出てくる銃は近代的な物では無く、おおよそ1900年代前後の
物です。
俺には、この世界が灰色に見える。
この世界は決して美しくは無い。
富める者、貧しい者の差は激しく、大自然の中には
悪意ある獣たちが五万と蠢いている。
俺は『奴ら』に家族を、村を焼かれた。
そして、俺は『ある人』に出会った。その人は
強かった。だから師事した。俺を鍛えてほしいと
懇願した。
そしてその願いは叶った。だが、現実はやはり残酷だった。
『あの人』は俺に、『戦士としての才能は無い』と言った。
その言葉に、俺の心は挫けそうになったが、憎悪がそれを
押し留めた。『奴ら』に対する憎悪が。
だから俺は思考し、試行した。自分には剣も、槍も、槌も、
何も振るう力は無い。俺に合う武器は無い。
だが、無いなら『作ればいい』。
そして、俺はそれを作り出した。『銃』という武器を。
俺は、それを武器に『奴ら』への復讐を続ける。
これは、そんな俺と俺が師事する『あの人』。そして
あの人の仲間と、何の因果か出来た俺の仲間の物語だ。
~~~
この世界には、冒険者という職業があった。彼ら、或いは
彼女らは怪物退治を始めとした様々な依頼をこなす形で
報酬を得て生計を立てている人々の事である。
そして冒険者が登録するギルドにはいくつもの依頼が上げられ、
冒険者はその依頼を選び、こなしていく。
そんな中で簡単とされている部類の依頼が、『ゴブリン退治』
である。
熟練の冒険者は、『ゴブリンなど素人にやらせろ』と言って
依頼を受けず、その素人冒険者たちも同じように
『ゴブリンなんて』と侮る時が多い。
しかしそれが命取りである事を知る冒険者は少ない。
だから……。
~~~
「あっ!がっ!ぐっ!あぁっ!」
今、薄暗い洞窟の中で一人の女がゴブリンの群れに
襲われていた。
ゴブリンたちは彼女を、殴り、蹴る。しかし殺しはしない。
何故ならゴブリンにとって、女とは犯すためにあるからだ。
ある程度殴りつけ、動きが鈍ったところを……。
『ビリビリビリッ!』
「いやぁぁぁぁぁぁっ!!」
一気に服を引きはがすゴブリンたち。
押さえつけられ、動けない女武闘家のすぐそばには、先ほどまで
一党、パーティーの仲間だった男の死体が、無残な形で
投げ出されていて、同じように近くでは、ただ泣き、顔を
歪めながら錫杖を握りしめ震えていた女神官と、もう一人
居た女魔法使いは腹部に致命傷を負い、もはや動けない。
女武闘家の目が、女神官を見つめる。
「に、逃げ、て……」
掠れる声で呟く彼女。しかし本当は、こう叫びたかった。
『助けて』と。
そして、彼女の後ろに居たゴブリンが、最後に残っていた
腰布をはぎ取る。
『GEHEHEHEHE』
ケタケタと、おぞましい笑みを浮かべるゴブリン。
『嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!』
心の中で必死に叫ぶ彼女。だが、そんな考え程度でゴブリンは
止まらない。そして、次の瞬間。
『ガァァァァァンっ!!!』
洞窟内部に、破裂音が響いた。そして……。
『ボシャッ!』
何かが、女武闘家の背後にいたゴブリンの頭を
撃ちぬいた。
『ビシャッ!』
「ひっ!」
撃ちぬかれたゴブリンの血が彼女の体に掛かる。女武闘家が
恐る恐る振り返った時、ゴブリンが倒れた。
いきなりの破裂音、いや、『銃声』に戸惑いギャァギャァと
喚き、残りの人間が居る女神官の方へと視線を巡らせる
ゴブリンたち。
「ひっ!!」
それに彼女が悲鳴を上げた時。
「馬鹿野郎ッ!ぼさっとするな!
