先鋒前半戦終了時の各校点数は、
暫定1位:白糸台高校 111300
暫定2位:阿知賀女子学院 104900
暫定3位:風越女子高校 93900
暫定4位:新道寺女子高校 89900
トップとラスの点差は21400点。まだまだ逆転可能な範囲だ。
休憩時間に入った。
憧が、
「やっぱり和に一歩及ばなかったか。」
と言いながら、席から立ち上がった。正直、ちょっとくやしい。
「たまたま運が良かっただけです。憧のほうこそ、随分と手を読み難い打ち方に変わったと思います。咲さんに相当鍛えられたのではないですか?」
「まあね。普通に打ったら、いずれ出てくる牌を読んで、それで待つくらいのことを簡単にやってのけるからね、サキは。」
「相変わらずですね。」
「転校初日から、こっちがケチョンケチョンにやられたからね。」
「想像つきます。」
「点数調整も自由自在で…。」
「えっ? 点数調整もヤったんですか?」
「ハルエの指示だったらしいけどね…。あれで自分達とのレベルの差を思い知らされたよ。全員丁度0点まで削るとか…、あんな神業までできるんだってね。」
「そうですか…。赤土さんに頼まれてやったのですね。また、いつもの悪い癖が出たのかと思いました。」
全力で麻雀をする。手を抜かない。
これが和と咲との間での約束である。
また、咲が約束を破ってプラマイゼロとかをやっていたのではないかと、和は一瞬思ったが、そうではないことを知り安心した。
「じゃあ、一応、晴絵に休憩時間には控室に戻るように言われてるから、ちょっと行ってくるね。」
そう言うと、憧は対局室を後にした。
憧が控室に戻ると、何故かそこには『つぶつぶドリアンジュース』が用意されていた。
世界大会中、監督の慕から薦められて、咲は、これを嫌と言うほど飲まされた。決してマズくはないのだが匂い…いや、臭いがキツイ。
今では、阿知賀女子学院麻雀部の中で罰ゲーム用として使われている。
憧は、
「ちょっと、私、罰ゲーム? 和に負けたから?」
と言った。いくらなんでも、あの対局内容で罰ゲームは、ちょっと採点が厳しい気がする。すると、玄が、
「違うのです。さっき、白築プロが差し入れに持ってきてくれたのです。」
と憧に答えた。
「えっ? マジ?」
「それでさっき、みんなは白築プロに薦められて飲んだのです。これは、憧ちゃんの分ですが、決して罰ゲームではないのです!」
「でも、チーム全体が罰ゲームを受けた気がする。」
たしかに、ゴミ箱には、つぶつぶドリアンジュースのカンが6個入っていた。憧以外のレギュラーメンバー四人と晴絵、慕が飲んだ分だろう。勿論、臭うので控室備え付けの流しで洗ってから捨ててある。
慕からの差し入れでは、さすがに断ることはできない。
恐らく、みんな、慕の前で作り笑顔で美味しいと言いながら…、いや、正しくは言わされながら飲んだに違いない。
本人は、つぶつぶドリアンジュースが大好きなので、もらったら嬉しいだろう。しかし、世の中全員が、慕と同レベルで『つぶつぶドリアンジュース大好きっ子』と勘違いしていないだろうか?
