女の子しか出てきません。
次回もオリジナルの予定で、第4話で原作コミックス
第1回第3話をベースにした話になると思います。
ストーリーは主にガンスリンガーや武闘家を中心に
ゴブリンスレイヤー達に絡んでいく感じです。
~~前回までのあらすじ~~
冒険者になりたての女神官。彼女は3人の新米冒険者達と
パーティを組み、ゴブリン討伐に挑むが、全滅の憂き目に
あってしまう。しかし、寸での所でガンスリンガーという
名の冒険者によって、結果的に女神官と3人の内の一人、
女武闘家は助かるが、他の二人は死亡してしまう。
そんな中、ガンスリンガーが師匠と慕う高位の冒険者、
ゴブリンスレイヤーが合流し、4人はゴブリンの巣を
壊滅させる。しかし、そこで女神官と女武闘家は
世界の残酷さを突き付けられるのだった。
ゴブリンの巣の殲滅を終えた4人は、すぐさま街の
ギルドへと戻った。
ちなみに、途中で女武闘家が家としている安宿により、
既に彼女は予備の服に着替えていた。
「そうですか。生き残ったのは……」
今、ギルドに戻ったガンスリンガーが事の次第を
受付嬢の女性に説明していた。
「あの一党、男剣士と女魔法使いは死亡。これは二人の
遺体から回収した身分証のプレートです」
ガンスリンガーは、ポーチの中から二枚の白磁の
プレートを取り出してカウンターに置いた。一枚は
まだ綺麗だが、もう一枚はひどく血塗れで汚れていた。
「遺体は、女魔法使いは殆ど外傷が無かった為、
訳を説明して依頼の元である村で保管して
貰っています。剣士の方は、損傷がひどかった
ので、現地に簡易的な墓を建てました」
と、ガンスリンガーは淡々と『報告』を続ける。
「わかりました。本日か明日には魔法使いさんの遺体は
ギルド側で回収します」
「助かります」
と、呟くガンスリンガー。
そして……。
「それで、こちらが報酬なのですが……」
そう言ってカウンターの上に報酬の入った袋を
取り出す受付嬢。しかし……。
「師匠、どうしますか?」
ガンスリンガーは隣にいたゴブリンスレイヤーに
問いかけた。
そして彼は、無言で神官達の方を見る。
「……この報酬のはあいつらのだ。
あの二人にやってくれ。……お前はどうする?」
「俺も金には困っていませんし、問題ありません」
「そうか」
と、頷くと、ゴブリンスレイヤーは受け取った
報酬袋を後ろの二人に差し出した。
「受け取れ、お前達の物だ」
「え?は、はい」
呆気に取られながらも袋を受け取る神官。
「あ、あの。良いんですか?その、殆ど仕事は……」
「この仕事を受けたのはお前達だ」
何かを言おうとする武闘家を遮るガンスリンガー。
「俺や師匠は途中から参加したに過ぎない。
良いから受け取っておけ」
「あ、ありがとうございます」
そう言って、二人は報酬袋に入っていた硬貨を均等に
分けたが、だからといって喜びなど沸いては
来なかった。
その後、4人は別れた。ゴブリンスレイヤーと
ガンスリンガーはギルドを出て行き、神官と武闘家の
二人はとにかく何か食べようとギルドに併設されている
食堂に行った。
しかし、二人には食欲など無かった。
向かい合ったまま座る二人。
「……」
「……」
しかし、二人とも何も話さなかった。
いや、話す気力さえ無かったと言うべきか。
やがて……。
「ねぇ、あなたは、どうするの?」
女武闘家が静かに問いかける。
「正直、迷ってます。……私、あの受付嬢さんに
聞いたんです。こんなことが、起こるのか?って。
そしたら、言われたんです。辛そうに、
よくある事だ、って」
「そ、そんな……!?」
その話を聞いて、表情を青くする武闘家。
「ゴブリンを倒そうとした新米のパーティが、
全滅してしまう事も。それでも生き残った
冒険者の方が、仲間を失った事から故郷に引きこもって
しまう事も。全て、ゴブリンの事になると、よくあるそうです」
「よくある事って、あ、あれが……!?」
両手で頭を抑え、震える武闘家。
やがて、震える彼女を見てしばらく口を紡ぐ神官。
しばらくして、武闘家の震えがやっと収まった。
「そ、それで。あなたはどうするの?
