アルベルト・フォン・ライヘンバッハ自叙伝   作:富川

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前話後半、もう少し描写を丁寧にした方が良いと思い加筆修正しました。
内容自体は変わっていません。


第三章登場人物紹介・その一

(ほぼ)登場順、血縁関係に多少配慮。原作登場人物に★、ファーストネーム等をこちらで考えた原作登場人物に☆

 

・アルベルト・フォン・ライヘンバッハ

 自叙伝の作者。名門帯剣貴族、ライヘンバッハ伯爵家の三男、カール・ハインリヒ・フォン・ライヘンバッハの長男としてこの世に生を受ける。転生者であり、帝国の封建社会に嫌悪を感じていた。ジークマイスター機関構成員。

 軍務省国防政策局運用政策課員、軍務省地方管理局辺境調査課員、内務省リューベック総督府特別監査室室長を経て三章開始時点で宇宙艦隊総司令部情報部第三課長を務め、ライヘンバッハ元帥府に所属している。階級は宇宙軍大佐。

 その後、宇宙軍准将に昇進し、ドラゴニア特別派遣艦隊第四分艦隊所属第一二特派戦隊司令官を務める。一連のドラゴニア戦役で奮戦し宇宙軍少将に昇進するも、クロプシュトック事件の煽りを受けて軍務省高等参事官補に左遷される。内務尚書カール・フォン・ブラッケ侯爵が結成したクロプシュトック事件の秘密捜査チームに参加。

 『三・二四政変』の際、クーデターに乗じてジークマイスター機関の掃討を図るセバスティアン・フォン・リューデリッツによって拘束され、帝臨法廷に引きずりだされ、国家反逆罪の罪で起訴される。

 

・カール・ハインリヒ・フォン・ライヘンバッハ

 名門帯剣貴族、ライヘンバッハ伯爵家の三男。宇宙暦七四〇年時点で帝国軍少将。やや傲慢だが優秀な人物。自分より能力に劣る兄たちが出世することに不満を持っていた。

 宇宙暦七四五年の第二次ティアマト会戦時、青色槍騎兵艦隊副司令官を務めている。ベルディーニを戦死させ、英雄になる。この際帝国宇宙軍中将に昇進。

 宇宙暦七五四年までに宇宙軍大将に昇進し、黄色弓騎兵艦隊司令官を務めている。同年の第四次ロートリンゲン会戦で苦戦しながらも同盟軍を撃退、この功績で帝国宇宙軍上級大将に昇進し、宇宙艦隊副司令長官として一個中央艦隊と二個辺境艦隊を指揮下に収める。

 宇宙暦七五九年のリューベック大暴動を受け、リューベック総督府、駐留艦隊司令部の人事に介入し、腐敗を一掃した。

 宇宙暦七六〇年の『茶会(テー・パルティー)』計画においても本来ならば計画成功の為に臨機応変な対処を行う予定だったが、各勢力の思惑が絡んだ結果有効な手立てを打つことが出来なかった。

 その後、数年に渡って宇宙艦隊司令長官を務め、統帥本部総長クヴィスリング元帥と共に軍部保守派の領袖として知られたが、宇宙暦七六七年、前年のアスターテ会戦の大敗――というよりはそのショックによるオトフリート五世の崩御――の責任を取らされ、退役する。その直前には盟友クヴィスリング元帥、そして派閥的には対立するゾンネンフェルス元帥と協力してドラゴニア特別派遣艦隊の編成を実現させた。

 宇宙暦七六九年頃には枢密院議員を務めている。退役後も彼の部下たちを通じて軍への影響力を保っている。同年の帝国名士会議でも議員の一人として出席した他、クロプシュトック侯爵の叛逆罪について帝臨法廷で再審理が行われることが決まると、陪審員の一人に選ばれた。『三・二四政変』の際にクーデター派から逃走を試みた結果、事故で死亡。

 ジークマイスター機関の幹部である。

 

・オトフリート・フォン・ゴールデンバウム五世★

 財政再建に奮闘する皇帝。通称倹約帝。吝嗇帝とも。元々質素を好む人柄ではあるが、流石に内心ではうんざりしている。リューデリッツが確信犯的にイゼルローン要塞建設費用を過小に見積もって提示したために、折角好転しつつあった財政状態を再び悪化させてしまった。激怒しながらも要塞の必要性は理解していた為に追加の課税を実行する為に名士会議を開くが、その場で三男クレメンツからの皇帝批判を浴びてしまう。

