ゴブリンスレイヤー~ガンスリンガー~   作:ユウキ003

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今回はオーガ戦のお話です。所々、オリジナルに
なっています。


第6話 潜入、接敵

~~前回までのあらすじ~~

ガンスリンガーは、令嬢騎士たちの協力で

銃を販売する事を決め、彼女たちと販売に

向けた話し合いを行った。

その後、ギルドに向かったガンスリンガーと

武闘家は途中でゴブリンスレイヤーと神官の

二人に合流。4人でギルドに向かうと、そこには

エルフ、ドワーフ、リザードマンの銀等級

冒険者がゴブリンスレイヤーを尋ねてやって

来ていた。そして、3人からの依頼はエルフの

村の近くで活動が活発化しているゴブリンの

駆除。ゴブリンスレイヤー、ガンスリンガー、

武闘家、神官の4人はこの依頼を受ける事を

決め、総勢7人で彼、彼女たちは街を出る

のだった。

 

 

その道中・夜。

7人はとある場所でキャンプをしていた。

そんな傍らでは……。

「ガンスリンガーさん、今日はそれ持ってきた

 んですね」

と言って、それ、クロスボウを指さす武闘家。

今、ガンスリンガーは持ってきていたクロスボウ、

SAA、更にもう一つのリボルバーのメンテを

していた。

クロスボウは背中に。矢筒も背面の腰元に。

右腿にSAAのホルスターを。更に左足の

付け根の少し上に、逆手ホルスターを装備し

そこにもう一丁のリボルバーを入れていた。

「あぁ。場所は遺跡で大多数を相手にする以上、

 銃声でゴブリン共をたたき起こすような

 自体は避けたい。クロスボウなら連射が

 出来ない分静かだからな。M1866が無いから

単位時間当たりの火力は低下するが、

前衛となる師匠達が居るのならSAAで

何とかなるだろう。……近接戦用に、もう一つ

予備も持ってきてるからな」

そう言って、ガンスリンガーはSAAとは

異なるリボルバーに目を向けた。

そこへ……。

「相変わらず、良く分かんないわね~それ」

更に弓手が近づいてきて彼の手元をのぞき込む。

「ホントにこんなのが武器なの?そっちの

 ヘンテコ弓ならまだ分かるけど」

「疑うのも分かる。だが、俺はこれを使って

 これまで生き残ってきた」

疑問符を浮かべる彼女に答えるガンスリンガー。

「あっそ。まぁ良いわ。……所で、あんた達って

 どうして冒険者になろうと思った訳?」

「そりゃあ、世界中の旨いもん喰うために

 決まっとろうが。耳長はどうだ?」

「私は外の世界に憧れてって所ね」

「こりゃあ旨い!何じゃいなこの肉は!」

「って聞きなさいよ!」

そんな道士と弓手のやりとりを見て苦笑する

武闘家と神官。

「沼地に住まう獣の肉だ。如何かな?」

「あ。ありがとうございます。頂きます」

そう言って、武闘家は差し出された串を

取り、刺さっていた肉を頬張る。

「お、美味しい……!」

「うむ、ピリリと辛い風味がこりゃまたたまらんわい!」

「こちらには無い香辛料を使っておる故、

 珍しかろう」

驚きながらも食が進む二人と説明をする僧侶。

「野菜しか食えん兎もどきにゃこの旨さは

 分からんだろう」

と、道士の言葉にムッとする弓手。

 

そこへ。

「あの、良かったらどうぞ。乾燥豆のスープです」

「あ。じゃあ私も。春巻き、と言って小麦粉で

 作った粉が原料の皮に炒めた野菜を巻いて

 揚げた物です。多分エルフの方でも行けると

 思いますよ」

豆のスープを差し出す神官と、予め作って持ってきていた

物を火に当てて温めた春巻きを葉っぱの皿にのせて

差し出す武闘家。

「ありがとう。頂くわ」

 

そう言って、彼女はスープを飲み、春巻きをかじる。

「ん~。優しい味。こっちの巻物みたいな物も

 美味しいわ。ありがとう」

と言いつつ、彼女は隣を見るとガンスリンガーが

何かをポリポリと食べていた。

「あんたは何食べてるの?」

「ん?これは胡瓜の酢漬け(ピクルス)だ。食べるか?」

「えぇ、頂くわ」

と言うと、彼から一切れピクルスを貰い食べる。

「ん~。酸っぱいけどさっぱりしてて美味しいわ~」

と、そんな風にゴブリンについて話をしたり、

食事をしながら夜はふけっていく。

 

翌日、夕方。

7人は例の遺跡が見える草原に潜んでいた。

そして、彼らが見つめる先、遺跡に入り口には

武装したゴブリンの見張りが2匹。更にオオカミが

1匹、待ち構えていた。

そして、単眼鏡でそれを観察するガンスリンガー。

「軽装の見張り2。武装、槍。狼1。

 どうしますか?」

「やるなら私が仕掛けるわ」

「そうか。……出来るだけ隠密に行きたい。

 外すなよ」

「あら?私を誰だと思ってるのかしら?

