作 「なぜか、原初の矢じりのイメージが同名の鉱物のだったんだ。だからそこから」
秋 「じゃあ、武器の名前も…」
作 「そうそう、ISの名前に関係させようと思ってね」
第六話始まります。
クラス代表戦直前僕達は対戦が行われるアリーナの管制室に居た。
「なあ、箒、一秋」
「なんだ、一夏」
僕は何も言わない。大体何が言いたいか分かるから。
「気のせいかもしれないけど、ISの事教えてくれるっていうのはどうしたんだ?」
夏兄の言葉に箒ちゃんは返せず、僕の方を見る。その目は助けを求めている。
「ズバリ言うけど、夏兄はこの一週間であの参考書覚えられた?」
「…無理でした」
「あれはISの基礎なんだよ。あれをある程度覚えないと次の段階に行けないよ」
「でも、操縦とかさ」
「夏兄。この学園にISが何機あるのか知ってる?」
「何機あるんだ?」
「40機だよ。でもね、大体三分の一の13~4機は予備機扱いで使えないんだ。だから26~7機を生徒たちで使いまわしてる」
「って事は学年で割ると一学年あたり9機くらいか」
「そうでも無いんだよ。もうちょいするとそうなるんだけど、今の一年生にはそんなに割り振られていない。どころか貸出はほとんど無理らしいよ」
「どうしてだ?」
「初日の授業で冬姉が言ってたでしょ? 『ISはその機動力、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった『兵器』を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。そうしないための基礎知識と訓練だ』って、一年生には両方足りないんだ。予習をしっかりしている人も訓練の方は足りていない。だから…」
「入学したての一年は使えない…か」
「うん。僕達は専用機を貰うんだから他の人よりももっと努力しなくちゃだね」
「そうだな。…でも、そんな俺がISでいきなり模擬戦をしていいのか?」
夏兄の疑問に答えたのは僕ではなく、
「そのために私達教師がいるのだ」
管制室に入って来た冬姉だった。
「そうよ、だから心配せず行きなさい」
後ろにいた春姉がそう言った。
「行きたいのはやまやまなんだけど、僕達の専用機はまだ?」
僕がそう聞くと、春姉のさらに後ろに居た束姉が、
「心配ご無用! いっくんとかずくんのISはついさっき完成したよ~。今はピットの搬入口においてあるからね。白い方『白式』がいっくんので黒い方『黒鷹』(こくよう)はかずくんのだよ~。という訳で、お休み~。…zzz」
とだけ言って、箒ちゃんに抱き着いて寝てしまった。
箒ちゃんは「姉さん…あなたは子供ですか」と愚痴っぽく呟きながらも、その顔は嬉しそうだった。
「ああそれとな、時間をあまり掛けていられないから、バトルロワイアルになった」
「「はあっ!?」」
「さっきのオルコットさんの反応と同じねー」
と言って笑う春姉。いやいや、笑いごとじゃないから。この一週間で必死に考えた作戦が水の泡だよ。
開始までにある程度立て直さないと。
「じゃあ、二人のISを取りに行きましょうかね」
僕達が管制室を後にしようとした時、
「一夏! 一秋!」
箒ちゃんが声を掛けてきた。そんな大きな声をだしちゃ、束姉起きちゃうよ。
「勝ってこい」
「ああ、もちろんだ」
「あっさり言うねー。まあ、頑張るよ」
所変わって、アリーナの搬入口。
そこには眩しいほどの『白』と限りなく深い『黒』が鎮座していた。
僕と夏兄はそれぞれのISに近付いて行った。そして、装着する。
初めてISに乗った時の感覚とは違い情報が流れ込んできたわけでもなく、ただただ僕に馴染んだ。
そう、『馴染んだ』。いつも履いている靴の様に。柳韻先生にもらったあの弓の様に。
「この子が僕のIS『黒鷹』か。…どこまでの付き合いになるのかはまだ分かんないけど、よろしくね相棒」
僕はそう小さい声で言った。
ISは僕達パイロットに合わせて自己進化をする。それなら、一方的に使う『道具』よりも、自分の半身として、『相棒』として扱おう。そう、自分の専用機を持つが決まった時に決めた。
さて、相棒との初めての試合頑張りますか!