レイプされるのが嫌なら、さっさとこっちへ走れ!」
一方通行の洞窟。女神官の一党が入ってきた方から男の
声が聞こえてきた。そして……。
「くあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
『ドガガガッ』
銃声に戸惑い混乱していたがために緩んだ拘束を
振り払い、足払いを周囲のゴブリンにかけて転ばせると
何とか立ち上がった女武闘家はすぐに女神官と
魔法使いの元へと走った。
「逃げるの!早く!」
「は、はいっ!!」
二人は、息も絶え絶えな女魔法使いに肩を貸して走り出した。
『Giaaaaa!』
そこへ、ゴブリンが向かってくるが……。
「通路の左側へ寄れ!」
前方から声が聞こえてきた。慌てて体を左に傾ける二人。
そして……。
『ガァァァァンッ!』
再び銃声が響いて……。
『ボッ!』
二人に襲い掛かろうとしていたゴブリンの頭を撃ちぬいた。
未知の攻撃に、戸惑うゴブリンたち。
「今のうちに走れ!孕み袋になりたくなかったらな!」
急かす声に従い、二人は瀕死の女魔法使いを連れて走った。
そして……。
二人の前方の一つの人影が現れた。
その人物は全身を皮鎧で包み、肩と胴体、膝やすねの辺りに最低限の
鉄製鎧を。更に頭部に顔全体を覆うヘルムを身につけ、
更に左の腰元にランタンを固定。胸元に大量のポーチを備えていた。
「あ、あなたは!?」
「冒険者だ!早く外まで撤退しろ!」
神官の彼女そう返す彼の手に、彼女が見た事も無い武器が
握られていた。
小さな筒に持ち手がついたようなそれを、右手に持っている
謎の冒険者。
女神官は一瞬、そちらに注意が向いたが、そんな事をする
余裕が無い事を思い知らされた。
『ドドドッ!』
彼らを追うゴブリンの足音が聞こえてきたからだ。
「ひっ!」
「ボサッとするな!行け!」
悲鳴を漏らす神官にそう言うと、男の冒険者は右手にした武器、
『M1848コルトドラグーン』を腰元に構える。
『ガァァンガァァンッ!』
ドラグーンから発砲音が響き渡り、迫っていたゴブリンの内の
二体を射殺した。
しかし、彼はそこでドラグーンを右の腿にあるホルスターに
納めると、背中にスリングベルトを使って背負っていた
もう一つの武器を取り出した。
ドラグーンと対比して、一般的な剣のような長さを誇るそれを
構える男の冒険者。
そこへ、ゴブリンの一体が向かって飛びかかってきたが……。
『ドパァァァンッ!』
次の瞬間、彼の手にしたもう一つの銃、
『M1887レバーアクション式散弾銃』が火を噴いた。
12ゲージの中に納められていた散弾の雨がゴブリンの
体をズタズタに引き裂く。
内蔵や血をまき散らすゴブリンに、他のゴブリン達が
目の前に恐れを抱き、僅かに後ずさる。
『ガシャンッ』
その隙に、持ち手の部分のレバーを動かし次弾を装填した
男の冒険者。
しかし、男性冒険者の方も静かに後ずさりし、一発。
ゴブリン達の足下へ牽制の一撃を加えると後退していった。
「ハァ、ハァ、ハァッ!」
そして、彼女たちは何とか洞窟の外まで撤退する事が
出来た。
神官と武闘家は草原の上に魔法使いの体を横たえ、
二人とも地面に膝と手をつき肩で息をしていた。
そこへ。
「……」
洞窟の中から無言で先ほどの男性冒険者が現れた。
3人を見回す男の冒険者。そこへ。
『ザッ、ザッ』
近くの雑踏を超えて一人の人影が姿を現した。
それを見た男の冒険者が……。
「師匠」
静かにそう呟いた。
その男こそ……。
『小鬼を殺す者』、『ゴブリンスレイヤー』だった。
そして、時間は女神官が町のギルドで冒険者の登録を済ませ、
