咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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百四十九本場:役満コレクション

 ABブロック次鋒後半戦の南一局がスタートした。優希の親。

 ここで、北家の蒔乃が今までに無い行動に出た。

「ポン!」

 優希から自風の{北}を鳴いたのだ。

 そして、数巡後、

「カン!」

 蒔乃は{東}を暗槓した。すると、卓上の空気が奇妙な雰囲気に包まれた。

 この空気を放つ少女を、咲は過去に見た記憶がある。

 これは、悪石の巫女、薄墨初美の打ち方だ。

 全ての牌を見通せる咲とフレデリカは、これが既に止められない状態になっていることを悟っていた。

 その五巡後、

「ツモ。8000、16000。」

 蒔乃が和了った。さすがに、

『ツモですよー』←初美調

 とは言わなかったが…。

 

 開かれた手牌は、

 {②③④南南西西}  暗槓{裏東東裏}  ポン{北北横北}  ツモ{南}

 小四喜であった。

 

 前半戦からここまでに出てきた役満(数え役満、ローカル役満を除く)は、

 天和

 地和

 九連宝燈

 国士無双

 小四喜

 大三元

 四暗刻

 大七星

 緑一色

 四槓子

 の十種類。

 大四喜と小四喜と併せて四喜和として考え、また大七星を字一色の中の一つとして考えれば、あと出ていない役満は一つ。

 それが出て役満がコンプリートされるのを誰もが期待する。

 当然のことながら、それが達成出来そうな超怪物………咲、フレデリカ、蒔乃の三人の手牌に世の人々は注目した。

 

 

 南二局、咲の親。

 咲の配牌は、

 {一三九九①③⑨⑨119西北白}

 

 早速、みんなの期待に応えられそうな配牌。

 ここから打{西}。

 

 二巡目、ツモ{①}、打{③}。

 

 三巡目、ツモ{1}、打{三}。

 

 四巡目、ツモ{9}、打{北}。

 

 五巡目、ツモ{①}、打{白}。

 

 そして、同巡に優希が捨てた{9}を、

「ポン!」

 鳴いて咲は打{一}。

 手牌は、

 {九九①①①⑨⑨111}  ポン{横999}

 

 聴牌した。

 そして、次巡、

「ツモ。16000オールです。」

 ラストピースとなる清老頭を和了った。

 この時の視聴率は99.9%に達していたと言う。

 後日、それをニュースで知った某ネット掲示板の住民達は、

『残りの0.1%は何を考えてますの?』

『非国民だじぇい』

『でも、ラストピースをすぐに出してくれるところが咲ちゃんっぽいよね』←美和

『咲ちゃんなんて気安く呼ばないでください! どこのウマの骨ですか?』←和

『オモチは余り無いのに、見せるところは見せてくれるのです!』

『でも、咲様、これで終わらなかったから凄か!』

『その未来は、うちにも見えへんかった』

 それなりに騒いでいたと言う。

 

 南二局一本場。ドラは{7}。

 フレデリカの雰囲気が変わった。さっきの役満コンプリート達成を見て、さらに心の火に油が注がれたようだ。

 彼女の配牌は、

 {二四②③③④⑤[⑤]⑦⑧36東南}

 筒子に偏った配牌だった。心が配牌を呼び寄せたのだろうか?

 そして、咲と同様にムダツモ無く六巡目で聴牌し、続く七巡目で、

「ツモ!」

 染め手を和了った。

 

 しかも開かれた手牌は、

 {②②③③④④⑤[⑤]⑥⑥⑦⑦⑧}  ツモ{⑧}

 大車輪だ。

 ここでは大車輪を役満として認めていなかったが、結局のところ、門前清一色ツモ平和タンヤオ二盃口赤1の数え役満であった。

「8100、16100!」

 これでフレデリカは、ラスから2位に浮上した。

 

 

 南三局、フレデリカの親。

 ここでもツキがあるのはフレデリカだった。このままフレデリカに持って行かれてしまうのだろうか?

