個人戦準決勝第二試合は東一局一本場、淡の連荘。
絶対安全圏の力で、淡は他家を強制六向聴にする。
今回も、自らの手は二向聴。
いきなり淡は一巡目で、
「ポン!」
和が捨てた{①}を鳴いた。チャンタ狙いだ。
今回も、上家の光は、淡が鳴ける牌を全然出してくれない。結構、淡にとっては厳しい席順だ。
それでも、なんとか淡は聴牌できたが、もう次巡は全員が絶対安全圏を越える。しかし、この段階で聴牌していたのは、どうやら淡だけだった。
絶対安全圏を越えた直後のツモ番で、
「ツモ。チャンタドラ2。2100オール。」
淡は、なんとか和了ることができた。
絶対安全圏内に和了れなかったのは悔しいが、光が相手なので、これは仕方が無い部分はあるだろう。
点数的にも30符3翻の地味な和了りだが、二回続けば親満と同じになる。
贅沢は言っていられない。
東一局二本場。ドラは{二}。
ここでも他家には絶対安全圏。淡はダブルリーチの力を封印して望む。
淡の配牌は、ドラの{二}と{9}と{發}が対子になっていた。これは、發ドラ2で早和了りするチャンスだ。
しかし、先に切られる字牌は{南}、{西}、{北}。淡には役牌として使えない字牌だ。
どうしても三元牌や場風が出てくるのは、オタ風牌や19牌を処理した後になる。そのため、折角、絶対安全圏を発動しても、他家の配牌次第では役牌が中々鳴けない。
かと言って、クイタンに走ろうにも、絶対安全圏を発動する限り、序盤からチュンチャン牌が出てくることは稀である。
特に今回は、{9}と{發}が対子である。これらを捨ててクイタンに進むのは勿体無い。
それでも、他家に行ったヤオチュウ牌の状況次第では絶対安全圏内に鳴けることはある。
今回も三巡目で、淡が欲しい{發}を和が切ってきた。
これをすかさず、
「ポン!」
淡が一鳴きした。
これで役が付いた。あとは急いで聴牌に仕上げて和了るだけだ。
その後、すぐに栄子が{9}を切ってきた。
当然、淡は、これも、
「ポン!」
鳴いて手を進めた。これで、絶対安全圏内に聴牌できた。
しかし、和は、勝負してくる時以外は滅多に振り込まない。
光も高い精度で和了り牌を読んでくる。当然、光からの振り込みも期待できない。
栄子は和了り牌を完全に見切る能力がある。能力が無効化されない限り絶対に振り込むことは無い。
なので、この面子では、全くもって出和了りには期待できない。自力で和了り牌を手に入れるしかない。
淡は、またもや絶対安全圏内に和了り牌を引き入れることができなかった。やはり、光の支配力があるからだろう。
そして迎えた八巡目、淡は和から聴牌気配を感じ取った。
ただ、和はリーチをかけなかった。
満貫以上を狙っているのでは無い。淡の連荘を流すのが最大に目的のようだ。
それで、他家からの出和了りも狙い、ダマで待っているのだ。
本来、出和了りが期待できない卓だが、和の辞書には能力麻雀などと言うオカルトな単語は載っていない。
飽くまでも一般論に従って和はプレイする。
しかし、ツキは淡に残っていたようだ。
「ツモ。發ドラ2。二本場は2200オール。」
和が聴牌した直後のツモで、淡は和了り牌を引いて来た。この局は、ギリギリのところで淡に軍配が上がったを言える。
東一局三本場。淡の連荘。
絶対安全圏は健在。淡以外は全員が、またもや六向聴の最悪の状態。
この状態を、和も光も部内戦で何度も経験している。なので、もう馴れっ子と言った感じではある。
しかし、栄子は別だ。一回戦でも前局配牌六向聴だったし、今回もこんな状態が延々と続くと、さすがの栄子も嫌気がさす。
この局、栄子の配牌は、
{二五八②④⑧⑨258東白中}
一応、一応平和手にも進める可能性がある六向聴。七対子以外で六向聴にしかならない状態よりは幾分マシであろう。
ここに栄子は、第一ツモで{⑦}を引いてきた。
もし、これが和であれば、普通に{白}か{中}を落として行く。そう言ったスタイルだし、能力麻雀への理解が薄いのだから仕方が無い。
しかし、栄子は能力者である。
落ち着いていれば、当然、淡の能力麻雀をケアして第一打牌を選ぶところだが、毎回六向聴が続いて心中穏やかではなかった。
それで、絶対安全圏対策を忘れて{中}を第一打牌として切り出してしまった。
これをすかさず、
「ポン!」
淡が鳴いた。
偶々、淡が配牌時点で持っていた役牌の対子だった。これが{白}なら鳴けなかった。淡にしてみればラッキーである。
鳴かれて栄子は、
「(しまった!)」
淡対策のことを思い出した。
特に淡が親の時は、五巡以内に淡に和了り役を与えてはいけない。絶対安全圏内での淡の早和了りは、他家が和了って阻止することができないからだ。
その次巡、
「チー!」
珍しく光が淡に鳴かせた。
さすがに光でも、序盤に相手の手牌全てを見抜くことは出来ない。なので、こう言ったことも起こり得る。
今回は、