女武闘家たちに一党へ誘われギルドを出て行った直後へと
巻き戻る。
「あ」
ギルドを出ていくとき、女神官は一階のロビーの隅っこに
座っている人の方へと、不意に目を走らせた。しかし
他の面々が建物を出て行ったので、彼女は慌ててそれを
追いかけた。
やがて、女神官の見た男が静かに受付へと近づき、
先ほど彼女の登録と一党へゴブリン退治の依頼を
斡旋した受付嬢の元へと歩み寄った。
「あ。『ガンスリンガー』さん」
そして彼に気づいて、受付嬢の女性はそう名前を呼んだ。
『彼』はここでは、『ガンスリンガー』と呼ばれている。
「……良かったんですか、あの一党(パーティ)に一言言わなくて」
挨拶も抜きに答える彼の声は、まだどこか幼さを
残していた。
「……やっぱり聞いてたんですね」
静かに、ため息をつきながら呟く受付嬢。
「あれだけ大きな声でゴブリン退治と言われれば、
聞こえない方が可笑しい。…それより、あの4人。
下手すると全滅する確率の方が高いですよ」
そう言って、ヘルムの下から冷徹とも取れる言葉を呟く
ガンスリンガー。しかしそこへ。
「だったら、あなたが助けに行けば良いじゃない
ですか」
と、返す受付嬢。
「……それもそうか」
うなずくと、彼は背負っていた銃、M1887のスリングを
握って背負い直す。
「ゴブリン関係の依頼は?」
と聞くガンスリンガー。
「先ほどの4人が受けたこれだけです」
「わかりました。…『師匠』には、先行していると
伝えておいてください」
「はい。わかりました。行ってらっしゃい」
そう言って、彼女はガンスリンガーを見送る。
そして時間は、4人が外に脱出したときへと巻き戻る。
「お前か。状況は?」
問いかけるゴブリンスレイヤー。
「俺より先に潜った4人の一党は、一人死亡、
二人は軽傷。一人瀕死。スコアは俺が最低5匹。
それ以外は不明。ホブ1。トーテムを確認したため、
シャーマンも居るかと」
「そうか。『渡り』を用心棒としたか」
そう、まるで事務的な連絡のような会話をした二人は、次に
魔法使いへと目を向けた。
そして、ゴブリンスレイヤーの方が彼女に近づき、彼女の
腹部を押した。途端に血を吐き出す女魔法使い。
それを見たガンスリンガーが……。
「手遅れですか?」
と問う。
「あぁ。奴らの毒にやられている。助からない」
彼の言葉に、女神官と女武闘家の表情が青ざめる。
そしてゴブリンスレイヤーは腰元にある短剣を抜き取る。
「待ってください!まだ、まだ助かるかもしれません!」
咄嗟に神官の彼女が止めに入るが……。
「無駄だ。すでに毒が全身に回っている。手遅れだ。
解毒剤も、もう使い物にならない」
「そ、そんなのやってみなければ!」
「諦めろ。そして、苦しませるな」
まだ食い下がろうとする女武闘家だが、
そう言って短剣を握るゴブリンスレイヤー。そして、4人の耳に…。
「殺、して…。殺して……」
彼女、女魔法使いの小さく掠れた声が聞こえた。
「あぁ」
『トスッ』
そして、ゴブリンスレイヤーが短剣を喉に突き立てると、
女魔法使いは静かに息を引き取った。
「そんな……。どうして!?どうしてこんな事に!!」
ダンッと拳を地面にたたきつける女武闘家。
こんなはずじゃなかった。そんな思いが彼女の中で
渦巻く。そこへ。
「お前たちがゴブリンを侮るからだ」
「ッ!!」
彼女は、ガンスリンガーの言葉に息をのむ。
「ゴブリンなど雑魚だ。追っ払った事がある。
あんな奴らになんて負けない。そう言う見くびりが、
こんな結果を招く。……お前だって、ついさっきまで
自分がどうなっていたか、忘れたわけじゃないだろう」
