咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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百四十八本場:役満ラッシュ

 ABブロック次鋒前半戦南一局、優希の親。

 南場だが、優希の眼光は衰えない。

 これは、逆回転で心に喝を入れたことだけが理由ではない。高校最後のインターハイだ。これまでの3年生と同様、今に賭ける想いが違う。

 

 しかし、それは咲も同じである。

 配牌で{②}、{④}、{⑧}の対子を持ち、結構筒子に偏っていたところ、

「ポン!」

 一回の鳴きと、ツモで毎回筒子を引き続けることで、たった六回目のツモで最短で筒子染め手を聴牌した。

 同巡に蒔乃も萬子の純正九連宝燈を聴牌していたのだが、七巡目、

「カン!」

 ツモ巡は咲の方が先である。

 ここで咲は、

 {②②④④南南南西西西}  ポン{⑧⑧横⑧}  ツモ{西}

 ここから{西}を暗槓したのだ。

 そして、

「ツモ。南西混一対々三暗刻嶺上開花。4000、8000。」

 いつものように華麗なる嶺上開花を見せ、倍満をツモ和了りした。

 この半荘で初めての倍満であるが、これは黒一色と呼ばれるローカル役満である。

 ただ、これが今のところ最低の和了り点なのだから、この半荘の点数基準が恐ろしい。まさに異常であろう。

 これで咲が優希を抜いてトップに立った。

 

 

 東二局、フレデリカの親。

 現在、フレデリカが79900点でラスである。当然、この親で一発カマしたい。

 優希は逆回転したが本調子には戻っていない感じがする。蒔乃も手が遅い雰囲気だ。恐らく配牌で萬子が少なかったのだろう。

 問題の咲も今回は少し手が遅そうだ。

 幸いフレデリカは親である。和了り点は子の1.5倍。当然、起死回生の手を和了るチャンスでもある。

 

 フレデリカの配牌は、

 {二五七13468⑦⑨東北發發}

 

 これが六巡目には、

 {12346789北北發發發}

 一切のムダツモ無しで聴牌に変わる。

 嶺上牌も見えている。{[5]}だ。

 

 次巡、フレデリカは{發}をツモると、

「カン!」

 これを暗槓した。

 そして、嶺上牌を引き、

「ツモ! メンホンツモ嶺上開花發一通赤1。8000オール!」

 そのまま和了った。親倍ツモだ。

 しかもローカル役満の青函連絡船。既にテレビの前では、十曽湧が思い切りはしゃぎまくって踊っていた。

 これでフレデリカが2位に浮上し、蒔乃が79900点でラスに変わった。

 

 南二局一本場、フレデリカの連荘。

 ただ、親のフレデリカにとっては不幸なことに、一方の蒔乃にとってはラッキーなことに、蒔乃の配牌が萬子に偏っていた。

 最高神は、自身の能力に制限をかけている。少なくとも、配牌は操作していない。これは、何回かに一回ある配牌の偏りだ。

 ここから、この手が最短距離で和了り手に変わる。

 

 蒔乃の配牌は、

 {一二四五七八九②⑥79南中}

 

 これが、たった六回のツモで、

 {一一一二三四五六七八九九九}

 純正九連宝燈聴牌に変わる。

 鳴きが入ってツモが狂わされない限り、必要な萬子しか引かないのだから、他家にとっては困った限りだ。

 そして、次巡、

「ツモ。8100、16100。」

 当然の如く役満を和了った。今回は、さすがに誰も止められなかった。

 

 これで次鋒前半戦の点数と順位は、

 1位:蒔乃 112200

 2位:咲 109400

 3位:優希 90600

 4位:フレデリカ 87800

 蒔乃が一気にトップに躍り出た。

 

 

 南三局、咲の親。

 ここで猛追をかけるのはラスのフレデリカだった。

 蒔乃も和了りを目指すが、やはり二回連続で九連宝燈を和了ろうとしても、その強大なパワーには、蒔乃の身体が付いて行けないようだ。

 今回、蒔乃は萬子の清一色狙い。ただ、配牌に萬子が三枚しかないため先は長そうだ。

 

 何故か咲は、親番だが力を出し惜しみしている。

 一方の優希は逆回転の効果が全く出ていない様子だ。

 

