ゴブリンスレイヤー~ガンスリンガー~   作:ユウキ003

9 / 11
今回はほぼ、バトルシーンです。
オリジナル展開も、ちょっとだけプラスしてます。


第9話 牧場防衛戦 後編

~~前回までのあらすじ~~

無事黒曜の等級に昇格した武闘家と共にガンスリンガーは

とある依頼を受ける。しかしそんな中で彼は一つの

違和感を覚える。その違和感に対する情報収集の為、

ギルドに戻った二人は令嬢騎士たちのパーティからも

話を聞き、妙な話を耳にする。そこへ突如として

ゴブリンスレイヤーが現れ、ゴブリンロードと

それに率いられたゴブリンの軍隊が現れる事を

告げる。それに対しギルドの受付嬢や令嬢騎士の

おかげで、大勢の冒険者による防衛線が

作られる事になった。

 

 

お昼過ぎ。ガンスリンガーの家の前。

今そこでは、ガンスリンガーと武闘家が

令嬢騎士を待っていた。そこへ……。

   『ガラララッ』

蹄と車輪の音が聞こえてきて、令嬢騎士

達が操る馬車がやってきた。

「すまない。待たせてしまったかな?」

「構いません。それより、荷運びの

 手伝いをお願いしたいのです」

「わかった」

と言うと、令嬢騎士達4人が馬車から降り、

ガンスリンガーに案内され、倉庫の中に

入るとそこには大きな長方形の木箱が

二つ、置かれていた。

「これは?」

「以前話した、陣地の防衛を主眼に設計した

 銃だ」

エルフ魔術師の問いに答えるガンスリンガー。

「何とか2丁目を組み立てる事が出来た。

 これを馬車で農場へと運び、設置する」

「よし、では運び出すぞ」

令嬢騎士がそう言うと、彼ら6人でケースを

馬車に一個ずつ乗せていった。

「よし。これでOKだが、まだ何かあるかな?」

「あぁ」

令嬢騎士の問いに頷きながら、彼は倉庫に

戻ってラックに立てかけてあったライフルを

3丁取る。二つは武闘家も知るM1887とM1873、

もう一つは武闘家も見たことの無いライフルだった。

「ガンスリンガーさん、そっちの

ライフルは……?」

「これはM1873などのレバーアクションとは

 異なる連発機構を装備したライフルだ。

 装弾数が5発と少ないが、命中精度で言えば

 トップクラスだ。威力も一撃でゴブリンを

 葬れる。牧場を防衛する、開けた土地で

 敵を迎撃する防衛戦闘なら、こいつの

 方が良い」

そう言いながら、彼は弾丸が入った鉄製の

ケースを手に取り、馬車の脇に置くと

自分も荷台に乗り込む。

そして、武闘家も馬車に乗り込み、彼らは

牧場へと向かった。

 

牧場に着いた時には、既に大勢の冒険者が

集まっていた。

「結構、集まってますね」

大勢の冒険者を前に、驚嘆の声を漏らす武闘家。

「……既に昼過ぎだ。設置を急ごう」

彼女の言葉を聞いて周囲を一瞥してから、

すぐに動き出すガンスリンガー。

 

