ゴブリンスレイヤー~ガンスリンガー~   作:ユウキ003

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今回はほぼオリジナルで短めです。


第7話 束の間の日々

~~前回までのあらすじ~~

エルフ、ドワーフ、リザードマンの銀等級冒険者

3人からの依頼を受け、エルフの森の近くにある

遺跡に潜むゴブリン退治へと赴くゴブリンスレイヤー、

ガンスリンガー、神官、武闘家。更に妖精弓手達も

同行し7人は遺跡の中を探索する。途中、囚われていた

エルフの女性を救助しつつゴブリン掃討を続けていた

7人の前に、人食い鬼オーガとトロールが出現。

ゴブリンスレイヤー達がオーガを。ガンスリンガーと

武闘家がトロールを倒したことで、彼らは何とか

依頼を達成するのだった。

 

遺跡での戦闘の翌日の午前中。

今、ガンスリンガーと武闘家は令嬢騎士の邸宅に

招かれていた。現在二人とエルフの魔術師、

レーアのレンジャー、ヒュームの僧侶の5人

だけが広い居間でお茶をしながら話を

していた。

話題は、先日の遺跡での戦いだった。

「えぇ!?オーガにトロール!?」

紅茶を飲んでいたレンジャーが驚き

素っ頓狂な声を上げてしまう。

「マジで!?二人ともそんなのと戦って

 良く無事だったね!?」

「アハハ、わ、私も自分でそう思います」

レンジャーの言葉に、改めてあの時の危機感を

思い出してか苦笑する武闘家。

「どのようにして勝利なされたんですか?」

「俺と彼女がトロールを相手にしながら

 オーガと引き離し、個別に撃破するという

 戦術を取った。俺がトロールを正面から相手していた。

その隙に彼女ががれきを足場にして跳躍。背中に

 刺さっていた矢を何度もトロールの体に

 突き刺し、更に持っていた拳銃で

 至近距離から奴の体内に銃弾を撃ち込み、

 倒れた所を俺が顔面に散弾をたたき込んで

 倒した。と言うのが流れだ」

「トロールを相手にたった二人で勝つとは。

 凄まじいですね」

疑問符を浮かべる僧侶にガンスリンガーが

答え、魔術師が苦笑を浮かべる。

「これは、もしかすると早くも等級が上がるかも

 しれませんね」

そう言って、僧侶の彼女が笑みを浮かべる。

「等級が、ですか?」

「確かにね」

彼女の言葉に武闘家が首をかしげると、

レンジャーが頷く。

「そりゃぁ、白磁でトロール討伐に協力して

 生き残った。ってのは前代未聞だと思うよ。

 もしその気があるのなら、審査受けてみたら?」

そう言って、笑みを浮かべるレンジャー。

更に僧侶と魔術師が頷く。

『等級が、上がる。白磁の上、黒曜に』

そして彼女は自らの右手を見ながらギュッと

拳を握りしめるのだった。

 

と、そこへ。

「すまない。お待たせしてしまったな」

居間の扉が開いてドレス姿の令嬢騎士が

現れた。

「少々執務仕事が立て込んでいてね」

そう言って二人の前の椅子に腰を下ろす彼女。

「構いません。それで、話というのは?」

「あぁ、そうだったね。実は、君から貰った

 銃、確か、フリントロックとホイールロック

 式、だったかな。あれについて問題があって……」

「問題、ですか?」

「あぁ。もちろん君から貰った銃そのものには

 問題など無かった。ただ、それを模倣しようと

 した鍛冶職人の品の大半が実戦で使える

 までの物では無いんだ。特に、ホイールロック

 式は構造が複雑で、模倣出来た人間は熟練の

 鍛冶職人が数人がかりで1丁作り上げる

 のがやっとだったそうだ」

「成程。フリントロックの方はどうでしょうか?」

「そちらは概ね良好のようだ。既に生産数は50丁に

 届くとの報告が入っている。それで、こちらからの

 お願いなのだが、君が古いからと言っていた

 他の点火機構の銃を私達に提供して頂けない

 だろうか?」

「分かりました。こちらは構いません。

 良ければ今から取ってきますが?」

「そうか?頼む」

「分かりました」

と言って立ち上がるガンスリンガー。

「あ。折角だ。私達も行こう」

「……皆さんも、ですか?」

しかし何を思ったのか自分も立ち上がる令嬢騎士。

彼女の言葉にガンスリンガーが首をかしげる。

「銃がどのような物なのかも興味が

 あるのでな。あぁ、無理なら構わないが?」

「いえ。その事に関しては問題ありません」

「そうか。皆はどうする?」

「はいはい!ボクも見てみたいです!」

「わ、私も」

「私も行きます」

と、レンジャーが手を上げ主張し、僧侶も

おずおずと言った感じで挙手。魔術師も

頷く。

 