 任せなさい」

ゴブリンスレイヤーの言葉に、自信ありげに

笑みを浮かべる弓手。しかし次の瞬間には、

彼女も表情を引き締め、弓の狙いを定める。

 

そして……。

   『ビシュッ!』

矢が発射されたが……。

「おいおいどこに撃っとんじゃ。

 明らかに右に逸れておるぞ」

確かに矢は右に逸れていた。だが……。

 

   『クンッ』

不意に、矢がまるで何者かに操られているかの

ように左へと曲がり、ゴブリンの体をまとめて

貫通した。

訳が分からず絶命するゴブリンを見て、狼も

飛び起き叫ぼうとするが、その時彼女の

第二射が狼の頭部を射貫く。

 

「すごいです!」

「あんな技、私も見たこと無いです!

 どうやったらあんな風に出来るんですか?」

興奮気味に問う神官と武闘家。

「ふふん♪十分に熟達した技術は魔法と

 見分けが付かない物よ♪」

「術師のワシに言うかねそれ……」

 

と、話をしていたのだが……。

   『ザクザクッ』

ナイフを取り出したゴブリンスレイヤーが

ゴブリンの体を引き裂き、布に血を染み

込ませる。

「ちょっ!?あんた何やって!」

「奴らは臭いに敏感だ。特に女子供、

 エルフの臭いには」

と、そこまで言うと弓手は彼が何を

しようとしているのか理解した。

してしまった。

 

「嘘でしょちょっと!?嫌よ!

 誰かこいつを止めてよ!!」

と、そう言って同じ女である神官と

武闘家に声を掛けるが……。

「慣れますよ?」

半ば死んだ目で神官が……。

「大丈夫。大丈夫」

同じく色を失った目で武闘家が

狂ったように大丈夫と連呼していた。

 

二人とも、彼らを尊敬はしていたが、ここ

ばっかりは結構なトラウマになっていたの

だった。

そして、今正にその被害者が増えた。

 

その後、遺跡の中を探索する7人。

 

遺跡の中には壁画などもあった。

「拙僧が思うに、これは神殿だろうか?」

「そうみたいですけど、一体何時の頃の

 物なんでしょう」

蜥蜴僧侶が疑問符を浮かべ、武闘家も壁画を

見ながら首をかしげる。

「おそらく、神代の頃の物だと思います。

 当時はこの辺りで大きな戦争があったと

 聞いたことがあります」

「当時、人の手によって作られた物か。

 それが今や小鬼共の巣とは。

 残酷な物だ」

神官の彼女が説明し、僧侶の彼が呟く。

 

「残酷と言えば……」

と、道士が視線を向けた先では……。

「うぇぇ……。臭い~。気持ち悪いよ~」

今にも泣き出しそうな(と言うか少し泣いている)

弓手の姿が。

これには流石の彼も口をつぐむ。

やがて……。

「戻ったら覚えておきなさいよ!」

「覚えておこう……」

半ば、怒りを滲ませながらの彼女の言葉に

頷くゴブリンスレイヤー。

 

そして、彼らは遺跡の中を進んでいく。

やがて7人はT字路の分かれ道にたどり着いたが……。

「待って」

そう言って先頭を歩きながら罠を警戒していた弓手が

つぶやき、伏せるようにして床に目をこらす。

「鳴子か?」

「えぇ。真新しいから気づけたけど……。

 気をつけて」

「……やはり妙だな」

「えぇ。これほどの物、通常種のゴブリンに

 は用意出来るはずがありません。

 しかし、トーテムの類いはここに来る

 まで確認出来ていません」

呟くゴブリンスレイヤーにガンスリンガーが

同意する。

「トーテム?どういうこと?」

「トーテムはゴブリンのスペルキャスター、

 ゴブリンシャーマンが居る証みたいな物です」

首をかしげる弓手に、武闘家が説明する。

「それってつまり居ないって事でしょ?