「設置場所、どうする?」

とレーアレンジャーが問いかけると、

彼は周囲を見回す。そして、当たりをつける。

「師匠の話では、斥候の足跡があったのは、

 あの地点だ。とすれば、奴らはその奥から

 来るはず。つまり、あの林の辺りから

 出てくる可能性が高い」

そう言って、近くの林を指さすガンスリンガー。

次に、ガンスリンガーは近くにあった石積みの

壁に目を向けた。

『師匠の考えた通りなら、奴らは『あれ』を

 するだけの規模。となれば……』

「この石積みの壁の部分にそれを設置する。

 ここと、あそこにだ」

「それは構いませんけど、何で二つを離すんですか?」

「向かってくるゴブリン共に対して二つの地点から

 V字を描くように銃弾を浴びせる。そうすることで、

 奴らは二つの方向から攻撃を受ける事になる。

 単一方向からの攻撃よりは、制圧能力があがる」

武闘家の疑問に答えるガンスリンガー。そして

彼は次に令嬢騎士達の方に向き直った。

「人手が足りない。戦闘が始まったら、これの

 操作を頼むかもしれない」

「構わないが、我々は銃の操作など分からないぞ。

 仮に扱えたとしても、君ほど上手く扱えるか

 どうかも怪しい」

「扱い方は俺が教える。それに、当たらなくても

構わない。こいつは雨のように銃弾を敵に

撃ち込む。弾幕によって奴らを牽制出来れば

それで十分だ」

少々戸惑い気味の令嬢騎士に答えるガンスリンガー。

「ガンスリンガーさんはどうするんですか?」

「俺は屋根の上からこいつ、G98で狙撃を

 行う」

 

そう言って馬車の上から下ろしたそれは、

M1873と一緒に持ってきた銃、G98、或いは

『Gew98』とも呼ばれる物だ。

 

その後、二箇所に『それ』を設置したガンスリンガー

は令嬢騎士達に操作を教えると、自分は

Gew98のメンテをしていた。

しかし、彼に近づこうとする物は居ない。皆、

ガンスリンガー達が設置した物と彼の持つ

武器を見て、訝しむような視線を彼に

送っていた。

誰も彼と組んだことが無いから、当然『銃』の

性能や戦い方など知らない。それが拍車を

かけていたのだ。

 

しかし、それは覆される事になる。

その戦いの時に。

 

そして、夜がやってきた。

令嬢騎士と彼女の一党、武闘家の5人は石垣に

設置した『それ』を隠す為に布をかぶせ、その

すぐ側に待機していた。

ガンスリンガーは、Gew98と共に屋根の上に

上がり、伏せの姿勢のまま密かに森を見つめていた。

 

そして……。

   『ガサッ』

茂みの中から、ゴブリン共が現れた。

そして、ゴブリン共は木の板に人間やエルフの

女をくくりつけた、生きた盾を使ってじわじわと

迫ってきた。しかし……。

 

「≪酩酊≫」

「≪眠雲≫」

そこに、道士のドランクや相手を眠らせるスリープの

魔法が掛けられ、ゴブリン共はたちまち眠って

しまう。

そして、隠れていた冒険者が現れ、盾を回収し

すぐに退避する。

それを、ゴブリンシャーマン達が狙うが……。

 

「やらせると……」

本物の『死神』の目が、既にシャーマン達を捉えていた。

「思うか」

次の瞬間。

   『ドゥンッ!』

銃声が響いた。

   『ボッ!』

一匹のシャーマンの頭が吹っ飛ぶ。

突然の銃声に、近くにいた冒険者は耳を塞ぎ、

少し離れた所にいた冒険者は何事かと、

ガンスリンガーの方を向く。

 

肝心のガンスリンガーは……。

   『ガシャンッ』

伏せた姿勢のままボルトハンドルを90度上に向け、

後ろへ引く。この時の動作で、初弾の空薬莢が

排出される。

   『ガシャンッ』

引いたボルトハンドルを前進させ、ハンドルを

右に倒す。

そして……。

   『ドゥンッ!』

   『ボッ!』

もう一匹、ゴブリンシャーマンを射貫く。

   『ガシャガシャンッ!』

更に今度は慣れた手つきでリロードの速度を

上げ……。

   『ドゥンッ!』

3発目を発射した。三度、シャーマンの頭が

吹き飛ぶ。

 

そして、それを近くの木の上から見ていた弓手は……。

『あれが、あいつの作った銃って言う武器の力、か。

 ……世の中、何と出会うか、分かんないわね』

驚きに満ちた瞳で彼の動きを見ていた弓手だが、

すぐに頭をかぶり振ると、弓でゴブリン共を

狙い撃ち出した。

同様に……。

『はっ。あれで翠玉だと?』

近くに居た、重戦士は笑みを浮かべながら一滴の汗を

流す。

『悪い冗談みたいだぜ。あんなのを作れる奴が

 居たなんてよぉ』

辺境最高と言われる一党を率いる彼でも、銃

と言う存在には、心底驚かされているようだ。

 

