咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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援助交際してそうなアニメキャラで、憧は、今年は5位でした。


百四十五本場:罠

 美由紀は、トイレ→自販機コースを辿っていた。

 かなりアドレナリンが分泌されていたせいか、彼女は結構、喉が渇いていた。

 つぶつぶドリアンジュースを避け、喉の渇きを促進しそうな御汁粉、飲むモンブラン、飲むフォンダンショコラ等をスルーし、彼女は炭酸系の栄養ドリンクを購入した。

 そして、

「(千里山の副将とは44000点の差をつけているけど、何があるか分からないし、気を引き締めないと…。)」

 そう自分に言い聞かせながら彼女は栄養ドリンクを口にした。

 

 その頃、泉は、

「(阿知賀の最後のアレは、私を自滅させるための挑発。とにかく頭を切り替えないと。私も1年の時は上級生相手に舐めた顔をしていたし、それと同じだから…。)」

 一生懸命心を落ち着かせようとしていた。

 

 既に千里山女子高校は準決勝進出が決まっている。なので、この副将戦は負けても問題ない試合だ。

 それに、前半戦の美由紀の稼ぎを考えると、どう足掻いても新道寺女子高校と劔谷高校のいずれかが副将戦で勝ち星をあげるのはムリだろう。よって、副将戦は泉が勝つか美由紀が勝つかしかない。

 美由紀が勝てば、その時点で千里山女子高校に続いて阿知賀女子学院の準決勝進出が決まる。

 泉が勝った場合、準決勝進出校を決める勝負は大将戦にもつれ込むが、仮に大将戦で新道寺女子高校と劔谷高校のいずれかが勝ち星をあげたとしても、あの咲の超特大レベルの大量得点がある限り得失点差勝負で阿知賀女子学院が負けることは無い。

 もはや準決勝進出は千里山女子高校と阿知賀女子学院に決まったも同然なのだ。

 なので、もし、泉が今回、美由紀に負けても、後でリベンジできれば良い。

 

 それに千里山女子高校の最大の目的は、二回戦で泉が美由紀に勝つことでは無い。優勝することだ。

 真尋とマホの加入で、勝ち星二つを確実なチームにできた。あとは、決勝戦でもう一人が勝ち星を取れば確実に優勝できる。そのための秘密兵器もいる。

 

 咲は、準決勝戦でマホは明星に負けると予想しているが、泉は、そうは思っていない。

 泉からすれば、マホは、咲や光が相手でも勝ち星を取れる可能性のある人材なのだ。

 

 それに泉にとって幸運なことに、優勝候補と呼ばれる阿知賀女子学院、白糸台高校、綺亜羅高校、永水女子高校、そして臨海女子高校の副将選手の中に超魔物はいない。強豪選手はいるが、泉が勝てる見込みはゼロではない。

 ならば、今は決勝戦に備えて勝利の方程式を作り上げておくことが肝心だ。

 その上で、今やるべきことは何か?

 当然、美由紀のウイークポイントを探すことだろう。この試合を捨ててでも、決勝戦で確実に勝てるように…。

 泉は目を閉じて深呼吸したり、自分で両頬を叩いたりして、とにかくさっきの美由紀の挑発を忘れようとした。

 

 

 休憩時間が終わった。

 インターハイAブロック二回戦は、これより副将後半戦が開始される。

 

 副将メンバーが対局室に戻ってきた。そして、場決めがされ、起家は環、南家は泉、西家は愛美、北家は美由紀に決まった。

 

 

 東一局、環の親。ドラは{8}。

 ここでは、落ち着きを取り戻した泉が、美由紀の打ち方を観察しながら手を進めた。

 今回は、非常に調子が良い。手なりに打っているだけなのに、七巡目で、

 {三四[五]③④[⑤]4[5]88中中中}

 泉は、高目倍満の手を聴牌していた。

 

