春季大会決勝戦、先鋒戦が終了した。
勝ち星は、下馬評どおり淡が掴んだが、綺亜羅高校の鷲尾静香が予想以上の大健闘を見せた。個人戦での活躍も期待されるところである。
「「「「ありがとうございました!」」」」
対局後の挨拶を済ませると、先鋒選手は対局室を後にした。
淡は、控室に戻る途中で光に会った。
「勝ち星取ったよ!」
と嬉しそうな声を出す淡。
優勝がかかった一戦だ。勝って嬉しくないはずがない。
「お疲れ。でも、結構強かったジャン、キラー(綺亜羅高校のこと)の人。淡が負けたらどうしようって心配したよ。」
「まあ、キラーも強かったけど、永水が後半戦で落ち着きを取り戻した感じがあったんで、それで永水を落とすために、一瞬だけわざとキラーに支配させたってこと!」
「(マジで淡が? 咲じゃあるまいし、そんな器用なこと………。)」
「一応、私だって他家を利用するとか、考えてるんだから!」
「そうなんだ。淡にしては珍しいって思った。今までは自力で押して行く感じが強かったから。」
「まあ、私だって成長してるってことで! じゃあ、光もガンバ!」
「OK!」
次鋒戦は、宮永光、狩宿萌(狩宿巴妹)、小走ゆい(小走やえ妹)、竜崎鳴海の戦い。基本的に魔物認定されているのは光だけだ。
綺亜羅高校の鳴海は確かに不気味だ。先鋒の静香と同じくらいの腕前と聞く。
とは言え、綺亜羅高校のエース、的井美和が準決勝戦で咲を相手に大敗している。なので、美和より弱いとされる鳴海は、光にとっては敵ではないと予想する。
問題は、別のところにある。
言うまでもなく、中堅戦は、咲が圧倒的点差で勝利するだろう。それこそ、麻里香には申し訳ないが、今回は麻里香に被害者になってもらった感じだ。
大将戦は和に任せた。阿知賀こども麻雀クラブからの付き合いと言うこともあり、穏乃のことは白糸台高校の中で和が一番よく知っているからだ。
もっとも、穏乃がそう簡単に負けるとも思えないが………。
恐らく、白糸台高校では淡と光が、阿知賀女子学院では咲と穏乃が勝ち星を取る前提で考えるべきだろう。
そうすると、やはり副将戦が鍵となる。白糸台高校が副将戦を征すれば白糸台高校が、阿知賀女子学院が副将戦を征すれば阿知賀女子学院が優勝すると言っても過言ではないだろう。
ただ、そうでないケースも当然有り得る。副将戦を他の二校のどちらかが取った場合だ。その時は、優勝は白糸台高校と阿知賀女子学院の得失点差争いになる。
阿知賀女子学院は、間違いなく咲が中堅戦で得失点差対策の大勝利を目指すはず。それこそ、三人トバしはムリでも、一人くらいはトバしにかかるだろう。
ならば、光も次鋒戦で咲に負けないくらいの稼ぎを叩き出す必要がある。
ただ勝つだけではダメなのだ。光も得失点差対策に向けて、どれだけ圧倒的に勝てるかまで求められる。
光は、トイレ→自販機コースを経由して対局室へと向かった。
彼女が対局室に到着した時点で、既に他の三人は入室を済ませていた。光が一番最後の入室となった。
光が卓に付くと場決めがされ、起家は綺亜羅高校竜崎鳴海、南家は永水女子高校狩宿萌、西家は阿知賀女子学院小走ゆい、北家は白糸台高校宮永光となった。
東一局、鳴海の親。
ここでは、光は和了りに向かわず鳴海の動きを観察する。ビデオで見た準決勝戦の闘牌が再現されるのかどうかのチェックだ。
三巡目で、
「ポン。」
ゆいが捨てた{白}を鳴海が鳴いた。準決勝戦と同じことが出来るのであれば、多分、これが特急券プラス槓ドラ4に化ける。
その三巡後、今度は萌が捨てた{9}を、
「ポン!」
またもや鳴海が鳴いた。これも、いずれ槓ドラに化けるのだろう。
その次巡、
「カン!」
鳴海は、{9}を加槓した。
槓ドラ表示牌は{8}。やはり準決勝戦で見せた槓ドラモロのりは偶然ではなく必然だったようだ。
嶺上牌を取り込み、鳴海は打{北}。既に{北}は二枚出ている。もし、誰かが待っているすれば地獄単騎しかない。
ここまで{北}を持っていたのは、恐らく光をケアしてのことだろう。巡目からすれば、通常なら光が、そろそろ聴牌していてもおかしくないからだ。
その次巡、
「カン!」
予想通り、鳴海が{白}を加槓した。
槓ドラ表示牌は{中}。これで白ドラ8の倍満が確定した。