 何とか抵抗を排し帝前三部会の招集までこぎつけるが、ドラゴニア派遣艦隊が文字通り玉砕したとの知らせにショックを受け、無痛性心筋梗塞で他界。急逝したために後継者を決めておらず、リヒャルトとクレメンツの対立を招いてしまった。その余波により何と二年近い間皇帝空位の状態が続いた。

 

・リヒャルト・フォン・ゴールデンバウム★

 オトフリート五世倹約帝の長男。母親は寒門出身者(正確には嫁いだ後に実家が没落した)。保守的ながらも明晰な頭脳と勤勉さを兼ね備えた人物であり、官僚貴族たちから厚く支持されていた。軍部でも大局的な視点を持った人物は明確ではないがリヒャルト寄りの姿勢を取っていた。父の緊縮財政路線を継承したために領地貴族と平民の人気は低かった。

 宇宙暦七六八年、公的に断定された訳ではないものの、事実上皇室宮殿(パラスト・ローヤル)爆弾テロ事件の黒幕という汚名を着せられ、新無憂宮(ノイエ・サンスーシ)西離宮に幽閉される。クレメンツ一世即位後は公爵位を与えられ、リヒャルト・フォン・ベーネミュンデと名乗らされることになる。

 宇宙暦七六九年、西離宮大火で死亡。今でも出火の原因は分かっていないが、彼の死は旧リヒャルト大公派のクレメンツ大公派に対する憎悪、あるいは恐怖を爆発させ、クーデターという非常の手段を決意させる一員となった。

 

・クレメンツ・フォン・ゴールデンバウム★

 オトフリート五世倹約帝の三男。若いころから軍に勤務し、宇宙軍大将まで昇進した人物。演出と人心掌握に長けており、兵士や民衆から高い人気を得ていた。元々クロプシュトック侯爵と軍の艦隊派将校を有力な支持者としていたが、アルベルトとコンスタンツェの婚約を期にクロプシュトック侯爵家が自身と不仲であるライヘンバッハ伯爵家・クヴィスリング侯爵家と接近した関係で疎遠となる。

 宇宙暦七六五年の帝国名士会議までにクロプシュトック侯爵家の後援を諦め、ブラウンシュヴァイク公爵・リッテンハイム侯爵らと手を組んだ。同名士会議で皇帝オトフリート五世の批判を行い、『弾劾者クレメンツ大公』と呼ばれる。

 その後も開明的な改革者を演じながら、巧妙に領地貴族の利権を擁護して勢力を拡大、リヒャルト大公派に抗する。

 宇宙暦七六八年、支持者のリッテンハイム侯爵がブラウンシュヴァイク公爵、アンドレアス公爵、リヒャルト大公らを殺害、あるいは陥れるべく画策した皇室宮殿(パラスト・ローヤル)爆弾テロ事件に際して、その関与が疑われているがハッキリしたことは分かっていない。

 同年、クレメンツ一世として即位する。その閣僚は保守派の中でも特に質が悪い、国家への忠誠心など微塵も持ち合わせていない門閥貴族たちと、改革派の中でも特に急進的な開明派の官僚貴族(一部平民)に数名の中立派を混ぜたという顔触れであり、「極右と極左の連立政権」あるいは皮肉混じりに「帝国史上最も優秀な反国家的組織」とも称される酷い有様であった。

 宇宙暦七六九年頃には案の定保守派と開明派の対立が激化し、その中で開明派の内務尚書カール・フォン・ブラッケの捜査が引き金となり、司法尚書ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム侯爵が失脚する。さらに叛逆者に仕立てられたウィルヘルム・フォン・クロプシュトック侯爵を追討することすら出来ず、クロプシュトック侯爵の追討令を凍結せざるを得なくなる。その状況下でリヒャルト大公が不自然な死を遂げたために、旧リヒャルト大公派から暗殺を指示したと疑われ、クーデターを招く。この『三・二四政変』で兄フリードリヒに譲位する。

 

