咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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百十四本場:準決勝大将戦開始

 準決勝第一試合副将後半戦オーラス四本場。

 前後半戦合計2位の阿知賀女子学院 宇野沢美由紀が、1位の綺亜羅高校 鬼島美誇人に、あと800点差と詰め寄った最終局面。

 

 美由紀の配牌は、

 {四六七八九⑤[⑤]77東南西北中}

 ここから打{北}。

 

 対する美誇人の配牌は、

 {一二三五九②③⑦189西北}

 ツモ{①}、打{西}。

 

 美由紀はツモ{東}、打{西}。

 

 美誇人、ツモ{一}、打{北}。

 

 美由紀、ツモ{南}、打{中}。

 

 美誇人、ツモ{3}、打{⑦}。

 

 美由紀、ダヴァンの打{南}をポン。打{四}で一向聴。

 手牌は、

 {六七八九⑤[⑤]77東東}  ポン{南横南南}

 

 美誇人、ツモ{三}、打{8}。

 

 美由紀、{白}をツモ切り。

 

 美誇人、ツモ{二}、打{五}で一向聴。

 手牌は、

 {一一二二三三九①②③139}

 

 美由紀、楓が捨てた{7}をポン。打{九}で聴牌。

 手牌は、

 {六七八⑤[⑤]東東}  ポン{横777}  ポン{南横南南}

 

 そして、美誇人は{2}を引いて聴牌。

 ただ、この時、小手返し………つまり、ツモってきた牌を、右端に付ける振りをして右から二番目に入れ、美誇人は右端の牌を切った。

 これを何気に右手で隠しながらやる。

 巧くやると、この一連の動作がツモ切りに見える。

 当然、打{9}。

 手牌は、

 {一一二二三三九①②③123}

 

 ここでダヴァンがツモって来た牌は{九}。

「(阿知賀も綺亜羅も、そろそろキテそうデース。{九}は私には不要牌ですが、阿知賀は、さっき切ってマスね。綺亜羅もツモ切りっぽかったデス。ならば………。)」

 案の定、ダヴァンは小手返しを見落としていた。

 この最終局面でも、まるで吸い込まれるように………いや、美誇人がそうゲームをメイクしたのだ………ダヴァンは無警戒で{九}を切った。

 それを美誇人は見逃すはずが無い。振り込ませるために小手返しを使ったのだから。

 当然、

「御無礼。」

 美誇人が、自分の手牌を倒した。

「ロンです。ジュンチャン三色一盃口。12000の四本場は13200。アナタのトビで終了です。」

「そ…そんな。じゃあ、何故、阿知賀の{九}を見逃して…。」

「いいえ、私はさっき聴牌したところです。後で映像を確認してください。アナタは私の小手返しを見逃したのです。」

「小手返し?」

「ちょっとした技術です。」

 そう言うと、美誇人は静かに立ち上がった。

 

 

 これで副将後半戦の順位と点数は、

 1位:美由紀 205800

 2位:美誇人 146900

 3位:楓 49800

 4位:ダヴァン -2500

 

 そして、副将前後半戦合計の順位と点数は、

 1位:美誇人 357600

 2位:美由紀 343600

 3位:楓 106200

 4位:ダヴァン -7400

 最後の最後で、何とか美誇人が逃げ切った。

 これで、ダークホース綺亜羅高校が勝ち星二を取り、決勝進出を決めた。

 

 ちなみに副将戦までの全トータルでは、

 1位:綺亜羅高校 1079000

 2位:阿知賀女子学院 1058500

 3位:臨海女子高校 777200

 4位:朝酌女子高校 285300

 臨海女子高校が、トップから大きく後退し、綺亜羅高校と阿知賀女子学院の二強状態となった。

 

 

「「「「ありがとうございました。」」」」

 最後の一礼を終えた。

 

 その直後、

「う…うわぁーん!」

 大声で美由紀が泣き出した。号泣だ。

 あそこまで点差を詰めておきながら、逆転できなかった。

 

 いや、前後半全体を通じて、どこかでリーチ棒一本でも多く取れていれば、オーラス三本場で逆転していたのだ。

 もっと言ってしまえば、オーラス、オーラス一本場のどちらかで高目をツモれていれば逆転できていた。

 悔いの残る試合となってしまった。

 

 これで困ったのは美誇人である。

 完全に美由紀に中で、美誇人は悪人になっていないだろうか?