 なら楽で良いじゃない」

「いえ。お二人の口ぶりから察するに、

 居ないと言う事の方が問題なのでは?」

「はい。ホブの頭ではこんな罠を仕掛けられない。

 こんな芸当が出来るのはシャーマンか、

 ロードくらいの物」

「成程。して、小鬼殺し殿とその弟子たる

 翠玉殿は以前にも大規模な巣を潰したと

 伺ったが、その時はどのように?」

「いぶり出して個別に潰す。火を掛ける。

 川の水を流し込む。俺はこんな所だ」

「俺の方は師匠と比べても小さい巣ばかり

 です。洞窟で戦い、奴らを外におびき出して

 は銃で射殺し、奴らが全滅するまでそれを

 繰り返す。それだけです」

「…………」

と、説明する二人だが、弓手の彼女は呆れたような

表情を浮かべていた。

 

「で、結局どっちに進むの?右?それとも左?」

しびれを切らした弓手の言葉に、道士は徐に床の

様子を見ている。そして……。

「奴らの寝ぐらは左側じゃな」

「なぜそう思うんですか?」

道士の言葉に首をかしげる武闘家。

「床の減り具合だの。奴らは左からきて入り口か右の

 方に向かっとる」

「……との事ですが、師匠。もしかして右は……」

「あぁ。『あれ』の可能性が高い。行くぞ」

そう言って右側へと歩き出すゴブリンスレイヤー

とそれに続くガンスリンガー。

「あ!ちょっと何処行くの!ねぐらはこっちでしょ!?」

「分かっている。だが、急がないと手遅れになる」

「?」

反対側に歩き出した二人を見て、弓手の彼女はそう言うが、

手遅れ、と言う単語に疑問符を浮かべながら二人に続く

神官や武闘家達。

 

やがて一つの扉の前に立つ7人。しかし奥からは

異様な悪臭が立ちこめており、ゴブリンスレイヤー

とガンスリンガー以外は皆、顔をしかめている。

そして……。

『こ、この臭い』

『まさかっ!!』

二人と行動を共にしている神官と武闘家には

ある予想が付いていた。

 

「鼻で呼吸をしろ。すぐに慣れる」

   『バンッ』

そう言って扉を蹴り開けるゴブリンスレイヤー。

彼の横を通って部屋に入ったガンスリンガーが

すぐさまクロスボウを構え、周囲を警戒する。

そして……。

「ッ!……師匠、やはりです」

何かに気づいた彼が呟く。

「居たか」

「やはりって、何なのよも、ッ!」

文句の一つでも言おうとした弓手だったが、

彼女はゴブリンスレイヤーが持つ松明の

光に照らされた人影に気づき、息をのんだ。

 

それは、右半身をボロボロにされた裸のエルフの

女性だった。

「うぅっ!?おぇぇぇぇぇっ!!」

「ッ!?大丈夫!?」

ショックからか、彼女は嘔吐してしまう。

咄嗟に弓手を支える武闘家。

「何という……!」

「息があるぞ!早よ助けんと!」

これには、銀等級である僧侶と道士二人も驚きを隠せなかった。

 

その時。

「殺、して……。殺してよ……」

捕らえられていたエルフの弱々しい声が聞こえてくる。

「あぁ。わかっている」

そして、剣を抜いたゴブリンスレイヤーが彼女に

近づいていく。ガンスリンガーもクロスボウを

構えながら、彼を止めようとはしない。

「え?」

「かみきり丸!」

突然の事で驚く神官と叫ぶ道士

「待って下さい!彼女はまだ……!

 ゴブリンスレイヤーさん!!」

彼女の脳裏に、初めて会った時、魔術師の女性を介錯

した時の事がよぎる。と、その時。

 

「こいつを殺してよぉっ!」

『ドッ!!』

彼が剣を突き刺したのは、女性の影に隠れていた

ゴブリンだった。

 

「そうとも。俺はゴブリンを殺しに来ただけだ」

 

その後……。

「イワナの祖たる角にして爪よ。四足二足。

 地に立ち駆けよ」

僧侶の彼が術を使い、骨で出来た兵士、

竜牙兵、ドラゴントゥースウォリアーを作り出した。

神官のヒールで治療されたエルフの女性は、事情の

書かれた手紙と共に竜牙兵が近くの村まで運ぶ。

そして、竜牙兵を送り出した僧侶の側で、弓手

の彼女が混乱し涙を流していた。

「う、うぅ……。何なのよもぉ。こんなの……。

訳わかんない……」

俯く彼女を、どこか心配そうに見つめる道士と、

武闘家の彼女は無言で弓手の背中をさする。

 