 ここに、親の環が{3}を切ってきた。

 環は到底前後半戦トータルで勝てるとは思っていなかったが、できるだけ高い手に仕上げて和了ろうとの気持ちは十分あった。ただ、これが悪い方に作用したと言えよう。

「ロン!」

 当然、この環の捨て牌を泉は逃さず和了った。

「中三色ドラ5。16000!」

 大きな一撃だ。

 これで、環は一瞬にして意気消沈した。

 

 

 そして、東二局は、

「ロン! 12000!」

 振り込み癖がついてしまっているようだ。環は、美由紀にハネ満を振り込んでしまった。

 

 東三局も、

「ロン! 16000!」

 東四局も、

「ロン! 24000!」

 連続で環は美由紀に振り込んだ。100000点あったはずの点棒が、今では、その三分の一を割っている。32000点しかない。

 

 この間、泉は和了りに向かわずに、ただ、美由紀の打ち方だけを観察していた

 切り出し方とかだけではない。牌の並べる順番も重要だ。とにかく、癖と言う癖を全て洗い出そうと必死だった。

 

 ただ、美由紀に気を回し過ぎていたためだろう。

 東四局一本場では、泉が切った牌で、

「ロン。7700の一本場は8000。」

 愛美に和了られた。

 

 

 南入した。

 南一局、親は再び環。ドラは{⑤}。

 序盤、上家の愛美が捨てた{北}を

「ポン!」

 美由紀が鳴いた。これは美由紀の自風だ。

 その後も、美由紀は順調に手を伸ばした。

 そして、中盤に入り、環が切った{西}で、

「ロン!」

 美由紀が和了った。

 

 開かれた手牌は、

 {①①①⑤[⑤][⑤]西白白白}  ポン{横北北北}  ロン{西}

 

「北白混一対々三暗刻ドラ5。32000です!」

 数え役満である。

 これで、環の点数は丁度0点になった。

 

 南二局でも、美由紀は、

「ポン!」

 鳴くスピードを緩めることは無かった。

 そして、

「ツモ! 3000、6000!」

 早々とハネ満をツモ和了りして副将後半戦をトビ終了させた。

 

 これで副将後半戦の各選手の点数と順位は、

 1位:美由紀 196000

 2位:愛美 105000

 4位:泉 102000

 4位:環 -3000

 

 そして、前後半戦トータルでは、

 1位:美由紀 386700

 2位:泉 248900

 3位:愛美 168600

 4位:環 -4200

 美由紀の圧勝で阿知賀女子学院が二つ目の勝ち星を手に入れた。

 これで、阿知賀女子学院と千里山女子高校の準決勝進出が決まったため、大将戦は行われずにAブロック二回戦を終了した。

 

 

 同日開催のBブロック二回戦は、臨海女子高校、射水総合高校、宇座池第三高校、永水女子高校の対決。

 先鋒戦は、マリー・ダヴァン(臨海女子高校)、寺崎弥生(射水総合高校)、江本巴(宇座池第三高校)、東横桃子(永水女子高校)の対局。

 序盤でダヴァンと弥生が先行したが、前半戦南場から桃子のステルスが発動し、最終的には桃子がトータル1位を奪い、永水女子高校が勝ち星を取った。

 

 次鋒戦は、片岡優希(臨海女子高校)、真下佳苗(射水総合高校)、有明アリア(宇座池第三高校)、狩宿萌(狩宿巴妹:永水女子高校)の対局。

 東風の神、優希が前半戦後半戦共に東場で咲を思わせるような爆発的な稼ぎを見せ、余裕で優希が勝ち星を取った。

 

 中堅戦は、郝慧宇(臨海女子高校)、香坂美樹(射水総合高校)、小神谷美香子(宇座池第三高校)、石戸明星(永水女子高校)の対局。

 射水総合高校の1年生エース美樹は、磁場を狂わせる能力を持つ。これで、郝も美香子も吐き気を催して麻雀に集中できなかった。

 しかし、修行で鍛えた明星には磁場の狂いは通用せず、判断力が低下した郝や美香子から明星が高打点の手を連続して和了り、勝ち星は明星が勝ち取った。

 