「ツモ! 2300オール!」
淡は絶対安全圏内の和了りを決めることができた。
しかし、この直後である。
またもや和の背後に巨大モニターの幻が出現した。団体戦決勝戦の大将後半戦、個人戦決勝トーナメント一回戦D卓で起きたものと同じ現象である。
その巨大モニターにはオンライン麻雀ゲームの映像が映し出され、和の姿は、今回も『のどっち』に変わっていた。
和の世界が暴走したのだ。これで三度目である。
この卓は、これ以降、デジタル打ちの完成度が全ての世界へと変わる。
東一局四本場。
絶対安全圏は生きている。配牌六向聴は確率的に起こり得ることである。別に和の世界で否定されるモノでもない。
しかし、ここに来て淡は、絶対安全圏内に一切鳴くことができなかった。和に浮いた役牌が行かなかったためだ。
こう言うことも、何局かに一回は普通にある。
加えて、前局で鳴かせたことで、栄子が今回は役牌を絶対安全圏内に切るのを躊躇していたし、光は元々、第一弾の和了りを決めるまでは淡を相手に序盤から役牌を切らない。それで余計に淡は序盤から鳴かせてもらえなかったと言える。
そして、絶対安全圏が終わると同時に、淡は和から聴牌気配を感じた。
「(和に先を越された!?)」
淡は、まだ一向聴。
デジタル打ちの完成度のみが要求される世界では、牌効率の良い和には敵わないと言うことだろうか?
ただ、ここで和はリーチをかけてこなかった。東一局二本場の時と同様に、飽くまでも狙いは淡の親を流すこと。
一応、和了り役もある。
だったら、ムダにリーチをかけて他家に聴牌を教える必要は無い。
そして、次巡、
「ツモ。」
結果論ではあるが、聴牌即で和は和了り牌を引き当てた。
「タンピンツモドラ1。1300、2600の四本場は1700、3000。」
この和の和了りで、淡の長い親が終了した。
東二局、和の親番。ドラは{一}。
ここで光の配牌は、
{二三七九①[⑤]⑨258南西中}
ただ、絶対安全圏は配牌が悪いだけで、その後は普通に手が伸びる。
それに、光はデジタル打ちができないわけでは無い。
和が作り出す世界の発する強大なエネルギーを感じ取り、光は強引な決め打ちをせず、一先ずここは、流れに任せて打つことにした。
光の第一ツモは{6}。ここから打{南}。
この局でも、その後、絶対安全圏内に鳴きは入らずに場が進んでいった。
光は{7一2⑥八}と引き入れて最短で聴牌。
手牌は、
{一二三七八九[⑤]⑥22567}
淡は、絶対安全圏内に和了れず、七巡目に突入した。
そして、七回目のツモで、
「ツモ平和ドラ2。1300、2600。」
とうとう光が第一弾のツモを決めた。
ただ、和のデジタル世界が卓全体に及んでいる今、ドラを持つ数も大きく偏らない。
リーチをかけなければ、恐らく七巡目では、大抵ドラは一枚、多くて二枚しか来ないのだろう。
東三局、栄子の親。ドラは{二}。
ここでも絶対安全圏は健在。
ただ、第一弾の和了りを決めた光は強力な支配力を発揮する。
それもあってか、光の配牌は、
{一三五九②④⑤⑨147南北}
同じ六向聴でも三色同順が狙える可能性のある配牌だった。
ここから光は、まさに鬼ヅモで{二[⑤]2③3四}と引き入れ、
{一二三四五②③④⑤[⑤]234}
たった六巡で平和赤1を聴牌した。
しかし、光は出和了りとしての和了り役の翻数上昇が縛りとなっている。そのため、今回は最低でも和了り役が2翻必要であり、このままでは和了れない。
今のところ、他家三人からは聴牌気配は一切感じない。光の支配力が他家のツモを悪くしているのだろう。
七巡目、光は{七}を引いた。
絶好のツモである。
ここから打{一}でタンヤオ三色同順赤1に切り替えた。
デジタル打ちでも、{三六}の両面待ちを維持して平和赤1の2000点の手のままにするか、それとも待ちを嵌{六}に減らしてタンヤオ三色同順赤1の満貫手にするかは議論が分かれるところだろう。
少なくとも、この打牌はデジタル打ちの世界観に完全に否定されるモノではない。故に和の世界が作り出す一方的な縛りに、光の打{一}は抵触しなかったようだ。
そして、次巡、
「ツモ! タンヤオ三色赤1。2000、4000!」
光は満貫ツモを決めて原点復帰を果たした。
東四局、光の親。ドラは{3}。
今回、光の和了り役の縛りは4翻。
光の実力であれば、本来は、まだ縛りとしては何とかなる。
しかし、淡の絶対安全圏と、和が作り出す世界が合わさってくると厳しくなる。
通常であれば、萬子、筒子、索子のいずれかに配牌が偏ることがあるが、絶対安全圏が発動すると、どれか一色に偏ることは基本的に無い。
絶対安全圏を無効化できるのは残念ながら穏乃くらいだ。光でも崩すことができない。
そして、牌の偏りが少ない状態からスタートして、デジタル打ちで進め、かつ和了り役4翻を狙うとすれば、平和タンヤオ三色同順辺りが落としどころか?
