性と付き合うという事が初めてなんで、色々至らないところはあると思います。でも、シャルロットを想う気持ちは本物です。必ず、シャルロットを幸せに、…いや、シャルロットと幸せになります。それを僕の両親と見守っていてください。
「…よし、行こう一秋」
「…もう良いの?」
「うん。言いたい事は言ったから」
「そっか」
僕達は迎えの車との待ち合わせ場所に行く。
ここへは一泊のみだったのでデュノアの屋敷の方に全部荷物を置いて来て、一日分の着替えなどの最低限の物だけを持ってここに来た。
その道中、
「そういやさ、どうして、さっき言葉に出したの?」
「えっ? …えーっとね。やっぱり、自分の気持ちって声に出さないと相手に伝わらないかなって思ってね」
「なるほどね」
日本で言う所の言霊ってやつだろうか?
気持ちを伝えるために言葉にする。当たり前だけど、大事な事。例えそれを伝えるのが居ない相手だとしても。って事だね。
「シャルロット」
「ん、何?」
「大好きだよ」
僕の言葉で顔が真っ赤になるシャルロット。
「と、突然どうしたのさ!」
「いや、さっきのシャルロットの言葉を聞いてね。最近、こういう事言ってなかったなってさ。だから、改めて言葉にしておこうと思ったんだよ」
「それは嬉しいんだけど、突然言われたから、その…恥ずかしいよ」
「そんなシャルロットも可愛いよ」
悲しい表情以外なら、どんな表情のシャルロットも可愛いと僕は思う。笑った顔、怒った顔、真面目な顔、それに今の恥ずかしがっている顔。
そういうのを見たいから僕はこういう事を言うし、悲しむ顔を見たくないからこそ、強くなりたいと自分の夢だけでなく最近思う。
「ズルいよ、一秋」
口をとがらせてそう言う、シャルロット。
「ズルいって言われても、それが僕の本心なんだもん」
「やっぱり、ズルいよ…。なんか、僕だけアタフタして。…ぼ、僕も一秋の事、だ、大好きだよ」
これでもかというくらい、顔を真っ赤にして僕にそう言ったシャルロットは、この上なく可愛かった。抱きしめたい衝動に駆られたけど、もしかしたら来ているかもしれない、迎えのヴィクトリアさんと、ジュールさんを待たせる訳にはいかないし、そこは我慢する。
…ヘタレの言い訳じゃないよ?
その後、デュノアさん達と合流して、僕とシャルロットは空港に送ってもらった。
荷物は来た時よりも、かなり増えていた。皆へのお土産を買ったための物量的な意味合いもあるけど、それよりもお金的な意味の方が強い気がする。例のスーツが有るし。
んで、その帰りの飛行機。
「一秋、フランスはどうだった?」
「月並みだけど楽しかったよ。また来たいなって思った。デュノアさん達もすごくいい人だったし」
「楽しんで貰えて良かった」
「出発する前に、何とか今回のお礼も出来たと思うし」
「ああ、アレね。もし、アレが形になったら確かに、今回使った分は余裕で取り返せるかもね」
僕がデュノアさん達にしたお礼というのは、ミラージュのCASを使った新パッケージ。
簡単に言うと、操縦者のデータのみを収集するカートリッジを付けて、そのデータに基づき、そして、反映させることで、量産機でありながら、専用機のような各パイロットに合ったチューニングが出来るんじゃないか? という物だ。
その人のクセとか欠点も分かったりするだろうから、IS学園にも使えそうだし。
「もし、学校で使えたら、それだけで毎年使うからね」
「新しい人が来るごとにねー。でも、学習用にっていうのは面白いかもね」
こんな他愛のない話をしている間にも、飛行機は日本へどんどん飛んでいく。
「…そういやさ」
「どうしたの?」
「たしか、日本に着くのって午後11時じゃなかったけ?」
「それくらいだったと思うよ」
「そこからどうやって、学園に戻ろうかと思って」
「…あっ」
たしか、来る時見た時刻表は11時代の前半位までしか時間が書いてなかった気がする。上下線とも、最終電車の時間はそこまで変わらないはずだ。だからその時間だと、空港から乗換駅までしか走っていないはずだ。そこから学園に戻るには…。タクシーか姉さん達に迎えに来てもらうかの二択になる。
いくら兄弟でも、夜遅くに長い時間車を走らせてもらうのは気が引ける。言ったら来てくれるとは思うけど。
タクシーだと結構掛かるはずだ。
「どうしよう、空港近くのホテルにでも泊まる?」
「それしか無いかな。…いや、待てよ」
そう言ってから少し考える。
「一秋、何か方法あるの?」
「あるけど、とりあえず日本に着いてからだな」
空港に降りてすぐ、僕は電話を掛けた。相手は春姉。
『もしもし、どうしたの、秋君?』
「今日本に帰って来たんだけど、電車の時間の問題でIS学園に戻れないんだ。それでさ…シャルロットを泊めても良いかな?」
『構わないわよ~。それに、秋君明日と明後日は神社の神事の練習に行くんでしょ? なら、家からの方が楽じゃない。明日、私も家に帰るから、荷物はその時に寮の部屋に持ってくわ。秋君は問題無いけど、シャルロットちゃんの着替えも要るだろうし』
「お願いするよ、春姉。それじゃ、明日」
『おやすみ、秋君』
よし、姉さんの許可を取ったし、シャルロットを招待するか。NOって言われなければだけど。
「あ、一秋どうするの?」
「えーっと、シャルロットさん、今から家に来ませんか?」
「…えっ?」
「説明するとね、乗り換えの駅から少し歩いたところに僕の家が有るんだ。ホテル泊まるのは勿体無いし、丁度良いかなって。んで、さっき家主である春姉の許可を取ってたんだ」
「なるほど、それじゃあ…お邪魔させてもらおうかな。一秋の家がどんなのか、気になるし」
「そんなに大したものじゃないけど…。ま、決まりだね。それじゃ、行こうか」
僕達は電車に乗り遅れないように、そこそこ早足で動き出す。
しかしまさか、こんな形でシャルロットを僕の家に招待する事になるなんてね。未来ってのは分からない物だねー。
フランス編終わりました。
学校がしんどいです。