 副将戦は、南浦数絵(臨海女子高校)、相浦美代子(射水総合高校)、有行由利亜(宇座池第三高校)、滝見春(永水女子高校)の対局。

 ここでは、前半戦後半戦共に南場で数絵が快進撃を披露し、臨海女子高校が二つ目の勝ち星をあげた。

 

 これで臨海女子高校と永水女子高校がともに勝ち星二で準決勝に進出し、大将戦は行われずにBブロック二回戦は終了した。

 

 

 翌日、大会四日目はCブロック二回戦とDブロック二回戦が同時開催された。

 Cブロック二回戦は白糸台高校、有珠山高校、姫松高校、不倒高校の対決。

 先鋒戦は、大星淡(白糸台高校)、吉田礼子(有珠山高校)、美入麗佳(姫松高校)、小松真子(不倒高校)の対局。

 淡はダブルリーチを封印し、絶対安全圏のみで勝負。春季大会個人3位の力を見せ付けて余裕で白糸台高校の勝ち星を決めた。

 

 次鋒戦は、宮永光(白糸台高校)、真屋由暉子(有珠山高校)、美入人美(姫松高校)、江本巴(不倒高校)の対局。由暉子の左手の一発が出るが、やはり光が相手では誰も太刀打ちできず、白糸台高校が二つ目の勝ち星を決めた。

 

 中堅戦は、多治比麻里香(白糸台高校)、矢部伊代(有珠山高校)、高山千里(姫松高校)、小池景子(不倒高校)の対局。

 有珠山高校の1年生第二エース、伊代の対局では空気が凍ると言われるほどの冷気が生じる。まるで冷たい透華を思い起こさせる。

 麻里香は温かい飲み物を持って応戦するが、この対局では伊代が勝利し、有珠山高校が一つ目の勝ち星を取った。

 春季大会個人19位の麻里香の敗北は、誰もが目を疑う結果だったようだ。

 

 副将戦は、佐々野みかん(白糸台高校)、頼月英(有珠山高校)、佐藤志保(姫松高校)、山田麻耶(不倒高校)の対局。

 ここでは春季大会個人18位の佐々野みかんが安定した力を見せ、白糸台高校が三つ目の勝ち星を決めた。

 

 大将戦は、原村和(白糸台高校)、和代和代(有珠山高校)、松田姫子(姫松高校)、小俣真央(不倒高校)の対局。

 ここでは春季大会個人7位の和が圧倒的な力を見せつけ、余裕で勝利し、白糸台高校の四つ目の勝ち星を決めた。

 以上の結果から、準決勝には白糸台高校と有珠山高校が進出した。

 

 

 Dブロック二回戦は綺亜羅高校、蘭場台高校、粕渕高校、風越女子高校の対決。

 蘭場台高校の生徒が妙にエロい雰囲気をかもし出していたので、絶世美女軍団白糸台高校の試合よりも視聴率が高かったとの話である。

 先鋒戦は、鬼島美誇人(綺亜羅高校)、今永さな(蘭場台高校)、石見神楽(粕渕高校)、文堂星夏(風越女子高校)の対局。

 神楽には、前半戦の途中まで露子の霊が降臨。途中から節子の霊に切り替わった。これには、さすがの美誇人も対応し切れず神楽の勝利。勝ち星は粕渕高校が取った。

 

 次鋒戦は、稲輪敬子(綺亜羅高校)、鈴村あいり(蘭場台高校)、坂根理沙(粕渕高校)、園田栄子(風越女子高校)の対局。

 直感娘理沙も健闘したが、やはり試合は下馬評どおり綺亜羅高校のエース敬子と昨年の世界大会でドイツチームの代表として活躍した栄子の一騎打ちになった。

 大部分の人達が、ドイツチームのトップファイブの一人だった栄子の勝利を予想していたが、栄子の能力も敬子には通用しない。

 最終的に、この対局では敬子が勝利し、綺亜羅高校が勝ち星を取った。これには、世界中の多くの人達が驚かされたと言う。

 