そこが、慕の唯一の問題点であろう。
いや、叔父との仲疑惑があるので唯一ではなく唯二(?)か。
「折角、白築プロが持ってきてくださったのです。先鋒戦が終わってからでイイので、これは、きちんと憧ちゃんが飲まなくてはならないのです!」
「(たしかに玄の言うとおりなんだけどね…。)」
しかし、これは、先鋒戦の結果を問わず、罰ゲームが待っていると言うことと同じだ。
憧は、一気にモチベーションが下がった。控室に戻ってこなければ良かったと、つくづく思った。
「それで、ハルエ。特に先鋒戦で問題とかは?」
「気になったのは、南三局の花田煌の和了りかな。」
「あの七対ドラ2ツモの満貫?」
「そう。ただ、あの時、実は風越の先鋒が、五巡目で大車輪を聴牌してたんだ。」
「本当?」
「こっちも見ていて驚いたよ。安目でもドラと赤牌があるから出和了りで三倍満。それが、その後、当り牌八枚のうち六枚を花田がツモって取り込んだ。」
「あとの二枚は?」
「最初から和がアタマで持ってた。花田は20000点以上削られない能力を持っていて、それを破ったのは、唯一、宮永照だけらしい。インターハイの準決勝でね。」
「あの時の…。」
「まあ、アコは細かく刻むタイプだから風越みたいな失敗はしないと思うけど、もし後半戦で花田の点数が73000近くまで落ち込んだ時は、花田からの出和了りだけじゃなくてツモ和了りもできなくなることは頭に入れておいて。」
「分かった。」
「他は想定の範囲内。特段問題はないよ。」
「じゃあ、基本、今までどおりってことでイイってことだね。」
「そうなるね。」
「それじゃ、後半戦、行ってくる!」
「頼んだよ!」
「了解!」
そう言うと、憧は勢い良く控室を飛び出して行った。もっとも、後半戦開始まで余り時間がないので、元々ゆっくりしていられないのだが…。
それから数分後、憧が対局室に姿を現した。
憧は、気合を入れるため、両手で両頬をパチンと叩いた。勿論、気合いが抜けたのは慕の差し入れが原因なのは言うまでもない。
場決めがされ、起家が和、南家が憧、西家が未春、北家が煌になった。
東一局は、
「ポン!」
憧が得意の鳴きの速攻で、
「ツモ! 1000、2000!」
得意の30符3翻を和了った。
東二局も、
「チー!」
憧が鳴きの速攻で決め、
「ツモ! 2000オール!」
和を抜いてトップに立った。
東二局二本場、憧の連荘。
ここでは、
「ツモ。800、1400。」
平和ツモドラ1で未春が和了った。実に前半戦東一局以来の和了りだ。
そして東三局、未春が迎えた親だったが、
「リーチ!」
和が六巡目で先制リーチをかけた。
とりあえず一発回避で憧は安牌切り。続く未春と煌も和の現物や筋牌を切って振り込みを回避した。
一発ツモにはならなかったが、数巡後、
「ツモ! メンピンツモドラ3。3000、6000です!」
アタマが裏ドラになってリーチ平和ツモドラ1の手がハネ満になった。これで、和が逆転して再びトップになった。
東四局も、
「リーチ!」
和が攻めた。そして、
「ツモ! リーチツモ一盃口ドラ2。2000、4000!」
満貫をツモ和了りし、二位の憧との差を広げた。
南一局、和の親。
これ以上、和との点差を広げてはならない。憧は、
「ポン!」
配牌で対子だった{中}を一鳴きし、
「ツモ! 2000、4000!」
赤牌とドラに恵まれて満貫を和了った。これで和との点差は6000点。そして、迎えた親だったが、
「ロン! 七対ドラ2。6400。」
煌が未春に振り込んだ。ツキが落ちている今、未春は、下手にリーチしても和了れないと踏んで七対子をダマで待っていたのだ。
これで憧の最後の親が流された。ただ、憧は、親が流されたことではなく、別のことを気にしていた。
「(これマズイんじゃない? 風越は、前半戦の失敗を全然分かってないみたい。)」
現在…南二局終了時点の各校点数は、
暫定1位:白糸台高校 122500
暫定2位:阿知賀女子学院 116500
暫定3位:風越女子高校 86300
暫定4位:新道寺女子高校 74700
阿知賀女子学院は二位だったが、問題は煌の失点だ。後半戦開始時点では93900点あった。つまり、ここまでに19200点を失っている。
ただ、煌は20000点以上削られない。よって、30符3翻の手ですらツモ和了りを封じられたことになる。
「(もー。余計なことしてくれちゃって!)」