冒険者、続けるの?」
「……私は、正直に言えばよくわかりません。
あんな事が各地で頻発しているなんて……。
そして、そんな事に直面して尚、地母神を
信じられるのか。……分からない事だらけです。
……でも、だからこそもう少しだけ冒険を続けて
見ようと思います」
その答えに、武闘家の彼女は……。
「そっか。あなたって、思いのほか強いんだね。
私は、今も頭の中グチャグチャで、これから
どうして良いかなんて、全然わかんないよ……!」
彼女は机に突っ伏し、静かに涙を流す。
そして、それを前に神官の彼女だが、今の彼女は
武闘家になんと声を掛けて良いのか分からずに、
結局軽い夕食を取って、二人は別れたのだった。
そして、翌日。
「……」
武闘家の彼女は唯フラフラと街をうろついていた。
今の彼女には、ギルドにまで足を運ぶ勇気が無かったのだ。
パーティは全滅し、生き残ったのは自分と、殆ど初対面
だった神官の彼女だけ。
そして何より……。
『ザワッ!』
「ッ!!!ハァ、ハァ!」
時折彼女の脳裏によぎるゴブリンのイメージと、
洞窟で見た女性達の末路が、恐怖となって彼女の心を
蝕んでいく。
建物の間の隙間の小道に入り、壁に背中を預けて荒い呼吸を
落ち着かせようと深呼吸する彼女。
しかし、押さえ込もうとすればするほど、彼女の脳裏に
昨日の事が思い起こされてしまうと言う悪循環に
なっていた。
だが、それ故に……。
『忘れるな、思考をやめた人間に待っているのは、
死だけだ』
不意に、ガンスリンガーの言葉を思い出す武闘家。
そして……。
「そう言えば、お礼の一つも、言えてなかったなぁ」
自らの意識を逸らす意味もあってか、ゴブリンでは無く
彼の事を考える武闘家。
「お礼、言った方が良いよね」
そして彼女は半ば言い聞かせるようにそう呟くと、
静かに歩き出した。
まるで、恐怖から逃げ出すかのように……。
その後、ギルドにやってきた武闘家は……。
「え?ガンスリンガーさんがどこに居るか、ですか?」
あの受付嬢の女性のところへ来ていた。
「はい。昨日は頭の中グチャグチャで、お礼の一つも
言えてなかったので。……あの人がどこに居るか
知りませんか?後は、家の場所とか」
「流石にこちらでも冒険者さんのご自宅までは……。
あ、でも今日は朝から見ていませんし、依頼を受けた
様子は無いので、街に居るのでは無いでしょうか?」
「そうですか」
と、居場所までは分からなかったが、街には居るかも
との情報を得た彼女は、ギルドを出てまたフラフラと
町中を歩き始めた。
しかし、辺境とはいえ街は街。人一人を探すなど簡単な
事では無かった。
街のあちこちを巡る彼女だったが、やはりガンスリンガーを
見つけられはしなかった。
ただ当てもなく街中を歩き続ける。
やがて、彼女はまだ来た事も無い、少し薄汚い路地裏を
歩いていた。
『そう言えば、この街で知らない場所、まだまだ合った
んだな~』
そう考えながら、歩いていた時。
『ギィッ』
丁度彼女の先にある店の扉が開いて、長い筒のような物を
袋で覆った人影が出てきたのだが……。
「あ!」
「ん?」
その人物を見るなり、声を上げる武闘家と、それに気づいて
視線を彼女に向けながら疑問符を漏らす男。ガンスリンガー。
しばらく互いの事を見る二人。やがて……。
「……何か用か?」
先に声を掛けるガンスリンガー。
「あ、えっと、その……。昨日は、ありがとう、ございました。
助けていただいて。その、お礼がしたくて、探してたんです」
「そうか。……じゃあな」
そう言うと、素っ気ない態度と共に歩き出そうとする
ガンスリンガー。
「え、あ!えっと!ま、待って!」
しかし、あまりにも素っ気なかった故、驚いた武闘家だが
すぐに駆け出して彼の腕を掴んで止めた。
「何だ?」
「あ、えと、その……。お話、聞きたいんです」
「話?どんな?」
「えっと、あの人のこととか、その、色々。
ぼ、冒険者の、先輩に!」
そう言う彼女のガンスリンガーを掴んだ腕は、僅かに
震えていた。
それを見たガンスリンガーは……。
「良いだろう」
「え?」
「何か聞きたい事があるのだろう?
