咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

142 / 221
百四十二本場:孤軍奮闘

 インターハイAブロック二回戦先鋒後半戦。

 東一局一本場も、

「ツモ。600オール。」

 真尋が余裕で早和了りを決めた。

 塵も積もれば巨大な山と化す。一回当たりの和了り点は低いが、これが何回も続くと大きな点差に変貌することは、前半戦で十分理解しているはずだ。

 しかし、憧が共闘に持ち込もうとしても、朱里も友香も応じようとしない。二人とも、前半戦のマイナス分を一気に取り返すことしか頭にないからだ。

 それこそ、大きな手を和了って真尋を一発逆転しようとしか考えていない。

 憧は、たった独りで巨大な敵、真尋の連荘を崩しに行かなければならなかった。

 

 しかし、真尋は白築慕時代の有名選手、千里山高校の椋千尋と、ほぼ同じ麻雀を打つ。並大抵の選手では対抗するのは難しい。

 …

 …

 …

 

 その後も真尋は和了り続け、

「ツモ! 500オールの十四本場は1900オール!」

 とうとう、十五本場へと突入することになった。

 

 後半戦での、現段階での選手の点数と順位は、

 1位:真尋 154000

 2位:朱里 82000(席順による)

 3位:友香 82000(席順による)

 4位:憧 82000(席順による)

 前半戦よりもヒドイことになっている。

 真尋の一回あたりの和了りが小さいからと、舐めてかかって一発逆転ばかり狙っているようでは真尋の思う壺である。

 むしろ、ここでは、得失点差対策も含めて真尋の親を安手で良いので流すべきであろう。そうしなければ、真尋との点差は広がる一方だ。

 しかし、そのことに朱里も友香も気付こうとしない。

 

 いや、厳密には気付いていた。

 しかし、彼女達は各校のエースである。エースとしてのプライドがあるのだ。

 先鋒戦で、いきなりエース自らが、得失点差対策に進むわけには行かない。それこそ、チーム全体の志気に影響する。

 

 それに加えて、憧の場合は、自分が負けても次鋒で咲が勝ち星をあげてくれるとの安心感があるが、朱里と友香の場合は、次鋒は捨てるしかない。

 咲を相手に、自分のチームの次鋒が勝てるとは到底思えない。

 なので、是が非でも先鋒は取りたい。

 この立場的な差は大きかった。

 

 

 十五本もの芝棒が積まれるまで、憧は、何回も和了りに向けて動いていた。共闘してくれる者はいないので孤軍奮闘だ。

 しかし、真尋の手のほうが早い。それで、ここまで連荘させてしまった。

 

 ところが、十五本場………ここに来て、ようやく憧に良好な配牌が舞い込んできた。

 決して高い手では無いが、配牌二向聴。

 しかも、第一ツモで運良く一向聴に出来た。

 そして、

「チー!」

 友香から出てきた{三}を憧は躊躇無く鳴き、その数巡後、

「ツモ! タンヤオ三色ドラ1。1000、2000の十五本場は2500、3500!」

 憧は、念願の後半戦初和了りを決めた。

 これで、非常に長かった真尋の親を流すことが出来た。

 

 

 東二局と東三局は、共に憧が得意の30符3翻をツモ和了りした。

 朱里も友香も高い手を狙っていて手が遅い。そこに憧が早和了りを仕掛けて、さくっと和了った感じだ。

 

 そして、迎えた東四局、憧の親番。

 ここでは真尋が、

「チー!」

「ポン!」

 鳴いて場を乱した。

 正確には、鳴くことで朱里のツモを良くしていた。

 

 現状では、朱里は安手を和了ろうとはしない。しかし、満貫クラスなら喜んで和了るだろうと真尋は考えていた。

 今の点差を考えたら、真尋からすれば満貫一つ和了られたところで怖くは無い。

 それこそ、子に対してなら、

『満貫くらいくれてやる!』

 と思っていたくらいだ。

 この思惑どおり、朱里は、タンピンドラ2の手を聴牌した。出和了りで7700点の手だ。

 

 朱里は、聴牌即でリーチをかけなかった。満貫級の手なので、確実に和了ることを選択したのだ。リーチをかけたら出和了りできる可能性が下がる。

 しかし、聴牌直後のツモ番で、朱里は幸か不幸か和了り牌を掴んできた。

 これは和了るしかない。

「ツモ。2000、4000!」

 多分、ここでも朱里は真尋に使われていたことに気付いていないだろう。

 この和了りで憧は貴重な親番を流されてしまった。

 

 

 南入した。

 真尋のオーラが急激に上がって行くのを憧は感じ取った。

 過去三回の親番で、真尋は、ここまで巨大なオーラを見せていない。いよいよ本気になったと言うことだろう。

 

 南一局は、

「ポン!」

 いきなり一巡目で真尋が{東}を鳴き、

「500オール!」

 その数巡後、あっと言う間に真尋に和了られた。まるで、絶対安全圏で和了る淡のようなスタートダッシュだ。

 

 一本場も、

「600オール!」

 