 美誇人が勝ちに拘ったのはチームのためだし、別に美由紀を貶めるつもりは毛頭無い。

 むしろ、美由紀のファンだし、美由紀を悲しませたくはない。

「ええと、ゴメンね、宇野沢さん。私もチームのためだしさ…。」

「分かってます。私の方こそゴメンなさい。取り乱してしまって。800点差を逆転できなかった自分が情けなくて。」

「情けなくなんかない。宇野沢さん、強かったよ。本当に…。」

「…。」

「それより、一旦対局室を出よう。少ししたら大将戦が始まるからね。もう退室しなきゃいけないから。」

「そうですね…。」

 結果的に、美誇人は美由紀を連れ出すことに成功したようだ。

 

 …

 …

 …

 

 

 一先ず、美誇人と美由紀は自販機が並ぶ飲食コーナー(?)に向かった。

 そこには、くつろいで飲食できるようソファーが置かれていた。

 飲食コーナーに着く頃には、美由紀も多少は落ち着いていた。

 

 美誇人は、レモンジュースを二本購入すると、

「これでイイ?」

 そのうち一本を美由紀に渡した。

「あ…ありがとうございます。」

「実はね、私、宇野沢栞プロのサイン持ってて。」

「姉のですか?」

「うん。私、埼玉で大宮に近いから、ちょっと合宿場近くまで行ってね。」

「そっか。たしか埼玉県でしたよね。」

「うん。それでね。私、宇野沢プロ………ううん、実は宇野沢姉妹のファンなのよ。」

「えっ?」

 美由紀は、これには驚いた。姉はプロ雀士で知名度もあるし、三~四年前には白糸台高校のレギュラーで全国に名が通っていた。

 その姉のファンなら分かる。

 しかし、自分は、まだ全然無名の選手だ。

 咲や穏乃のチームメートであるがゆえ、所謂金魚の糞のようにダブルエースにくっついて勝ち上がれてきているに過ぎない。

 それが美由紀自身の自己評価だった。

 憧やゆいとは違って謙虚だ。

「姉妹で、とてもカワイくて。」

「カワイイだなんて、そんな。」

「それに、麻雀も強くて。」

 第三者視点では、美誇人が美由紀を口説いているようにしか見えないだろう。

 まあ、これをチャンスに、美誇人は美由紀との距離を縮めようとしているのだから、半ば口説いているようなものだが…。

「強いって、別に私は…。」

「栞プロも強いけど、美由紀さんも強いと思うわよ。コクマにも出てたでしょ?」

「は…はい。」

「その頃からファンなのよね。あと、県大会でも近畿大会でも活躍してたし…。でね、お願いがあるんだけど。」

「何でしょう?」

「うちのエース…的井美和がさ、宮永さんをLINE登録したって聞いてね。」

「えっ? あの宮永先輩がですか?」

「そう。」

「麻雀している時以外は、全然自分から積極的に動こうとしない宮永先輩がですか?」

「えっ?」

「周りから声をかけないと、いつも一人で静かに読書してて、人との交流が苦手な感じなんですけど、それが初対面の人と?」

 そこまで言うか…。

 さすがの美誇人も、そう思った。

「そうらしい。でさ、私も宇野沢さんをLINE登録したいんだけど…。」

「えぇ!?」

 再び美由紀が驚きの声を上げた。

 まさか自分と?

 麻雀を打った相手だけど、一応、初対面だ。悪い人では無さそうだけど………。でも、なんだか悪い気はしない。

「私なんかでイイんですか? 全然、宮永先輩みたいな大スターじゃないですよ!」

「お願いできるかな?」

「イイですけど。でも、本当に私、有名選手でもないし…。」

「それは関係ないって。じゃあ、イイかな?」

「は…はい。」

 なんとか、美誇人は美由紀との連絡ツールを手に入れた。

 一先ず、『友達からスタート』に漕ぎ着けて、美誇人の顔からは笑顔がこぼれていた。対局中の顔からは、全く想像できない表情である。

 美誇人にとっては、まさに念願の美由紀とのホットラインであった。

 

 丁度、美由紀とLINE繋がりした直後だった。

「カイってば、なにやってんの?」

 と言いながら、何故か綺亜羅高校の大将、稲輪敬子が二人に近づいてきた。

 彼女は、この自販機コーナーに寄ってから対局室に向かおうとしていたのだが、美誇人からすれば本当に間が悪い。

 それに、KYなヤツだ。空気が全然読めないレベルは、まさに特異体質的とも言える。

 

 美由紀が、

「ええと、鬼島さんってカイって呼ばれてるんですか?」

 と美誇人に聞いてきた。

 これに敬子が、

「苗字に鬼、名前に人が付いてるってのもあるけどさ、実際に麻雀を打ってみて『人の皮を被った鬼』みたいに思えたでしょ?」

 と答えてしまった。

 今の美誇人からすれば、まさにNGワードだ。

 何故ここで、

『人の皮を被った鬼』

 なんて単語を選ぶ?

 これでは、なんだか極悪人みたいに聞こえないだろうか?

 正直、美由紀の前で言って欲しくない単語選びだ。このKYさは、今に始まったことでは無いが、少しは考えて欲しい。

 美由紀に引かれたりしないだろうか?

 人格を疑われたりしないだろうか?