 

そして、シャーマンをある程度打ち倒し終わると、

今度は控えていた冒険者達が一斉に前に出て、

ゴブリン共との乱戦が始まった。

ガンスリンガーはGew98のまま、後方から

現れるゴブリン共を狙い撃ちにして数を

減らしていく。そして、

ガンスリンガーがGew98の装填に使う

5連発クリップを3つほど撃ち終わった時。

「来た!ライダーだ!狼に乗ったゴブリンが

 来るぞ!」

屋根の上で警戒に当たっていた冒険者が

叫ぶ。

 

それを聞いた冒険者達が一斉に下がる。

弓を装備した冒険者達が攻撃を加えるが、

あまり命中率は良くない。

この状況で必要とされるのは、

点の攻撃では無く、線、或いは面の攻撃

が可能な兵器。

制圧能力に優れた兵器である。

そして、それはそこに『ある』。

 

「今だっ!」

屋根の上のガンスリンガーが叫ぶ。

すると、武闘家と僧侶の二人が、『それ』を

覆っていた布を取っ払う。

 

布の下から現れたそれこそ、『マキシム機関銃』。

史実においてMG08、PM M1910の原型になった

世界初の全自動式機関銃であり、これまで騎兵や歩兵

による突撃が当たり前に行われていた戦争を

一変させた兵器であり、これを敵に回した兵士達は、

マキシム機関銃をこう呼んだ。

『悪魔の絵筆』、と。

 

そして、その悪魔が、今正に目覚めようとしていた。

 

「ってぇっ!」

ガンスリンガーの叫んだ次の瞬間。

 

   『『ドドドドドドドドッ!!』』

2丁の悪魔が、火を噴いた。

マキシム機関銃から303ブリティッシュ弾の

雨が降り注ぐ。そして……。

   『ボッ!ボボッ!』

   『Giaaaaaa!!??』

撃ち込まれた弾丸が、ゴブリン共の体を

紙でも引き裂くかのごとく、たやすく貫通し、

穿ち、吹き飛ばす。

「弾幕を張って、奴らを近づけるなっ!」

そこにガンスリンガーの声が聞こえ、

マキシム機関銃を操っていたレーアレンジャー

とエルフ魔術師が、撃ちまくる。

銃弾が雨あられとゴブリンと狼に降り注ぐ。

更に、Gew98からM1873に切り替えた

ガンスリンガーの射撃が、弾幕の隙間を

縫って攻め入るゴブリンライダーが騎乗

する狼の頭を撃ち抜き、足を止める。

 

それさえも超えて、何とか接近するゴブリン

ライダーもいた。だが……。

「構えろっ!」

槍使いのかけ声と共に、地面に隠されていた

槍衾が構えられる。襲いかかろうとしていた

狼やゴブリン達が、槍衾に貫かれる。

   『ドッ!』

「うわっ!」

その時、新米戦士の眼前にゴブリンが落下してきた。

『し、死んでる?』

動かないゴブリンを前に、彼はそう思った。だが……。

   『ギロッ!』

突如としてゴブリンが起き上がり、手にした

短剣を突き刺そうとする。

彼は驚き対応が間に合わない。

と、その時。

「はぁッ!」

   『バキッ!』

近くに居た武闘家の蹴りがゴブリンの短剣を弾き……。

「せいっ!」

   『ドゴッ!』

続けて繰り出された踵落としがゴブリンの

頭を頭蓋骨ごとたたき割る。

「何してるの!?油断してると死ぬわよ!」

そう言うと、武闘家の彼女は驚き腰を抜かしている

彼を一瞥して走り去っていった。

「大丈夫!?」

彼の元に仲間の見習い聖女が駆け寄る。

「あ、あぁ」

しかし、彼は空返事をしながら呆然と走り

去っていた武闘家の事を思い出していた。

彼女の胸元で、黒曜のプレートが輝いていた

のを一瞬見ていたからだ。

『あの子、黒曜のプレートだった。この前まで、

 白磁だったのに。……それだけ、強いって

 事なのか?』

一瞬だけ、彼はそんなことを考えてしまうの

だった。

 

