咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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百七十六本場:5位決定戦決着

 5位決定戦は東二局に突入した。

 美和の親。ドラは{9}。

 

 今回も敬子の捨て牌は、{東南西北}と相変わらず。一般的に言われている切り出し方を完全に無視している。

 マイペースゆえの独特な切り方だ。

 

 ただ、この局で最初に聴牌したのは敬子ではなく、

「リーチ!」

 もう一人のマイペース娘、デジタルの化身と名高い和だった。優れた牌効率を見せ、五巡目で聴牌すると、即刻先制リーチをかけてきた。

 栄子も敬子も美和も一発振込みは回避。

 

 和は、一発ツモにはならなかったが、

「ツモ。」

 数巡後に和了り牌を自らの手で引き当てた。

 

 開かれた手牌は、

 {一二三[⑤]⑥⑦2223456}  ツモ{1}  ドラ{9}  裏ドラ{二}

 

 {13467}の五面待ち。

「メンピンツモドラ2。2000、4000。」

 高めで平和が付く和了りだった。

 

 

 東三局、和の親。

 ここに来て、とうとう栄子がもっとも恐れていたことが起こった。

 三巡目に、

「リーチ!」

 別名女子高生ホイホイと呼ばれる美和が先制リーチをかけてきた。今や、女子高生雀士から咲以上に恐れられる能力者だ。

 

 ただ、某掲示板では、

『やっと美和様が動き出したと!』

『でも、綺亜羅の人魚もノドちゃんも期待できないじょ』

『不感症娘達なんか、ほっとけばイイし!』

『ドイツメンバーのみかんジュースだけは期待できるッス!』

『でも、一人だけじゃつまらないと思』

『つまらない未来しか見えへんで』

『ないないっ! そんなのっ!』

『そんなオカルトありえません』←誰だこいつ?

『そんなことより和ちゃんのオモチ画像をアップするのです!』

 今一つ盛り上がりに欠けていた。

 敬子と和は美女ランキングこそ高いが、みかんジュースと言う意味では、みんなの期待に応えてくれそうに無いからだ。

 

 数巡後、

「ツモ!」

 美和がメンピンツモドラ2を和了った。

 その直後、栄子は幻の世界に意識が飛ばされた。

 

 初めて経験する美和ワールド。

 粘液の付いた無数の巨大な触手が栄子に襲い掛かる。

 そして、触手は栄子を捕えると、その粘液で栄子の制服を溶かし始めた。その粘液は消化液なのだ。

 ただ、人体は溶かさない。飽くまでも溶かすのは衣類だけだ。幻の世界なのだから、そんなご都合主義がまかり通るのだろう。

 そして、栄子の肌が露わになると、胸や股間を激しく刺激する。

 …

 …

 …

 

 幻の世界の中で、既に体感時間は既に一時間。

「うあぁあ…。」

 思わず、現実世界の栄子は声を上げていた。

 

 ただ、美和ワールドに飛ばされたのは栄子だけだった。残念ながら、敬子と和には美和の能力が通じなかった。

 まあ、美和としても想定済みではあるが…。

 

 それから少しして、

「2000、4000!」

 栄子の耳に美和の点数申告の声が聞こえてきた。

 それと同時に、栄子の意識は現実世界に戻された。

 

 栄子は、胸と股関を手で隠しながら赤面していた。今、自分は観衆の目の前で裸にされていると思えたからだ。

 しかし、制服は着ている。

「(なんなの、あれ?)」

 と言うか、溶かされていない。どうやら、あれは幻だったようだ。

 しかし、何と言う嫌な幻だろう。

 さすがに栄子でも、すぐさま平静を保てるような状況には無い。

 そんな最悪のコンディションで、栄子の親番が回ってきた。

 

 

 東四局、栄子の親。

 ところが、折角の親番なのに栄子は集中できずにいた。理由は言うまでもない。さっきの美和ワールドが原因だ。

 あの快楽への興味に意識がいってしまい、全然卓上が見えていなかったし、能力もキチンと発動していなかった。

 普段、優れた能力レーダーで他家の和了り牌を察知しているが故、そのレーダーが利かなくなると、全然相手の和了り牌が分からない。

 それどころか、聴牌気配すら拾えない。

 今の栄子は、そんな常態になっていた。

 