 中堅戦は、鷲尾静香(綺亜羅高校)、長谷川るい(蘭場台高校)、春日井真澄(粕渕高校)、上埜美佐(竹井久妹:風越女子高校)の対局。

 綺亜羅三銃士の底力を見せて静香が勝利したが、美佐も前後半戦共に静香に三千点差まで迫る闘牌を見せた。

 今後の美佐の活躍に大いに期待されるとの声が大多数だったそうだ。

 

 副将戦は、的井美和(綺亜羅高校)、若葉奈央(蘭場台高校)、緒方薫(粕渕高校)、室橋裕子(通称ムロ:風越女子高校)の対局。

 ちなみに、ムロ以外の三人は各校麻雀部の部長である。

 この対局では、美和が触手プレイの幻を見せて全員を思い切り楽しませてくれた。特に奈央は、咲が各選手に放水させるのとは別の何かを豪快に大放水したのではないかとの噂まで流れたと言う。

 対局は美和が征し、綺亜羅高校が三つ目の勝ち星を取った。

 

 大将戦は、竜崎鳴海(綺亜羅高校)、吉川蓮(蘭場台高校)、石原麻奈(粕渕高校)、児波美奈子(風越女子高校)の対局。

 中堅戦の静香と同様、ここでも鳴海が三銃士の底力を見せて勝利し、綺亜羅高校が四つ目の勝ち星を取った。

 これで、勝ち星四の綺亜羅高校と勝ち星一の粕渕高校が準決勝進出となった。

 

 

 大会五日目。

 朝からABブロックの準決勝戦が開催された。

 阿知賀女子学院、千里山女子高校、臨海女子高校、永水女子高校の試合だ。

 ただ、千里山女子高校次鋒の麻川雀と、永水女子高校次鋒の狩宿萌が体調不良のため補員と交代する旨がアナウンスされていた。

 

 対局室に先鋒選手達が入室してきた。

 阿知賀星学院からは新子憧、千里山女子高校からは椋真尋、臨海女子高校からはマリー・ダヴァン、永水女子高校からは東横桃子が参戦する。

 

 場決めがされ、起家が真尋、南家が桃子、西家がダヴァン、北家が憧に決まった。

 

 

 東一局、真尋の親。

 真尋は、二回戦の親の時と同様に、

「じゃあ、いきなりだけど稼がせてもらうね!」

 と言うと明るい笑顔を見せながらサイを回した。親番が彼女のホームグラウンドなのだろう。彼女のオーラがドンドン強大になって行く。

 そして、

「ツモ。500オール。」

 二回戦と同様、真尋はクズ手を和了った。

 

 ただ、今回の和了りだけではない、その後も、

「600オール!」

「700オール!」

「800オール!」

 …

 …

 …

 

 

 全てが二回戦の再現と言えよう。そのまま30符1翻のツモ和了りのみを連発した。

 そして、八本場に突入した。

 

 ここに来て、真尋は、今まで経験したことの無い違和感を覚えた。しかし、今の自分には、そんなの関係ない!

 彼女は、今までの勢いを落すことなく、ここでも、

「ツモ!」

 基本的に500オール、そこに芝棒が加わり1300オールの和了りを見せた。

 

 この時、真尋が開いた手牌は、

 {四五③④⑤⑧⑧666}  チー{横678}  ツモ{六}

 

 ただ、この和了りは前の巡目で桃子が捨てた{三}を見逃しての和了りであった。

 この手牌を見て、桃子が憧に不敵な笑みを見せた。

 憧は、これが意味することを全て理解していたのだ。

 

 