その事を言われ、女武闘家はさっきの事を思い出し、カタカタと
体を震わせる。
「お前たちを殺したのは、ゴブリンだけじゃない。
ゴブリンだからと言う『油断』だ。……師匠」
「あぁ。行けるか?」
「3分ください。弾の装填を」
と言うと、ガンスリンガーはM1887を背中に背負い直し、
右の腿に付けていた革製のホルスターからドラグーンを
取り出して、撃鉄をハーフコックの状態にして、
弾倉が回転するようにしてから、ポーチの中から3つほど
アイテムを取り出した。
小さな袋から、空の弾倉の中に火薬を流し込み、その上に
ポーチの中から取り出した弾丸が込め、銃身下部にある
ロッドを使って弾を置くまで押し込む。さらに
弾倉の口部分にグリス、油を塗り、弾倉後部にある
部分に、使い終わった雷管を外し、新たな雷管をセットする。
洞窟の中で使った弾丸は4発。そのため、その工程を
更に3回繰り返すガンスリンガー。
彼はドラグーンに装填を終えると、ホルスターにそれを
戻し、さらに肩にかけていたM1887を取り出す。
レバーを下に下げ、空いた部分から弾を2発装填する。
M1887の装弾数は5発。先ほど2発使ったからだ。
そして、彼は宣言通り3分ですべての工程を終えた。
「準備完了です」
「そうか」
と言うと、二人は、女魔法使いの遺体のそばで泣いている
二人に目を向けた。
「お前たちはどうする?来るか、戻るか。
ここで待つか」
と、ゴブリンスレイヤーの問いかけに二人は……。
「私は、行き、ます!」
「わ、私も行くわ!あいつらを、ぶっ殺す!」
「そうか」
「だったら、これを」
そう言ってガンスリンガーは腰元の中くらいのポーチの
中から、少しボロい上着を取り出した。
「着ておけ」
「えぇ」
渡された上着を着る女武闘家。
「……行くぞ」
そういうと、ゴブリンスレイヤー、ガンスリンガー、
武闘家、神官の順番で洞窟へと入っていった。
そして、4人は最後にスリンガーがM1887で倒した
個体の前で止まった。
「使えますか?」
「…あぁ」
ガンスリンガーの問いに頷くゴブリンスレイヤー。
そう言うと、二人はどこからか布を取り出し、それに
ゴブリンの血を吸わせた。
「な、なにをしているの!?」
「俺たちの臭いを消す」
驚く武闘家と答えるガンスリンガー。
「奴らは鼻が良い。気づかれないようにするための処置だ」
「嫌なら戻れ」
ゴブリンスレイヤー、ガンスリンガーの順に
そう言う二人を前に、結局二人の服はゴブリンの血で
汚れる羽目になった。
「冒険者になるのなら、慣れておけ。いつでも付いて回る臭いだ」
そう言いながら4人が足を進めた場所は、ゴブリンの群れに奇襲を
受けた場所だった。
「さっきの1匹に。3、6、9、14」
冷徹に数を数えるゴブリンスレイヤーと、周囲を警戒する
ガンスリンガー。そんな中、神官たちの目に、惨殺された
剣士の青年の死骸が目に映る。
「うっ!!おえ゛ぇぇぇぇっ!」
えずき、吐しゃ物を吐き出す神官。そして、その傍で
武闘家が屈みこみ、声を堪えながらも涙を流している。
「……どうしてこうなった?」
「それは……。背後から、突然、群れに」
涙を拭き、震えながらもガンスリンガーに答える武闘家。
「そうか。……来い」
そういうと、来た道を戻るゴブリンスレイヤーと
それに続く3人。そして、神官と武闘家はトーテムが
あった場所に、横穴がある事に気づかされた。
「そ、そんな!横穴になんて気づかずに……」
「こういう場合、まず真っ先にトーテムに
視線が行く。そしてこんな場所では明かりは
松明一つ。注意を誘導され、大事なものを