・エーリッヒ・フォン・ゴールデンバウム

 クレメンツ一世の皇太子。

 宇宙暦七六八年頃、クリスティーネ・フォン・ゴールデンバウムの前で彼女と伯父フリードリヒを罵倒した結果、クリスティーネの猛反論を受け衆人環視の中で涙ぐんでしまう。

 

・ヨハン・フォン・アンドレアス

 皇室の血を引く領地貴族。ブラウンシュヴァイク公爵・リッテンハイム侯爵に匹敵する大貴族でもある。公爵。オトフリート五世倹約帝を強力に支持し、その信頼も厚く、宰相代理兼国務尚書を務めた。オトフリート五世の死後はリヒャルト大公の最も有力な支持者となった。

 宇宙暦七六八年のクロプシュトック事件で死亡。内務尚書カール・フォン・ブラッケ侯爵の秘密捜査チームは、本来の筋書きでは彼が同事件の黒幕に仕立て上げられる予定だったが、いくつかの偶然で本当の黒幕も想定していない死を遂げてしまったと推測している。公爵位は息子が継承。

 

・エルベルト・フォン・アンドレアス

 ヨハンの息子。宇宙暦七六七年に成人したばかりの若者。

 宇宙暦七六九年の『三・二四政変』ではクレメンツ一世がヨハン・フォン・アンドレアスの死んだ爆弾テロ事件に関与していたのではないかという不信感から最終的にクーデター派を支持する。

 

・オイゲン・フォン・カストロプ★

 オトフリート五世倹約帝下の財務尚書。領地貴族であり、ブラウンシュヴァイク公爵やリッテンハイム侯爵にも対抗可能な大貴族であった。公爵。オットー・ハインツ二世帝の治世時、皇太子オトフリート(後のオトフリート五世)とリヒテンラーデ子爵の説得で、領地貴族への課税も含んだ新租税法を支持した。その見返りとして徴税権を一手に握る財務尚書の地位を得て、その後長年に渡って不正蓄財に励んだ。その権勢は凄まじく、彼自身の卓越した政治力もあって、オトフリート五世もアンドレアス公爵もブラウンシュヴァイク公爵も手出しすることが出来なかった。

 宇宙暦七六六年にオトフリート五世が崩御した後の皇位継承争いでは当初中立派として振舞ったが、ブラウンシュヴァイク公爵やリッテンハイム侯爵と何らかの取引を行いクレメンツ大公派に加わった。その為、皇位継承争いが激化する中で一時は財務尚書解任に追い込まれたが、政争に飽き飽きした一部の貴族が半ばヤケクソでフリードリヒ擁立の素振りを見せたことで、両大公派が妥協し留任した。

 宇宙暦七六八年のクロプシュトック事件で死亡。クレメンツ一世即位後に長年に渡る不正蓄財を帝前三部会の場で弾劾された。この弾劾はクレメンツ一世政権で全閣僚が積極的に同意して行われた数少ない決定の一つだが、その莫大な遺産の使い道は保守派と開明派の対立の火種となった。

 

・ヘルマン・フォン・ルーゲ☆

 オトフリート五世倹約帝治世下の司法尚書。名門官僚貴族家当主。伯爵。オトフリート五世倹約帝崩御後に侯爵となり、さらに皇位継承争いでは一貫してリヒャルト大公派として振舞う。

 宇宙暦七六八年のクロプシュトック事件では重傷を負うも生き延びる。重傷を負ったことでリヒャルト大公派の中心人物であったが、クレメンツ一世即位後の旧リヒャルト大公派粛清を免れた。しかし司法尚書の地位は失う。

 宇宙暦七六九年、クロプシュトック侯爵らと共に『三・二四政変』を起こす。かつての同僚リヒテンラーデ伯爵を説得し、クーデター派に加わらせた。政変後、公爵・司法尚書となる。

 

・アルフレッド・フォン・ハーン

 オトフリート五世倹約帝治世下の科学尚書。伯爵。皇位継承争いではリヒャルト大公派につく。

 宇宙暦七六八年のクロプシュトック事件では重傷を負うも生き延びる。傷を負ったことでリヒャルト大公派の中心人物であったが、クレメンツ一世即位後の旧リヒャルト大公派粛清を免れた。しかし科学尚書の地位は失う。

 