配牌次第だが、そろそろ、この場を支配する『和の世界』を崩さないと、光としても苦しくなる。
この局、光の配牌は、
{二五八①[⑤]⑨1378東南西發}
見事な六向聴。
しかも、この配牌から確率論のみによってもたらされるツモの流れに従うだけで、和了り役4翻を目指すのは正直厳しそうだ。
「(仕方が無い。そろそろヤルか!)」
光は、ここで自らの持つ能力を全開にした。和による場の支配を跳ね除けなければ和了れないと確信したからだ。
その直後である。
「ピシッ!」
和の背後に見える巨大モニターの幻に大きなヒビが入った。
そして、画面に映し出されていた麻雀ゲームの映像が『プツン』と消えたかと思うと、そのモニターが一瞬にして粉々に崩れ去った。
どうやら、和が作り出す世界は、まだ完成形では無いようだ。それで、より強力な支配力が繰り出されたことで維持できなくなったのだろう。
あとは、ここから最短で和了り役4翻を作る。
光は、オーラ全開で打ちに行く。
先ずは、打{發}。
普通なら絶対安全圏内での淡の鳴きを警戒して役牌は捨てたくないが、今は、連続和了のスイッチが入っている。なので、こっちに流れがあると信じる。
それで光は初っ端に{發}を切った。
淡からの鳴きの発生は無い。この發切りは、結果オーライのようだ。
その後、光は{東南西①⑨1}と捨て、
「リーチ!」
先制リーチをかけた。
一発消しの鳴きは無い。
淡も和も、一先ず現物の{①}や{1}を切って凌ぐ。
栄子は和了り牌が分かる能力を持っているため振り込むことは無い。まさかの打{三}で淡と和を驚かせたが、当然、セーフ。
しかし、一発目のツモで、
「ツモ!」
光は和了りを宣言した。
開かれた手牌は、
{二五五八八⑤[⑤]337788} ツモ{二} ドラ{3} 裏ドラ{八}
今回、光の縛りとなる和了り役は4翻。
その縛りとしてカウントされる役は、リーチタンヤオ七対子のみだが、ここでは七対子は2翻相当(25符2翻)として数えることになる。
ここに一発ツモに表ドラ2、赤牌1、裏ドラ2が加わり、親の三倍満となった。
「12000オール!」
これで点数と順位は、
1位:光 63900
2位:淡 32500
3位:和 6200
4位:栄子 -2600
まさかの栄子のトビで終了した。決勝戦には、光と淡が進む。
観戦室で、この対局を見ていたフレデリカは、
「栄子から27000点以上も取るなんて…。さすがミナモ。でも、彼女の上限値は、どれくらいなの?」
相当驚いていた。
フレデリカが知る限り、自分以外で栄子を箱割れさせた女子高生は、これが初めてだったのだ。
さて、A卓下位二名とB卓下位二名………マホ、蒔乃、静香、美誇人の対局は、起家が静香、南家がマホ、西家が蒔乃、北家が美誇人でスタートしていた。
東一局、静香の親。
本来なら、マホは東初に優希のコピーを使って、いきなりリードしたいところ。
しかし、同じコピーを一日に複数使えない制約がマホにはあった。同じコピーは翌日にならなければ使えないのだ。
既に優希のコピーは一回戦で使ってしまった。
誰のコピーを使ったら良いのだろうか?
すると、三巡目で、いきなり、
「リーチ!」
親の静香が先制リーチをかけてきた。
マホは、
「(団体戦でもそうでしたが、この方は手が大きそうです。絶対に振り込めません。ここは何とか守ります!)」
洋榎のコピーで対処することにした。
直感的に相手の和了り牌が全て分かる能力。当然、これなら振り込まない。マホは余裕で一発振り込みを回避。
蒔乃(神)は和了り牌を把握している。当然、振り込まない。
美誇人は、一先ずマホに合わせ打ちして様子を見た。
しかし、
「ツモ!」
豪運の静香は一発で和了り牌を引き寄せた。
しかも、
「リーチ一発ツモドラ3。6000オール!」
親ハネツモだ。
いくら洋榎のコピーでも、相手のツモ和了りを防ぐ力は無い。
ただ、マホとしては、最強ディフェンスとも言える洋榎のコピーを、完全にムダ使いした感じであった。