前半戦で、何故大車輪が和了れなかったか、その一番の理由を未春は理解していなかった。もっとも煌の超ディフェンスが理解できるものなど、中々いないだろう。
憧は、この時、煌が纏うオーラに、前半戦南三局と同様、咲から放たれるオーラに近いものを感じていた。
一方の未春と和は、そんなものは全然感じ取れていない様子だった。
南三局、未春の親番。
未春としては、この親は大事にしたいところ。当然連荘を目指して、
「ポン!」
安手で良いから和了りたい。それで、
「チー!」
鳴いて手を進めるが、東ドラ2の手が中々聴牌できないでいた。
そうこうしているうちに、
「ツモ。700、1300。」
和が平和ツモドラ1を和了った。
この和了りを見て、憧は、
「(もう、最悪じゃん!)」
と心の中で叫んだ。
この和の和了で、煌の失点が19900点になったのだ。しかも、次局…オーラスは、その煌の親番である。
20000点以上削られない煌は、オーラスで、どんな危険牌を切っても当たられることはない。それが彼女の能力。
案の定、オーラス開始直後から煌はチュンチャン牌をドンドン切っていった。しかし、誰も当たることができない。
しかも、煌の能力でツモ和了りもできない。煌のノーテン罰符も発生しないだろう。
結局、
「(このツモ、スバラです!)」
十巡目で、
「ツモ! 16000オールです!」
煌の国士無双が炸裂した。しかも、煌は自分の特性を良く分かっている。下手に連荘すれば失点する。
「これで和了り止めにします!」
この劇的な親の役満ツモによる大逆転で先鋒戦は終了した。
現在の各校点数は、
暫定1位:新道寺女子高校 122000
暫定2位:白糸台高校 109200
暫定3位:阿知賀女子学院 99800
暫定4位:風越女子高校 69000
阿知賀女子学院の、まさかの三位転落であった。
「(なんもかんも、他人の能力を理解していないのが悪い!)」
さすがの憧も、今回の自分の失点は未春と和のせいであると思えてならなかった。
少なくとも、自分は煌の特性を踏まえていた。しかし、未春と和が煌の能力を最大限に引き出してしまった。
しかも、控室に戻れば、つぶつぶドリアンジュースが待っている。
「(罰ゲームを受ける気分だわ…。)」
正直、意気消沈した。
まあ、和の場合は、そもそも能力のことを理解しようとしていないのだが…。咲や優希と一緒に居たにもかかわらず…。
この頃、阿知賀女子学院控室では、灼が静かに燃えていた。
「じゃあ、ハルちゃん。行ってくる!」
「頼むよ、灼!」
「任せといて!」
こう言って、灼は控室を後にした。
対局室に向かう途中で、灼は憧に会った。
「憧、最後のは不運だったね。」
「和は、あの性格とポリシーだから仕方が無いとして、風越は、相手の能力のことを知らな過ぎ。自分の手しか見えていない。」
「でも、次鋒で絶対逆転するから。安心して!」
「期待してる!」
「うん。じゃあ。」
灼は、憧とハイタッチすると、そのまま後ろを振り返らずに対局室に向かった。
対局室には、灼が一番乗りだった。
次に入ってきたのは白糸台高校一年生の佐々野みかん。インターハイに出場していた鹿老渡高校の佐々野いちごの妹だ。
その次に入ってきたのは、風越女子高校の文堂星夏。そして、最後に入ってきたのは新道寺女子高校の友清藍里。友清朱里の従姉妹で朱里と同じ一年生。
みかんが、妙に灼のことを睨んでくる。
しかし、灼は、咲と晴絵の会話から、みかんが阿知賀女子学院に敵意を露わにしてくるであろうことを予め予想していた。
『やっぱりか…』
とは思ったが、ここで何を言っても解決しないだろう。
麻雀で捻じ伏せる。それしかない。
場決めがされ、みかんが起家となった。そして、南家は灼、西家が星夏、北家が藍里に決まった。
東一局、みかんの親。ドラは{西}。
灼は、ツモが良かった。四巡目には聴牌。そして、
「リーチ!」
得意の筒子多面聴でリーチをかけた。
他家は、一発回避で筒子切りを避ける。しかし、数巡後、
「ツモ! 2000、4000!」
開かれた手牌は、
{②③③③④[⑤]⑥778899} ツモ{①} 裏ドラは{一}
{①②④⑦}待ち…ピケットフェンス。
いきなりボーリングの特殊なピンの残り方と同じ待ちだ。
この和了りを見て、みかんは灼が本調子であると考えた。無理に力で押さず、さっさと早和了りして灼に和了らせない。そう言った戦法をとることにした。
東二局、灼の親。
ここでは、
「チー!」