 非常に不安である。

 

 もっとも、美由紀も、今回は別にターゲットにされていたわけではないし、別に人鬼の餌食になったわけではない。

「い…いえ、別に私は…そこまでは…。」

 と素直に答えたのだが………。

「だから、人偏に鬼と書いて傀。それで私達はカイって呼んでるのよ!」

 と敬子はベラベラしゃべる。

 うーむ、少しは黙ってて欲しい。

 別に、今、美由紀に言わなくても良いだろう。

 ところが、今日に限って敬子の口は何故か止まらない。やはりKYだ。

「あと、あの『御無礼』ってのもさ、全てを見切った後にターゲット相手に言うんだけどね………。」

 もうこれ以上はやめてくれ。

 そう美誇人が思った丁度その時、近くを穏乃が通った。

「あれ、美由紀、ここに居たんだ。それと、綺亜羅の人達!」

 毎度の如く、穏乃が美誇人と敬子を指差した。

 一応、穏乃は相手の制服で綺亜羅高校の人間であることを認識していたようだ。残念ながら顔はキチンと覚えていない。

 

 美由紀が穏乃の方を振り返った。

「あっ! 高鴨先輩! これから出陣ですね。」

「そう。もう百速まで温まったから!」

「それって、意味分かんないですけど。」

「でも、なんで綺亜羅の人達と?」

「私が対局直後に泣き出しちゃったのを、鬼島さんが慰めてくれてたんです。」

「そうだったんだ。ええと、鬼島さんって?」

「はい?」

「こっちの人か。わざわざありがとう!」

 これには、

『おいおいおい、今まで控室のモニターで見ていただろう? もう忘れたのか?』

 と美由紀は思っていた。

 さすがに美誇人に失礼に感じた。

 しかし、これくらいでは美誇人は別になんとも思わない。敬子に比べれば、どんな相手でもマシだ。

「いえいえ。」

 そう言いながら美誇人は右手を軽く横に振った。

 

「じゃあ、私は、もう時間が無いから行くけど、美由紀も余り遅くならないうちに控室に戻った方がイイよ。負けて帰ってこないのは、みんなが心配するから。」

「そ…そうですね。」

「じゃあ、また後で!」

 そう言うと、穏乃は大急ぎで走って行った。

 

 たしかに、もう時間が無い。

「私も行かなきゃ。」

 敬子は、自販機で『つぶつぶドリアンジュース』を買うと、慌てて穏乃と同じ方向に走っていった。

 これを見て美誇人は、

「チャンレジャーだよね、つぶつぶドリアンジュースを買うの…。たまに敬子は買ってるけどさ…。」

 と呟いた。

 すると、美由紀が、

「あれって、白築プロが好きだから、麻雀大会の会場になりそうなところには必ず置いてあるって話ですよね。」

 と美誇人に言った。

「ええっ? あれが好きな人っているの?」

「ええ、いるんです。」

「それもワールドタイトルホルダーが!?」

「情報源は宮永先輩ですけどね。ほら、世界大会で白築プロが監督で。それで何度も勧められたって話です。」

「えっ?(何度も?)」

「それと、去年の春季大会では、白築プロがわざわざ阿知賀の控室に来て、人数分を差し入れしてくれたらしいですよ。」

「(ゲッ!?)」

「相手が相手なんで、みんな、美味しいって言いながら飲むしかなかったみたいです。」

「それって、拷問じゃない?」

 これには美誇人も目が点になった。役満を振り込んだ時以上の驚きである。

 多分、今年知ったネタの中で最凶最悪と言えよう。

 そして、美誇人は、

「(阿知賀の人達って、苦労してるんだな………。)」

 と思った。

 

 …

 …

 …

 

 

 少しして、対局室に穏乃が入室してきた。

 既に、朝酌女子高校大将の多久和李奈(多久和李緒姪:非能力者)と、臨海女子高校大将の南浦数絵が卓について他の二人が来るのを待っていた。

 

 そして、その数秒後、穏乃を追うように敬子が対局室に駆け込んできた。

「わぁ。足速いね、阿知賀の人。」

「ええと、貴女は綺亜羅の人?」

「そうでーす! 稲輪敬子。よろしく!」

「私は高鴨穏乃です。よろしく。」

 ふと、穏乃の視界の中に、見たくない缶の絵柄が飛び込んできた。

 間違いない。それは、あの『つぶつぶドリアンジュース』だ!

 まさか、それを敬子が手にしているとは!?

 

 穏乃が敬子に、

「それ、好きなの?」

 と聞きながら震える手で指差した。

 すると敬子は、

「割と。」

 と言うと、早速、その場で缶のプルトップを開けた。

 対局室をドリアン臭が侵食して行く。

 周りの人達が見せる嫌悪の視線にも全然気付かない。さすが、KYな娘と言われるだけはある。

 

 穏乃は、言葉を失ったまま静かに卓についた。

 さすがに言葉も出ない。

 そんなドリアン臭の漂う拷問室の中で、場決めがされた。

 ただ、麻雀関係者は、誰一人として『つぶつぶドリアンジュース』のことを悪く言えないらしい。ワールドタイトルホルダーの大好物なだけはある。

 

 起家は数絵、南家は李奈、西家は穏乃、北家は敬子に決まった。

 

 

 東一局、数絵の親。ドラは{⑨}。

 数絵にとって東場は、耐えるだけの時間帯。

 南場になるまで、まだまだスイッチは入らない。

 一応、数絵は振り込まないように守りを固める練習をしてきているが、敬子の捨て牌は非常に読み難い。

 

 敬子の捨て牌は、

 {②東[⑤]71③}

 萬子にでも染めているのだろうか?