・クラウス・フォン・リヒテンラーデ★

 かつてマクシミリアン=ヨーゼフ二世晴眼帝に重用された旧ミュンツァー派に所属する若手官僚。子爵。皇太子オトフリート(オトフリート五世)に対し、租税法改正法案を通すために帝前三部会の開催を進言。カストロプ公爵を切り崩すことで長年断念させられていた租税法改正法案を可決させることに成功する。

 オトフリート五世倹約帝治世下では宮廷書記官長を務める。オトフリート五世の崩御後はリヒャルト大公派につく。この頃伯爵となる。

 宇宙暦七六八年のクロプシュトック事件では重傷を負うも生き延びる。傷を負ったことでリヒャルト大公派の中心人物であったが、クレメンツ一世即位後の旧リヒャルト大公派に対する粛清を免れた。また、クレメンツ一世は門閥貴族の牽制役として旧リヒャルト大公派の一部を赦免して勢力を保たせたために、宮廷書記官長に比べれば格下ではあるが内務省自治統制庁長官という要職を任された。

 宇宙暦七六九年には帝国上層部で殆ど唯一、辺境情勢の深刻な悪化に気づき警鐘を鳴らしている。『悲鳴のような進言』で名士会議の議題に「辺境情勢について」を加えたが、肝心の会議では殆ど話し合われることは無かった。

 同年の『三・二四政変』ではクーデター派への協力を一旦は拒んだが、ルーゲ侯爵の説得で参加を決意した。政変後、侯爵・内務尚書となる。

 

・エドマンド・フォン・ゾンネンフェルス★

 第二次ティアマト会戦後の危機的状況下で頭角を現した名将。しかしながら結婚運悪く、三度結婚して三度とも妻に先立たれた。驚くべきことに、その三度の結婚相手は全員オトフリート四世強精帝の娘だった。彼自身も四一歳という若さでこの世を去る。最終階級は上級大将。死後、元帥号が追贈された。彼の友人ブルッフ中将はその訃報を聞き堪え切れず「ゾンネンフェルスは皇帝のため、才能・財産・精力の全てを吸い上げられて死んだ」と評してしまい、予備役に編入された。 

 

・エーヴァルト・フォン・ゾンネンフェルス

 故エドマンド・フォン・ゾンネンフェルス元帥の弟。「皇帝のため、才能・財産・精力の全てを吸い上げられて死んだ」兄に代わって名門ゾンネンフェルス伯爵家を継ぐ。兄に及ばないながらも優秀な軍人であり、宇宙暦七六五年には若くして軍務尚書の地位にある。リューデリッツやエーレンベルク、シュタイエルマルクをメンバーとする軍部改革派の首領。

 宇宙暦七六七年、前年のアスターテ会戦の大敗――というよりはそのショックによるオトフリート五世の崩御――の責任を取らされ、退役する。その直前には派閥的には対立するライヘンバッハ元帥、クヴィスリング元帥と協力してドラゴニア特別派遣艦隊の編成を実現させた。

 

・テオドール・フォン・ゾンネンフェルス

 エーヴァルトの息子。

 宇宙暦七六七年にドラゴニア特別派遣艦隊参謀長に就任。階級は宇宙軍少将。自分よりさらに若いミュッケンベルガー、アルベルトらの台頭に焦りを覚えていた。

 宇宙暦七六八年のドラゴニア戦役の中で戦略判断を誤り、分進合撃戦略を取った結果、各個撃破を招く。大敗の中で行方不明に。

 

・ユルゲン・オファー・フォン・クヴィスリング

 オトフリート五世倹約帝治世下の統帥本部総長。名門帯剣貴族の侯爵家当主。カール・ハインリヒ・フォン・ライヘンバッハ元帥と共に軍部保守派の領袖として知られた。

 宇宙暦七六七年、前年のアスターテ会戦の大敗――というよりはそのショックによるオトフリート五世の崩御――の責任を取らされ、退役する。その直前には盟友ライヘンバッハ元帥、そして派閥的には対立するゾンネンフェルス元帥と協力してドラゴニア特別派遣艦隊の編成を実現させた。

 宇宙暦七六八年のクロプシュトック事件で死亡。その派閥構成員の大半はライヘンバッハ派に合流。

 