ただ、咲とは違って嶺上開花で和了るわけではなさそうだ。
鳴海の捨て牌は三枚切れの{西}。やはり、敢えて安牌を残しているようだ。準決勝戦よりも振り込みに気を使っている感じがする。それだけ光が怖いのだろう。
そのさらに二巡後、
「ツモ。白ドラ8。8000オール。」
予想した通りの手で鳴海が和了った。
たしかに和了らせたら恐ろしい相手だ。
しかし、
「(エネルギー全開で、序盤で全てケリをつければ問題なし!)」
光は、鳴海に対して十分勝てる相手と踏んだ。
東一局一本場。
ここでは、
「ポン!」
萌が二巡目に捨てた{北}を早々に光が鳴いた。
そのさらに二巡後に、
「ポン!」
今度は鳴海が{東}を鳴いたが、その三巡後、
「ツモ。北ドラ3。2000、3900の一本場は2100、4000。」
光が第一弾の和了りを決めた。ここでの和了り役は1翻。光としては、決してムリの無いスタートだ。
東二局、萌の親。
ここでの光の縛りは出和了り役として2翻。
三巡目に、
「ポン!」
ゆいが捨てた{發}を鳴海が鳴いたが、その二巡後、
「ツモ! タンピンドラ2。2000、4000。」
鳴海が加槓する前に光が和了りを決めた。
その後も光は怒涛の和了りを連発した。
東三局も、
「ツモ! 平和一通ドラ2。3000、6000。」
東四局も、
「ツモ! タンピン三色ドラ2。6000オール。」
東四局一本場も、
「ツモ! ダブ東メンホンドラ2。8100オール。」
東四局二本場も、
「ツモ! 混一対々三暗刻ドラ3。8200オール。」
これで東一局一本場から合計六連続の和了りを決めた。
ただ、鳴海が槓ドラを乗せる前に和了ることを前提に、光は全て序盤での和了りに固執していた。そのため、自前の支配力をいつも以上に放出していた。
正直、飛ばし過ぎた。
そろそろ、いくら怪物光と言えど、休憩が必要だ。
現時点での次鋒前半戦の点数と順位は、
1位:光 187100
2位:鳴海 92700
3位:萌 60600
4位:ゆい 59600
既に2位の鳴海にダブルスコアの差をつけている。これなら、数局様子見しても大丈夫だろう。
ここで光は、一旦支配力の放出を停止した。
東四局三本場。
光が勝負から抜けたことにより、ツキのバランスが崩れた。これまで光に集中し始めていたツキが、一旦、光からを離れるのだ。
この局では、
「リーチ!」
どうやらツキは、ゆいに味方したらしい。
字牌処理を終えると同時に聴牌。辺張、嵌張にズバズバ入る。そして、ゆいは四巡目で先制リーチをかけた。
しかも、次巡、
「一発ツモです! メンタンピン一発ツモドラ1裏1で、3300、6300です!」
何の労せず、ハネ満をツモ和了りした。
南入した。
南一局、鳴海の親。ドラは{南}。
前局では、ゆいが運に恵まれた和了りを見せた。しかし、まだツキはゆいに定着したわけでは無い。
ここでは、
「ポン!」
萌が最初に動き出した。二巡目に光が捨てた{南}を鳴いたのだ。しかも、副露された部分だけでダブ南ドラ3の満貫が確定している。
ゆいも鳴海も、当然、萌をマークするが、まだ序盤で現物も極めて少なく、萌が何を狙っているのか絞り込めない。
結局、
「チー!」
鳴海は萌に鳴かせてしまった。
そして、その勢いは止まることなく、
「ツモ!」
そこから三巡後に萌が和了った。
「2000、4000!」
ただ、他家にとっては不幸中の幸いである。ダブ南ドラ3以外の役は無かった。
もし萌の手牌に赤牌が一枚でもあったらハネ満になっていた。
しかし、それが無かったことは、ある意味、まだ萌は、ツキに完全に恵まれている訳では無かったことを証明しているのかもしれない。
その証拠に、萌は、前半戦では以後和了れなくなる。
南二局、萌の親。
依然、光は支配力を止めたままである。
この半荘で攻めるところがあれば今しかない。これは、ゆいにも萌にも鳴海にも共通して言えることである。
この局は、二巡目で、
「ポン!」
とうとう鳴海が動き出した。光が捨てた{北}………鳴海の自風を鳴いたのだ。
その三巡後、
「カン!」
この半荘で初めて鳴海は暗槓した。副露されたのは{8}の槓子。
めくられた槓ドラ表示牌は{7}。これで鳴海の手は、副露されている分だけで最低でも北ドラ4の満貫が確定した。
そのさらに次巡、
