咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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百六十九本場:激突! 四人衆

 個人戦A卓の対局がスタートした。

 東一局、親はマホ。

 

 某掲示板では、

『アチガの大将に永水のエースにマホじゃ、咲ちゃんも放水させるのは難しいじょ!』

『一大事、一大事ですわ! 放水が無いなんて!』

『ないないっ! そんなのっ!』

 この面子では放水が期待できないと踏んでおり、全員、美和のいるB卓のほうに集中していたらしい。

 

 配牌を終えると、何故かマホは、山から一枚牌をツモった。これで、マホの手牌は15枚になった。

 多牌………。いきなりチョンボだ。

 

 二年前の清澄高校での合宿の時も、同じことをしようとしたが、あの時はマホがツモる前にムロが注意してくれてチョンボにならずに済んだ。

 しかし、ここでは、そんな甘い対応はしてくれない。

「マホ、やってしまいました。」

 出親で早速、マホは4000オールを支払うことになった。

 

 一日一回はチョンボをするのが彼女の能力の枷となっている。これは仕方が無いことなのだろう。

 まあ、これでも咲の方向音痴よりは数段マシだろう。

 

 本大会ルールでは、チョンボの場合、対局を仕切り直しとし、連荘扱いにはしない。再び東一局となる。

 マホの親。ドラは{7}。

 

 配牌を終えると、

「リーチです!」

 マホが{横中}切りでダブルリーチをかけてきた。これは、優希のコピーだ。

 

 穏乃は、一先ず手を進めるために不要な{北}を切った。

 ダブルリーチでは和了り牌を読みようが無い。なので、臆せずに自分の手を進めるしか選択肢はない。

 

 咲は、全ての牌を見通している。牌が見えているのだから当然であろう。ツモった牌を手に入れて{1}切り。

 

 蒔乃(軍神)は。相手の当り牌が分かるため振り込むことは無い。手を進めるために不要な{西}を切った。

 すると、

「ポン!」

 この{西}を咲が鳴いた。打{9}。

 

 再びツモは蒔乃。引いた牌は{⑥}。

 

 リーチ者のマホの手牌は、

 {一二三③③④[⑤]⑥⑦⑧[5]67}

 

 {③⑥⑨}で待っていた。

 しかもダブルリーチ平和ドラ3の親ハネの手。優希のコピーらしい簡単麻雀だ。

 さすがに、この手を相手に{⑥}は捨てられない。

 蒔乃は、{⑥}を手に取り込むと不要な{①}を捨てた。

 すると、

「ポン!」

 咲が、これも鳴いた。そこから打{四}。本当にダブルリーチを恐れずに好き勝手打っている感じだ。

 

 またもや蒔乃のツモ。

 ここで彼女は、またもや{⑥}を引いた。当然、これは手牌に取り込んだのだが………、ここから{⑦}を切った。

 

 マホは、ツモ和了りならず。当然、ツモ切り。そこからさらに四巡は、特に鳴きの入らない状態で場が進んで行った。

 

 そのさらに次巡。

 マホは{②}をツモ切りした。

 すると、これを、

「カン!」

 咲が大明槓した。

 そして、嶺上牌をツモると、

「もいっこ、カン!」

 {①}を加槓し、二枚目の嶺上牌をツモった。

 さらに咲は、

「もいっこ、カン!」

 {⑨}を暗槓すると、三枚目の嶺上牌で、

「ツモ!」

 嶺上開花で和了った。

 

 開かれた手牌は、

 {③}  暗槓{裏⑨⑨裏}  明槓{②②横②②}  明槓{①①①横①}  ポン{西西横西}  ツモ{③}

 

「西混一対々三槓子嶺上開花。16000です。」

 これは、マホの責任払いになる。

 しかも倍満だ。

 ただ、マホは、先に多牌の罰符として12000点を失っていた。なので、これでマホが箱割れして終了となった。

 

 穏乃と蒔乃は共に29000点だったが、席順で穏乃が2位、蒔乃が3位となる。

 よって準決勝進出は、咲と穏乃に決まった。

 

「マホちゃん。最初にチョンボしたのが痛かったね。」

 こう言ったのは咲。

「そうですね。いきなり宮永先輩にヤラれちゃいました!」

 一方のマホは、スッキリした表情をしていた。相手は日本最強の女子高生。そう簡単に勝てる相手ではない。

 負けても悔いは無いのだろう。

 

 一方の蒔乃(軍神)も、特に悔しがっている様子は無かった。

「人の王者よ。さすがだな。ただ、今回、最強神から依頼されているのは準決勝進出ではなかったのでな。」

「…。」

「狙いは9位か10位。今回は、今まで楽しませてくれた礼として日本チームを支える所存だ。また、後ほど会おう。」

 そして、それだけ言うと、蒔乃(軍神)は対局室を出て行った。

 

 

 さて、B卓は、稲輪敬子、的井美和、鬼島美誇人、鷲尾静香の綺亜羅高校対決。予選では同士討ちを回避できても決勝トーナメントでは仕方が無い。

 場決めがされ、起家は静香、南家は敬子、西家は美和、北家は美誇人に決まった。これはこれで興味深い一戦である。

 

 一方、某掲示板の住民は、

『美女ランクナンバーツーのみかんジュースに期待だじぇい!』

『それは、丼飯十杯はイケるっス!』

『みかんジュースを出してなんぼ、出してなんぼですわ!』←マズくないか、これ?