その時。

「もし、今後ゴブリンと戦う事があるのなら、

 覚えておけ。奴らに捕まった女は、あぁなる

 可能性が高い。それが嫌なら、侮るな。

 ゴブリンといえど、奴らは時に恐ろしい

 死神に化ける。……そして、死ぬより

 辛い運命が待っている事さえある。

 覚えておけ。……奴らを相手にするのなら、

 こんな出来事、日常茶飯事だ」

通路の先を警戒していたガンスリンガーの

言葉が、彼女の頭の中にしみこむ。

 

その後、地図を入手した彼らは先ほどのT字路

に戻り、反対の左へと進む。

途中、警備のゴブリンを弓手の弓と

ガンスリンガーのクロスボウで排除

しながら進む一行。

やがて、回廊を前にして彼らは休憩をする

ことにした。

僧侶、道士、神官の奇跡の回数を確認する

ゴブリンスレイヤー。そして彼はそのまま

視線をガンスリンガーに向けた。

「お前の弾数はどうだ?」

「クロスボウは途中で使用したため

 残弾数17本。リボルバーは未使用

 なので、装填済みを含めて36発。

 また、散弾が装填済みを含めて3発分。

 遺跡だったので以前話したダイナマイト

 は持ってきていません」

「そうか」

と、話をしながら思考しているゴブリン

スレイヤー。

一方で、神官の彼女は弓手を心配して

水を差し出す。が……。

 

「余り腹に物を入れるな。血の巡りが悪くなり

 動きが鈍る」

「ッ!ゴブリンスレイヤーさん!もう少し

 こう……!」

「誤魔化す必要は無い。行けるなら来い。

 無理なら戻れ。それだけだ」

その言葉に神官は何も言えず、チラっと

武闘家の方を向くが、彼女は視線を

外して俯く。彼女にも反論するだけの

言葉が無かったのだ。

 

「馬鹿言わないで。私はレンジャーよ?

 私が戻ったらスカウトや罠の探索が出来ない

 でしょ」

そう言って、彼女は、据わった目でゴブリン

スレイヤーを睨み付ける。

「やれる者でやるだけだ。戻っても

 問題は無い」

 

「戻る、なんて……!そんなこと出来る訳

 無いでしょう!?エルフがあんな事

 されて!黙ってるなんて……!!」

「……復讐心は理解できるが、そう言う奴に

 限って先走る」

と、今度はガンスリンガーが語る。

「激情に駆られた連中は動きが単調になり、

 ミスをしやすくなる。戦う気があるのなら、

 もう少し頭を冷やせ。怒りは時に自らの

 足下を掬うぞ」

「……そろそろ行くぞ。来る気があるのなら

 来い」

ガンスリンガーの言葉に、今度は彼を

キッと睨み付ける弓手だったが、

ゴブリンスレイヤーが立ち上がると二人は

先頭を歩き出した。

二人を睨み付ける弓手。その時。

 

「落ち着け耳長の。お前さんの反応は

 最もだの。……あの二人が狂ってるだけじゃ。

 いや……。狂っていると言うより、地獄を

 見たが故の、あの無機質な男達ができあがった

 のかもしれんな」

「え?」

「要は、あの二人を普通と思うなと言う事じゃ。

 ……行くぞ。ワシらの戦いは終わっとらん。

 銀として、仕事を全うするだの」

「……えぇ。ドワーフに同意するのは

癪だけど。……そうね、行きましょう」

一度、息をついた彼女は冷静さを何とか取り戻し

先へと進む。

 

そして、7人は回廊へと足を踏み入れた。

そこはらせん状になっており、天井から月の明かり

が漏れており、それが中を照らしていた。

そして、通路の縁から下を見下ろした弓手は

驚いた。

 

下の広場には、50匹近いゴブリンが眠っていたからだ。

しかし……。

そこでゴブリンスレイヤーが取った行動は……。

 

道士の敵を泥酔させる技『ドランク』と神官の

彼女が持つ、声や音を遮断する『サイレンス』の

合わせ技を繰り出す事だった。

これによって、ゴブリン共は再び深い眠りにつく。

そして……。

 

ゴブリンスレイヤー、ガンスリンガー、武闘家、

蜥蜴僧侶、弓手の5人が、一匹ずつゴブリンを

始末していく事になった。

 

彼らはそれぞれの武器を手に、斬って、斬って、

斬って、刺して、潰して、刺して、斬って、

切り裂いて、へし折って……。

ゴブリン共を皆殺しにしていく。

そんな中で弓手の彼女は、半ば呆然と

していた。

周囲に視線を巡らせる彼女。目を向けた先では、

武闘家の彼女が拾った槍をゴブリンの首元に次々と、

真剣な表情を浮かべながら突き刺していく。

ガンスリンガーも、その側で槍を使いゴブリンの

頭や胴体を貫いていく。

「残りはどれくらいだ?」

「後、20匹くらいです」

二人とも、体中を返り血で汚しながらも

一切の疑問も何も浮かべずにゴブリン共を

殺しまくる。

そんな姿に、弓手は内心戸惑いを覚えていた。

 