・ヘルマン・フォン・クヴィスリング

 クヴィスリング侯爵家の分家である男爵家当主。ユルゲン・オファーは大叔父。

 宇宙暦七六九年時点で青色槍騎兵艦隊司令官代理を務める。階級は宇宙軍中将。中央艦隊司令官であるが、二年前に壊滅した艦隊であり、再編と練成が主任務。同年の『三・二四政変』時にクーデター派に拘束される。

 

・ハイドリッヒ・フォン・アイゼンベルガー

 宇宙暦七五五年時点で教育総監部本部長。ロベルト・ハーゼンシュタインの後教育総監代理に就任。帝国宇宙軍大将。

 宇宙暦七六五年には軍務副尚書を務めている。階級は宇宙軍上級大将。軍部改革派の一員であり、フーベルト・フォン・エーレンベルクを腹心とする。

 宇宙暦七六七年に軍務尚書に就任する。この時、宇宙軍元帥となる。貴族の威光に弱く、同盟軍が『回廊の自由(フリーダム・オブ・コーリダー)』作戦を発動した際もクレメンツ大公派の大貴族に「要塞防衛に軍を動かした」と思われるのを恐れて援軍を出さなかった。

 宇宙暦七六八年のクロプシュトック事件では奇跡的に軽傷で済んだが、内務尚書カール・フォン・ブラッケ侯爵の秘密捜査チームはリッテンハイム侯爵と縁が深いアイゼンベルガー元帥が爆弾の存在を知っていたのではないかと推測している。同事件の収拾にあたり、クレメンツ一世即位時には引き続き軍務尚書を務めていたが、その後何故か格下にあたる幕僚総監に転任させられている。

 

・ハウザー・フォン・シュタイエルマルク★

 ジークマイスター機関の幹部であり、第二次ティアマト会戦を利用した抵抗勢力の排除に貢献した。ミヒャールゼンの死後、ジークマイスター機関の指導者となる。

 宇宙暦七四五年の第二次ティアマト会戦時、青色槍騎兵艦隊司令官を務める。階級は宇宙軍中将。

 宇宙暦七五四年時点で赤色胸甲騎兵艦隊司令官を務める。階級は宇宙軍大将。

 宇宙暦七六一年時点で軍務省次官を務める。宇宙軍上級大将。

 宇宙暦七六七年に退役予定だったが、帝国軍三長官が辞任させられた影響で軍務副尚書として続投。同盟軍が『回廊の自由(フリーダム・オブ・コーリダー)』作戦を発動した際に演習を名目に赤色胸甲騎兵艦隊を動員することを提案したがアイゼンベルガー元帥に却下された。

 宇宙暦七六八年にはクロプシュトック事件で多くの高級士官が死亡した関係もあり、さらに退役が延期され、宇宙艦隊副司令長官に就任。この時元帥に昇進し、かつてのカール・ハインリヒのように三個辺境艦隊と二個中央艦隊の指揮権を委ねられ、フォルゲン星系に赴任した。

 

・クルト・フォン・シュタイエルマルク

 アルベルトの親友。元・有害図書愛好会副会長。在フェザーン帝国高等弁務官事務所駐在武官、ザールラント警備管区司令部情報参謀、第二二四巡航群司令、第七四機動群司令を務める。

 宇宙暦七六七年、ドラゴニア特別派遣艦隊所属第一二特派戦隊に第七四機動群を率いて合流する。ドラゴニア戦役では奮戦した。

 宇宙暦七六八年に父ハウザー・フォン・シュタイエルマルクが元帥・宇宙艦隊副司令長官となり、フォルゲン星系に赴任すると、これに従う。その後、シュタイエルマルク元帥府に所属しイゼルローン方面辺境で戦っている。

 ジークマイスター機関の構成員であり、現在は緊急性の高い情報をやり取りするイゼルローンルートでの同盟軍との直接連絡を担当している。

 

・アルベルト・フォン・マイヤーホーフェン☆

 宇宙暦七五一年に軍務省人事局長を務めている。階級は宇宙軍中将。名門帯剣貴族家出身者。

 宇宙暦七六五年には軍務政務官を務める。階級は宇宙軍大将。軍部保守派に属し、カール・ハインリヒ・フォン・ライヘンバッハ宇宙軍元帥に近い人物。

 宇宙暦七六七年にはドラゴニア特別派遣艦隊所属第一二特派戦隊司令官を務めるアルベルト・フォン・ライヘンバッハ宇宙軍准将の為に、自身の部下であるハウプト宇宙軍中佐を転属させた。