見落とさせる。奴らは馬鹿だが間抜けじゃない」
驚く武闘家と、説明するゴブリンスレイヤー。
「ここを通り過ぎた時から、お前たちは奴らの
掌の上だった、と言う事だ」
ガンスリンガーの言葉に、神官と武闘家はめまいを覚えた。
『そ、それじゃあ……』
『私たちはあの時、もう既に……』
言いようのない恐怖が二人を襲う。
「トーテムがあるのは、大抵ゴブリンの
スペルキャスター、上位種が居る証だ。
十中八九、そのキャスターがこの群れの
長だろう。そして、奴らはこの中だ。
お前たち、依頼の内容はどんなだ?」
「さ、攫われた村娘の救出、です」
ガンスリンガーの問いに答える武闘家。
「そ、そうです!早く助けないと!」
そして思い出したかのように叫ぶ神官。
と、そう言うがゴブリンスレイヤーは手をかざし、
待てと合図する。そして彼は松明をもう一個作ると、
それを横穴の奥へと投げ込んだ。
すると、奥の暗がりから槍を持ったゴブリンが現れた。
一瞬にして、神官と武闘家の表情がこわばる中、
ゴブリンスレイヤーがナイフを投擲。それはゴブリンの
喉に突き刺さり、動きが止まった一瞬をついて、
スレイヤーが突進。一気に剣でゴブリンを貫いた。
死体を引きづって戻ってくるゴブリンスレイヤー。
「ど、どうしてあなたの武器で倒さなかったの?」
「こいつは確かに遠距離を攻撃できるが、音がデカい。
隠密性は皆無だ」
と、武闘家とガンスリンガーでそんな話をしていると……。
「お前達2人はここで待機していてくれ」
「了解」
いつの間にか罠のロープを設置していたゴブリンスレイヤーが
そう言うと、神官を連れて奥へと行ってしまった。
M1887を構えたまま、入り口へと続く道・横穴・奥へと続く
道の3つ全てを警戒するガンスリンガー。そんな時。
「……あなたたちは、一体」
「……あの人はゴブリンスレイヤー。そう呼ばれる
銀等級の冒険者」
「ぎ、銀!?それって、この辺の最高ランク」
「そうだ。そして俺は、あの人の弟子だ。
人からは、ガンスリンガーと呼ばれている」
「ガン、スリンガー?」
そう彼女が聞いた時、横穴の中から光りが漏れてきた。
「っ!?これって!?」
「これは、奇跡の一つか?」
疑問符を浮かべながらも横穴に注意を向ける
ガンスリンガー。と、その時。
「……来たぞ」
その時、不意にガンスリンガーが呟いた。慌てて周囲を
見回す武闘家。その時、横穴の中からゴブリンスレイヤーが。
それに遅れて神官が走ってきた。
そして、ロープを飛び越えた神官の彼女がこけてしまう。が。
「もう一度だ!唱えろ!」
「いと慈悲深き地母神よ!闇に迷えるわたしどもに
聖なる光をお恵みください!」
奇跡の発動を促すゴブリンスレイヤー。
「ッ!ホブが来てる!」
そしてその間にもホブゴブリンが迫ってきてた為に
叫ぶ武闘家。だが……。
「≪聖光≫!!」
彼女の持つ奇跡が洞窟の中を明るく照らし、追ってきていた
ホブゴブリンはその光に視力を奪われ、ロープに
取られて倒れ込む。その先にはこけたままだった
神官がいたが……。
「くあぁぁぁぁぁっ!!」
寸での所で、武闘家の彼女が神官の服の襟を
掴んで後ろに引いた為、事なきを得た。
そして……。
「トドメッ……!」
『ドパッ!』
倒れたホブゴブリンのうなじに、ゼロ距離からM1887の
散弾を撃ち込み、首と胴体を切り離すガンスリンガー。
その間に、ゴブリンスレイヤーが何かの瓶を
取り出してそれをホブゴブリンに掛け、横穴の坂に
なっている奥へと蹴り落とした。
出てこようとしていたゴブリン達が、それに巻き込まれ、