 そして、六巡目。

 誰からも聴牌を感じないこともあり、栄子が油断して切った{②}で、

「ロン!」

 美和が和了った。

「えっ?」

 振り込んだ事実を知らされ、栄子は一瞬驚いて大声を上げた。そして、その直後、再び彼女の意識は美和ワールドに飛ばされた。

 

 今回は、前回の続きから始まる。

 既に栄子の制服は完全に溶かされて全裸状態。

 手足は触手に捕えられて動けない状態。そこに、容赦なく粘液付きの無数の触手が栄子の性感帯を隈なく刺激する。

 もう、これ以上は頭が馬鹿になる。

 …

 …

 …

 

 そして、幻世界での体感時間が一時間を過ぎた頃、

「タンピン三色ドラ2。12000!」

 栄子の耳に、美和の点数申告の声が届いた。

 その直後、栄子の意識は現実世界に引き戻された。

 

 これで、点数と順位は、

 1位:敬子 36900

 2位:美和 33900

 3位:和 27300

 4位:栄子 1900

 絶対ディフェンスの栄子がトビ直前まで削られた。栄子の能力を知る者からすれば、先ずあり得ないことだ。

 

 まさかの栄子の振り込みに、観戦室で対局を見ていたフレデリカは、

「(どう言うこと? それに、あの栄子が23000点以上も削られるなんて、普通ありえないでしょ?)」

 と心の中で大声を上げながら、驚きのあまり思わず立ち上がってしまった。

 咲や光にヤラれたのならともかく、まさか5位決定戦レベルの選手が栄子から20000点以上削るとは………。

 ニワカに信じ難い光景だ。

 

 

 南入した。

 南一局、敬子の親。

 配牌時に敬子が口ずさむ綺亜羅高校応援歌は、既に栄子の耳には届いていなかった。心ここにあらずといった状態だ。

 

 対局がスタートした。

 ただ、もはや栄子は惰性で打っていた。

 羞恥心や背徳感、そして忘れられない快感が頭の中を支配して、全然対局に集中できないのだ。

 

 そして、気が付くと、

「ロン!」

「えっ?」

 いつの間にか敬子に振り込んでいた。

「12000!」

 しかも親満だ。

 栄子にとっては、まさかの振り込み二連発であった。

 しかも、共に12000点である。

 こんなことは、彼女がフレデリカに出会い、能力麻雀に目覚めてからは初めてのことであった。

 

 ただ、敬子の最後の和了りを見せた時、美和は敬子の背後に巨大で恐ろしい何かの影を感じ取っていた。

 正体は分からない。ただ、恐るべきエネルギーを放っていた。

 

 観戦室にいたフレデリカも、その強大な何かを感じ取っていた。

 しかし、能力が停止した栄子は、至近距離にいながらも、その脅威を感じ取ることができないでいた。

 

 

 これで、点数と順位は、

 1位:敬子 48900

 2位:美和 33900

 3位:和 27300

 4位:栄子 -10100

 

 この記録は、栄子だけではなく、フレデリカにとっても衝撃的であった。

 世界大会のレギュラーレベルの選手でも栄子から18000点を削るのは厳しい。それは昨年の世界大会でも立証されている。

 だからこそ栄子は、自分の点数をギリギリまで削らせて、最後に『リラの鉄槌』と呼ばれる超逆転劇を演じることが出来るのだ。

 

 しかし、その栄子が35100点も削られたのだ。

 フレデリカは大急ぎでノートパソコンを立ち上げると、この対局結果をニーマンやドイツの仲間達宛にメールで送信した。

 

 

 以上の結果、5位から16位の順位は以下のとおりになった。

 

 5位:稲輪敬子(綺亜羅高校)

 6位:的井美和(綺亜羅高校)

 7位:原村和(白糸台高校)

 8位:園田栄子(風越女子高校)

 9位:神代蒔乃(永水女子高校)