 宇宙暦七六八年には幕僚副総監を務めており、階級は宇宙軍上級大将となっていたが、クロプシュトック事件で死亡。

 

・エドマンド・フォン・シュタインホフ☆

 軍部改革派に属する軍人。ライヘンバッハ伯爵家に匹敵する名門帯剣貴族家の出身。

 宇宙暦七六五年時点で宇宙艦隊副司令長官を務める。階級は宇宙軍上級大将。翌年から始まった皇位継承争いでは一貫して中立派に属する。

 宇宙暦七六九年には統帥本部次長を務めている。『三・二四政変』でクーデター派支持を表明した。

 

・カール・フォン・エールセン

 宇宙暦七六五年時点の科学技術本部長。宇宙軍大将。子爵。

 宇宙暦七六八年には科学副尚書を務めているが、クロプシュトック事件で死亡。

 

・ウィルヘルム・フォン・クロプシュトック★

 ルドルフ大帝から信頼され、外様であるブラウンシュヴァイク公爵やリッテンハイム侯爵の封じ込めを任された元内務尚書アルブレヒト・フォン・クロプシュトックの子孫。名門中の名門クロプシュトック侯爵家の壮年当主。その成り立ちから領地貴族であっても帝国への確かな忠誠心を有している。

 宇宙暦七六五年時点で枢密院議長を務めている。軍の要人であるライヘンバッハ伯爵やクヴィスリング侯爵と誼を通じる為に姪コンスタンツェとアルベルト・フォン・ライヘンバッハの婚約を進める。一方でライヘンバッハ伯爵らに配慮するあまり、これまで後援していたクレメンツ大公と疎遠になり、ブラウンシュヴァイク公爵やリッテンハイム侯爵にクレメンツ大公が取り込まれてしまう。その為、その後の皇位継承争いではリヒャルト大公派の一員として振舞う。

 宇宙暦七六八年のクロプシュトック事件で偶然爆発の被害を受けなかった結果、リッテンハイム侯爵に黒幕に仕立て上げられてしまう。しかしながら、本来の計画ではアンドレアス公爵が黒幕に仕立て上げられるはずだったために関係各所の動きが遅れ、クロプシュトック侯爵はオーディン脱出に成功する。その後、叛逆者の汚名を着せられ、これを好機と見たブラウンシュヴァイク公爵やリッテンハイム侯爵の私兵部隊から領地に侵攻されるが、自領に駐留する帝国正規軍艦隊の支持を取り付け抵抗、潮目が変わるまで耐えきることに成功する。

 宇宙暦七六九年、クレメンツ一世が自身への追討令を凍結する代わりに出頭を命じると、これに応じ、一定の私兵部隊を連れながら帝都へ向かう。この部隊は少数であったが、帝都のリューデリッツやリューネブルク伯爵と協力することでクーデターを決行、これは後世『三・二四政変』と呼ばれる。一部の研究者からはその手際の鮮やかさから、元々叛逆者に仕立てられる前からクーデター計画を練っていたのではないかとも指摘される。

 

・クリストフ・フォン・ノイエ・バイエルン

 対フェザーン貿易で経済的に力をつけ、ブラウンシュヴァイク公爵やリッテンハイム侯爵にも対抗可能と言われる領地貴族、ノイエ・バイエルン伯爵家の当主。親フェザーン派の代表格。

 宇宙暦七六五年時点で枢密院議員を務めている。オトフリート五世崩御後の皇位継承争いでは一貫して中立派として振舞う。

 宇宙暦七六八年のクロプシュトック事件で死亡。

 

・ジークベルト・フォン・ノイエ・バイエルン

 ノイエ・バイエルン伯爵家の分家当主。

 宇宙暦七六七年時点で枢密院議員を務めている。皇位継承争いでは当初中立派として振舞っていたが、本人の歴史趣味から開明派に近いヴェストパーレ男爵のサロン『ベイカー外不正規連隊』に出入りしている内に、周囲の開明派に感化され改革を叫ぶようになる。

 