『何を、やっているんだろう私は……。

 私は、外の世界に憧れて、冒険者に……』

そう思いながらも、彼女はゴブリンの体に

短剣を突き立てる。

『違う。私の知ってる冒険は、こんなんじゃ……』

そう思いながらも、手は止めない弓手。

そんな時、彼女の視界に黙々とゴブリンを

殺し続けるゴブリンスレイヤーの背中が

見えた。

『あいつ……。一人でこんな事をやり続けて

 いたの?』

 

 

その後、無事にゴブリンを掃討した5人の元に

神官と道士が合流する。

そして、ゴブリンスレイヤーが一つの

洞窟を剣の切っ先で示す。それを見て、7人が

歩き出した。

 

刹那……。

   『ズンッ!』

大きな足音が響いた。

「ッ!?何!?」

「いかん!何か来るぞ!下がるんじゃ!」

入り口の眼前まで迫っていた7人が道士の言葉で

武器を構えながら後退る。

すると……。

「ゴブリン共がやけに静かだと思えば……。

 雑兵の役にも立たんか」

入り口の奥、暗がりからゆっくりと何かが姿を

表した。

「貴様等……。ここを我らが砦と知っての

 狼藉と見た」

現れたそれは、人間の身の丈3倍はあろうかと

言う巨体の鬼、人食い鬼、オーガだった。

だが……。

「いや、まだ、何か居る」

クロスボウを構えていたガンスリンガーが

呟くのと同時に、オーガの陰から何かが

現れた。それは……。

 

「あれは、トロール!?」

驚き、叫ぶ武闘家。オーガの背後に

現れたそれは、オーガよりも一回り

ほど小さいが、それでも十分と

言える巨体と棍棒を持ち、全身が

毛で覆われた巨大な化け物、『トロール』だった。

『ウゥゥゥゥゥッ……』

獣のようなうなり声を上げ、こちらを睨んでいる

トロール。

「……これは、最悪の展開だ」

「えぇ、全く最悪よ。トロールにオーガ、しかも

 こんな狭い場所じゃ……」

ガンスリンガーの言葉に、弓手が同意する。

 

「くっくっく。臆したか?愚かな人間共よ」

そして、彼らに焦りを感じ取ったのか、オーガは

口角をつり上げ笑みを浮かべる。

その時。

「師匠、俺から提案が……」

「何だ?」

「このままここで7対2で戦うより、奴らを

 分断した方が良いかと思います」

「成程。で、どうする?」

「俺がトロールを引き受けます。その間に、

 師匠達はオーガを」

「私も行きます」

一人、トロールを引き受けようとしていた彼を

制して自分も名乗り出る武闘家。

「出来るの?あなた達二人だけで」

「分からない。だが、やらなければ死ぬだけだ」

弓手の言葉に答えるガンスリンガー。

 

「……わかった。あの毛むくじゃらはお前達に

 任せる。俺たちは、奴を倒す」

そう言って、目の前のオーガに集中する

ゴブリンスレイヤー。

「貴様ら。この我を……。魔神将より軍を

 預かるこの我を、侮っているのかぁっ!」

その時、会話が聞こえていたオーガは彼らの

作戦を侮辱と取ったのか、手にした巨大な

鉄製の棍棒を振り下ろしてきた。

 

   『ドガァァァァンッ!』

その一撃で、床が爆発したかのように割れる。

しかし、逆にその一撃で出来た砂埃に紛れて

ガンスリンガーはオーガとトロールの

後ろに回り込んだ。

そして……。

   『ビシュッ!』

   『ドッ!』

クロスボウから発射された矢がトロールの

背中に突き刺さり、トロールがうめきながら

振り返る。

「こっちだ!毛むくじゃら!」

そう言って入り口の奥へと駆けていく

ガンスリンガー。

「ウゥ、ヴォォォォォッ!」

そして、それを追いかけるトロール。

更に……。

「トロールは私達が!オーガは頼みます!」

更に彼とトロールを追って武闘家が入り口へと

飛び込む。

 