『でも、人魚のみかんジュースってのは今一つ矛盾に感じると思』

『そんなことより霞さんのみかんジュースが気になるのです!』

 大多数が敬子のHな意味での失態に期待を寄せていた。

 

 

 東一局、静香の親。

 今回も例によって、敬子の捨て牌は、

 {東南西北}

 

 そして、五巡目に、

「リーチ!」

 敬子は(横白)を切ってリーチをかけた。本当の読みようが無い捨て牌だ。

 美和も美誇人も静香も、安牌と言えるものが無い。ここは、何も考えずに自分の手を進めるしかないだろう。

 部内戦でも敬子が相手なら、よくある光景だ。

 

 幸か不幸か、三人とも敬子に一発で振り込むことはなかったが、

「ツモ。」

 本当に周りの苦労を水の泡にしてくれる。敬子は一発で和了り牌を自ら引いてきた。これも部内戦では結構ありがちなパターンのようだ。

「メンタンピン一発ツモドラ2。3000、6000。」

 しかもハネ満だ。

 本当に高い手を簡単に和了ってくれる。

 

 

 東二局、敬子の親。ドラは{1}。

 ここで早々に動いたのは、

「ポン!」

 静香だった。下家の敬子が捨てた自風の{北}を鳴いたのだ。

 

 三人とも敬子から人魚パワーをもらっている。その力は、一度もらうと永久に失われることが無いようだ。

 当然、三人とも絶好調のはず。

 もっとも、全員が絶好調ならドラは奪い合いになるだろうし、言うまでもなく全員の手の進みが早くなる。

 

 六巡目で美和が門前聴牌。

 美誇人は、まだ全員の様子を見ている。今日の場の流れを掴みに行っている感じだ。

 敬子も既に聴牌気配。

 しかし、

「ツモ。」

 この場を制したのは静香だった。

 

 開かれた手牌は、

 {1134567999}  ポン{北北横北}  ツモ{[5]}

 

 赤ドラを引いての和了りだった。

「北混一ドラ3。3000、6000!」

 これで静香は、前局で失った以上の点数を取り戻した。

 

 

 東三局、美和の親。ドラは{8}。

 美和としては、この親で何とか稼ぎたいところだ。前局、前々局で敬子と静香にハネ満をツモ和了りされているのだから尚更である。

 ツモは良い。配牌に巧く噛み合う。

 それで、役無しだが、たった三巡目で聴牌した。

 とは言え、平和に手変わり可能な状態。ここはリーチをかけず、一旦、ダマで回す。

 

 しかし、

「リーチ。」

 同巡で敬子がリーチをかけてきた。毎度ながら嫌なことをしてくれる。

 一発で美和が引いた牌は{五}。敬子の捨て牌は相変わらず字牌だけなので読めないが、直感がこれを危険牌と言っている。

 いくら絶好調でも、その根源となる力を与えてくれた敬子の前では無効化されるのだろうか?

 さすがに、これを一発で切る勇気は無い。

 美和は、一旦、聴牌を崩して回し打ちした。

 

 美誇人も静香もヤオチュウ牌切りで様子見。

 そして、敬子は、

「ツモ!」

 見事、{[五]}を引いて和了った。

 

 開かれた手牌は、

 {一一一三四五六七⑥⑥789}  ツモ{[五]}  ドラ{8}  裏ドラ{7}

 

「リーチ一発ツモドラ3。3000、6000。」

 単なるツモドラ1の手が、リーチ一発に赤牌、裏ドラが付いてハネ満になった。これだからリーチは怖い。

 これで敬子がダントツトップになった。

 

 

 東四局、美誇人の親。ドラは{⑦}。

 現在、美和は13000点の最下位。後半に入る前に和了って点数を立て直したい。

 基本的に調子は良い。今回も三巡で聴牌した。

「(ドラもあるし、勝負!)」

 そして、

「リーチ!」

 美和は聴牌即でリーチをかけた。

 早いリーチなので安牌が殆ど………、いや、美和の捨て牌は、順に{北中1}なので実質安牌と言えるものが無いに等しい。

 ただ、美誇人も静香も運は強い。二人とも面子に使っていたが{1}を持っていた。なので面子を崩すことにはなるが、一先ず{1}を切って一発回避。

 敬子は、字牌を{東}から順に切っていたのが功を奏した。ここで現物の{北}を切って一発を回避した。

 