・リヒャルト・フォン・ノイエ・バイエルン

 クリストフの息子。有害図書愛好会のメンバーでありアルベルトの友人。主に経済的な視点での開明思想の持ち主。

 宇宙暦七六七年にドラゴニア特別派遣艦隊所属第一分艦隊第二特派戦隊司令官を務める。階級は宇宙軍准将。ドラゴニア戦役では勇戦し生還。

 宇宙暦七六八年にクロプシュトック事件で父が死亡したため家督を継ぎ、枢密院議員となる。ブラッケ侯爵らを信頼しており、彼らの秘密捜査の結果から、父の仇としてリッテンハイム侯爵を敵視するようになった。

 宇宙暦七六九年の『三・二四政変』ではクレメンツ一世への不信感から最終的にクーデター派を支持。

 

 

・エリアス・フォン・ゾンネベルク

 ブラウンシュヴァイク公爵家一門の重鎮。伯爵家当主。

 宇宙暦七六五年には枢密院議員を務めている。クレメンツ大公が皇帝批判を行った名士会議に出席しており、皇帝批判への同意ともとれる振る舞いをしてしまったために顔面蒼白になる。

 宇宙暦七六八年にクレメンツ一世が即位すると無任所尚書として入閣する。

 宇宙暦七六九年の『三・二四政変』でクーデター派に抵抗して射殺される。

 

・ルトガー・フォン・ヘルクスハイマー☆

 リッテンハイム一門の重鎮。同一門の謀略を担当。伯爵家当主。

 宇宙暦七六五年には枢密院議員を務めている。

 宇宙暦七六八年にクレメンツ一世が即位すると典礼尚書として入閣。貴族にとって重要な情報の一つである帝国学士院の貴族血統データを巡ってブラウンシュヴァイク派の宮内尚書ノイケルン伯爵と対立した。

 宇宙暦七六八年末にはリッテンハイム侯爵に従いクロプシュトック侯爵領に侵攻、後方の補給線維持を担当していたが、クロプシュトック侯爵の策で複数の惑星から追い出され、補給線を寸断される。盟主の怒りを恐れ、本隊に叛乱の規模を過小に報告する一方で、奪還された各惑星に強引な再侵攻を開始する。

 同年の『三・二四政変』でクーデター派から逃走を試みた結果死亡。

 

・レオンハルト・フォン・マリーンドルフ

 オイゲン・フォン・カストロプの叔父。一門のマリーンドルフ伯爵家を継承した。

 宇宙暦七六五年に枢密院議員を務めている。

 

・フランツ・フォン・マリーンドルフ★

 カストロプ一門の名家マリーンドルフ伯爵家の跡取り。後当主。

 宇宙暦七六八年にオイゲン・フォン・カストロプ公爵がすんなりと弾劾された理由の一つは幼少の遺児マクシミリアンに代わって遺産相続の手続きに携わった彼がオイゲンの不正蓄財を知った後、素直に――「積極的に」とさえいえる――その全容を中央政府に報告し、全額を国庫に返還する姿勢を示したからである。この姿勢が評価されカストロプ公爵家の一部領地を与えられ侯爵となった。

 宇宙暦七六九年の帝国名士会議に議員の一人として出席した際には、その稀有な清廉さを知るエーレンベルク侯爵らから議長に推薦された。

 

・コンラート・フォン・バルトバッフェル

 皇族の血を引く名門、バルトバッフェル子爵家の現当主。ダゴン星域会戦前は侯爵位を有していた一族であり、一度男爵位まで下げられたが、晴眼帝の治世で子爵となる。

 頭の回転が速く、社交性に富んでいる。開明派ではリヒター子爵に次ぐ調整家と評価されている。一方で軽薄な振る舞いが多く見られ、派手な女性関係で知られるが、宮廷の要人たちはこれらを一種の擬態であると見做している。その為、彼自身は本気で女性の権利向上に努めているが、周囲からは――同じ開明派でさえほとんどの人間から――まともに取りあってもらえない。なお、開明派内では穏健派。

 カール・フェルディナント・フォン・インゴルシュタットとは幼馴染。

 宇宙暦七六五年に枢密院議員を務めている。翌年からの皇位継承争いでは中立派として振舞う。この頃ヴェストパーレ男爵のサロン、『ベイカー街不正規連隊』によく出入りしている。