 四巡目、

「ポン!」

 蒔乃が捨てた{白}をフレデリカが鳴いた。

 そして、次巡、

「カン!」

 優希が捨てた{中}をフレデリカが大明槓した。

 ただ、ここでは有効牌を引いたのみで和了りにはならなかった。

 

 その五巡後、蒔乃が一向聴。

 しかし、その次巡、

「もいっこ、カン!」

 フレデリカは{白}を加槓すると、

「もいっこ、カン!」

 さらに{一}を暗槓し、続く嶺上牌で、

「ツモ! 白中混一対々三槓子嶺上開花。4000、8000!」

 倍満ツモを決めた。

 開かれた手牌は、

 {①①11}  暗槓{裏一一裏}  明槓{裏中中裏}  明槓{白横白白白}  ツモ{1}

 これもローカル役満の宝玉開花だ。

 

 これで次鋒前半戦の点数と順位は、

 1位:蒔乃 108200

 2位:フレデリカ 103800

 3位:咲 101400

 4位:優希 86600

 フレデリカが2位に浮上した。しかも、1位の蒔乃から3位の咲までの点差は6800点。まさに接戦。蒔乃、フレデリカ、咲の誰がトップを取ってもおかしくない状況だ。

 ラスの優希も倍満ツモで逆転できる。当然、優希もトップを諦めていない。

 

 

 オーラス、蒔乃の親。

 ここでは、

「カン!」

 咲が、第一ツモで{西}を暗槓した。

 まさかの初槓だ。ここでは初槓を役として認めていないが、非常に珍しい。

 フレデリカの表情が苦みばしっている。既に、この後の展開が見えているようだ。既に手牌を伏せていた。

 そして、嶺上牌をツモると、

「ツモ!」

 嵌{⑤}待ちのところ、嶺上牌の{[⑤]}を引いて和了った。

 しかも、手牌には{①}の暗刻もあり、70符3翻、つまり満貫となった。

「ツモ嶺上開花赤1。2000、4000です。」

 しかも、これは、超レアなローカル役満、頭槓和でもある。前半戦で六回もローカル役満が出て、既に十曽湧の頭からは何かが飛び出しそうであった。

 

 これで次鋒前半戦は、

 1位:咲 109400

 2位:蒔乃 104200

 3位:フレデリカ 101800

 4位:優希 84600

 咲が1位で折り返した。

 それにしても何と言う強運だろう。最後は、たった一回のツモ巡で、満貫和了りを決めてトップを奪ったのだ。

 

 

 休憩に入った。

 咲が卓から立ち上がったその時、

「サキ──────!!!」

 憧が咲の名前を大声で叫びながら対局室内に駆け込むと、咲にダイブして抱きついた。

 これをテレビで見ていた初瀬は、

「(宮永咲、殺す!)」

 そして、白糸台高校控室のモニターで、これを見ていた和は、

「(憧、それは許しません!)」

 二人共、思い切り殺意を抱いていた。

 咲が京太郎とくっついたのを知ったら、恐らく初瀬は安心するだろう。しかし、和が発狂しそうで心配である。

 

「凄いサキ! この面子でトップだなんて!」

「でも、まだ前半戦が終わったばかりだし、分からないよ。」

 すると、この会話を聞いていた優希が、

「そうだじょ! 次は、親のダブル役満を和了って、みんなを恐怖のどん底に落としてやるじぇい!」

 と明るく言い放つと、

「じゃあ、タコスパワーを補充してくるじょ!」

 一旦、対局室を出て行った。

 

 フレデリカも、

「後半戦は私がいただきます。」

 それだけ言い残すと、対局室を出て行った。

 

 蒔乃(神)は、

「両頭愛染を相手にするには、今の制限では勝てぬかも知れんな。少し制限を変えることとする。後半戦は心してかかるように。」

 それだけ言うと、堂々と対局室を出て行った。

 

 咲も、

「じゃあ、憧ちゃん。一旦、トイレに。」

「分かってるって!」

 迷子対策で、憧と手を繋いで対局室を出て行った。

 このシーンを見て、

「(宮永咲! 絶対に殺す!)」

「(憧! 死んでもらいますよ!)」

 初瀬と和が、さらに怒り狂ったのは言うまでも無い。

 