奥へと落ちていく。
「おい」
「はい」
そう言って頷くと、ガンスリンガーはベルトからドラグーンを
取り出して一発、洞窟の奥に向かって放った。
直後、下の方で火の手が上がる。
「18。残り5」
「って、数数えてる場合じゃ!下には
さらわれた娘達が!」
「死体2つ3つでは大して燃え広がりは
しない。炎も直に弱まる」
「ま、またあそこに行くんですか?」
「いや、その必要は無い」
と言うと、彼は近くにあった石の斧を手に取る。
その時、奥から更に2体のゴブリンが現れるが、
1体目はロープで転び、2体目は斧で胴体を真っ二つに
された。
「………」
『ドパッ!』
倒れた方の個体に散弾をぶち込むガンスリンガー。
「連中、自分らが待ち伏せされている
など思いもよらんらしい」
「師匠。火が」
ガンスリンガーの言葉に、洞窟の奥へと目を向ける
ゴブリンスレイヤー。
「よし、降りるぞ」
落ちていた棍棒を拾い上げるゴブリンスレイヤーと、
ガンスリンガーはその言葉に無言で頷き、4人は下へと
降りていった。
そして……。
「ッ!大丈夫ですか!?」
降りていった先の洞窟に居た裸の女性達の元に
駆け寄る武闘家。ガンスリンガーもドラグーンを
ホルスターに戻し、M1887を背中に背負うと
残りの虜囚の女性の元へと歩み寄り、ランタンで
その体を照らした。
「こっちの二人は息をしている。そっちは
どうだ?」
「い、生きてるわ。何とか」
虜囚の4人が生きている事を確認する二人。
と、その時。
「……やはりな」
そう言って、最初の攻撃で倒れていたゴブリン・
シャーマンを前に呟くゴブリンスレイヤー。
『グワァッ!』
実は死んだふりをしていたシャーマンは
スレイヤーに飛びかかるが……。
『ゴッ!』
棍棒の一撃で今度こそ死んだ。
ガンスリンガーの彼は一瞬だけそちらに目を向けたが、
すぐに視線を戻して無言でポーチから布を
取り出し、彼女たちの体を包んでいた。
「これで、23」
そう言いながら、シャーマンの座っていた人骨の
椅子を蹴り壊すゴブリンスレイヤー。
そして彼と神官は、椅子の後ろに隠されていた小部屋を
見つける。一方で……。
「どうして、こんな。こんなひどい事に」
うつろな表情の村娘達を見ながら涙を流す武闘家。
その時。
「奴らにひどい、なんて言う感情は無い。
男は殺し、女は快感と子供を産むだけの
孕み袋。それがゴブリンどもの人間に
対する認識だ。それ以上でも、
以下でも無い」
そう言いながら、水を女性達に飲ませる
ガンスリンガー。
「これで分かっただろう。お前達が底辺だと
侮っていたこいつらも、時と場所、状況が
異なれば侮りがたい怪物になる。まして、
女はこれだ。……お前だって、この4人の
様になる所だったんだぞ?」
「ッ!」
再び、あの時の恐怖が頭の中を駆け巡る。
「……。この世の中はな、弱い人間が
生きて行ける程、優しくもきれいでも無い。
油断は死を招き、時に地獄をお前達に
見せる。だから、もし今後冒険者を
続ける気があるのなら、絶対に相手を
侮るな。……『想像力は武器だ。それが
無い奴から死ぬ』。俺の師匠、ゴブリン
スレイヤー、銀等級の言葉だ。忘れるな、
思考をやめた人間に待っているのは、
死だけだ」
そう呟くガンスリンガーと聞く武闘家の背後
では、子供ゴブリンをなぶり殺す棍棒の打撃音が
響いていたのだった。
そして、少女達は知ることになる。
この世界は残酷で、弱者が長く生きられるほど、
上手く出来ては居ない事を。
第1話 END
こんな感じの作品ですが、楽しんでいただければ幸いです。
感想や評価など、お待ちしています!