……家がここから近い。来るか?
茶の一杯くらいなら出せるが……」
「え、あ、あの。は、はい。お願いします」
そう言って、ガンスリンガーの後に付いていく
武闘家の彼女。
人は、こんな何気ない出会いを運命と言うの
かもしれない。
なぜなら、それが彼女の今後に大きく左右するの
だから。
裏路地を歩く事数分。
細い道を抜けた先に倉庫のようなものが併設された
ボロい一軒家があった。
「え?ここ、が?」
内心、彼女はガンスリンガーがもっとすごい家に
住んでいると思っていたのだ。
「何だ?意外か?」
「あ、いえ!えっと……。昨日、あんなにすごい
魔法の武器を使ってたから、てっきり……」
「そうか。……生憎、俺はそっちには殆ど
気を遣わない」
そう言いながら、3重に施された扉の鍵を、一個一個
別の鍵を使って開けるガンスリンガー。
「厳重、なんですね」
「用心に超した事はない。師匠からの教えだ。
常に最悪の自体を想定するのは、冒険者として
必要な事だ、とな。上がれ」
「お、お邪魔します」
開いた扉から中に入る彼女。そして、彼女は静かに
中を見回したが、内心ギャップを感じていた。
部屋の中に置かれた調度品は、豪勢と言う言葉とは
正反対で、最低限と呼べるものだった。
テーブルも椅子も、家具もその他の品々も。
人が一人、最低限暮らしているだけのものしか
そこには無かった。
やがて、奥から小さな木の椅子を引っ張ってくる
ガンスリンガー。
「悪いがこれで我慢してくれ。来客など、
お前が初めてなのでな」
「あ、いえ。お構いなく」
と、言った時。彼女は彼がずっと持っていた布に
包まれたそれが気になった。
「あ、あの。さっきから抱えているそれって……」
「あぁ。これか。これはあそこの大工に修理を
依頼していた物だ」
「修理?」
と、彼女が疑問符を浮かべると……。
「以前の戦いで後部の木製ストックに罅が入ったのを
新しい物に作り替えて貰ったんだ」
『ファサッ』
『ゴトッ』
そう言って布を取り払い、その下から現れた物をテーブルの
上に置くガンスリンガー。
「ッ!?これって……」
それを目にして驚く武闘家。まぁ無理も無い。
置かれたそれは、昨日自分たちを助けた時に
彼が装備していた武器なのだから。
「これってあの魔法の武器ですよね?」
「いや、違う。形や機構は似ているが、同じ物
では無い。加えて、何を勘違いしているか知らないが、
これは魔法の武器などでは無い」
「え?!で、でもこれって、どう見ても弓とかじゃ!?