それを横目で見ていたオーガがゴブリンスレイヤー

達を睨み付ける。

「ふん。たかが二人であの怪力のトロールを

 倒せるものか」

   『ブォォンッ!』

そう言って、オーガは棍棒を肩に担ぐ。

それを見てゴブリンスレイヤー達は武器を

構える。

「……ねぇ、あの二人、トロールに勝てるの?」

「知らん」

弓手の言葉に、ばっさりとそう言い切る

ゴブリンスレイヤー。

「し、知らないって!あなたの弟子と

 その仲間でしょ!?」

「分かっている。だが、二人が勝つかどうか

 まで俺には分からん。それより、

 来るぞ……!」

叫ぶ弓手に対し、何処までも冷静な

ゴブリンスレイヤー。そして彼は円盾と

剣を構え、その眼前でオーガが棍棒を振り上げた。

 

 

一方、ガンスリンガーとトロール、武闘家。

   『ザッ!』

一直線に続く道を走っていたガンスリンガー

が突如停止して振り返る。

そして、追いついたトロールが彼を

睨み付けながら警戒している。

ガンスリンガーは左手にクロスボウを

持ち、右手を右腿のホルスターへと近づける。

それを見ているトロールも、一瞬の隙を

狙ってか、棍棒を握る手に力がこもる。

 

と、その時。

「ガンスリンガーさん!」

後ろから追いかけていた武闘家の叫びが聞こえ、

トロールの意識が一瞬だけガンスリンガーから

外れる。

それを見たガンスリンガーが……。

   『ドウッ!』 

素早くSAAを抜き放ったガンスリンガーの

銃弾がトロール目がけて飛んでいく。

   『ボッ』

しかし、命中したのはトロールが持つ棍棒だった。

咄嗟にそれを動かし、顔を守ったのだ。

「ウォォォォォォォッ!!」

野太い獣のような叫びと共にトロールが棍棒を

ガンスリンガー目がけて振り下ろす。

   『ドォォォォンッ!』

そして、棍棒が地面を割り爆音と砂煙が上がる。

「ガンスリンガーさん!」

咄嗟に叫ぶ武闘家。その時。

   『バッ!』

砂煙の中から、後ろに飛ぶようにしてガンスリンガー

が現れ、SAAを撃つ。

   『ドウドウッ!』

2発、弾丸が放たれトロールの胴体に命中するが……。

「ウォォォォォォォォッ!」

『……浅いか』

僅かに出血しただけで咆えるトロール。

『あの厚い毛が防具のような役割を

 果たし、銃弾の運動エネルギーの

 大半を受け止め、その殺傷能力を

 低下させている』

考察しながらも、トロールを睨み付ける

ガンスリンガー。そして……。

「ウォォォォォォォォォッ!」

咆哮と共に再び棍棒を振り上げるトロール。

 

   『ブォォォォンッ!ドガッ!』

振り下ろされる棍棒を避けるガンスリンガー。

   『ジャギッ!』

そして彼がSAAの銃口を向けると……。

   『サッ!!』

トロールは棍棒を戻し、それを盾にする。

それを見たガンスリンガーは引き金を引けない。

『あの棍棒を突破出来ない。どうするか。

 足を狙うか?』

しかし、次の瞬間再びトロールが棍棒を振り上げ、

ガンスリンガーは咄嗟に後ろに飛ぶ。

   『ドォォォォンッ!』

再び、凄まじい爆音と砂煙が上がる。更に……。

   『ガラガラッ!』

古い遺跡だけあって脆くなった箇所もあるのか、

トロールの馬鹿力のせいなのか、壁の一部が崩れて通路側に

倒れてきた。

「きゃっ!?」

それを避けるために後ろに飛ぶ武闘家。

「あ、危なかった……!」

何とか無事な事に安堵するが、彼女はすぐさま

頭をかぶり振って前方を見る。

そこでは、ガンスリンガーとトロールが

戦っていた。

   『ドウッ!』

『4。残り2発』

   『ボッ!』

一発、放たれた弾丸が棍棒を振り上げるトロールの

胴体に命中するが、トロールはお構いなしに

棍棒を振り下ろしてくる。それを横に飛んで

回避するガンスリンガー。

 

「ガンスリンガーさん!」

『ど、どうする!?私に何が出来る!?

 あの巨体に、私の武術は……』

そう考えながら思い出すのは、洞窟でホブを

相手に痛めつけられた苦い記憶。

『いや!諦めるな!考えろ!考えろ私!』

諦めそうになる自分を心の中で叱責した彼女は

すぐに周囲を観察し始める。そして、気づいた。

 

トロールの背中に突き刺さったままの矢に。

『あれだ!けど、どうやってあそこまで……!