 対局室から、映像が解説側に切り替えられた。

「それにしても、ムチャクチャ凄い対局だったねぇー。役満が東場で六回、南場で一回の計七回ですよ!」

 観戦室巨大モニター脇のスピーカーからアナウンサー福与恒子の元気な声が響き渡る。

「はい。しかも、そのうち二回は数え役満でしたが、共にローカル役満でもありました。純正九連宝燈も同じ選手が二度和了っています。」

「天和に九連宝燈に四槓子ですからね。」

「出難い役満トップスリーですね。特にその中でも四槓子が出る確率の低さは群を抜いています。」

「それに、三巡目で国士を和了るわ。」

「他には倍満三回と満貫が一回ですね。これらもローカル役満になります。」

「では、ルールによっては役満しか無かったってことですか?」

「一応、そうなります。」

「それにしても、最低点が満貫ですよ。しかも和了りの全部が役満かローカル役満って、こいつら、頭、おかしいんじゃないですかねぇ?」

「ちょっと、それ言い方悪いよ!」

「ゴメンしてね! そう言えば、すこやんは、高3で麻雀を始めたんですよね?」

「はい。」

「この、麻雀人生二十年の中で、何回役満を和了ってきましたか?」

「ちょっと、二十年前じゃなくて十二年前だから! さっきも言ったけど、十と二が逆だから!」

 結局、毎度のネタに落ち着くようだ。

 

 

 それから少しして、先鋒選手達が対局室に戻ってきた。

 場決めがされ、起家が優希、南家が咲、西家がフレデリカ、北家が蒔乃に決まった。

 

 早速、優希が卓中央のスタートボタンを押し、サイを回した。

 そしてスタートした東一局。

「有言実行だじぇい!」

 優希は、こう言うと手牌を開いた。

 それを見て、その場にいた咲達だけではなく、この対局を見ていた日本中の人達が驚かされた。

 

 開かれた手牌は、

 {223344666888發發}

 天和緑一色。親のダブル役満だ。

「ツモ! 32000オール!」

 前半戦が終わって対局室を出る時に言ったことを、優希は実行したのだ。

 高3のインターハイ準決勝戦。しかも、チャンピオンで親友、且つ二年前の優勝インターハイで優勝を決めた清澄高校の仲間である咲との対局。

 それで優希のパワーが今までの限界を超えて発動したのだろう。

 

 これをテレビで見ていた染谷まこは大興奮だった。

「まさか、ここでワシの好きな役満が出るとはのぉ!」

 一瞬、時空が歪んだ。まこの能力が発動し、時間軸が大きく動こうとしたのだ。

 まさか咲達の最後のインターハイで時間軸の大幅な超光速跳躍が発動するとは………。

 前作では、これで全ての試合をすっ飛ばした。前科者である。

 しかし、

「それはさせぬ!」

 蒔乃に降りた神が、まこの力を抑えた。

 一先ず、時間軸が飛ぶのだけは止められた。

 

 東一局一本場、優希の連荘。

 ここでも優希は、

「リーチ!」

 前半戦の東一局と同様に{横白}切りでダブルリーチをかけた。ただ、優希としても東場での苦い経験があるため、ちょっと嫌な予感はする。

 しかし、今は東場。攻める時は攻める。

 

 一巡目、咲は不要な{東}を切った。

 続くフレデリカが牌をツモると、咲は何気にフレデリカの方を見ていた。

 対するフレデリカも、咲の方を見ながら手牌から不要牌の{中}を切った。

 すると、

「ポン!」

 これを咲が鳴いた。そして{北}切り。

 ツモは再びフレデリカ。

 ここでツモった牌を手に入れると、フレデリカは、今度は{白}を切った。

 今回もフレデリカは何気に咲の方を見ているし、咲もフレデリカの方を見ている。

「ポン!」

 これを咲が鳴いた。優希の一発消しを見逃しての鳴きだ。ここで{南}切り。

 鳴く方と鳴かせる側が入れ替わっただけで、前半戦東一局二本場と基本的に同じパターンだ。

 そして、六巡後、またもや優希は{發}を掴まされた。和了り牌か槓材で無い限り、リーチ者は、ツモ牌をそのまま切らなければならない。

「(これで咲ちゃんのそっくりさんに和了られるのかな? でも、和了れるものなら和了ってみろだじぇい!)」

 優希は、{發}を強打した。

 すると、

「カン!」

 これをフレデリカではなく咲が大明槓した。これは、優希の包(大三元を確定させた責任)になる。

 そして、嶺上牌を引くと、

「ツモ! 32300!」

 咲は、そのまま大三元を和了った。

 