みかんが鳴きで攻め、
「ツモ! タンヤオドラ2。1000、2000!」
まるで憧のような早和了りを決めた。
東三局、星夏の親。
さっきのみかんの和了りを見て、
「チー!」
藍里も灼マークで早和了りを目指すことにした。そして、
「ロン! 2000。」
星夏が切った牌でタンヤオドラ1を和了った。
東四局、藍里の親。ドラは{2}。
折角の親番だったが、藍里は配牌がバラバラだった。しかも、8種8牌なので流すこともできない。
国士無双狙いでは、先にみかんに和了られてしまうかもしれない。それで、藍里は一先ずヤオチュウ牌整理から始めた。
対するみかんの配牌は、偶数牌ばかりで面子ができていなかった。
端牌以外の奇数牌を藍里が捨ててくれれば鳴けるのだが、残念ながらヤオチュウ牌しか出てこない。しかも、ツモも字牌ばかりで手が進まなかった。
そんな中、八巡目で,
「リーチ!」
灼が捨て牌を横に曲げた。恐らく、筒子多面聴。
星夏は、一先ず現物切りで一発回避。
藍里のツモ牌は{西}。ツモ切り。
みかんのツモ牌は{北}。ここは字牌ツモばかりの状態に助けられた感じがある。当然、ツモ切り。
しかし、
「一発ツモ! メンホン赤1。3000、6000!」
開かれた手牌は、
{③③③④[⑤]⑥⑦⑦⑦⑦南南南} ツモ{②}
{②④⑤⑧}待ち。
これは、ボーリングのピンの残り方ではバケットに相当する。
現在の各校点数は、
暫定1位:阿知賀女子学院 117800
暫定2位:新道寺女子高校 115000
暫定3位:白糸台高校 106200
暫定4位:風越女子高校 61000
この灼の和了りで、阿知賀女子学院がトップに返り咲いた。
南一局、みかんの親。
ここでは、
「ツモ! 1000、2000。」
藍里が、鳴き麻雀で灼の手が出来上がる前に30符3翻を早和了りした。勿論、3位のみかんの親を流すのも目的だ。
これで、またもや新道寺女子高校がトップになった。
南二局、灼の親。
今までヤキトリだった星夏が、ようやく聴牌できた。
安手だったが、一先ず和了り優先でダマで待ち、
「ツモ。平和ドラ1。700、1300。」
ツモ和了りした。これで、ヤキトリを回避できた。
南三局、星夏の親番。
前局の和了りでツキを呼び込めるかと期待したが、
「チー!」
やはり、みかんのほうが手が早く、
「ツモ! 1000、2000!」
またもや30符3翻の手だ。
そして、オーラス、藍里の親。
ここでも、
「ツモ! 1000、2000!」
みかんが30符3翻の和了りを決めた。
各校点数は、
暫定1位:新道寺女子高校 115300
暫定2位:阿知賀女子学院 113500
暫定3位:白糸台高校 111500
暫定4位:風越女子高校 59700
1位と3位の点差が3800点の接戦となった。
おまけ
咲「大喜利コーナーです!」
全員:やる気のない拍手。
咲「今回も曲に歌詞をつけてもらいます。今回の御題は、ビバルディの四季から春です。」
初美「ハルルですかー?」
咲「人名ではなく、フォーシーズンの春です。
タ、タッタッタッタタター
タタ、タッタッタッタタター
タタ、タータタタッタッタ(分かるかな?)
これに歌詞をつけてください。(定義としては替え歌じゃないから大丈夫だよね?)」
穏乃「はい! では私から、
晴れ渡ってきたー
風も吹いてきたー
今日も山に行く!」
咲「結構イイですね。他に何方か。」
莉子「では、私が!
イーピン掴んできたー
これを振り込んだー
三位に転落…。」
いちご「私も行きます。
九索を捨てたらー
役満振り込んだー
考慮しとらんよ…。」
咲「両方とも、ジャジャジャジャーンの時と同じネタですね。穏乃ちゃんのが先になければ、イイって思ったかもしれませんが…。他、ありませんか?」
漫「じゃあ、私が。
お好み焼きとー
焼きそばを食べたー
たこ焼きも食べる!」
咲「実家がお好み焼きやさんの上重さんらしいですね。
で、やっぱり、雰囲気的に最初の穏乃ちゃんのがイイかな。では、穏乃ちゃんに座布団一枚御願いします。」
穏乃「ありがとうございます!」
咲「それでは、次は替え歌を作ってもらいます。
題材は、これです!
…
…
…
済みません。禁止事項になりますので消去します!
…
…
…
咲「話が無くなってしまいましたが………。
ええと、もう、これは、6400振り込みをずっと訴え続けてきた安福莉子さんにします。
莉子さんに座布団一枚お願いします。」