「決まりだな。少し待っていてくれ。

 鎧に着替えてくる。後、運搬用の

 馬車を用意しておいてくれ」

「了解騎士様!」

そう言って、一度退出する令嬢騎士と

レーアのレンジャー。

 

その後、6人は馬車を引きながら街へと向かい

ガンスリンガーの家へとやってきた。

のだが……。

「こ、これがガンスリンガー殿の家、なのか?」

「うわぁ~。ボッロボロ~!」

「……」

   『ベシッ!』

驚く令嬢騎士の横でストレートに表現する

レーアのレンジャーの頭を魔術師が

引っぱたく。

「痛っ!?何すんの!?」

「お前はもう少し口を慎め!」

と、小声でやりとりする二人。

 

「倉庫の扉は内側からじゃないと開かない

 仕掛けになっている。少し待っていてくれ」

と言うと、彼は一人玄関の方から家の中に

入り、倉庫に回って扉を開けた。

「こっちだ。中へどうぞ」

「それでは、失礼する」

扉を開けたガンスリンガーが促すと、令嬢騎士や

武闘家達が中へと入っていく。

 

そして、初めて武闘家が中を訪れた時のように、

彼女たちはそこに置かれた試作品の数に驚かされた。

そしてガンスリンガーで奥からいくつかの木箱を

引っ張り出していた頃。

「あれ?これは、弓?」

壁際に掛けられたクロスボウにレンジャーの彼女が

興味を持った。

「あぁ、それはクロスボウと言って

 ガンスリンガーさんが銃より前に開発した物

 らしいですよ」

手の放せない彼に変わって武闘家が軽く説明をする。

「へ~。そんなのまで作ってたんだ。

 あ!ねぇねぇガンスリンガー!あれボクに

 一個くれない?」

「あれ?クロスボウの事か?」

振り返ること無くガンスリンガーが問い返す。

「うん!そうそう!面白そうだからさ!ダメかな?」

「別に構わないぞ。好きなのを持って行くと良い。

 どれも形が違うだけで基本的な動作は、違わない

 からな」

そう言いつつ、彼は奥から木箱を引っ張り出し、中身を

確認する。

「あった」

と、彼が言うと武闘家と令嬢騎士が中を後ろから覗き

込んだ。

そこにあったのは、はっきり言えば鉄の筒だった。

「これが?」

疑問符を浮かべる令嬢騎士。

「そうです。試作品第5号、タッチホール式の銃です。

 それと、こっちが……」

更に別の箱を開けるガンスリンガー。そこには、

まだ銃と呼べるであろう物、マッチロック式の

火縄銃が納められていた。

それを手に取る令嬢騎士。

「……以外に軽いのだな」

「銃身や点火機構以外は全て木、木製

 ですから。木製では腐食などによる劣化や

 戦闘による破損が起きやすいですが、

 全てを鉄で作り上げた銃よりかは軽いんです」

「ほう。それは興味深いな」

などと話をしていると……。

 

「お?」

レンジャーが部屋の隅にある布を被された何かを

見つけた。

「ねぇねぇ!これ何!?これ何!?」

「ん?あぁ、それは俺が拠点、つまり村や

 街を防衛するために試作開発を続けていた

 設置型の銃だ」

と、興奮気味な彼女に答えるガンスリンガー。

「設置型、と言うのは?」

武闘家が疑問符を浮かべる。

「元はと言えば、村がゴブリンに襲われて

 全滅するのは、それを防ぎきる防御力が

 無いからだ。だったらその防御力を

 向上させる武器を作れば良いのでは

 無いか、そう考えている。例えば、

 村の中心に大きな櫓を建て、その

 最上部にこいつを設置。矢を防ぐ

 盾となる板にのぞき穴を開ければ、

 上からこいつの威力をゴブリンに

 お見舞いできる」

「でも、銃の連射って、ガンスリンガー

 さんが使ってるM1866、でしたっけ?