そして、戦いは続いていた。その時。

「ッ!」

援護射撃をしていたガンスリンガーが

何かに気づいた。

「気をつけろ!投擲1!何か飛んでくるぞ!」

彼の警告に気づいて、落下地点の辺りに居た

冒険者が散る。

「危ねぇ!何だ今の!?」

驚く冒険者。投げ慣れたそれは、石畳の

近くで止まっていた。そして、その近くには

新米戦士と見習い聖女の二人がいたが、

その二人が見たそれは、グシャグシャに

なった冒険者の遺体だった。

 

「お゛えぇぇぇぇっ!?」

あまりのことに見習い聖女の彼女は嘔吐し、

戦士の彼も表情が青ざめる。

その時。

「ッ。新手か」

少しばかり遺体の方を見ていたガンスリンガーが

再びGew98に持ち替えて構え、前を見据える。

 

そして、森の中から何匹も巨体のゴブリン、

ホブゴブリンが現れる。

しかし、その先頭を歩くのは、ホブをして

更に巨大な個体。『ゴブリンチャンピオン』

が居た。

『あれが、ゴブリンチャンピオンか。

 可能なら、ここからの一発で』

狙いをチャンピオンの頭に付け、引き金を

引こうとしたその時。

「大変だ!側面からゴブリンが来るぞぉ!」

不意に、近くの叫びが聞こえた為に、

ガンスリンガーの指が震え、すぐにトリガー

から指を離して彼は体を起こし、周囲を

見回し、そして気づいた。

チャンピオンの居る主戦場を前方に捉えた時、

そこ左側面の10時の方向。そちらから

ゴブリンの集団が接近してきていた。

そうこうしている内に、ベテラン冒険者達は

前方のホブとの戦闘を開始している。

『2方向からの攻撃。こちらの戦力を

 分散させるつもりか。だが、この第2波が

 囮。第3、第4と攻撃が行われる可能性も

 否定出来ない』

そう考えたガンスリンガーは、Gew98を

抱え屋根から飛び降りた。馬車に近づき、

Gew98を置くとM1873を手にするガンスリンガー。

「新手のゴブリン共は俺が抑える」

そして、近くで慌てている新米の冒険者

達にその事を伝える。

「だ、大丈夫なのかよ!?見た感じ、

 30匹か40匹くらいは居るぞ!?」

と、冒険者の一人が慌てるが……。

「その程度なら何とかなる。開けた場所

 なら、こいつが使える」

そう言って、M1873に目を向けるガンスリンガー。

彼とて、これまでゴブリンを殺し、翠玉に

なるまで上がっていった冒険者だ。

「それに、これの攻撃が囮の可能性もある。

 お前達は、第3、第4の攻撃を警戒

 してくれ」

そう言うと、歩き出そうとしたガンスリンガー。

そこへ。

 

「私も行きます」

後ろから彼に追いついた人物がいた。

M1887を装備した、武闘家だった。

「私だって、銃は使えます」

「……」

振り返り、しばし無言を貫く

ガンスリンガー。そこへ。

「我々もお供しよう」

先ほどまでマキシム機関銃を

操作していた令嬢騎士達が

歩み寄ってくる。

「用意された弾は使い切ってしまった。

 それに、30匹を相手にするのなら、

 数は多い方が良いだろう?」

「……。わかった」

5人の言葉に、しばし間を置いてから頷く

ガンスリンガー。

そして、彼は前を向き歩き出す。その

刹那。

「背中は、任せろ」

小さくそう呟くのだった。

 

 

そして、重戦士を始めとしたプロ達が

ホブやチャンピオンと戦っている頃。

 

ゴブリンスレイヤーがゴブリンロードと

一騎打ちをしている頃。

 

