作 「強く生きてください」
秋 「家の兄のフラグ建築能力が凄すぎて疲れます。助けてください」
作 「僕にはどうしようもありません。強く生きてください」
秋 「…解決する気ないですよね」
作 「というより、解決できないよね。その悩み」
第七話始まります。
クラス代表決定戦終了後少し経ったアリーナの管制室にて、試合を行った僕と夏兄、それにオルコットさんが集まっていた。他には春姉、冬姉、束姉、箒ちゃん、山田先生が居た。
「しかしなんで俺達は集められたんだ?」
理由がわかっていない夏兄。
「察せ、織斑」
いや冬姉、夏兄にそれは難しいと思うよ。
「一夏さん、これは今回の戦いの反省会みたいなものですわ」
オルコットさんがそう言った。ん? 一夏さん?
「そうそう、勉強でも復習ってするでしょ? それみたいな物だよ」
「おー、なるほど」
「さて、織斑兄が事情を理解した所で始めるぞ。まずはその織斑兄と白式からだ」
管制室のモニターには、夏兄の映像のみが抽出された物が流れる。
「夏兄、いきなりブレード出してたけどさ、あれは何で?」
「仕方ないだろ、あれしか武装なかったんだから」
「「「はあ!?」」」
驚きの声を上げたのは、僕と箒ちゃん、それにオルコットさん。
「格闘オンリーって、暮桜じゃないんだし…」
「しかも、武器の名前が『雪片弐型』だったしな」
「てことは、まさか…」
「そのとーりだよ。白式は暮桜と同じコンセプトの機体だよ」
そう言うのは開発者である、束姉。
「元は、倉持技研って所が開発していた『ワンオフ・アビリティーを一次移行から持たせよう』というコンセプトのISだったんだけど、それが途中で計画中止になったのを私が譲って完成させたんだー。さっき確認したけど、ちゃんとワンオフ・アビリティーの発現も確認できたよ」
「ワンオフ・アビリティー?」
「ISと乗り手が最高の相性になった時に発現する固有能力のことだよ。本当は二次移行してからじゃないと発現しないらしいし、実例もほとんどないんだって」
言ってしまえば自己進化をするISの果て。完成系と考えれば良いと思う。
しかし、実例の少ないワンオフ・アビリティーを最初から搭載した機体を作るんだから、やっぱ束姉は凄いよな。
「まあ、ワンオフ・アビリティーを搭載しようとして、武器が雪片だけになっちゃったんだけどねー」
「夏君は千冬ちゃんと同じで一点集中で極める方が向いていると思うからそれで良いと思うわよ」
「そうだな。…今日の戦いに関しては一応及第点を与えられるが、これに慢心せずにな」
「おう」
冬姉にため口で言ったので出席簿アタックを食らう夏兄。少しは学ぼうよ。
「返事ははいだ」
「…はい」
「次はオルコットさんのですね」
山田先生がそう言って映像を切り替える。
「まずは戦闘面からね、実際戦った二人はどうだった?」
「そうだね、オルコットさんのビット操作には癖があって気付けば避けやすかったね」
「ああ、あの死角で一番反応しにくいところ狙ってくる奴な。オルコットさんのはそれだけだから、逆に自分で隙を作れば狙う場所を誘導できて、攻撃チャンス作れるよな」
「実際、一次移行直前の夏兄の攻撃はそれを利用してだったしね」
「あの、どういう事でしょうか? 後、わたくしの呼び方はセシリアで構いませんわ。一夏さん、一秋さん」
「えーっと、どう説明すればいいんだ?」
「そうだね…『戦いにおいて最善手が常に好手である訳ではない』って事かな。相手の死角を見つけてそこを正確に狙う技術は凄いんだけど、それだけだから何とかできちゃうんだよね。僕みたいに回避し続けたり、夏兄みたいに避けざま破壊したりね」
的確に弱点を突く技術があっても、ワンパターンじゃ読まれてしまう。だからこそフェイントが存在する。
「なるほど、一つの方法だけではいけないという事ですね…」
「そうだね、IS初心者の僕達が気付くんだもん。それなりの乗り手ならすぐ気付くんじゃないかな? その辺どうなのですか、先生方」
「私や千冬ちゃんなら2~3発で気付くわね。真耶ちゃんは?」
「私だと5発目くらいでしょうか? 恐らく、平均的な代表候補生レベルなら、10発前後で気付くと思います。有利に試合を進める事は出来るでしょうが、相手の得意な土俵に持ち込まれたら辛くはなるでしょうね。ビットの驚異の度合いが低くなっているので」
「なるほど、運用方法を考えてみます」
「後は接近戦ね。射撃機体でも、ある程度は接近戦が出来ないとこの先は厳しいわよ。ここであきらめる気、無いんでしょ?」
「もちろんですわ!」
「ふむ、戦闘面はこんなものか。束、機体の方はどうだ?」