「カン!」
鳴海は{北}を加槓した。当然のように、槓ドラ表示牌は{西}。北ドラ8の倍満が確定。
その次のツモ番で、
「ツモ。4000、8000!」
まるで流れに乗ったかのように鳴海がツモ和了りを決めた。
南三局、ゆいの親。
ここでも鳴海が、
「ポン!」
序盤から光が捨てた{西}を鳴き、
「カン!」
さらに次巡、鳴海は萌が捨てた{⑨}を大明槓した。
槓ドラは当然のように{⑨}。鳴海と玄が対局したら、槓ドラは二人のどちらに支配されるのか非常に興味が湧いてくる。
その三巡後、
「カン!」
鳴海は{西}を加槓。言うまでも無く二枚目の槓ドラは{西}。
そのさらに二巡後、
「ツモ。 4000、8000!」
この半荘で三回目の役牌ドラ8を鳴海が和了った。
これで次鋒前半戦の点数と順位は、
1位:光 170800
2位:鳴海 117400
3位:ゆい 58500
4位:萌 53300
ゆいに一回、萌に一回、鳴海に二回和了られたが、未だ光が余裕でトップを維持していた。それだけ東場での光の連続和了が圧倒的だったと言える。
しかも、この四局を休んだことで、光の支配力は元に戻っていた。ここから光は、怒涛の連続和了を目指す。
オーラス、光の親。
「ポン!」
ここでも鳴海が三巡目から早々に仕掛けてきた。
そして、その三巡後にも、
「ポン!」
再び鳴海が鳴いて、倍満に向けての準備を着々と進める。
しかし、その次巡、
「ツモ。」
鳴海が加槓する前に光がツモ和了りした。
「ピンツモドラ2。2600オール。」
これで光が和了り止めしても十分な点差だ。
しかし、
「一本場!」
光は連荘を宣言した。ここで他家から可能な限り点棒を搾り取る気なのだ。
オーラス一本場。
第一弾の和了りを決め、光の支配力は、さらなるパワーを増す。
たった四巡で、
「ツモ! タンピンツモドラ2。4100オール。」
光は親満をツモ和了りした。
まだ和了り役の縛りは2翻を終えたところ。まだまだ余裕がある。
当然、
「二本場!」
光の連荘は続く。
オーラス二本場も、
「平和三色ツモドラ2。6200オール!」
オーラス三本場も、
「メンタンピン一発ツモ一盃口ドラ3。8300オール!」
序盤のうちに光が和了りを決めた。これでは、他家は手の出しようがない。
オーラス四本場。
ここでは、
「ポン!」
二巡目に、ゆいが捨てた{中}を鳴海が鳴いた。
光の魂胆は見えている。このまま和了り続けて、あわよくば萌とゆいをトバすつもりだろう。
鳴海としても、端から光に勝てるとは思っていない。
これだけの支配力を持つ者との対局は生まれて初めてだ。さすが、北欧の小さな巨人と言われただけはある。
中堅戦では、今の光と同様に咲が暴れまくるだろう。光よりも強いとされる化物だ。今思えば、準決勝戦で美和がトバされずに前後半戦共に終えられたことがラッキーとさえ感じられる。
しかし、副将戦では、スター選手は永水女子高校の十曽湧のみだが、彼女の打ち筋は研究済み。光や咲ほどの化物では無いとの判断だ。
三銃士の三人目、美誇人が勝ち星を手にしてくれる可能性は十分ある。
大将戦も穏乃の底力は認めるが、準決勝戦では敬子が前後半戦トータルで500点差の2位につけている。
席順にもよるだろうが、他家の能力が一切効かない敬子なら、もしかしたら穏乃が相手でも何とかしてくれるかもしれないとの期待もある。
もし、美誇人と敬子が勝ち星を取ってくれたなら、白糸台高校と綺亜羅高校の得失点差で優勝校が決まる。
それを視野に入れれば、これ以上の失点はタブーである。
ここでは、ムリに倍満は目指さない。
鳴海は、三巡後に、
「カン。」
{中}を加槓した。当然、槓ドラは{中}。
そして、次巡、
「ツモ。中ドラ4。2400、4400。」
鳴海が満貫を和了り、次鋒前半戦を終了した。
これで次鋒前半戦の点数と順位は、
1位:光 230000
2位:鳴海 105400
3位:ゆい 34900
4位:萌 29700
言うまでも無い。圧倒的点差で光が前半戦を折り返した。
おまけ
世界大会が終了し、近畿大会も終了。
咲達は、平穏な日々を送っていた。
しかし、宇宙から魔の手が地球に忍び寄っていた。
ガミラス帝国の宇宙船団、白色彗星帝国ガトランティスの白色彗星、暗黒星団帝国の移動要塞が地球を目掛けて突き進んでいたのだ。