第3の戦闘が始まった。

   『ドウッ!』

   『ボッ!』

ガンスリンガーの持つ、M73の一撃が

ゴブリンの頭を吹き飛ばす。

「はぁっ!」

   『ズバッ』

令嬢騎士の剣がゴブリンの首を切り飛ばす。

   『Giaaaa!』

そこにゴブリンが一匹、背後から飛びかかるが。

「はぁっ!」

   『バキッ!』

M1887の銃身を左手で持ち、空いた右手で

武闘家がそのゴブリンを殴り飛ばす。更に、

M87を持ち替え、腰だめに構えた武闘家。

次の瞬間、狙いを定め……。

   『ガァァァンッ!』

12ゲージの散弾が放たれ、ゴブリンの体を

バラバラに引き裂く。

そこに数体のゴブリンが向かってくるが……。

「やらせんっ!」

エルフ魔術師の火球がそれを焼き払い……。

「そこっ!」

レーアレンジャーの矢が穿つ。

そして……。

   『ドウッ!』

ガンスリンガーのM73が一匹の頭を吹き飛ばす。

   『ガシャンッドウッ!』

更にレバーを前後させリロード。そしてすぐに

第2射を放ち、ゴブリンを撃ち抜く。

 

前衛を令嬢騎士が務め、その背中を武闘家と

ガンスリンガーがサポートする。

そして、更に後方からレンジャーと魔術師が

攻撃を放つ。

 

彼、彼女たち6人の連携の前に、ゴブリン共は

瞬く間に数を減らしていった。

そして……。

   『ガァァァンッ!』

視界に映る、最後のゴブリンを武闘家の

M87が撃ち抜く。

「ふぅ」

『これで、5発目。弾はもう残ってないか』

息をつき、残弾がもう無い事を確認する

武闘家。

「大丈夫か?」

そこへ、ガンスリンガーが近づく。

「あ、はい。ガンスリンガーさんも、

 大丈夫ですか?」

「あぁ。お前達のおかげで、だいぶ楽に

 始末できた」

そう語る二人の元へ、令嬢騎士達が

歩み寄ってくる。

 

その時。

   『ガサッ』

かすかに、草木が動く音が二人の耳に聞こえた。

二人は、互いの視線を合わせ、静かに頷く。

ガンスリンガーは僅かに左を向き、

武闘家も自分の左側を見る。そして、もう一度

小さく頷く。彼らは、お互い何をすべきか

一瞬で理解する。と、その時。

   『ババッ!』

   『『Giaaaaaaa!』』

伏兵のつもりなのか、短剣を構えたゴブリンが

左右から二人に向かって飛びかかった。

「ッ!危ない!」

それを見た令嬢騎士が叫ぶ。だが、

二人は既に奇襲の気配を察知していた。

 

   『スッ』

ガンスリンガーが、腿のホルスターから

SAAを抜き、左側から接近するゴブリンの

狙いを定める。

   『グッ』

武闘家は、M87の銃身部分を両手で握り

しめ、振りかぶる。

そして……。

   『ドンッ!』

   『ボッ!』

ガンスリンガーの放った銃弾が1匹目の

ゴブリンの頭を撃ち抜き……。

   『ドゴッ!』

武闘家の振り抜いたM87の銃床が

ゴブリンの頭を粉砕する。

 

   『『ドッ』』

そして、ゴブリンの死体が草地の上に落下し、

動かなくなった。

しばし、動かなくなったゴブリンにSAAの

銃口を向けつつ、周囲を警戒する

ガンスリンガー。しかし、敵が居ないと

分かると、彼はホルスターにSAAを

戻し、後ろに振り返った。

「ハァ、ハァ、ハァ……。ふぅ」

荒い息の武闘家が何とか

呼吸を整えていた。

そして、改めてM87の様子を見るが……。

「あっ」

彼女はやってしまった、と思った。

「どうした?」

それに気づいて歩み寄るガンスリンガー。

「あ、あの。ごめんなさい。ガンスリンガーさん。

 そ、その、ストックの部分が……」

おずおずとM87を見せる武闘家。見ると、

殴った衝撃のせいか、木製ストックに

罅が入っていた。

「ごめんなさい、借り物なのに、こんな……」

すまなさそうに頭を下げる武闘家。

しかし……。

 

「これくらい、修理すればまた使えるように

 なる。……物は治せば使える。だが、

 命はそうは行かない。……お前が無事なら、

 それで良い」

そう言って、彼は武闘家の肩に手を置いた。

彼女は、その言葉に顔を赤らめながら、

視線を上げる。

その時、彼女はガンスリンガーが鎧の下で

笑っているように感じた。

 