 

 加えてドリアン臭のお陰で頭が回らない。

 それもあってか、数絵は、ノーケアーで{①}を捨てた。しかし、これで、

「ロン!」

 敬子が和了った。

 

 開かれた手牌は、

 {一一九九①⑨⑨西西北北中中}  ロン{①}  ドラ{⑨}

 

 混老七対子ドラ{2}。

「12000!」

 いきなり綺麗な手が炸裂した。

 

 ここでは、混老七対子を25符5翻で数えるルールになっていたが、仮にこれが4翻でも今回の和了りは点数が変わらない。いずれにしてもハネ満だ。

 25000点持ちなら、一気に半分近くまで点棒が減る振り込みだ。結構痛い。

「(いくら私が、東場が苦手でも、こんな和了りをされるとは…。)」

 さすがに、数絵の表情が曇った。ドリアン臭いからとか言っていられない。

 

 敬子と顔を合わせるのは、数絵にとっては、これで三度目だが、未だに敬子の切り出しに馴れない。もはや、東場だから………では数絵自身も片付けられない。

 

 なんと言うか、敬子の捨て牌自体もKYになっているようだ。それで常人には読み取るのが極めて困難との話らしい。




おまけ
前回からの続きです


十一.『勝利の女神?』

「エイスリンは、最終兵器…。」
ユウキの説明は、この言葉で始まった。
別にエイスリンが改造人間にされると言うわけではない。ただ、彼女はヒサにフクジ・エナジーを与える道具だけではなく、彼女を兵器に直結することで、とんでもない破壊兵器を発動させることが可能だと言うのだ。
そして、それは十五年前に捕えられたオバサンも同じだと言う。

詳細はヒサと第一司令官のマコ、そして、新兵器の研究開発担当者であるハツセ以外は知らないらしい。
当然、エイスリンとオバサンの二人を同時に直結すれば、今までに無い想像を絶する破壊兵器になることが容易に予想される。
少なくとも、ユウキが乗ってきた趣味の悪いゴルフボール型要塞を凌ぐと考えてよい。そうなると、リューカの超装甲『キラメ・スバラ・バリヤー』で太刀打ちできる保証は無い。

破壊兵器に繋がれる前にエイスリンを救出できるのがベスト。そうでないと、この操縦室に彼女を瞬間移動させるのが難しくなる。エイスリンのいるところから100メートルの範囲内にトヨネが近づける保証がないからだ。

クルミがイヤラシイ表情で私を見詰めた。
「もう、これは、やるしかないわね。」
「えっ。どう言うこと。」
「つ~ま~り~。ユウキ、やっちゃえ!」
クルミが裏切った。
私はユウキに抱きつかれ、そのまま押し倒された。
さらにナズナまでも、
「ほら。ユウキ。早くして!」
と言いながら私の頭を押さえつけた。
あれだけユウキを嫌っていた彼女が、ユウキの側に付いたのだ。エイスリンを助けるためとは言えズルイ…と言うかヒドイ………。
もしかしたら、ユウキよりも私の方がキライなのかも…。
結局、私はユウキに唇を奪われた。
まるで吸い付くようなキスだった。当たり前だ。私からフクジ・エナジーを吸い出しているのだ。


白望「(ユウキの役。私がやりたかった。ダル………。)」


ユウキの身体が妖艶なエロ女の姿に変わった。外見だけは今の私にそっくりな女だ。少なくとも中身は違うと思うけど…。
何だか複雑な心境だ。
三つ子達は、このユウキの姿を見ると、やっぱり表情が変わった。ユウキがこっちに寝返ったと言っても、まだ、わだかまりがあるのだろうか?
多分、この容姿にアレルギーでもあるのだろう。極悪人の顔として、相当根強くインプットされているに違いない。
だから、さっきまでのユウキよりも私の方が潜在的に嫌いなのだろう。
正直、三人の目が恐い。

「エイスリンを助けるためだけだからね!」
ナズナは、ツンとした顔でそう言うとユウキから顔を背けた。やっぱり仲間として素直に受け入れるのは無理みたいだ。私のことも、ユウキのことも…。

クルミとハツミが私にダブルフェードイン、三つ子達には、それぞれアコとシズノとコロモがフェードインした。


衣「全然、衣の台詞がない!」


私もユウキも作り物のボンバー美女。その作り物が、そろって同じ顔をしている。これは、これで変な気分だ。

衛星から見るキヨスミ星は地球に似た青い星だった。でも、地球よりも海の部分が少なく感じる。逆に砂漠化した部分は地球よりも広く、大陸の大半を占めているように見えた。

三体のロボットが衛星基地跡を飛び立った。そして、一気に大気圏に突入していった。
ヒサの居城の場所はユウキが知っている。
彼女の指示に従って行けば良い。
あと数百キロのところに来た時、正面からミサイルが撃ち込まれてきた。左右からは、レーザー砲が放たれてくる。
トヨネは両掌から電撃を放ち、トキとリューカは目からレーザー光線を撃ち込んでゆく。
三体のロボットは、敵のレーザー砲を避けながらミサイルを撃墜して先に進んでいった。