 二本場も、

「700オール!」

 

 真尋は他を寄せ付けない早和了りで場を進めてゆく。

 …

 …

 …

 

 

 そして、そのまま九本場に突入した。

 前半戦から今まで、真尋は全てツモ和了りしている。しかも、芝棒が無ければ、全て500オールでしかない手だ。

 それなのに、後半戦では南一局八本場が終了した段階で、

 1位:真尋 170800

 2位:憧 86400

 3位:朱里 74500

 4位:友香 66400

 真尋が圧倒的リードを作っていた。

 トータルでは、ここに前半戦の収支も加算される。もはや、真尋を逆転するのは不可能であろう。

 

 九本場に来て、ようやく憧に場を流すチャンスが訪れた。東一局十五本場と同様だ。

 ここで憧は、

「ポン!」

 自風の{北}を鳴き、

「ツモ! 1000、2000の九本場は1900、2900!」

 真尋よりも早く、なんとか憧は和了りに持って行った。

 この憧の和了りと同時に、今まで真尋から放出されていた強大なオーラが消えた。

 

 

 南二局、南三局は、共に憧が30符3翻をツモ和了りした。これも、真尋にとっては想定内である。

 それに、二つ合わせて満貫一回分でしかない。

 なので、真尋としては、

『併せて満貫一個くらいくれてやる!』

 程度でしかなかった。

 

 

 オーラス、憧の親。

 もはや、朱里も友香も、前後半戦トータルで逆転するには、トリプル役満以上を狙うしか方法が無い。

 当然、二人とも、この局では無茶な字牌集めに走った。

 もはや、それくらいしかやれることが無いためだ。

 

 再び、真尋のオーラが強大になって行く。

 今まで、真尋は親でしか和了りを目指さなかった。子の時は、他家を使って場を進めていた。

 しかし、ここに来て、自らの和了りで半荘の決着をつけようと言うのだろうか?

 

「ポン!」

 先手を取ったのは憧だった。先ずは、タンヤオのみで良いから和了ろうとの考えだ。

 しかし、

「ポン!」

 これを追うように真尋も鳴いてきた。

 そして、

「ツモ! 300、500!」

 タッチの差で真尋に和了られた。

 

 これで後半戦の順位と点数は、

 1位:真尋 167000

 2位:憧 100600

 3位:朱里 71200

 4位:友香 61200

 

 そして、前後半戦トータルでは、

 

 1位:真尋 306800

 2位:憧 190500

 3位:朱里 157200

 4位:友香 145500

 文句無しの真尋の勝利であった。

 これで、先鋒戦の勝ち星は千里山女子高校に決まった。

 

 

「「「「ありがとうございました!」」」」

 対局後の一礼を終えると、先鋒選手達は対局室を後にした。

 

 

 その頃、阿知賀女子学院控室では、

「では、コーチ。」

「ほな、行こうか?」

 咲が恭子に連れられて対局室に向かって移動を始めたところだった。

 一応、咲は何かの前には必ずトイレに寄る。これは、条件反射である。

 それもあってか、今回は憧と通路で擦れ違うことは無かった。どうやら、憧は咲がトイレに入っている間にトイレの前を通過したようだ。

 

 

 咲が対局室に入った時、既に千里山女子高校次鋒の麻川雀、新道寺女子高校次鋒の加藤ミカ、劔谷高校次鋒の竜宮由利は入室を済ませていた。

 

 本大会、咲は、点数を可能な限り多く取ると誓いを立てていた。春季大会での失態、得失点差による敗退を二度と繰り返さないようにするためだ。

 咲は、いきなり強大なオーラを身に纏った。そして、タコス効果が無い状態で、場決めの{東}を引き当てた。

 他の三人は、この時、人生の中で最大の恐怖を感じたと言う。

 

 

 東一局。

 ここでは、

「ツモ、嶺上開花! 4000オール!」

 

 それ以降も(七十七本場からのコピペで済みません)、

 東一局一本場、「4100オール!」

 東一局二本場、「4200オール!」

 東一局三本場、「ツモ! 嶺上開花ツモドラ1! 60符3翻で3900オールの三本場は4200オール!」

 東一局四本場、「4300オール!」

 東一局五本場、「4400オール!」

 東一局六本場、「4500オール!」

 東一局七本場、「4600オール!」

 東一局八本場、「カン(加槓)! ツモ! 嶺上開花タンヤオ! 30符2翻で1000オールの八本場は1800オール!」

 東一局九本場、「1900オール!」

 東一局十本場、「2000オール!」

 東一局十一本場、「2100オール!」

 東一局十二本場、「カン(西を暗槓)! ツモ! 嶺上開花ツモのみの60符2翻で2100オールの十二本場は3200オール!」

 東一局十三本場、「3300オール!」

 東一局十四本場、「3400オール!」

 東一局十五本場、「3500オール!」

 東一局十六本場、「3600オール!」

 東一局十七本場、「3700オール!」

 東一局十八本場、「3800オール!」

 東一局十九本場、「3900オール!」

 東一局二十本場、「4000オール!」

 東一局二十一本場、「4100オール!」

 東一局二十二本場、「4200オール!」

 東一局二十三本場、「4300オール!」

 東一局二十四本場、「カン! ツモ! 嶺上開花ツモドラドラ6400オール!」

 東一局二十五本場、「6500オール!」

 東一局二十六本場、「大三元字一色四暗刻四槓子! 66600オール!」

 咲は容赦なく和了り続け、66600点事件を引き起こした。

 