遠距離を攻撃する武器だって」
「確かにそうだが……。俺はお前達を助けた時に使った
二つや、これ。更に俺が倉庫兼実験室の方に保管して
ある物を総称して、『銃』。あるいは『GUN(ガン)』と
呼んでいる」
「銃?」
「そうだ。……俺が師匠に弟子入りしてから4年。
俺が持ち得る時間の全てをつぎ込んで開発した、
全く新しい武器だ」
「ぶ、武器?これ、が?」
「そうだ」
と、ガンスリンガーは頷くともう一度武闘家に見せた
それを、『M1866レバーアクションライフル』を布に
包み直した。
「少し待っていろ。これを置いてくる」
と言って脇にM1866を抱え、隣の倉庫へと続く扉の方に
歩み寄るガンスリンガー。
そして、それを見ていた彼女が……。
「あ、あの!」
「何だ?」
「わ、私に、その銃という物。見せて貰っても
良いですか!?」
その時彼女を動かしていたのは、ゴブリンやあの娘達の
末路の事を考えたくないと言う意識が五割。
残り半分は単純に銃に興味が沸いたと言う理由だった。
その言葉にしばし悩むガンスリンガーだったが。
「まぁ良いだろう。来い」
そう言って顎でしゃくって倉庫の方を指し示した
ガンスリンガー。
「あ、ありがとうございます!」
そして彼女はお礼を言いながら彼に続いて倉庫の
方へと向かう。
一枚のドアをくぐった先、短い廊下を歩いた先に
もう一枚ドアがあり、それに掛けた錠前を鍵で
解除し中に入ると、置いてあったランタンのいくつかに
火打ち石で火を付けるガンスリンガー。
今は窓もカーテンで覆われているため、倉庫の中を
照らすのは5個ほどのランタンだけだった。
しかし、武闘家の彼女にはそんな事どうでも
よかった。なぜなら……。
「な、何。これ」
部屋のあちこちに長短様々な銃が置かれていたからだ。
壁に掛けられた短銃、ピストルと。
床に置かれたラックに立てかけられている小銃、ライフル。
部屋のあちこちに置かれたそれを前にして唯々、
驚く彼女。
「す、すごい。これ全部、銃なんですか?」
「あぁ。……俺が作り出した試作品だ。
最も、大半は実戦で役に立たない物だがな」
「え?」
「そこいらに置いてある銃は、大抵単発。しかも
一回撃つと次の弾を装填するのに、一分近くは
かかる。多数を近距離で相手にする状況では、
何の役にも立たん」
そう言いながら、M1866を布から取り出して、
レバーアクションを操作しながら具合を確かめる
ガンスリンガー。
「ひょっとして、ガンスリンガーさんが一人で
これを全部作ったんですか?」
「あぁ」
と、頷くガンスリンガー。しかし、彼女には
疑問があった。
「ど、どうして、こんな物を?銃って一体何なんですか?
それに、どうして冒険者をしているんですか?」
「……。聞きたいのか?長いぞ?胸糞も悪い」
「お、お願いします」
「そうか」
と、彼は頷くとどこからか椅子を二つ引っ張り出してきて、
彼女の前に置き、自分はもう一つに腰を下ろした。
同じように椅子に腰を下ろす武闘家。
「今から4年ほど前の事だ。俺の住んでいた村が、
ゴブリンの群れに襲撃された」
「ッ!?」
早速の展開と、ゴブリンという単語に息をのむ彼女。
「大の大人達が応戦する中、子供達は逃げろと言われ、
俺は逃げ出した。だが、俺たちの逃げた先にも
ゴブリンが居て、護衛の為に同行していた
老人やおばさん達が殺される中、俺は恐怖から
その場を逃げた。
家族も、友人も、親しい人も皆見捨てて……。
俺は逃げた」
「……」
唯、黙ったまま彼の話を聞いている彼女。
「そして、逃げた先で、俺はあの人に。ゴブリン
スレイヤーさん。まだ銀等級になる前のあの人に
助けられ、冒険者の人が一緒なら。そう思い
村へと彼を案内した。……家族が、まだ生きていると、
何の根拠も無い理想を胸に抱きながら、な」
「そ、それで。どう、だったんですか?」
「……。村では、生き残りなんて、居なかった」
「ッ!?」
「男達は刺され、切断され、潰され。女達は
犯された上で、殺され。老人達も子供達も皆関係無く、
殺されていた。ある者は首を落とされ。
ある者は腹を裂かれ。ある者は四肢を捥がれ。