宇宙戦艦や戦闘機が攻めてくることは無かった。既に衛星基地での戦いで軍事勢力の殆ど失っていたためだろう。
そのまま、一気にヒサの居城前まで来た。
居城近くの山が二つに割れて、中から今までに無い巨大な大砲が出現した。またカゼコシ砲だ。毎回こればかりで、しつこい。
『単体では、やられる。』
そう思った私は、三体のロボットを合体させた。

スコヤンに向けてカゼコシ砲が撃ち放たれた。
サイズがサイズだけに恐ろしい威力だ。
私達は、それを間一髪避けた。
そのエナジー波が横を通り過ぎた時、ナズナが何かを感じ取った。
「エイスリン!」
そのエナジー波はハツセのユリ・エナジーと、エイスリンのフクジ・エナジーから作られていた。
その砲座にはハツセが座っていた。
ハツセもフクジ・エナジーをドーピングしているだけあって美人だ。
八頭身でスレンダー。長い足。きめ細かい肌。そして、巨乳。本当に男どもの理想像を絵に描いたみたいだ。


初瀬「胸には詰め物をして登場しているんだけどね。さすがに永水の人みたいな胸は無いし。」


どうせ、これも不当に手に入れた若さと美貌だろう。
エイスリンは、どこにいるのか?
ナズナがテレパシーを送って探っている。
シズノのミヤモリ・エナジーを身にまとっている今、彼女もテレパシーを使えるようになっていた。
「エイスリン、どこなの? エイスリン…。」
「ナズナなの?」
「そうよ。助けに来たの。どこにいるの?」
「良く分からない。でも、全身が何かに掴まれているみたいで動けないの。」
ナズナがカゼコシ砲の近くに照準を合わせてエイスリンの心の声が聞こえてくる場所を探る。でも、なかなか見つけられない。
もしかすると、ここから離れたところにいるのか?

さらに容赦無くカゼコシ砲が撃ち込まれてくる。
スコヤンが、その超エナジー波を高速で避けた。そして、そのままカゼコシ砲の後ろに回り込んでレーザーソードを突き刺した。
カゼコシ砲が爆発した。
でも、ヒサは、それを既に予想していたようだ。
彼女の嘲笑が辺り一帯に響き渡った。
「よく、ここまで来られたわね。私はキヨスミ星の総統ヒサ。カクラの小人達に言うわ。あなた達のアガキもここまでよ。このサキの力の前にひれ伏すが良いわ。」
随分、横柄な口調だ。
今度は、居城裏の山が二つに裂けた。そして、その中から全長100メートルには及ぶであろう超巨大ロボット『サキ』が出現した。
サキは巨大な盾と剣を手にしていた。その剣だけで50メートル以上ある。スコヤンの身の丈に匹敵する大きさだ。


咲「なんで私も巨大ロボットなんだろう?」

久「小鍛治プロを相手にするのよ。清澄じゃ、あなた以外に該当者はいないじゃない?」

咲「でも、姉帯さんよりも大きいなんて…。」

優希「ありえないじょ!」


サキの腹の部分はガラスか何かで出来ていて、中が見えるようになっていた。そして、その中には何万本ものコードに絡まれて身動きが取れないエイスリンの姿があった。傍目には、まるで触手プレイに見える。
そして、もう一人。エイスリンの隣には四十代くらいの女性の姿があった。ユウキがオバサンと言っていた女性だ。
その女性もエイスリンと同じように、全身にコードが絡まって動けない状態だった。

私は、その女性に見覚えがあった。
テレビの横に置いてある家族三人の写真。それに写っている女性だ。
「監督………じゃなくて、もしかして、お母さん?」
今まで俯いていた彼女が、顔を上げた。
「お母さんって、も…もしかして『塞ぐちゃん』なの?」
間違いない。この呼び名をするのは、私の母以外には有り得ない。
ユウキは、まさかの事実に驚いた顔をしていた。


優希「驚いたじょ! 熊倉監督の顔のシワが全部消えてるじぇい!」

トシ「特別出演できるって聞いて、テープを張ってシワを伸ばしたんだよ。」

塞「驚いたって、そっち?(監督が出てるって方じゃなくてシワが消えてる方?)」


「塞。お前はトシの娘なのか? それならフクジ・エナジーを大量に産生することも理解できるじょ。遺伝だったんだじぇい。」
たしかに、これは母からの遺伝なのだろう。
私の目に涙が溢れてきた。
母は死んだのではなかった。
私と父を捨てて出て行ったのでもなかった。
キヨスミ星人に拉致されていたのだ。
これじゃ、日本で捜索願を出したって見つかるはずが無い。銀河警察なんてものでも無ければ無理な話だ。