「ポン!」

 フレデリカが序盤から仕掛けていった。

 鳴いたのは優希が捨てた{2}。

 そして、数巡後に再び、

「ポン!」

 今度は、蒔乃から{8}を鳴いた。蒔乃は{8}が安牌であることは分かっていたが、鳴かれる牌であることまでは感知できていなかった。

 

 次巡、フレデリカが、

「カン!」

 {2}を加槓した。

 

 この時のフレデリカの手牌は、

 {4445666}  ポン{88横8}  明槓{2横222}  ツモ{6}

 

 清一色タンヤオ嶺上開花で和了っていた。

 しかし、和了りを拒否して、

「もいっこ、カン!」

 {6}を暗槓した。

 そして、次の嶺上牌で、

「ツモ! 8000オール!」

 親倍をツモ和了りした。

 

 開かれた手牌は、

 {4445}  暗槓{裏66裏}  ポン{88横8}  明槓{2横222}  ツモ{[5]}

 本大会ルールでは、この和了りは清一色タンヤオ対々和嶺上開花赤1だが、四跳牌刻(一つおきの刻子を揃えたローカル役満)であると同時に緑一色輪({發}の代わりに{5}が入ったローカル役満)でもあるダブルローカル役満だ。

 これでフレデリカがトップに立った。

 また、この和了りを見てローカル役満に取り憑かれた十曽湧が再び大興奮したのは言うまでも無い。

 

 ちなみに、この次鋒戦で出てきたローカル役満は、

 双竜争珠

 東北自動車道

 黒一色

 青函連絡船

 宝玉開花

 頭槓和

 大車輪

 四跳牌刻

 緑一色輪

 しかも、前半戦東一局から今までの和了りの全てが役満またはローカル役満である。もはや、これは歴史的な対局であり記録的である。

 

 そのような中で南三局一本場がスタートした。ドラは{③}。

 二連続和了で、フレデリカが勢い付いている感じが強い。

 この次鋒戦で勝利したいのはフレデリカだけでは無い。咲は勿論、優希も蒔乃(最強神)も同じである。

 ここでは、蒔乃に降臨した神が、神としての意地を見せた。自分の力に制限をかけているとは言え、何度も人間に負けるのは沽券に関わるだろう。

 強烈な支配力で他家全員を圧倒した。

 今回、蒔乃の手は萬子染め。既に{9}待ちの四暗刻に小四喜と、自分の本来のスタイルを大きく曲げてしまっているのを元のスタイルに補正した感じだ。

 

 この局、蒔乃の手牌は、

 {一三三五七八③④[⑤][5]6南南}

 つまり、自場風の{南}を対子で持ち、しかも{[⑤]}とドラの出来面子が一つに{[5]}を含む両面が一つの二向聴である。

 しかし、蒔乃は、ここから{[⑤]}、{[5]}、{③}、{6}、{④}、{南}、{南}と落としていった。一般には意味不明であろう。

 そして八巡目のツモで、

「ツモ! 4100、8100!」

 強烈なオーラを発散しながら和了りを決めた。

 

 開かれた手牌は、

 {一二三三四五五五[五]六七七八}  ツモ{九}

 

 門前清一色ツモ平和赤1の倍満。{六七九}待ちで、ツモ和了りなら、どれで和了っても点数的には同じである。

 しかし、{九}で和了った場合だけ付加価値が違う。この形は、ローカル役満のゴールデンゲートブリッジである。

 つまり、和了り点こそ倍満だが、役満あるいはローカル役満和了りは途絶えていない。未だ継続中なのだ。

 

 この段階での次鋒後半戦の点数と順位は、

 1位:フレデリカ 116200

 2位:咲 105100

 3位:蒔乃 100200

 4位:優希 78500

 

 そして、この段階での次鋒前後半戦の合計点数と順位は、

 1位:フレデリカ 218000

 2位:咲 214500

 3位:蒔乃 204400

 4位:優希 163100

 優希だけは逆転にダブル役満以上の和了りが必要となるため、勝ち星を得るのは非現実的と思われるが、他の三人は、まだ分からない。

 現状、フレデリカがトップだが、咲も蒔乃も逆転可能な位置にある。

 