 あっ!』

そして次に、彼女は先ほど崩落して来た壁の

欠片が、トロールのすぐ背後にあることに気づいた。

すぐさま彼女の頭がフル回転し、道を導き出す。

そして……。

「ガンスリンガーさん!」

彼女の叫びが聞こえ、一瞬そちらを向く

ガンスリンガー。

 

そして、二人の視線が交差する。彼女の瞳には、

何か思いついた表情が浮かんでいた。

それを察したガンスリンガーが無言で頷く。

そして彼女もまた頷き返すと、踵を

返して後ろへと駆け出した。それに気づいて

振り返るトロール。

 

それは逃亡するかのように見えたのだろう。

トロールはすぐさま意識を目の前のガンスリンガーに

集中させた。

 

だが……。

   『ザッ!』

ある程度距離を取った武闘家は足を止め、振り返り、

息を整える。そして、一歩、右足を前に出し、

放たれる寸前の矢のように体全体に力を込める。

そして……。

   『ダッ!!!』

駆け出した。

まさしく、飛ぶようなスピードで駆ける武闘家。

更に……。

   『ドウッ!』

『5。残弾1』

   『ボッ!』

「ッ!?ヴォォォォォッ!!」

それに気づいたガンスリンガーがトロールの意識を

こちらに向けさせるために攻撃する。案の定、

トロールは中々殺せないガンスリンガーに苛立ちを

覚えているのか、執拗に、しかし単調な攻撃を

繰り返している。

 

そして……。

「ッ!!!!!!」

武闘家が壁の残骸を使って、トロールに向かい……。

 

ジャンプした。

彼女が向かう先には、矢があった。そして……。

   『バッ!!』

   『グッ!!』

武闘家がトロールの背中の毛に捕まり、取り付いた。

更に矢を掴んだ彼女は……。

   『ブシュッ!!』

矢を引き抜いた。

「グォォォォォォッ!?!?」

悲鳴を上げるトロール。だが、それだけでは

終わらなかった。

   『グサッ!』

再び、矢傷を狙って矢を突き刺す武闘家。

それを何度も繰り替える。

   『グサッ!グサッ!グサッ!』

抜いては刺すを繰り返す武闘家。

「グォォォォォッ!!!」

トロールは悲鳴を上げながらも、棍棒を背中に

叩き付けて武闘家を潰そうとした。だが……。

   『ドウッ!』

   『ボッ!!』

その時、すっかり忘れていたガンスリンガーの

銃弾がトロールの右肘を撃ち抜く。更に……。

   『サッ!』

撃ち終えたSAAをホルスターに戻した

ガンスリンガーが、逆手リボルバーから

もう一つのリボルバー、『レ・マット・リボルバー』

を抜き取る。

   『ガチャドウッ!』

そして、すぐさま右肘を狙って銃弾9発を全て

たたき込む。

それには……。

   『パッ。ズズゥゥゥゥゥンッ!』

拳銃弾とは言え、合計10発もたたき込まれた

トロールはとうとう棍棒を手放してしまう。

更に背中では武闘家が必死にその背中にしがみ

つきながら、矢を何度も突き刺している。

 

この時、トロールは混乱していた。

もし普通の思考が残っているのなら、背中を

壁に叩き付けると言う行動も出来たはずだ。

しかし中々潰れないガンスリンガーへの

怒りと突然の奇襲に、トロールは混乱して

しまったのだ。

 

既に武闘家の体は、溢れ出し、飛散するトロールの

血で汚れていた。

「まだまだぁっ!」

   『グサッ!』

再び矢を突き刺す武闘家。だが……。

   『バギッ!』

矢を引き抜こうとしたその時、矢の胴体、シャフトが

へし折れてしまった。半分が武闘家の手の中。

残りが矢尻ごとトロールの体の中だ。

「くっ!?だったらぁっ!」

しかし武闘家はすぐに手の中の矢だった物を

投げ捨てると、左手に、何重にもトロールの毛を

巻き付け、背中に足を付ける。そして、右手を

服に突っ込んで取り出したのは……。

 

ガンスリンガーから送られていた、

ダブルバレルデリンジャーだった。

   『グッ!』

銃口を矢傷に押し当てた次の瞬間。

   『パァァンッ!』

乾いた銃声が洞窟内部に響き渡る。

「グギャァァァァァァッ!?!?」

体の中を弾丸が蹂躙する痛みに、トロールの悲鳴が上がる。

「もう、一発ッ!!」

   『ガチャリッ!パァァンッ!』

もう一発、銃弾が放たれトロールの体を内側から

引き裂いていく。

 

   『ズズンッ!!』

そしてとうとう、トロールが地面に膝をついた。

残った左手で、何とか上半身を支えるトロール。

しかし、前から聞こえる足音にトロールが

顔を上げた時……。

 