でも、私には一つ疑問があった。私の母が蒸発したのは十年くらい前だ。でも、ユウキの話ではキヨスミ星に十五年前からいることになっている。
蒸発したのが十五年前でキヨスミ星に連れてこられたのが十年前なら話は通じるけど、これでは辻褄が合わない。
すると、クルミの声が聞こえてきた。
「地球の一年とキヨスミ星の一年が違うってこと! 地球が太陽の周りを一周するのよりもキヨスミ星が恒星を一周する方が早いだけ。地球の一日を基準にすると、地球の一年は三百六十五日。キヨスミ星は二百四十日くらいが一年なの!」
なるほど。たしかに、それなら分かる。
そう言えば、地球は第三番惑星。この星は第二番惑星。恒星からの距離とかは分からないけど、一年が短くても納得する。


白望「(本当に塞は暗算できたのかな。まあ、暗算じゃなくて安産型なら分かるけど…。)」


再びヒサの横柄で不敵な声が聞こえてきた。
「あなた、地球人ね。ミホコ波は出ていないみたいだけど、トシの娘とはね。それと、ウィシュアート星の人間も乗っているようね。」
サキが私達の目の前に降り立った。もの凄い迫力だ。
でも、母とエイスリンが乗っていては攻撃できない。

私だけじゃない。スコヤンに乗るみんなが同じ考えだった。
ヒサは、そんな私達の心情を完全にバカにしているようだった。
「先に言っておくわ。エイスリンもトシも人質じゃなくて、サキの部品の一つなのよ。なので二人を盾にするつもりは無いわ。でもね、サキを破壊すれば二人の命が無いのは分かるわよね? もっとも、破壊できればの話だけどね。」
母とエイスリンを部品呼ばわりした。許せない!
サキが両腕を真横に伸ばした。
完全にガードを解いて攻撃して来いと言わんばかりだ。
「自慢の光線を撃ってみなさい。」
ヒサって女は随分、上から目線だ。

私は、まずスコヤンの両掌からサキの顔面に向けて電撃を放った。でも、サキは何のダメージも受けていない。


咲「顔を攻撃するなんて反則だよぉ。」

久「これくらい我慢して!」


続いてスコヤン・キカガクモヨウをサキの顔、胸、腕、足に撃ち込んだ。さすがに腹には撃ち込めないけど…。
でも、全然何とも無いみたいだ。

サキは母とエイスリンからフクジ・エナジーを吸収することで装甲装備が強固になっているのだろう。
やはり、二人の救出が先だ。助けると同時に敵の動力源を断ち切らなくちゃ駄目だ。
二人のいるところに接近すれば瞬間移動で救出できる。
私は、そう思った。
スコヤンが空高く飛び上がりレーザーソードを振り上げてサキに斬りかかった。サキを切り裂いて破壊し、爆発する前に二人を操縦室に瞬間移動させる。それがベストなシナリオだ。
でも、そう簡単には行かないだろう。
最低限、二人を100メートル圏内に入れる。これが目標だ。
「このカンを受けてみなさい!」
ヒサの言葉と共にサキの胸から光の弾が何十発も放たれた。これがカン(光子弾)だ。


和「カンは一局で四回までしかできませんけど?」

久「…。」


もの凄い威力だ。その直撃を受けてスコヤンは墜落した。
エイスリンが舌を噛もうとした。自分から供給されるエナジーが停止すれば、サキの動きは半減する。そう考えたのだ。
でもサキは、エイスリンが舌を噛むことさえ許さなかった。彼女の口に太いコードを無理やり突っ込んだのだ。何ともエロい状態になった。


桃子「これ、凄い状態っス。ドンブリメシ10杯はイケるっス。でも、私達の出番が無いっスね。残念っス。」


「やっぱり、私が行くしかないじょ。」
ユウキは円盤を抱えていた。
そうだ。私が地球から月面まで瞬間移動した時にクルミが使った円盤だ。あの瞬間移動装置なら遠く離れていても移動できる。
たしか、あの装置は触れている人を連れて別のところに移動する装置だ。クルミが操縦室後ろの棚にしまっておいたやつだ。これを使えば100メートル圏内は関係ない。

ユウキが円盤のスイッチを押した。
操縦室内が赤い光に包まれた。そして、光がおさまった時、ユウキの姿は操縦室から消えていた。
既にユウキはサキの腹の中にいた。
ユウキがコードを切って、まず母を助けようとした。でも、たくさんの極太コードが、まるで生きているみたいに動いてユウキに襲いかかってきた。
迫り来る何本ものコードを振り払ってはみたものの、その数が半端じゃない。
彼女がナイフを取り出した。そして近づいてきたコードを切り裂く。
また切り裂く。