そうやって、皆、死んでいた。奴らが作ったのか
知らないが、ゴミ捨ての為にあった穴は人間の血に
溢れかえり、その中を『人だった物』がぷかぷかと
浮いていたよ」
「……そ、そんな事が、あるん、ですか?」
恐る恐る、と言った感じで聞き返す武闘家。
帰ってきた言葉は……。
「あぁ。俺がこの目で見てきた、現実だ」
肯定の言葉だった。
「その後、ゴブリンどもはゴブリンスレイヤーさん
によって始末された。仇はあの人が取ってくれたが、
そんな事で俺の中に芽生えた憎悪は、消えはしなかった。
『奴らをぶっ殺したい』」
そう言って、彼は右手を握りしめる。
「俺に残ったのは、そう思う感情だけだった。
奴らを殺す事を生きる目的にした俺は、考えた。
どうすれば強くなれる?どうすれば奴らを
殺せる?どうすれば奴らに勝てる?とな。
答えはすぐに出た。ゴブリンスレイヤーさんだ。
あの人は俺の村の近くにあった川の水を利用する
事で、奴らの巣穴を水没させ全滅に追い込んだ」
「そ、そんな事まで出来るんですね。あの人……」
「あぁ。そして、そんなあの人に弟子入りすれば、俺は
きっとゴブリンどもを倒すための力を付けられる。
そう思ったから。あの人の前で地面に頭を擦りつけて、
頼み込んだ。それが幸いしてか、少しだけならと
色々稽古を付けて貰った。……最も、すぐに
挫折を味わう羽目になったがな」
「え?」
「俺には、武具を扱う才能が無かったんだ。
剣を振れば時折剣がすっぽ抜け。槍を使えば
自分の方が槍に振り回される。弓を使えば、
百発一中程度の精度の低さ。……師匠は
自分の戦闘能力を低いと言っているが、そんな
あの人の目から見ても、『才能が無い』そうだ」
「そ、そうだったんですか。……で、でも。
それで諦めた訳じゃないんですよね?」
「当たり前だ。と言いたいが一度は諦めそうに
なった。しかし、奴らに対する憎悪が俺を押しとどめた。
そして、考えた。……お前にもあの洞窟で言ったが、
想像力は武器だ、と言うあの言葉を、俺は別の方向で
解釈した」
「と、言うと?」
「少なくとも俺には力は無い。だが頭は動く。
だから考えた。自分の力不足を思考、知恵で
補おう。そう思った。……そして、俺は銃の
開発に取りかかった」
そう言うと、ガンスリンガーは腿のホルスターから
ドラグーンを取り出し、それを分解しながら彼女に
背を向けつつ、整備を始めた。
そんな状態のままでも、静かに再び語り出す
ガンスリンガー。
「まず最初に、俺は自分に合う武器が無いのなら、
作れば良いと考えた。そして更に考えた。
新しい武器を作るのなら、どんな武器が良いかをな。
俺には剣や槍を扱いきる胆力が無い。つまり接近戦は
向かない。じゃあ遠距離からの攻撃だ。しかし弓も
また、威力や飛距離には個人、つまり使用する
人間のスキルが求められる。……そこで俺は、
使用者の力に依存しない弓を開発しようとした」
「そ、そんな物を作ったんですか?」
と、問いかける彼女。するとガンスリンガーは壁の
一角を指さした。そちらに視線を向ける武闘家。
「そこに変な形の弓があるだろう?」
「これ、ですか?」
彼の指さしたそれに近づく彼女。
「そうだ。弓において何よりも必要なのは弦を
引く筋力。そして狙いを付ける目の力。しかし
俺には筋力が無かった。そこで考えた。
だったら別の何かで人の力の代わりを
出来ないか、とな。そこで作り出したのが、
その変わった弓、『クロスボウ』だ」
「クロスボウ」
彼の単語を繰り返しながらクロスボウを見つめる
彼女。
「予め弦を引いて後部のパーツにセットし、その上に
弓をセット。そして、持ち手の木の部分の下にある
パーツ、トリガーを引くと弦をセットしていたパーツが
動き、弦を解放。弓が発射される。と言う仕組みだ。
……もっとも、それも一度矢を撃つと再装填に
時間がかかると言う欠点があってな。狩猟や
なんやらには役に立つが、ゴブリン相手では
どうにもならん」
「そう、何ですか」
『……これ、結構凄そうなのになぁ』
と、そんな事を考える彼女だった。
「クロスボウがダメと分かった俺は、次を
考え始め、ある物を偶然見つけた。それは