「ほいほーい、えーっと、セッちゃんの機体、ブルー・ティアーズの目玉武装のブルー・ティアーズの稼働率は50パーセントって所だね。理論上はある程度行くと偏向射撃、つまりはレーザーを曲げれるんだけど、曲げた事は?」
「一度も無いです…」
あれを曲げられたら戦いにくい事この上ないよね。良かった今回曲がらなくて。
「そう落ち込む事無いよ。セッちゃんが出来ないならイギリスの候補生の全員が出来ない訳だし、この子が出来てまだ間もないんだから、焦らずしていけばきっと成功するよ!」
「ありがとうございます、篠ノ之博士」
「うむ、がんばれ若人よー」
束姉がセシリアさんをそう励ました所で映像は僕の物に変わる。
「最後は織斑弟と黒鷹だが…私から質問があるが良いか?」
「何ですか、千冬先生?」
「なぜ、お前はあれほど自由にビットを動かせる。しかも別の行動しながらだ」
「それは、わたくしも聞きたいですわ。最終的にわたくしも目指すはあそこなので」
「ビットを動かしながら動ける理由ねえ…。正直、出来たからとしか言いようがないんだけど」
「普通はほとんど出来ないんだよ、かずくん。一定の規則性を持たせながら動くのは、ISの自己進化が進めば出来る様になると思うけど。言ってしまえば、右手と左手で、別の問題を解くような物だよ」
束姉の言葉に僕は、
「なるほど、それが出来るから出来たんじゃないかな」
と言った。
「「「「「「「えっ!?」」」」」」」
僕以外の人が驚きの声を上げる。
「小学校の時に、利き手の右手を骨折した事があったじゃん」
「ああ、3年の時な」
「そうそう、その時。その時に生活のいろんな事を左手でしてたよね」
「最終的に、右手と遜色なく使える様になっていたわねー」
「で、折角そうなったんだから維持の練習もしてたんだよ。いわゆるもったいない精神だね」
「少し違う気もするが…」
「それである時、『なら両手を使って勉強すればいいんじゃね?』ていう事で始めて、気付いたら出来る様になってた。おかげで、何個かの事を同時に考える事が出来る様になったり、何かをしながら何かを考えてもしっかり集中出来る様になったんだよね」
これぞまさしく怪我の功名、って違うか。
でも、これのおかげで日常生活で何かしながら、別の事を考えられるようになったから、かなり便利だったりする。
「なるほど、納得だよー。かずくんは偶然身に着けたそれで、ISの操縦、ビットの操作、火器管制を同時に行っていたんだね」
「多分そうなんじゃないかな。でも、これなら頑張ればだれでも、出来んじゃないかな?」
「そんなに簡単じゃないと思うよー。この中だと、かずくんの次にそれが出来そうなのははるねぇかな? 次がセッちゃんで、その次がまやまや。私とちーちゃん、箒ちゃんにいっくんはほとんど適性は無いかな? 多分だけど」
「ある意味、一秋のワンオフ・アビリティーだな」
「あの、もう一ついいですか?」
「なんですか? 山田先生」
「あの武器『梓鷲』でしたっけ? あれは何ですか?」
「あー、あれはですね、篠ノ之流剣弓術っていうので、千冬先生の剣術と一応同じ流派ではあるんですよ」
本当に『一応』ってレベルだよね。使い手が開祖しかいないんだし。
「篠ノ之流は、織斑先生が『ブリュンヒルデ』になった事で有名になってので存じていますが、具体的にはどういう流派ですの?」
「これは…僕の口から言っていいのかな? 束姉か箒ちゃんの方が良い気がするけど…」
「一秋に任せる」
「了解。えーっと、篠ノ之流は開祖・篠ノ之柳蔵が戦国時代末期、だから今から400年位前に作った武術なんだよ。この篠ノ之柳蔵って人は『天才』というべき人で、日本にある大半の武術を修めて、そこからオリジナルの物を作っちゃった人なんだ。僕はざっくり説明するとき『総合古武術』って言ってる。僕の剣弓術は見ての通り、どの距離でも戦おうと考えた末にできた武術だよ。ただ、結構面倒な物だから、使う人が全くいなかったんだよね」
「初めて聞きましたわ…」
「私もです…」
そう言うのは篠ノ之流の関係者ではない、セシリアさんと山田先生。
まあ、取り上げられたのは『篠ノ之流』の名前だけだから仕方ないよね。
「でも、私が道場をちらっと見た時、一秋君は二刀流でしたよね?」
「今回は使わなかったですけど、本来、剣弓術は変形弓と短刀の二刀流なんです。でも、普通に道場の立会とかで弓が使えないんで、僕は小太刀二刀流で行っているんですよ」
それに、剣弓術の指南書には近接戦においては二刀流と似通った部分が結構存在したので、近接戦の訓練においては僕はこのスタンスを取っている。