純「これって『金太・マスカット・ナイフで切る』みたいな状態になってねえか?」

透華「純。さすがにそれはフシダラですわ!」


でも、コードは切れても、また伸びてくる。全然キリが無い。
ミイラ取りがミイラに…。
背後から襲ってきたコードがユウキの両腕に強く絡みついた。
『不覚…』
そして、彼女の身体にも大量のコードが絡んで動けなくなった。
その妖艶さゆえ、エイスリンよりもさらにエロい状態になっている。
いや、そんなことはどうでも良い。困ったことに、私の身体から彼女が吸い取ったフクジ・エナジーをサキが吸収し始めた。
彼女の身体が、どんどん変化していった。そして、妖艶な身体から細身の子供っぽい体型に変わってしまった。
この光景を見て三つ子達が怪訝そうな顔をしている。
もともとユウキはヒサの部下だ。サキのエナジー補給に一役買ったんじゃないかと疑い始めているのだろう。
すると、私の頭の中にハツミの声が響き渡った。これは三つ子達にもテレパシーとして送られていた。
「あれは、ワザとではありませんよー。ユウキは、少なくとも塞を裏切りませんですー。それに塞の母親を救い出したいのも彼女の本心ですよー。」
そうだろうけど…ユウキのドジ…。


優希「もう話も終盤。麻雀で言えば南三局くらいだじぇい。だから、東風の神でも、こうなって仕方が無いんだじぇい!」


私がユウキに吸われたエナジーも、もはやサキのエナジーの一部だ。
スコヤンに向けて一層激しくカンが連続して撃ち込まれてくる。
避けるのが精一杯だ。
ふと、カンからユウキのオーラも感じた。
もしかしたら…。
そうだ。ユウキのユリ・エナジーも吸収されているんだ。
何だかカンのパワーがどんどん上がっている気がする。
こうなったらユウキのカゼコシ砲を破った時みたいに、機体をコートするキラメ・スバラ・バリヤーを可能な限り強固にして接近してはどうだろうか?
「行け、スコヤン!」
私の掛け声と共に、スコヤンはバリヤーをマックスにして、サキに向かって突き進んだ。
でも、連発されるカンの威力は強烈だ。バリヤーを破壊するまでは行かないけど、衝撃が強くてスコヤンは後に弾き飛ばされる。


照「小鍛治プロを弾き飛ばすなんて。咲のカンの威力はそこまで成長したのか(シミジミ)。」


もう一度、さらにもう一度レーザーソードで斬りかかっていったけど、ある程度のところまでしか近づけない。カンの威力で、また弾き飛ばされてしまう。
これじゃ、全然近づけないし、サキに捕えられた三人をどうやって助けたら良いのか分からない。
とてもじゃないけど、勝ちようが無い。
勝てなければカクラ星は侵略されてしまう。
ウィシュアート星も解放されない。
地球も危険になるかもしれない。
私だってヒサの奴隷にされるかもしれない。
単なるエナジー製造機。エナジー電池にされるかもしれない。
それは嫌だ!

この時、クルミの声が頭の中に響き渡った。当然、三つ子達にもテレパシーとして送られていた。
「アサクミしか無いわ。アコ、シズノ、コロモお願い。」
私には何のことだか分からない。
すると、アコのテレパシーが聞こえてきた。
「塞の身体は大丈夫なの?」
「分からない。でも、もう、それしか方法が無いわ!」
「しかし、塞の身体が…。」
どうやらアサクミとは私の身体に関係しているらしい。
私はクルミに、
「どう言うことだか教えて。」
と頭の中で尋ねた。すると、クルミの考えていることがイメージとして伝わってきた。
なるほど…。
たしかに私の身体が危険かもしれない。でも、私は先に報酬をもらったし、死んでも勝たなきゃいけない。生きていても負けちゃ駄目だ。
私は、
「いいよ。やろう。」
と答えていた。
これしか可能性が無いなら、それに賭けるしかない。
アコとシズノとコロモが三つ子達の身体からフェードアウトした。そして、再び三人が光の玉となった。
「トリプルフェードイン!」
「クアドラプルフェードイン!」
シズノとアコが私の身体にフェードインした。そして
「クインタプルフェードイン!」
さらにコロモが私の身体にフェードインした。
五人のカクラ星人が持つ全てのミヤモリ・エナジーを同調率99%の私の身体で最大限に増幅しようと言うのだ。

私は最高の増幅器のはず。
身体が、もの凄く熱い。今の身体に固定してもらった時みたいな感覚だ。
でも、気を失っちゃ駄目だ。戦うんだ。
何とか意識を保て、私!

歯を食いしばる私の頭の中に、ある言葉が浮かんできた。アコの記憶から来た単語だ。
その言葉を私は無意識に口に出していた。
「スコヤン・シノ・リアレンジメント!」
スコヤンにはリューカ由来の七色に輝く長い尾がある。それが、リューカから全て切り離された。
次に三機の合体が解除された。ただ、リューカの首と足は収納されたまま、トヨネも人魚の姿ではなく、足のある状態のままだ。
そして、トキが胴体内に二つの頭を収納し、尾の取れたリューカの後ろに合体した。すると、リューカの胴体部分の装甲がどんどん広がって行き、トキ全体を覆った。
その状態でリューカとトキがトヨネの背中に合体して黄金の二対の翼を背中に持つ人型ロボットとなった。
続いて切れたリューカの尾が薄い板のように変化して、トヨネの全身を、順々に張り付くように覆っていった。
一つ、また一つ。
そして、今、リューカの超装甲で完全にトヨネの身体は包まれた。スコヤンの時よりも、もっと効率良くキラメ・スバラ・バリヤーで全体をコートすることができる。
右手にはレーザーソードではなく、金色の剣が握られていた。これも、リューカの尾から出来たものだ。
この姿………最終形態のことを、どうやら『シノ』と言うらしい。
愛と美の女神(?)スコヤンを超えた姿だ。
『シノ』とは、カクラ語で『勝利の女神』を意味するらしい。それも、軍略を駆使する知将に付き従う存在のようだ。