自分の目に、レ・マット・リボルバーの

『もう一つの銃口』を突き付けるガンスリンガー

がそこにいた。そして……。

   『バァァァンッ!!!!』

放たれた『散弾』の雨が、トロールの顔を

ズタズタに引き裂く。

   『ズズゥゥゥンッ!』

そして、トロールの命はそこで絶えた。

 

「お、終わりましたか?」

トロールの背中を歩いて、彼の前に着地する

武闘家。

「あぁ」

そして、彼は頷くとレ・マット・リボルバーを

逆手ホルスターに戻し、SAAを取り出すと

ローディングゲートを開き、空薬莢を排出し、

弾を込める。

「それより、戻るぞ。師匠達が心配だ。

 戦闘中にも、何回か爆発音のような物が

 聞こえてきた」

「そ、そうだった!行きましょう!」

彼の言葉に、まだ戦いが終わっていないことを

思い出した武闘家。

そして二人はトロールの死骸の横を通り抜けて

回廊方向へと戻ったのだが……。

 

 

そこにあったのは、なぜか上半身と下半身に

分けて見事にぶった切られたオーガの死骸と、

床を浸す水。そして……。

「あんた達!生きてたのね!」

各々怪我こそあれど、五体満足で立っていた

5人だった。

二人を見て、弓手の彼女が笑みを浮かべながら叫ぶ。

「翠玉殿、武闘家殿。お二人ともご無事で

 何より。トロールはどうされましたか?」

「何とか倒した。……ギリギリだったがな」

僧侶の言葉に、息をつきながら話すガンスリンガー。

と、その隣では二人が出て来た入り口を見つめる

ゴブリンスレイヤーが居たが……。

 

「今日のところはここまでじゃ。

 かみきり丸」

今にも歩き出しそうだった彼を道士が止める。

「あっきれた!?そんな状態でまだやる気!?

 私もう矢撃ち尽くしちゃったわよ」

「師匠。流石にこれ以上は……。ゴブリン共は

 皆殺しするに限ります。が、今の我々の

 コンディションでは、これ以上の深追いは

 危険かと思います」

呆れる弓手と、進言するガンスリンガー。

「お主の弟子の言うとおりじゃの。

 引き際が分からんほどイカレちまってる

 わけじゃああるまい?」

そう語る周囲の言葉に、ガンスリンガーは……。

 

「そうだな。ここまでだ」

 

 

そう言って、7人は引き返した。

入り口へと戻り、たどり着いた時には既に

夜が明けていた。

そして、外にはエルフの兵士達の姿があった。

しかし、今の7人には彼らとのんびり話す

気力も残っていなかった。

「おい」

「え?あ、はい」

そんな中でガンスリンガーが彼らの一人に声を

掛ける。

そして彼はエルフに遺跡の地図を渡した。

「その地図に描かれている回廊の所までは

 俺達でゴブリンを掃討。回廊の所には

 オーガの死体が転がってる」

「お、オーガ!?人食い鬼を倒したの

 ですか!?」

「ハァ。……そうだ」

驚くエルフの兵士達を後目に、ガンスリンガーも

息をつく。彼も既に疲労困憊だった。

「それと、回廊から更に横へと伸びる一本道が

 ある。その途中にトロールの死体が

 転がってる。そこまでは俺たちが調査したが、

 その先がどうなってるかは知らん」

とだけ言うと、ガンスリンガーは他の6人と

同じように馬車へと乗った。

 

 

やがて、ガタゴトと揺れながら馬車は街を目指す。

 

そんな馬車の中では、皆疲れ切った様子で座ったり

寝っ転がっていた。

そんな中、壁に背中を預け胡座を掻いている

ガンスリンガー。

その隣に武闘家が座っている。

「生き残った、んですね」

「あぁ」

二人とも、疲れ切っていた。やがて……。

「ちょっと、すみません。私、もう、眠く、て……」

そう言いながら、武闘家はうつらうつらすると

ガンスリンガーの肩にポテッと寄りかかるように

して眠ってしまった。

それを見ていたガンスリンガーも……。

 

『俺も、寝る、か』

腕を組み、彼も静かに眠りについた。

 

彼らの戦いは、ひとまず終わりを迎えた。

そして、そんな中で弓手は一つの決意をしていた。

彼ら、ゴブリンスレイヤー達に、本当の冒険を

させよう、と。

 

     第6話 END

 




次回から、原作コミックス第3巻に突入します。
このお話は基本、コミックス準拠なのでアニメ版とは
異なる描写があると思います。ご了承下さい。
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