火薬というものだった」
「火薬?」
「あぁ。特殊な粉末で、火を付けると盛大な
音や光と共に爆発する粉だ。動物や人間の
生み出す糞尿から生まれる硝石。
燃えたぎる山(火山)から取れる硫黄。炭を合わせる
事で火薬は作られるそうだ」
「ふ、糞尿って……」
そう言って、顔をしかめる武闘家。
「確かに気持ちのいい話ではないが、力をつけるために
四の五の言っていられるほど、世の中は甘くはない。
俺の場合は、人を使ってそれを集め、対価として
金を渡しては素材を集め、ここで火薬の調合を
行っている」
「じゃあ、その火薬を使って武器を作ろうと
思ったんですか?」
「あぁ。幸いクロスボウのおかげで狩りなどは
出来たからな。銃の試作開発中にも冒険者として
ギルドに登録し、狩りで獲物を仕留めたり
比較的安全な依頼をこなしながら金を稼ぎ、
それ以外の時間を研究に使った」
「あの、銃を作るのにどれくらいの時間が
かかったんですか?」
「……クロスボウを完成させた時点で村を
出てから約半年は経過していた。そこから
火薬にたどり着くのに1ヶ月。更に銃の
設計、開発には今の今までで3年と5ヶ月は
掛かっているな」
「そ、そんなに、ですか?その間、ずっと?」
「あぁ」
3年以上もの間、開発に没頭していた事に驚く
武闘家と肯定する彼。
そして彼は頷くと近くのラックに立てかけてあった
M1887に目を向けた。
「このM1887と先ほど修理から持ってきたM1866。
この二つはつい3ヶ月ほど前に完成し運用を
開始したばかりだ」
そう言いながら、布でパーツを吹き上げ、
ドラグーンをくみ上げるガンスリンガー。
「このボロい家だって、買ったのは二つの完成時期と
そう変わらん。ボロいが倉庫付き。物を大量に
保管できて、ある程度生活出来れば問題無いから。
と言う事でやっとの事この家を買った」
「そう、何ですか。あの、失礼ですけど
ガンスリンガーさん等級って……」
「俺は翠玉。位で言えば、第6位。中堅、中の中と
言った所だ。俺はまだ冒険者になって3年と
経ってはいない」
『翠玉。でも、2年以上戦い続けて、しかも自分で
武器を作るなんて。はっきり言って、すごいと思うし、
逆に異常だとも思っちゃう』
と、そんなことを考える武闘家。
「さて、俺の身の上話とこれについての話は
終わったが……。お前は今後どうする
つもりだ?」
「え?」
「今後冒険者を続けるのか、という意味だ」
「……」
そう聞かれ、無言になった彼女の脳裏に、昨日の惨劇の
イメージが浮かび上がる。
カタカタと体を震わせる彼女。
しかし、それを前にしてもガンスリンガーは何も
いわない。
「私は、正直。怖いです。神官の子はまだ冒険者をするって
言ってましたけど、私は……」
「そうか」
しかし彼はただ頷くだけだ。
その態度に彼女は……。
「冷たいんですね?案外」
「……お前は俺に何を求める?慰めか?優しい言葉か?
だったら神官の彼女の所か、ほかの冒険者を
当たってくれ」
「それは、そうですけど……。せめてもうちょっと
冒険者を続けてみたらどうだ~とか、いろいろと」
「恐怖に震えているやつが何を言う」
「ッ」
彼女の言葉を遮るガンスリンガー。そして彼女は
その言葉に息をのんだ。
「お前はなぜ俺の所に来た?なぜ俺の話を聞きたがる?
そして……。お前はゴブリンという単語が出るたびに
何度かビクついたり息をのんでいた。
……恐怖を覚えたんだよ。お前は。ゴブリンに。
この世界に」
「きょ、恐怖?」
「お前が恐れているのは、死とゴブリンだ。
冒険者と言う仕事は死を伴う。それは相手が
ゴブリンだろうが何だろうが同じことだ。
死神の鎌は、時に一瞬で人の命を奪う。
そして、ゴブリンに捕まったが最後。お前は
自分がどうなっているか分かっているはずだ」
「ッ!!!」
『ゾクッ!』
『ギュッ!』
彼の言葉に、悪寒を感じて震える体を自分で抱き締める。
そして、それを見たガンスリンガーはまた作業に戻り、
どこからから小箱を持ってきて銃に装填する弾丸の
製作を始めた。
その時。
「じ、じゃああなたは怖くないんですか!?