「あら、逃げずに来ましたのね」
オルコットさんはいつもの調子だ。
夏兄は言葉を発しない。集中しているみたいだ。
…集中するのは良いけど、最初からそんな余裕無い状態で持つのかな?
「逃げれるなら逃げたかったけどねー」
「なら、最後のチャンスをあげますわ」
「チャンスって?」
「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、ボロボロの惨めな姿を晒したくなければ、今ここで謝るというなら、許してあげないこともなくってよ」
そういうオルコットさん。
僕自身はまったく関係の無い事なので何も言わない。
「そういうのは、チャンスとは言わないな」
夏兄がそう言うと、オルコットさんの方は集中を高めていく。これは、攻撃の予感。っていうか始まってるんだから、攻撃しても良いんだよね、本当は。
「そうですか…。ならば、お別れですわね!」
その言葉と共にセシリアは手持ちのレーザーライフル『スターライトmkⅢ」を夏兄に向って発砲した。
っていうか、お別れって殺す気かよ…。
「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲で!」
そこからオルコットさんは射撃の嵐を僕達二人に浴びせる。割合的に夏兄6、僕4位だ。
夏兄はそこそこ被弾しているけど、僕はほとんど食らっていない。
距離もあるし、銃口を見ればどこに来るかは分かる。後は撃つタイミングは相棒が教えてくれる。
「ええい、ままよ!」
夏兄が日本刀の形をしたブレードを展開した。何故に?
「中距離射撃型のわたくしに、近距離格闘装備で挑もうなんて…笑止ですわ!」
うん、これに関してはオルコットさんの言う通りだね。
「やってやるさ」
覚悟を決めたらしく、夏兄はそう言い放った。
「27分。持った方ですわね」
「そりゃどうも」
「まあ、僕はほとんど当たってないけどね」
「そうですわ! どうして、あなたには当たらないんですの!?」
「回避に専念しているし」
後、言わないけれどオルコットさんのビット操作には癖がある。最初は気のせいかなと思っていたけど、何度も映像を見直し、今日実際に立ちまわってみて確信した。
それが分かっているから避けやすい。
「まあいいですわ。お兄さんの方を片付けてから、あなたをじっくり倒しましょう」
「だってさ、夏兄」
「やってやるさ」
そういう事、よくさらっと言えるよね。その自信を僕に分けて欲しいよ。
「弟さんも凄かったですが、お兄さんの方も凄いですね」
観戦している真耶はそう言った。
「一秋の方はいつも通りだな」
「と言いますと?」
「秋君はね、戦いの中で相手の対処法を考えているのよ。もちろん下調べもしてだけど」
「今は情報と現実を同調、そして戦術の再構築といった所だな」
「それにプラスして『初期化』と『最適化』の時間稼ぎもしているわね」
「という事は『一次移行』してから動くという事ですか?」
「恐らくな」
「夏君の方は…夏君らしいわね」
「篠ノ之と一秋のもう特訓で取り戻した勘で攻撃を捌きながら、自分の間合いに持っていくつもりだな」
「そうねえ、でも…」
「やっぱり、姉さんも気付いたか。あの馬鹿者め」
「一体どうしたんですか、お二人とも?」
「「浮かれている(わ)」」
「へっ!?」
「さっきから左手を開いたり閉じたりしているだろう? あれがあいつの癖でな。あれが出てるときは大体簡単な事でミスをする」
「そうなんですかー。さすがはご姉弟ですね」
「ま、まあ、なんだ。あれでも一応私の弟だからな」
「あー、もしかして照れてるんですかー? 照れてるんですねー?」
「私はからかわれるのが嫌いだ」
真耶にヘッドロックを極める千冬。
そんな二人をよそに千春は箒の横に座った。
「箒ちゃん、夏君たちが心配?」
「そんな事は!」
「本当の事言ってもいいのよ?」
「…心配です」