 

 東二局、咲の親。ドラは{9}。

 ここでオーラが一気に上がってきたのはフレデリカだった。

 彼女の配牌は、

 {二①18東東南西北白白發中}

 九種十一牌である。

 しかし、彼女はこれを流さずに、

「(最短で和了る!)」

 ここから手作りを始めた。

 

 一方の優希の配牌は、

 {①①③③79西北白白發發中}

 第一ツモは{②}。ここから打{西}。

 

 二巡目のツモも{②}。打{北}。

 

 三巡目のツモは{9}。ここで{7}を切って七対子ドラ2を聴牌。しかし、リーチはかけず。

 

 そして、四巡目のツモも{9}。

 ここで{中}を切れば白發のシャボ待ちで、チャンタ役牌一盃口ドラ3のハネ満手。ツモれば倍満だ。

 当然、ここから優希は{中}を強打した。

 しかし、

「ロン。」

 この{中}でフレデリカが和了った。

 

 開かれた手は、

 {東東南南西西北北白白發發中}  ロン{中}

 大七星………七対子型字一色だ。

 これは、純正九連宝燈や国士無双十三面待ち、四暗刻単騎、四槓子、大四喜と同様にダブル役満として扱うルールもある。しかし、ここでは単一役満は全てシングル役満として扱うルールになっている。

「32000!」

 とは言え役満直撃とは……。優希にとっては、まさかの振込みであった。

 

 

 東三局、フレデリカの親。ドラは{東}。

 ここでの蒔乃の配牌は、

 {一一三三六七①⑦259東西}

 

 対する優希の配牌は、

 {二①③1579東東東西北中}

 

 優希の第一ツモは{④}。ここから先に打{二}。

 

 二巡目のツモは{[⑤]}。打{北}。

 

 三巡目のツモは{②}。打{西}。

 

 四巡目のツモは{⑦}。どうやら、ツモが筒子に偏っている。ここから打{中}。

 

 五巡目のツモは{⑥}。ここで、打{1}。

 

 そして、六巡目、優希は{6}をツモった。打{9}で{①④⑦}の三面聴。

 東ドラ4の手だ。

 当然、多面聴にとって打{9}。

 しかし、これで、

「ロン。」

 まさか、萬子以外で蒔乃が和了った。

 

 開かれた手牌は、

 {一一一三三三六六六七七七9}  ロン{9}

 四暗刻だ。立て続けに{一三六六七七}を引いたのだ。蒔乃に降臨した神も休憩に入る時に言った、

『制限を変える』

 を実行したのだ。萬子の染め手以外の和了りだ。

 これには優希も、

「じぇじぇ───!」

 声を出さずには、いられなかった。

 勿論、前半戦と同様、『じぇじぇー』であって『ジョジョー』ではない。

 優希は、この凶悪な三人に囲まれて恐ろしいほどのオーラに曝されても、決して大放水するような娘ではないのだ。

 

 ただ、これで優希は、東一局で和了った親のダブル役満を全て溶かしてしまった。

 現在の次鋒後半戦の点数と順位は、

 1位:咲 101300

 2位:フレデリカ 100000(順位は席順による)

 3位:蒔乃 100000(順位は席順による)

 4位:優希 98700

 完全に振り出しに戻った。

 

 

 そして、東四局、蒔乃の親。

 この時、咲もフレデリカも蒔乃も、優希から、ただならぬ空気を感じ取った。

 高3最後の準決勝で、しかも最後の東場だ。ここでも東一局と同様に、優希の3年生パワーが爆発したのだ。

「ツモ! 地和! 8000、16000!」

 まさかの役満。

 これで、優希が再びトップに返り咲いた。

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