 あれが一番速いみたいですし、そんなに

 速く連射出来るんですか?」

更に質問を続ける武闘家。

「俺が今現在持つ個人で使用する銃では

 まず無理だ。しかしこいつは設置型だからな。

 持ち運びは最初から余り考慮していない。

 運ぶにしても、まず馬車がいる」

「設置型の、それも攻めるのでは無く

 守るための銃か。物も使う目的が異なれば

 変わるか」

彼の説明に、興味深そうに頷く令嬢騎士。

「ねぇ見ても良い?見ても良い?!」

その横んで、これまた興味津々なレンジャーが。

「おいおい。今は必要な物を受け取りに来ただけだ。

 余り彼に迷惑を掛けるな」

しかし彼女は魔術師に掴まれ外へと引っ張られて

行ってしまった。

その際には色々駄々をこねていたが。

 

「アハハ……。すまない、仲間が醜態を」

「いえ、元気があるのは良いことですから。

 それでは、今日はこれで良いでしょうか?」

「あぁ。また何かあればガンスリンガー殿の

 家かギルドに迎えを出す。それでは、

 失礼する」

そう言うと、彼女たちは馬車に銃の入った木箱を

積み込み、彼の家を後にした。

 

「さて、この後はどうする?ギルドに向かうか?」

「はい。行きましょう」

そう言って、ガンスリンガーがSAAとM1866。

ある程度の弾丸などを持つと武闘家と共に

ギルドへと向かった。

   『カランカランッ』

扉を開け、中に入った二人はそのまま依頼が

張り出された掲示板へと向かう。

「ゴブリンは、無しか」

「えぇ、無いみたいですね」

と、話をしていると……。

 

「あの、お二人とも」

不意に後ろから声がしたので振り返ると

そこには神官の彼女が立っていた。

「お、おはようございます」

「あ。おはよう。って、一人?」

振り返って彼女に気づいた武闘家が

挨拶を返すが、彼女が一人な事に

気づいて疑問符を浮かべた。

「はい、ゴブリンスレイヤーさんは今日

 お休みです。先日の戦いで重症を

 負ってしまいましたから」

「そっか。確か、オーガの一撃を食らって……」

「はい」

と、話をする武闘家と神官。ガンスリンガーは

黙ったままそれを見ていた。

 

「それより、お二人はこれから依頼を

 受けるのですか?」

「ううん。幸い今日はゴブリン関係が無い

 みたいだから。ガンスリンガーさんは

 どうしますか?」

「……。幸い、急ぎの金が必要な訳では無いし。

 開発を急ぎたい試作品もある。今日の所は

 帰ろうと思うが……」

と、話をしていると……。

「あ、あの。実は折り入ってお話があるんですが……」

「ん?何?」

不意に真剣な表情で武闘家を見る彼女に、武闘家は

首をかしげる。

「あ、あの。一緒に等級昇格のための面接を

 受けてみませんか?」

「え?私が、一緒に?」

「は、はい。ダメですか?」

「いや私は別に構わないけど……」

と言いつつガンスリンガーの方を向く武闘家。

彼は……。

 

「受けてみれば良い。そうそう金が掛かる物

 でも無い。ダメならもう少し経験を

 積んでからまた挑戦するだけの事だろう?」

と語った。

それを受け二人は……。

「そうですね。受けてみよう。折角だから!」

そう言って笑みを浮かべる武闘家。

「はい!」

そして彼女の言葉に神官も頷く。

 

翌日、二人は等級審査を受ける事になった。

今は面接のための部屋の外のソファに

並んで座っている。

周囲に人影は無い。二人っきりだ。

「出来るかなぁ、黒曜への昇級」

と、呟く武闘家。

「出来るかどうかは分かりません。

 でも、こう言うのもチャレンジだと

 思うんです」

「……。そうね。やってみなけりゃ

 分からないわねよ」

そうして、二人は昇級のための面接に

望む。

 

一方、カウンター近くの椅子に座り

二人を待っていたガンスリンガー。

そこへ。

「これ、良かったらどうぞ」

と、受付嬢がやってきて彼の前の

お茶を置く。

「すまない」

一言彼がそう言ってお茶を飲んでいると

彼の横に腰を下ろす受付嬢。

「心配ですか?あの二人の事?」

「……心配ではない」

「どうしてですか?」

「これはあくまでも面接。しかもチャンスは

 今日一度きりという訳でもない。何か

 不味いことをしない限り、滅多なことでは

 等級は下げられない。仮に今日の

 審査がダメだったとしても次がある。

 それに……」

「それに?」

「あの二人はオーガ、トロールと相対し

 逃げ出すこと無く戦い、勝利に貢献した。

 到底白磁の段階で経験する事では無いと 

 思う。あの二人が、黒曜に上がるのは

 何の問題も無いだろう」

そう言うと、もう一口お茶を飲むガンスリンガー。

 