 

 そして迎えたオーラス。蒔乃の親。ドラは{三}。

 配牌直後、前半戦オーラスの時と同様に、苦渋の表情を浮かべながらフレデリカが手牌を伏せた。既に何かを感知しているようだ。

 

 蒔乃の第一打牌は{西}。

 続く優希は、{1}を切った。

 その時である。

「ロン。」

「えっ?」

 優希の眼が点になった。この{1}で咲が和了ったのだ。

 これは属に言う人和であるが、ここでは人和を採用していない。

 

 咲の手が開かれた。

 {三四[五]⑦⑧⑨23456北北}

 

 平和ドラ2である。

「3900です。」

 これで次鋒後半戦が終了した。今まで超ド派手な展開を繰り広げていたにもかかわらず、最後は本当に呆気ない幕切れであった。

 しかし、人和は満貫扱いされることもあるが、一応、れっきとしたローカル役満である。つまり、この対局は全ての和了りが役満かローカル役満だけの対局となったのだ。

 

 

 後半戦の点数と順位は、

 1位:フレデリカ 116200

 2位:咲 109000

 3位:蒔乃 100200

 4位:優希 74600

 休憩時間が始まった時の言葉をフレデリカは有限実行した。

 

 しかし、次鋒前後半戦の合計点数と順位は、

 2位:咲 218400

 1位:フレデリカ 218000

 3位:蒔乃 204400

 4位:優希 159200

 ギリギリのところで咲が逆転し、勝ち星をあげた。

 

 最後の咲の和了りが無ければフレデリカの勝利だったかもしれない。ある意味、フレデリカにとっては勝利を横取りされた気分だろう。

 たった400点でも負けは負け。

 最後の最後で、オリジナルが自前の豪運で勝利を奪い取った戦いであった。

 

 数え役満を除くと、十二回の役満が飛び出し、しかも、そのうち一回は奇蹟のダブル役満であった。そして、役満として認定された十一種の役満が全て和了られていた。

 また、それ以外の和了りも全て十種のローカル役満から成り立っていた。

 こんな試合は二度とないだろう。この試合は、歴史的な対局として後世に伝えられることになる………。

 

 

「「「「ありがとうございました(だじぇい!)」」」」

 対局後の一礼を終え、卓から少し離れたところで、

「人の王者よ。次こそは必ず勝って見せるぞ。」

 と咲が蒔乃に言われた。

 そして、いつものように最強の神が蒔乃の身体から抜け出て行った。

 

 ところが、その直後のことだった。

 まず、その場に蒔乃が座り込んでしまった。エネルギーの使い過ぎで、自力で立ち上がるだけの力がなくなってしまっていたのだ。

 しかも、これがまるで伝染して行くかのように、他の三人もその場に座り込んでしまった。完全にエネルギーを使い果たして全身脱力した感じだ。

 

 ここで、これまで対局室を映していた映像が、突然、解説側へと切り替えられた。

 この対応に某ネット掲示板は、

『もしかして、あの中の誰かがデビューしたっスか?』

『宮永だったら面白いwww by 高三最強』

『降参再教育が何か言ってるなぁ』←浩子

『でも、チャンピオンが仲間になっても嬉しくないかモー』

『それだと被害者同盟の中に加害者が入るみたいデー』

『永水の一年がデビューじゃなかと?』

『たしかに最初に異変があったのは永水の子やったみたいやけど、あの四人がデビューする未来は見えへんかったなぁ』

『こちら現場 四人ともガス欠を起こして医務室に搬送中 残念ながら誰もデビューしていないもよう』

『それはそれで一大事! 一大事ですわ!』

『麻雀でガス欠なんて、怜みたいやなぁ』←セーラ

『ヒザマクラは貸さへんで!』

 それなりに、いつもの住民達で賑わっていたようだ。

 

 