 一発ツモは無かった。豪運の静香の『運』が絶好調なのだ。静香の運に美和のツキが、若干抑えられている感じだ。

 しかし、その二巡後、

「ツモ。」

 美和は自力で和了り牌を掴んできた。

 

 開かれた手牌は、

 {三四[五]④[⑤]⑥⑦⑦78999}  ツモ{6}  ドラ{⑦}  裏ドラ{三}

 

「リーツモドラ5。」

 もし、一発ツモなら倍満だったが、これをハネ満が引き下げられたのは静香の豪運によるものだろう。

 とは言え、この和了りで美和は原点復帰を果たした………のだが、点棒受け渡しの前に美和プロデュースのショーが始まる。

 美和が和了ったのだ。当然、他家は幻の世界に意識が飛ばされる。

 

 ただ、残念なことに、

「(本当は、全国女子高生雀士美女ランキング2位の敬子で遊びたいんだけどね。)」

 能力が効かない敬子だけは除外される。

 それだけが美和にとっても悔しいところだ。

 

 美和の背後から伸びてくる巨大な食虫植物の触手が、静香と美誇人の目に映った。それらは、あっと言う間に静香と美誇人を捕えると、制服を溶かし始めた。

 部内戦で、毎日のように経験しているので、二人とも幻の世界の中で全裸にされても今更恥ずかしいなどとは思わない。

 しかし、性的感覚はゼロには出来ない。

 毎度の如く、触手が胸や股間を激しく刺激する。

 さすがの二人も、

「「あぁ…。」」

 気持ちが良過ぎて、現実世界の身体から思わず声が漏れてしまう。

 …

 …

 …

 

 

 幻の世界の中で、体感時間として約1時間が過ぎた。

「3000、6000!」

 美和の点数申告の声が聞こえてきた。

 これで、二人は、この世界から解放された。

 それにしても、当事者達にとっては本当に嫌な能力である。椅子が濡れていて気持ちが悪いし、男性スタッフは、何気に前屈みになっている。

 

 一方、某掲示板では、

『美女ランクナンバーツーは平然としてるっス!』

『そんなオカルトありえません』←誰が書いてるんだ?

『ないないっ! そんなのっ!』

『ありえないじぇい』

『一大事、一大事ですわ!』

『やっぱり人魚はみかんジュースが無いんだと思』

『これはスバラくないですねぇ』

 この期待はずれの結果………敬子が美和の能力にヤラれないのを知らされて、住民達が非常に残念がっていたのは言うまでもない。

 

 

 南入した。

 親は静香。ドラは{3}。

 この局では、珍しく敬子の捨て牌に、

 {中18}

 と、早い巡目でチュンチャン牌が見えていた。

 ただ、逆に言えば、敬子の手牌の中に今回は風牌が無い、もしくは風牌が使われていることを示しているだろう。

 

 しかも、{8}切りと同時に、微かだが敬子から聴牌気配が漂ってきた。

 気配を出さないように部内で特訓されているが、やはり静香や美誇人ほど勝負師ではない。どうしても気配を隠し切れないでいるようだ。

 

 この時、敬子は、

 {一二三三四五④[⑤]234西西}

 

 {③⑥}待ちで平和ドラ2を聴牌していた。

 リーチをかけなかった理由は二つ。

 一つ目は、{5}を引いたら高め三色同順の手に移行できる。なので、今、リーチをかけて手を固定する必要は無い。

 そして、二つ目は万が一の場合に備えてのことである。

 ダントツトップなので、ムリに攻める必要は無い。むしろ、他家が攻めてきた時に振り込み回避で降りられるよう、ダマで待つべきとの判断である。

 敬子としては、今回は後者の考えの方が強かった。

 しかも、アタマが{西}である。最悪の場合は、アタマを落として凌ぐことが十分可能だ。

 

 ただ、その二巡後、

「ツモ。」

 敬子は{③}をツモってきた。

 トップなので、ここはムリに{2}切りのフリテンで{5}ツモに期待するよりも、和了っておいた方が良いだろう。それに、

「1300、2600。」

 ツモドラ2の5200の手だ。和了っておいて損は無い。

 それ故の和了り宣言だ。

 

 現状での点数と順位は、

 1位:敬子 45200

 2位:美和 23700

 3位:静香 22400

 4位:美誇人 8700

 美誇人が10000点を割った。そろそろ和了れないと本気でマズイ。

 

 とは言え、美誇人は今日の場の流れを掴み切れた様子だ。ここからが美誇人の真骨頂と言えよう。

 いよいよ名台詞、

『御無礼』

 が出る雰囲気だ。

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