正直、剣弓術が広がらなかった理由はこの訓練のしにくさなのではないかと個人的に思っている。
「さて、そろそろ進めるぞ。まずは戦闘面からだ」
「秋君確認しておきたいんだけど、序盤から中盤に掛けて回避に専念したのは情報と実際の攻撃の同調、そこからの戦術の再構築、それに『初期化』と『最適化』の時間稼ぎよね?」
「そうだよ。もっと言うと、ISの操縦に慣れる事と二人の消耗待ちってのもあったね」
「「「どういう事だ(ですの)?」」」
そう聞くのは学生3人。
「一つ目のは予習の内容と授業の内容が合っているかの確認とそれからの応用って所かな? 二つ目と三つ目はそのままの意味。四つ目はただ単に僕が負けず嫌いだから、勝てるチャンスを虎視眈々を狙ってたって事かな」
「なら、私としてはこの時点では満点を上げても良いかな」
「私もここまでしっかりと意識を持って試合を出来ているのは素晴らしいと思いますよ」
「ふむ、私も二人と同意見だな。戦闘面では文句なしだ、これに慢心せず精進するように」
「はい!」
慢心する気はさらさら無い。目標は『世界最強』を倒す事だから。
「機体面ではどうだ、束」
「そうだね…、第三世代の武装の『八咫烏』の稼働は完璧だね。『梓鷲』もちゃんと機能している。正直、乗り手を含めて第三世代の完成機と言っても良いね。こんな事、はるねぇと『白梅』以来じゃないかな?」
「私の場合、秋君と違って、ある程度経験があってだから、秋君の方が凄いんじゃないかしら」
「何か、今日はべた褒めだね。…でも、それは僕と相棒の『黒鷹』の二人の力だから素直に嬉しいな」
「相棒ね…、かずくんはそういう捉え方をしたんだ」
「うん、一緒に戦ってくれる僕の相棒。変かな?」
「ううん、捉え方はそれぞれ自由だよ。私にとっては皆『子供』みたいな物だしね」
開発者の眼から見ると、『子供』か…。じゃあ、乗り手は…義理の子供? 僕らから見ると束姉がお母さん?
「ただ、一つ残念なのが、白式も黒鷹も折角展開装甲を付けたのにそのデータをあまり得られなかった事だよー」
「展開装甲? 何それ?」
「この先、第四世代機の根幹を担う技術だよ。白式と黒鷹に試験投入してみたの。このデータをたたき台に第四世代機を作るつもり。今の白式と黒鷹はいうなれば3,5世代機って所だよ」
その言葉に全員が言葉を失う。世界的にはようやく第三世代の試作機第一号が各国でやっと出来てきたのに、この『天災』は早くも第四世代機を作ろうとしている。
「束、やり過ぎるなと言っただろう…」
「ゴメンね、ちーちゃん。でも、私も自分の夢は譲れないんだ。そのために前に進み続ける事を止めたくないんだ」
「そうか、分かった。…あまり、無理はするなよ」
「ちーちゃんは心配性だねえ。でも、ありがとう。束さんは嬉しいのですよー。でも、束さん的にはちーちゃんの方が無茶しいだから、心配なんだよ」
なんていうかこういう関係性って良いよね。お互いがお互いを支え合って進んでいける親友って。
結構憧れる。
「千冬ちゃんに束ちゃん、その辺にしておいたらどう?」
「そ、そうだな。今日の事を踏まえて各々が精進するように。では今日の所は解散!」
冬姉の一言で解散となった。
解散した後、僕は部屋に戻ってゆっくりしていた。
夏兄は今日の事で悔しかったのか、箒ちゃんと訓練に行ってしまった。詰め込み過ぎは良くないと思うけど…。
僕だってただのんびりしている訳じゃない。剣弓術を含む僕が今まで習ってきたものがどこまで生かせるかを考えていた。この辺は明日以降少しづつ確かめていく方向にはなりそうだけど。
やる事が増えたなー。生身でのトレーニング、ISの基本的な操縦、戦い方の構築、夏兄のコーチ…最後のは箒ちゃんに任せるか。
すると、ノックの音が。開けるとそこにはセシリアさんが。
「どったの、セシリアさん。夏兄ならいないよ」
「そうですか…。って、今は一夏さんに会いに来たわけではありませんの!」
「そうなんだ。まあ、立ち話もなんだし、部屋に入ってよ」
そう言ってセシリアさんを招き入れる。
「ごめんね、紅茶とかは用意が無いから、コーヒーになっちゃうけど」
「いえ、ありがとうございます」
僕はコーヒーを出す。
ちなみにこの部屋、紅茶は無い。僕も夏兄も紅茶がそこまで好きじゃないというのが理由だ。僕は基本コーヒー党だし、夏兄もお茶なら日本茶の方が好きだからだ。
「で、用件は何かな? 夏兄に会いに来たんじゃないの?」
「違います!」
「うーん、でも僕の勘ではセシリアさん夏兄に惚れてるでしょ?」
「……」
「無言は肯定だよ」
観念したのか頷くセシリアさん。…夏兄卒業までに何人にフラグを立てるのかな?