のだが……。

「それより、戻るぞ。まだ戦闘は続いている」

「あ、は、はいっ!」

踵を返して歩き出した彼に、慌てて続く

武闘家。

それに令嬢騎士達も続く。

「ガンスリンガー殿、もしや素直では

 無いのか?」

「もうちょっと褒めて上げれば

 良いのにね~」

クックッと笑みを堪えながらの

令嬢騎士の言葉に、レンジャーが

同意する。

そして、それを聞いていた武闘家は……。

『ガンスリンガーさんに、もっと、

 褒められる、か』

と、その事を考えたのだが……。

   『ブルッ』

『な、何かキャラが違う気がする』

悪寒で体を震わせ、冷や汗を掻くのだった。

 

 

そして、戻った時には……。

「あら、あんた達戻ってきたのね。そっちは

 どうだった?」

真っ先に6人に気づいた弓手が声を掛ける。

「ゴブリンを30匹ほど撃破してきた。

 こちらは、終わったのか?」

「えぇ、ついさっきね」

ガンスリンガーの質問に答える弓手。

見渡すと、そこかしこにホブの死体が

転がっている。そして、目を引く

のが、横方向に真っ二つにされた

チャンピオンの死体だ。

 

それを確認したガンスリンガーは、

M73に弾丸を装填する。

「俺は念のため森に入って師匠達を

 探す」

「あ、なら私も」

その後、ガンスリンガーと武闘家は

二人で森へ入っていき、左腕に深い傷を

負ったゴブリンスレイヤーと神官。

そして、ゴブリンロードの首を携え

戻ってきた。

 

 

戦闘終了後。ギルドの食堂にて。

勝利を祝い、弓手のかけ声で宴会騒ぎが

始まっていた。

その一角で食事を取っているガンスリンガー

と武闘家。

「……勝ちましたね、私達」

「あぁ」

ややあって、静かに呟く武闘家。それに

頷くガンスリンガー。

「何だか、実感沸きません。この前まで、

 一介の冒険者だったのに、何だか最近は

 色んな事の、中心の近くに居る気が

 します」

「そうか。……その事は、嫌か?」

頷きながらも、問い返すガンスリンガー。

「嫌か、ですか?そうですね。

 ……まぁ、確かに怖い事もありますけど、

 今ではそうでも無いです」

少しだけ考えてから、彼女は笑みを浮かべて

否定した。

「なぜだ?」

「そりゃぁ、確かに色々ありますけど、

 私は今って言う時間が充実している

 ような気がします」

「充実、か」

その言葉に、ガンスリンガーも最近の

事に思いをはせる。

 

『そう言えば、最近は殆ど彼女と行動を

 共にしていたな』

そう考え、目の前で食事をしている彼女を

見てしまうガンスリンガー。

そして、彼はある思いに気づく。

『そう、か。俺は、もしかしたら

 心の中で仲間を求めていたのかも

 しれない。師匠とも違う、俺の隣で

 一緒に戦ってくれる、仲間が』

 

人は、一人では生きていけない。

彼は、家族を、友人を殺された恨みから

力を求め、それを作りだし、がむしゃらに

戦い続けてきた。

そんな彼に、変化が訪れた。それは、

仲間を求める心。今まで、仲間という

存在について考えた事の無かった彼だが、

今正に彼は仲間を求めている自分の

心を自覚した。

『ならば、今度こそ逃げ出さずに、

 守り抜いて見せよう。『仲間』を』

 

静かな決意と共に、彼はこの瞬間、

勝利の美酒を仲間と、彼女と

分かち合うのだった。

 

     第9話 END

 




え~、と言う訳で今のところガンスリンガーに
とって武闘家は『仲間』という存在です。
正直、ガンスリンガーはゴブリンスレイヤー
ほど鈍感って訳でも無いんですけど、
恋愛って必要かな~って思って迷ってます。
楽しんで頂ければ幸いです。
感想や評価、お待ちしています!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。