ガミラス帝国の総統はデスラー。
白色彗星帝国の大帝はズォーダー。
暗黒星団帝国の聖相当はスカルダート。
ちなみに、この世界には宇宙戦艦ヤマトは無い。
デスラー「地球は、我がガミラスがいただく。」
ズォーダー「いや、我がガトランティスのモノだ」
スカルダート「暗黒星団帝国がもらう。」
地球代表「お前ら帰れ!」
デスラー「では諸君。ここは、麻雀で勝負しようじゃないか。」
ズォーダー「勝ったところが地球を征服すると言うことだな。」
スカルダート「それでも勝つのは暗黒星団帝国だがな。」
地球代表「だから、お前ら帰れ!」
と言うことで、地球を賭けて麻雀大会が行われることになった。
方法は、地球でやっている団体戦と同じ。ただし、今回は点数引継ぎ制とする。
先鋒から大将まで半荘二回ずつ。
また、慣習的にダブル役満として認められる大四喜、国士無双十三面待ち、純正九連宝燈、大七星、四槓子、四暗刻単騎はダブル役満とする。
地球からの代表は、どうせなら女子高生がイイとデスラーが言い出したのがきっかけとなり、デスラー、ズォーダー、スカルダートの趣味で、結果的に(勝手に)世界大会で優勝した日本から高校2年生だけで編成することにされた。
そして、選出されたのは以下の五名となった。
宮永咲(阿知賀女子学院)
宮永光(白糸台高校)
高鴨穏乃(阿知賀女子学院)
大星淡(白糸台高校)
原村和(白糸台高校)
地球の運命が女子高生五人の双肩にかかっている。
この状態に、さすがの咲もビビっていた。
ただ一人落ち着いていたのは淡だけだった。
この時、淡は、自分に絶対安全圏やダブルリーチ、槓裏モロ乗りの能力を与えてくれた異星人超能力者とテレパシー通信していた。
淡「(麻雀なんかするまでもなく、こいつらをやっつけてくれると助かるんだけど。)」
異星人「(まあ、彼らは一応紳士ですから、麻雀で負ければ引き下がりますよ。)」
淡「(でも、咲でさえビビってトイレにも行けない状態なのに、地球チームが勝てるとは思えないんだけど?)」
異星人「(その点は大丈夫です。)」
淡「(でも、どうやって?)」
異星人「(淡さんが先鋒で出場してください。その際、私が淡さんの中に入りますから。勿論、Hな意味では無くて。)」
淡「(幽体離脱みたいなのをして私の身体を乗っ取るってことでしょ)」←Hな意味が分かっていない
異星人「(そ…そうです。)」
淡「(じゃあ、言うとおりにするね。あとはお願いするから。)」
異星人「(任せてください。私の超能力で全て解決します。)」
と言うことで、淡が監督(慕)にお願いして(事情を話して)、先鋒として出場することになった。
ガミラス帝国の先鋒はデスラー、白色彗星帝国の先鋒はズォーダー、暗黒星団帝国の先鋒はスカルダートが務めることになった。
エースポジションの役割を、トップ自らが果たそうと言うのだ。
さすが、各帝国のナンバーワンである。
場決めがされ、起家は淡、南家はデスラー、西家はズォーダー、北家はスカルダートに決まった。
東一局、淡の親。
既に淡の身体の中には異星人の幽体が入っていた。見た目は淡だが、その能力全てが異星人超能力者となっていたのだ。
淡(異星人)は、配牌を開くと、
淡「カン!」
まず、東を暗槓した。配牌を超能力で操作したのだ。
そして、
淡「もいっこカン! もいっこカン! もいっこカン! ツモ! 大四喜字一色四槓子四暗刻単騎! 七倍役満だから、16000×7で112000オール!」
嶺上牌も超能力で操作されていた。
これで、デスラー、ズォーダー、スカルダートがトンで終了になった。
三人とも、まだ一枚もツモっていない。
それで負けるとは、納得しきれないものがあるだろう。
しかし、約束どおりガミラス帝国も白色彗星帝国も暗黒星団帝国も、キチンと地球から撤退していった。
地球は、大星淡(中味は異星人)の力によって守られた。
異星人「後々、淡さんが色々面倒になると思いますので、全人類の記憶を消去しておきますね!」
そして、この地球の運命を賭けた戦いは、世の人々から完全に忘れ去られた。
つまり淡は、地球を救ったスーパーヒロインでもなんでもない。ただのアホの娘キャラのままでいることになった。