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 先日の二回戦終了後のことだ。

「咲先輩。ちょっと聞きたいことが…。」

 ホテルに帰る途中で、ゆいが咲に質問した。

「どうかしたの?」

「夢野さんの最後の和了りについてなんです。あれって、噂のステルスじゃないかって思ったんですけど?」

「やっぱり、最後は東横さんのコピーだったんだ。」

「はい。それで、咲先輩は、二年前の長野県大会個人戦で東横さんのステルスを破ったって聞いてますけど、どうやったんですか?」

「あれね。大したことはやってないよ。」

「破ること自体、大したことですよ!」

「本当に大したこと無いってば。卓上を本物の麻雀じゃなくて、ネットとかの麻雀ゲームに見立てて、頭の中で全てをデジタル化してみただけだってば。」

「へっ?」

 これには、ゆいも唖然としていた。

 咲のことだから、もっととんでもない何かをやっていると思っていた。それこそ、人間業では無い特殊な何かだ。

 それが、頭の中で麻雀ゲームを仮想するだけとは………。

「そんなことでですか?」

「そう。だから大したこと無いんだって。そうそう、明後日は憧ちゃんが本家ステルスと対戦するよね?」

「そ…そうね。」

「そこで実際に試してみてよ、破れるかどうか。破れれば、きっと永水………ううん、多分、千里山にとって最悪な展開になると思うから…。」

 

 

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 憧は、五本場の途中で違和感を覚えていた。既に、その段階で憧は、桃子の姿も捨て牌も見失っていたのだ。

 それで、咲に言われたとおり全てをネットゲームに見立てて頭の中で麻雀ゲームを想像してみた。

 半信半疑だったが、これで嘘のように先ず桃子の捨て牌を………、そして、それに付随するかのように桃子の姿までも捉えられるようになった。

 

 この時、桃子もまた、

「(千里山の一年は、私の姿が見えてないっス。でも、阿知賀の先鋒は、リンシャンさんから私を捉える方法を教えてもらっているみたいっスね。だったら、一旦、ここは共闘っスよ!)」

 全てを理解していた。

 そして同時に、憧と組むことで真尋を罠に嵌めることが出来ると踏んでいた。

 

 東一局九本場がスタートした。

 現在の点数と順位は、

 1位:真尋 124300

 2位:桃子 91900(順位は席順による)

 3位:ダヴァン 91900(順位は席順による)

 4位:憧 91900(順位は席順による)

 真尋の点数は、親満二連続ツモした時と全く同じで8100点ずつ他家から奪った状態である。まさに、塵も積もれば山となる。

 

 ここでも、

「チー!」

 真尋は鳴いて手を進める。憧が捨てた{3}を鳴いて{横345}と副露した。どうやら、これで真尋は聴牌したようだ。

 次のツモ番は桃子。

 ここで桃子は、

「(円光さん。頼んだっス!)」←心の中の声とは言え何気にヒドイ

 憧の方を見ながら{②}を捨てた。

 

 ダヴァンも真尋の聴牌気配を感じていた。それで、一旦、字牌を落として様子を見た。

 次は憧のツモ番。

 ここで憧は、出来面子を崩して、敢えて{②}を切った。桃子のリクエストは、恐らく桃子の捨て牌に併せ打ちすること。

 すると、

「ロン! 1500の九本場は4200!」

 この{②}で真尋が和了った。しかも、余裕たっぷりの表情をしていた。

 しかし、この直後、

「イイんすか? それ、同巡見逃しっスよ!」

 真尋は、自分の右側………誰もいないところから声が聞こえてきて驚いた。

 いや、誰もいないはずは無い。そこには自分の下家がいるはずだ。

 ここに来て、ようやく真尋は違和感の正体に気が付いた。下家の姿も捨て牌も全てが視覚から外れていたのだ。

 

 普通、ステルスは前半戦の東一局では発動しない。

 しかし、真尋の連荘が仇となった。既に連荘無しなら半荘一回を終了しているだけの局数を打っていた。ステルス発動条件を十分クリアしていたのだ。

 桃子に指摘されて、ようやく桃子の捨て牌が見えてきた。たしかに同巡で桃子は{②}を捨てていた。

 これは、真尋のチョンボになる。親なので4000オールの支払いだ。

 直前まで見せていた余裕の表情が、一瞬にして真尋の顔から消えた。

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