「なら信じてあげなさい。私達に今出来る事はそれだけよ。…教師として言っちゃいけないんだけどね。それに、箒ちゃんが一番心配なのは夏君であって、秋君はそれほど心配していないでしょう?」
「そうですね、一秋はどんな時でもしっかり準備をして戦いに臨む奴ですから」
「そうじゃなくて、箒ちゃんはLIKEな秋君よりLOVEな夏君が心配なんでしょう?」
「なっ、ななな、何を言っているんですか」
「ふふふ。その反応が答えよ、箒ちゃん。さて、試合の方に集中しましょうか」
意識を映像の方に移すと、一夏がミサイル型のビットで迎撃されて、爆発と光に飲み込まれたところだった。
「一夏っ…!」
思わず声を上げてしまう箒。
「大丈夫よ。箒ちゃん」
「ふん、機体に救われたか。馬鹿者め」
二人の姉はそう言った。
「いや、まるでフィクションみたいなタイミングだね」
僕はそう呟いた。
オルコットさんのミサイル型のブルー・ティアーズに迎撃されて、炎に包まれた夏兄だったけど、そのタイミングで『一次移行』を行って事なきを得た。
もちろん、僕の相棒、『黒鷹』もほぼ同じタイミングで『一次移行』を行った。
「ま、まさか…一次移行!? あなた達、今まで初期設定だけの機体で戦っていたというの?」
まあ、戦いの直前で受領したものだし、冬姉からぶっつけ本番で物にしろって言われたからそうなっただけだけどね。
まずは武装確認。
― 全距離対応弓型兵装『梓鷲』(ししゅう)
― 反射防御兵装『八咫烏』×10(やたがらす)
― 近接短刀『雪鶴』×2(ゆきづる)
「ああもう、面倒ですわ!」
オルコットさんが夏兄に向けてレーザーを発砲。しかし、夏兄が避ける。ただ、その直線上に僕が居た。
「試してみるか。八咫烏!」
僕は八咫烏を一つ呼び出して、射線上に置いた。すると、八咫烏はレーザーを反射した。置いただけなので反射したレーザーは明後日の方向に飛んで行ったが。
「なっ!?」
オルコットさんは驚きの声を上げる。
その隙に夏兄が切り込んでいく。
…しかし、八咫烏は本当に防御のための兵器なのか? ビットっぽいし。…試してみるか。
僕は八咫烏を全機呼び出し、夏兄とオルコットさんの周りに配置していく。
夏兄もオルコットさんも目の前の相手に集中しすぎて僕の動きに気付いていない。
「おおおっ!」
雄たけびを上げながら、一気に突っ込んでいく夏兄。
カッコいいんだけどさ。今回の敵はオルコットさんだけじゃないんだよね。
二人には仲良く沈んでもらいますか。
「『梓鷲』フルパワー。拡散モードでセット。これで決める!」
『梓鷲』から放たれた五本のレーザーはそれぞれ、『八咫烏』に何度も何度も反射され、疑似オールレンジ攻撃となってブルー・ティアーズと白式を襲う。
「「えっ!?」」
驚きの声を上げる二人。…もしかして二人ともこれがバトルロワイアルだって事忘れてた?
そのまま二人はレーザーの雨に飲み込まれる。生まれる爆発。夏兄はともかく、オルコットさんはこれではまだ沈んじゃいないだろう。一気に行ける時は行かないと。
僕はそのまま、ブルーティアーズに突っ込む。
「弓で突っ込んでくるなんて、舐めていますの! 『インターセプター』!」
オルコットさんは近接ブレードを展開して迎撃する。
「これが僕の専用武器だからね。『梓鷲』!」
僕の言葉と共に僕の手にあった『梓鷲』は形を変える。弓から剣へと。
これが、僕の習っていた篠ノ之流剣弓術。初代篠ノ之柳蔵が編み出したとされる。距離を選ばない戦い方。
銃剣が生み出される前だから、完全に変態武術だけど。オールレンジ対応の武術を考えるなんてね。流石、束姉のご先祖様だけあるね。
オルコットさんの接近戦の技術は大した事は無く、そのまま僕は勝利した。
そういや、勝ったから代表になるんだった。
まあ、経験を積めるから良いか。
ついに出てきました、オリジナルIS『黒鷹』。
次回はクラス代表選の顛末を。そして、何故ビットを動かしながら他の事が出来るかを言及したいと思います。