そして、しばらく待っていると……。

「ガンスリンガーさ~~ん!」

奥から武闘家と神官が笑みを浮かべながら

戻ってきた。

そして、その胸元には黒い、黒曜のプレートが。

「や、やりました!等級審査、合格しました!」

そう言って、彼にプレートを見せる武闘家。

神官は二人から少し離れた所で様子を見ていた。

 

「ありがとうございます!本当にっ!」

笑みを浮かべる武闘家。しかし……。

「……果たして、俺はお前に礼を言われるに

 値するのか?」

「え?」

彼の言葉に、彼女は理解が追いつかなかった。

「お前の仲間二人は、死んだ。俺がもっと早く

 到着していれば、あの二人は死なずに済んだ。

 ……そう言う意味では、俺は礼を言われる

 ような人間では無い」

そう言って、彼女に背を向けるガンスリンガー。

しかし……。

   『スッ』

彼の背中に手を当てる武闘家。

「私、あいつの事は少なからず好きでした」

あいつ、と言うのは間違い無く剣士の少年の事だ。

「私はみんなを守るために力を使おうと思った。

 けど、私はあの時、殆ど何も出来なかった。

 それどころか、あの時、あなたが来て

 くれなかったらきっと私は……」

その先を考え、彼女の指先ガ震える。

「でも、私は今ここで生きている。戦える。

 だから、戦います」

「……なぜだ」

振り返らずに問いかけるガンスリンガー。

「ゴブリン共は許せません。だから、二度と

 私達が遭遇した悲劇を、たった一つでも

 繰り返さない為に。

 もう二度と、あんな事が繰り返されて

 欲しくない。止めたい。そう思ってます」

「だから、戦うのか?」

「はい。あいつらが起こす悲劇を一つでも

 多く叩き潰すために。でも、私一人じゃ

 出来ない事ばかりです。だから、私には

 隣にいてくれる人が必要なんです」

彼女の言葉に、無言を貫くガンスリンガー。

「……臆病、ですよね。一人じゃ戦えない

 なんて」

「……それは、俺もだ」

「え?」

彼女の言葉に、ガンスリンガーが肯定し振り返った。

 

「俺も、最初は師匠に同行して依頼を

 こなしていた。しかし独り立ちして

 初めてゴブリンの依頼を受けた時、俺は

 足がすくんだ。『ここには俺しかいない。 

 へまをすれば自分が死ぬ』、と」

「ガンスリンガーさんも、そんな風な

 時期があったんですね」

「まぁな。そして、それは今も変わらない。

 一人で依頼に向かう時は、いつも不安に

 駆られる事が多い。だから、はっきり

 言うとお前が一緒に戦ってくれるのは

 心強い」

「え?……ッ!」

 

彼の言葉に、一瞬呆けた武闘家だが、すぐに

顔を赤くしてしまう。

「そ、それ、本当ですか?」

「あぁ。パーティの構成的にも、俺の 

 心理的にもな」

顔の赤い彼女とは対照的な感想の

ガンスリンガー。

 

やがて……。

「そっか。そうですか。……じゃあ、

 やっぱり私は言います。ありがとう

 ございました。って」

「……なぜだ?」

「確かに、あの二人が死んだことは悲しいし

 イヤな記憶です。でも、だからこそ私は

 二人の分まで生きて生きて、生き抜いて、

 戦います。とりあえず今は、

 ガンスリンガーさんの仲間として」

「そうか」

そう言うと彼は……。

 

   『スッ』

「俺には銃を作りそれを撃つくらいしか

 取り柄が無いが、これからも

 よろしく頼む」

そう言って右手を差し出した。

それを見た武闘家は……。

「はいっ!これからも、よろしくお願いします!」

   『ギュッ!』

笑みを浮かべながら、彼の手を取った。

そして、神官の彼女が後ろから微笑ましそうに

二人を見つめていた。

 

 

ガンスリンガーと武闘家。二人はまた一歩、絆を

深めた。

 

しかし彼らが知る由など無い。

この辺境の街を掛けた激闘が迫っている事を。

 

     第7話 END

 




次回は皆さんもご存じな牧場防衛戦です。
この回にでた設置型、多分分かる人なら
運用目的を聞いただけで分かる『アレ』を
投入しようと思います。
感想や評価、お待ちしています!
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