 宇宙暦七六七年に枢密院で「オトフリート三世猜疑帝の末弟ブローネ侯爵レオンハルトの爵位を大公に引き上げ摂政とする案」を提案し、全会一致で可決される。同時期、かねてから親交のあったインゴルシュタット、ブラッケ、リヒターらと共に開明派を形成、リヒャルト大公派・クレメンツ大公派双方を批判しつつ改革を主張する。同年には開明派の活動を快く思わない社会秩序維持局からインゴルシュタットと共に出頭を命じられるがこれを拒否して帝都防衛軍司令部に籠城。社会秩序維持局に拘束を断念させる。

 宇宙暦七六八年のクレメンツ一世即位時、宮廷書記官長として入閣。自治領行政改革に取り組んだ。この頃既にブラッケやリヒターに匹敵する程平民からの人気がある。

 

・セバスティアン・フォン・リューデリッツ★

 宇宙暦七五一年頃、兵站輜重副総監を務める。階級は宇宙軍大将。保守的な価値観を持つが、極めて優秀な能吏であり、ジークマイスター機関の活動に気づく。暗闘の末、ミヒャールゼンの存在に辿り着き、ミヒャールゼンを死に追い込んだと思われる。

 宇宙暦七五六年頃には軍部改革派を率いている。名門帯剣貴族家出身。

 宇宙暦七六〇年頃、兵站輜重総監を務めており、階級は宇宙軍上級大将。オトフリート五世に『イゼルローン要塞建設建白書』を提出した。フェザーン勢力とリッテンハイム一門の協力を得ている模様。リューベック騒乱にどこまで絡んでいたかは不明だが、グリュックスブルク中将は必ずしも彼の思い通りに行動した訳ではない様子。

 宇宙暦七六三年にはついにイゼルローン要塞建設着工を実現させた。

 宇宙暦七六六年、イゼルローン要塞の建設費高騰の責任を取り兵站輜重総監を辞任する。

 宇宙暦七六九年には後備兵総監を務めている。階級は宇宙軍上級大将。『三・二四政変』に平民将校を引き込み、実働部隊を指揮した。クーデター派に協力した動機はジークマイスター機関の生き残りに勘付き、そのメンバーを根絶やしにしたかったから。

 

・フランツ・フォン・リューデリッツ

 セバスティアン・フォン・リューデリッツの弟。

 宇宙暦七六九年にエッケオストマルク総督府警備艦隊司令を務めている。階級は宇宙軍中将。

 

・アルベルト・フォン・リューデリッツ

 セバスティアン・フォン・リューデリッツの弟。

 宇宙暦七六九年にゲルマニア防衛軍司令官を務めている。階級は宇宙軍中将。『三・二四政変』では重要な役割を果たした。

 

・ハンネマン・フォン・シュターデン☆

 宇宙暦七六六年時点で宇宙軍大尉。アルベルトの部下であり、宇宙艦隊総司令部情報部第三課勤務。

 宇宙暦七六七年にはドラゴニア特別派遣艦隊所属第一二特派戦隊司令部に作戦参謀として配属される。

 

・リヒャルト・フォン・グローテヴォール

 ハウザー・フォン・シュタイエルマルクの元部下。

 宇宙暦七六六年時点で青色槍騎兵艦隊司令官兼ドラゴニア辺境軍管区司令を務めている。階級は宇宙軍大将。政争の影響で補給が滞っている中で苦しい戦いを何度も強いられる。第四次ドラゴニア会戦では甚大な被害を出しながらもなんとか同盟軍を撃退した。同年には独断で有力者に電報を送り、窮状を訴えた。

 同年四月、フレデリック・ジャスパー率いる四個艦隊の侵攻を受ける。正攻法では抗しきれないと判断したため、ジャスパーと直属の第四艦隊を撃破することで一発逆転を狙い、アスターテ星系で迎え撃つ。その部隊の置かれた状況から考えうる限り最高の勇戦をしながらも力尽き敗北。自身は直属と共に殿を務め玉砕した。

 

・クレーメンス・アイグナー

 ハウザー・フォン・シュタイエルマルクの元部下。第二次ティアマト会戦に参戦した数少ない平民将官の一人。

 宇宙暦七六六年時点で青色槍騎兵艦隊副司令官を務めている。階級は宇宙軍中将。兵士から人望厚い人物であったが、それ故にアスターテ会戦では彼の戦死をキッカケに戦線が崩壊した。


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