「でも、夏兄の事じゃないんだよね」
「はい。ここに来る前に、箒さんに会って宣戦布告をしてまいりましたの。それを箒さんは受け入れて私達は友人でありライバルになりました」
「そうなんだ。僕は中立だから、相談には乗るけど、直接手は貸さないからね」
「それも箒さんに言われましたわ。今回ここに来たのは一夏さんの事ではなく、私自身の問題の相談なんですの」
「何でまた、僕に」
「その時に、箒さんに悩んでいる事がばれてしまいまして、『ならば、一秋に相談してみたらどうだ? あいつなら、それなりに答えを出してくれるだろう』と言われまして。それに、今日の戦いで常に理性的に戦っていらした一秋さんなら私が納得できるような答えが出るような気がして」
「何か凄い信頼だけど、僕もセシリアさんと同い年の子供だからそこまでしっかりとした答えが出せるかは分からないよ」
「それでも構いませんわ」
そう言って、セシリアさんは話し始める。
それは彼女の父親と母親のお話。
女尊男卑の中で生まれた歪み。セシリアさんの根本を作っていた物。
そして、何故不仲な夫婦が同じ列車で旅をしていたのか。
「うーん…僕の想像なら話せるんだけど、それでも良い?」
「ええ、自分では答えを見つけられそうにもないので」
「まず、セシリアさんのお父さんは根っからの裏方気質だったんじゃないかな? 自分が表だって何かするよりも誰かを支えるのが向いているタイプの人。多分、あまりにも度が過ぎて、セシリアさんには情けないように見えたんじゃないかな?」
「そういう物なんですか?」
「分かんないけど、セシリアさんのお母さんはそんな情けない人に惚れると思う?」
「…思いませんわ」
「で、セシリアさんのお父さんがIS発表後、態度が弱くなっていったのは、より慎重に動くようになったからだと思う。君のお母さんに迷惑を掛けちゃうしね。男性ってだけで下手したら逮捕される世界だからね。お母さんはそれをみて『能力はあるんだから、もっとしっかりして欲しい』ってイライラしてたんじゃないかな? 会話を拒んでいたのは無言の抵抗とかさ」
「なるほど、続けてください」
「最後の、列車事故については…、多分セシリアさんの事を相談するためだと思う。時間に余裕を作っての列車移動なら結構時間も作れるし、良い列車なら個室もあって相談もし易そうだしね」
「私の事というのは?」
「もうその頃からセシリアさんはちょっと前までの感じがあったんでしょ?」
「…お恥ずかしながら、ありましたわね」
「女尊男卑の世界が出来る前から、仕事をし続けたセシリアさんのお母さんにとってはその考え方は危険と思ったんじゃないかな? いくら女尊男卑の世界が進んでも男性は居続ける。実際各国のトップはいまだに男性の方が多いしね。そんな中に、男性とだけで見下すセシリアさんが行ってしまったらいつか足元をすくわれると思ったんだと思う。ただ、それはセシリアさんに深く根付いてしまったものだから、お母さん一人の力じゃどうしようもなかった。だから…」
「父の力も借りようと…」
「あくまで、僕の想像だけどね」
「いえ、ありがとうございます。少し、考えてみますわ」
「がんばってね、セシリアさん」
セシリアさんは部屋を後にした。
死者は答えを返してくれない。だから、僕の答えが正しいのかを確かめる方法は無い。
僕には、僕達兄弟には親が居ない。僕は両親という物を全く知らずに育った。だから、親の考えている事なんて全く分からない。さっきのはかなりの理想があった。
でも、セシリアさんにとって納得出来るものだったのなら、それでいいと思う。
さて、反省会からのセシリアの両親の話でした。
あくまで個人的な解釈なので、納得いかない方はスルーでお願いします。