ゴブリンとか、死ぬ事とか!?どうすれば
怖くなくなるんですか!?」
彼の背中に向かって叫ぶ武闘家。
それを聞いたガンスリンガーは、静かに作業していた
手を止めた。
「いや。俺にだって恐怖心はある。……恐怖心とは、
生物なら誰しもが持つ感情だ。そしてそれは時に
人間の持つ、第六感として作用する。恐怖を持たない
人間とは、つまり蛮勇だ。恐怖を忘れ、相手との
力量差も推し量れない奴は長生きしない。
……それに、師匠が言っていた。常の最悪を
考え、それに備えろ、と。これはつまり、
常に自分の死を思い描け、と言う事。
……恐怖しないと思うか?常に自分の死を
思い描く奴が」
「じゃあ、じゃあ、どうしてあなたは戦えるん
ですか?」
「……恐怖を忘れるのではない。恐怖を押さえ付けるの
でも無い。恐怖を乗りこなし、向き合うのだ」
「恐怖と、向き合う?」
彼女がそう言うと、ガンスリンガーが立ち上がって彼女
の方を向いた。
「そうだ。恐怖を知り、それを理解し、その上で
戦う。……要は、全てに恐怖していたとしても、
戦えればそれで良い。俺の場合なら、奴らに
向けて銃を撃てれば、それで良い。
恐怖を乗りこなした上で戦えれば、それで良い。
……俺の経験から言える事は、それだけだ」
「恐怖を、乗りこなす」
それの言葉を繰り返しながら、彼女は考えた。
『どうすれば、恐怖を乗りこなせるの?
どうすれば、私はまた戦えるようになるの?
私は、どうすれば良いの?』
うつむき、ギュッと拳を握りしめながら考える。
『私が恐れているのは、ゴ、ゴブリン。
だったら、それと向き合うって事?
でも、私一人じゃ……』
と思っていた時、彼女はハッとなって目の前の
ガンスリンガーへと顔を上げた。
『そ、そうだ。この人が、一緒なら……』
「あ、あの……」
そう思った彼女は、震える唇を開き必死に言葉を紡ぐ。
「何だ?」
「お願いが、あります。明日、私と一緒に、
ゴブリン退治に行って下さい!それで、協力
して欲しいんです!私が、恐怖を乗りこなすために!」
そう言って彼女は頭を下げた。
内心、断られるかもと思っていたが……。
「……良いだろう」
「え?!」
まさかの言葉に顔を上げる武闘家。
「元はと言えば俺も師匠に育てられ翠玉になった身。
それに俺もゴブリンどもを皆殺しに出来る。
後進の育成と俺の目的が果たせるのであれば、
断る理由は無い。……良いだろう」
「良いん、ですか?」
「あぁ。……明日の朝、ギルドで落ち合う。
構わないか?」
「は、はい!」
こうして、彼女は自らの恐怖を乗りこなすための
戦いに挑む事にした。
そして翌日。
「すまない。この依頼を受けたいんですが」
「はい。って、あら?」
朝、ギルドに顔を出したガンスリンガーの依頼を
受けるいつもの受付嬢さん。しかし彼女は彼の後ろに
武闘家の彼女がいる事に内心驚いていた。
「珍しいですね。普段はソロかゴブリンスレイヤーさん
と一緒なのに」
「後進の育成も兼ねて、です」
「そうですか。依頼は……。南西部の農村。
被害は、農作物のみ」
と、依頼の事を読み上げる彼女。
「こちらでよろしいですか?」
「はい」
受付嬢の問いに頷くガンスリンガー。
「わかりました。それでは、行ってらっしゃい」
「了解」
「行ってきます!」
簡潔に頷くガンスリンガーと、元気よく声を上げる
武闘家。
そして、二人は街を出る。
「行くぞ。ゴブリン狩りだ」
「はいっ!」
そう言いながら先頭を歩き出すガンスリンガーと
後に続く武闘家。
二人の目的は唯一つ。ゴブリンを殺す事。
第2話 END
今回は、生き残った武闘家の子に焦点を当ててみました。
まだ冒険者を続けると言う神官の子と対照的に、
仲間を失った事や現実を突き付けられた恐怖から
悩んだ、と言う感じです。
感想や評価、お待ちしています!