 当然、雀もミカも由利も、

「「「プシャ──────!」」」

 堪え切れずに大放出した。

 某ネット掲示板では大賑わいだったことは言うまでも無い。

 

 三十分の清掃時間の後、後半戦が開始された。

 咲は、後半戦でもタコス効果無しに起家を引き当て、

「ツモ! 大四喜字一色四暗刻四槓子! 二十六本場は66600オール!」

 またもや66600点事件を連発した。これで県予選から通算六連続である。

 

 勿論、雀もミカも由利も、

「「「プシャ──────!」」」

 前半戦と同様に派手にやらかしてくれた。

 某ネット掲示板ではお祭り騒ぎだったと言う。

 

 これで、次鋒戦では咲が余裕の勝ち星を決め、千里山女子高校と阿知賀女子学院が共に勝ち星一となった。

 

 

 ここで、再び清掃タイムが入った。

 そして三十分後に試合再開の電話が各校控室に入った。

 

 これを受けて、阿知賀女子学院控室では、

「行って来ます!」

 気の入った顔で、ゆいが対局室へと向かった。

 

 ゆいが対局室に入った時、新道寺女子高校中堅の安河内香枝、劔谷高校中堅の安福莉子は既に入室を済ませていた。

 そして、少しして、

「済みません! 今、到着しました!」

 息を切らせながら千里山女子高校中堅の夢乃マホが対局室に入ってきた。

 どうやら、途中でトイレに立ち寄り、その後、トイレから出て反対方向に行ってしまったらしい。

 このドジっ子属性の女の子が、愛宕監督からは、

『魔物候補生』

 と呼ばれている。

 コピー能力を持つ少女だが、不運にも良い指導者に恵まれず、今までムダな時間を過ごしてきた。これから千里山女性高校で指導を受けて魔物へと進化して行くであろう。それで『候補生』なのだ。

 

 場決めがされ、起家がマホ、南家がゆい、西家が香枝、北家が莉子に決まった。

 そして、東一局、いきなり、

「これは多牌だぁー! 千里山女子高校中堅夢乃マホ、痛いミス!」

 アナウンサー福与恒子の声が観戦室にこだました。

 一日一回、必ずチョンボをするマホのお約束である。

 

 今大会のルールでは、チョンボは満貫払いとなるが、芝棒を増やさずに親のやり直しになる。

 これは、チョンボを親流れにすると、例えば断然トップの選手がオーラスでわざとチョンボして自身のトップで対局を強制終了することが考えられるためである。

 ここでは、そう言った戦略を避けるのを目的に、チョンボは飽くまでも親のやり直しにしてあった。

 

 再び東一局。

 配牌直後、

「リーチ!」

 マホがダブルリーチをかけた。しかも、もの凄い量のオーラがマホの全身から放たれている。

 他家三人は、字牌切りで様子見。一先ず一発振り込みは無かった。

 しかし、

「ツモ! 16000オールです!」

 ダブルリーチ一発ツモタンヤオ平和三色同順表ドラ1赤牌2裏ドラ2(アタマ)。まさかの数え役満だ。

 他の選手の能力をコピーするマホならではである。これは、優希のコピーだ。それも、昨年のコクマで優希が咲、小蒔、憩を相手見せた第一弾の和了りだ。

 これでマホは、最初のチョンボによる満貫払いの分どころか、大量の利子をつけて三人から点棒を取り返したことになる。

 とんでもない高利貸しだ。

 

 東一局一本場。サイの目は8。

 ここでは、ゆいが先行した。

「リーチ!」

 ゆいも憧と同様、春季大会とは違って勝利に飢えているし、勝ちを絶対に諦めない。

 ここでは、マホとの勝負に出たのだ。

 

 マホのことは咲から聞いている。

 まさか、能力コピーなんてものが存在するとは思いも寄らなかったが、さっきの数え役満が優希の能力コピーであると言われれば多少は納得できる。

 それに、一昨日に千里山女子高校と同じブロックになったと分かった時から、ゆいはマホの過去の牌譜を色々とチェックした。

 たしかに、優希は勿論、咲、和、数絵、小蒔、霞、初美、淡、衣など、多くの女性選手と同じ打ち方を披露している。

 ただ、咲から得た情報では、一つの能力は一日一回しか使えない。

 それが他家からすれば、せめてもの救いだろう。

 

「ツモ! 2100、4100!」

 リーチ即ではなかったが、ゆいが満貫ツモ和了りを決めた。

 そして迎えた親番。

 ここで、ゆいはマホを逆転すべく、大量得点を目指して気合いを入れて、スタートボタンを押した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。