 四人は、そのまま医務室でぐっすりと眠ってしまった。余程疲れたのだ。

 ただ、神を相手に神が臨む戦いをしたのだ。恐らく、神が責任を持って体力を回復させてくれるであろう。

 そうでなければ、明後日の決勝戦で神は咲との再戦が図れないからだ。

 

 一応、咲には補員が順番に付き添うことになった。もし、咲が目を覚ました時に、万が一にも異常行動をさせないようにするためだ。

 

 その頃、臨海女子高校の控室では、

「クソッ!」

 ダヴァンが壁にコブシを何発も打ち込んでいた。

「おいおい、一応、公共施設なんだから、それくらいにしときな。」

 監督のアレクサンドラ・ヴィントハイムが注意を促す。さすがに穴でも空けられたりしたら後が面倒だ。

「失礼しましたデース、ただ、ユウキがチャンピオン相手に倒れるまで死闘を繰り広げたと言うのに、ただ負けただけの私がピンピンしているのが許せなかっただけデース。」

「まあ、麻雀で全員倒れるなんて、普通有り得ないからね。まあ、そんなに自分を責める必要は無いよ。」

「…。」

「それより、郝。」

「分かってます。優希の心意気をムダにはしません。」

 それだけ言うと、郝は、静かに控室を後にした。

 

 

 対局室に中堅選手が姿を現した。

 第1シード阿知賀女子学院からは小走ゆい、第4シード永水女子高校からは石戸明星、臨海女子高校からは郝慧宇、そして千里山女子高校からは夢野マホ。この四人での対戦となる。

 

 ゆいは、次鋒戦の後半戦南三局の辺りで恭子から京タコスを渡され、それを食べていた。

 理由はただ一つ、マホに起家を取られないようにするためだ。

 出親でいきなり優希のコピー………と言うか数え役満とか天和を和了られても困る。

 それに、南入していきなり数絵のコピーで攻められるのも避けたい。それで調子に乗られると後が面倒である。

 それゆえの京タコスだった。

 

 場決めがされ、起家がゆい、南家がマホ、西家が郝、北家が明星に決まった。一先ず起家をマホに取られないようにできた。

 

 

 東一局、ゆいの親。

 何故かマホは、妙にオドオドしていた。ひ弱な小動物のような雰囲気だ。

 これと似たものって何処かで………。

 一瞬、ゆいは、

「(これって、卓に付く前の宮永先輩?)」

 と思ったが、卓を離れた時の咲を想像してみると………はて、コピーする意味があるのだろうか?

 

 マホは今、ベストではないのかもしれない。

 もしかすると、フレデリカが心配なのか?

 いや、マホは咲とも優希とも顔見知りだ。もしかすると、今、ここにいる面子の中で最も容態を気にしているのはマホではないだろうか?

 それで気が気ではないのだろう。

 ゆいは、一瞬そう思った。

 

 ただ、ちょっと様子が違う。

 何故か、

『三つずつ、三つずつ』

 と口にしている。牌の切り出し方も独特…と言うか、ちょっと変。これが意図的な迷彩なら凄いけど、はて…?

 

 中盤もそろそろ終わる頃、

「リ、リーチします!」

 マホがリーチしてきた。

 今まで、色々な牌譜を見てきたゆいにも、この切り出しは、まったくもって意味不明であった。本気で良く分からない。

 一先ず現物で対応するが、その二巡後、

「ツモです!」

 マホに和了られた。

 すると、マホは、いつもの雰囲気に戻った。

「8000、16000です!」

 これは鶴賀学園妹尾佳織の麻雀だ。ただ、点数申告の際に、

『リーチツモ対々…』

 と言ったら全国的に恥ずかしいので、和了った後にマホはコピーを解除したのだ。

 初っ端は優希のコピーでくると思ったが、いきなり別に何かで来るとは…。

 

 マホは同じコピーを一日に二度使えない制約があるようだが、逆を言えば全てのコピーを端から順に一回だけは全て使えることになる。

 しかも、優希のコピーを残したまま親番を回してしまった。

 ゆいは静かに息を飲み込んだ。

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