それと、どうやらカクラ語で『最終形態』を意味する単語が『アサクミ』のようだ。
多分、シノを真の勝利の女神とするか、そうじゃなくするかは私にかかっている。

シノがサキに斬りかかった。
激しく打ち込まれるカン。
でも、クルミ達五人のミヤモリ・エナジーを最大限に増幅している今、カンを受けても押し戻されない。そのまま一気に近づいて行った。
そして、金色の剣を振り下ろした。
サキは、それを盾でガードする。そして、今度はサキが巨大な剣『リンシャンカイホウ』を思い切り振り下ろしてきた。
無意識に、私はシノの左腕でサキのリンシャンカイホウを受け止めた。
『しまった!』
リンシャンカイホウの威力は不明だけど、とんでもない威力がありそうだ。これじゃ、シノの腕が切断されてしまう。私は、一瞬そう思った。
でも、シノの装甲は、私が思っている以上に凄い。あのリンシャンカイホウを完全に受け止めた。しかも無傷だ。
これが、シノの機体を皮のように包むキラメ・スバラ・バリヤーの真の力だ。リューカの尾で覆われているだけあって、スコヤンの時よりもバリヤーがパワーアップしているみたいだ。
続いてサキが至近距離で激しくカンを何発も撃ち込んできた。
さすがに、この距離だと衝撃がある。
でも、100メートル圏内に入った。
私は、母とエイスリンとユウキを瞬間移動させようとした。
でも、サキが巨大な盾『ウーピンカイホウ』でシノを強く後に押し飛ばした。
ヒサもユリ・エナジーと呼ばれる一種の超能力を持っている。私の考えを予期したのだろう。
救出失敗。

シノが再びサキに斬りかかった。
これをサキはリンシャンカイホウで受け止めた。
互いの剣がぶつかる鈍い金属音が辺り一面に激しくこだました。
この衝撃で両者は互いに後ろに弾き飛ばされた。

互角じゃ駄目だ。勝たなきゃ。
父の言葉が私の頭の中を駆け巡る。
『塞は最後の砦…』
こうなったら名前の通り最後の砦にでもなんにでもなってやる!
父の意図するところは違うけど…。
私は振り絞るように全身に力を入れた。
「行け、シノ!」
私の名前は塞。
コタツ大好きな日本人。
ちょっとだけ体力に自信のある女の子。
頭は中堅校レベル。
特段美人でもない。
多分、普通の女子高生。
そんな人間でも他の人にはできない何かがあって欲しい。
もし、それが増幅器としての才能なら、その能力で一番になりたい。
ここまできたら私が死んでも絶対勝ちたい。
クルミ達の力を、これ以上無いところまで増幅したい。
みんなの役に立ちたい!
そう思いながら私はシノにミヤモリ・エナジーを送り込み、叫び声を上げながら再びサキに斬りかかった。
サキがウーピンカイホウで防いできた。
でも、シノの剣『ベニクジャク』が、そのウーピンカイホウを切り裂いた。
さらにベニクジャクを振り上げてもう一振り。
サキの左腕を肩から切り落とす。
そして、顔面に向けてさらに一振り。
これをサキがリンシャンカイホウで受け止めた。でも、リンシャンカイホウをベニクジャクが見事に切り裂いた。
サキの顔も半分斜めに切り裂かれる。
再び、この至近距離!
ヒサのユリ・エナジーと母達のフクジ・エナジーを最大限に引き出して、サキは持てるエナジー全てをカンにして胸から撃ち放ってきた。
でも、シノは、それを避けなかった。
違う!
避ける必要が無かった。
みんなの想いがミヤモリ・エナジーの放出量を増大して、シノの装甲装備をより一層強固なものにしていたのだ。そして、前に突き進んで行こうとするパワーも増していた。だから、カンの衝撃も全然感じなかった。
そのまま、シノはベニクジャクをサキの胸に突き刺した。

『100メートル圏内だ!』
私は操縦室に三人を瞬間移動させた。
無事救出!
そして、突き刺したベニクジャクでサキの胸から斜め横に切り裂くと、今度はサキの半分失った頭から胴体にかけて真っ二つに切り裂いた。


咲「こんな風に殺される役だったなんて。」

久「今回は塞が主人公だから仕方ないわね。本編で頑張ってね!」

優希「エニグマティックだじぇい。」


サキが大爆発を起こした。
ヒサは、この爆発から脱出することができず、炎の渦に飲み込まれた。自らの若さと美貌のために他人の命を平気で犠牲にしてきた自己中女の最期だった。


久「でも、本当の私は、そこまで自己中じゃないわよ!」

他全員「…。(嘘つくな!)」
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