 10位:石見神楽(粕渕高校):中味は故 古津節子(元 綺亜羅高校)

 11位:石戸明星(永水女子高校)

 12位:鬼島美誇人(綺亜羅高校)

 13位:鷲尾静香(綺亜羅高校)

 14位:竜崎鳴海(綺亜羅高校)

 15位:椋真尋(千里山女子高校)

 16位:夢乃マホ(千里山女子高校)

 

 

 そして、いよいよ決勝卓の対局が開始される。

 宮永時代最後のインターハイの、まさに最後の対局である。

 

 決勝卓は25000点持ち30000点返しの半荘二回。百点棒は五捨六入で計算し、各半荘のスコアを出す。そして、そのトータルスコアで順位を決める。

 オカありだが、ウマはない。

 しかし、オカがある以上、半荘二回のいずれかで1位を取れないと優勝するのは極めて難しいだろう。

 

 半荘での1位の点数が同じ場合は、上家を1位、下家を2位とするが、二半荘のトータルスコアが同じ場合は同着とする。

 よって、春季大会個人戦と同様に同時優勝があり得る。

 

 また、昨年のインターハイ個人戦と同様に西入無し。

 つまり、全員が25000点のままオーラスを終えても対局終了となる。

 

 

 四人の選手が対局室に入場してきた。

 一人目は宮永照の後継者、大星淡(白糸台高校)。絶対安全圏やダブルリーチ、槓裏モロ乗りと言ったマルチタスクを有する。

 

 二人目は深山幽谷の化身、高鴨穏乃(阿知賀女子学院)。蔵王権現の力を宿し、他家の能力を無効化する。

 

 三人目は北欧の小さな巨人、宮永光(白糸台高校)。翻数上昇を特徴とする。春季大会個人戦では咲と同時優勝。

 

 そして四人目は、日本の守護神、点棒の魔術師、嶺の上の女王、悪魔の紋章などの多くの二つ名を有する宮永咲(阿知賀女子学院)。

 個人戦では1年生のインターハイ及び春季大会、2年生のインターハイ及び春季大会と四連続優勝。

 コクマでも1年生及び2年生で共にメンバーに選ばれ、共に優勝。

 団体戦では1年生のインターハイ及び春季大会、2年生のインターハイと三回連続優勝を果たし、2年生の春季大会では準優勝。

 歴代女子高生最強と呼ばれる。

 

 

 光は、卓に付くと、

「今回は、春季大会のようにはさせないからね!」

 と咲に言い放った。

 今度こそ咲に勝つ。その心意気で光の心の中は満ち溢れていた。

 

 

 場決めがされ、起家は淡、南家は穏乃、西家は咲、北家は光に決まった。

 この時、光は咲から嫌な空気を感じ取っていた。あの忌々しい力。プラスマイナスゼロのエネルギーだ。

 

 昨年のインターハイ個人戦では、咲は前半戦で自分だけ25000点持ちで、他家は全員30000点持ちの変則ルールのイメージで打って脳内でプラスマイナスゼロを達成。実際の点数では、咲が丁度30000点で1位だった。

 そして、後半戦では咲が起家となり、全員を25000点で終了した。これにより、起家の咲のみ+15、他は全員-5と言う珍事が起き、トータルで咲のみがプラスとなり、咲が優勝した。

 

 春季大会でも、咲は前半戦では完全なプラスマイナスゼロを演じ、後半戦では、恐らく昨年インターハイと同様に自分だけ25000点持ち、他家は30000点持ちのイメージで打って脳内でプラスマイナスゼロを達成していたと思われる。

 しかも、その際に他家の点数まで調整し、咲と光が同時優勝、穏乃と淡が同時3位になるように作り上げた。

 加えて、その時の素点の合計は、咲と光では咲が、穏乃と淡では穏乃が共に100点多い状態。

 つまり、

 阿知賀女子学院 > 白糸台高校

 の図式まで作り上げた。本当に癪に障ることを平然とやってくれる。

 

 今回、この悪魔は、いったい何をやらかしてくれるのだろうか?

 少なくとも、完全プラスマイナスゼロでは、咲は勝ちを諦めることになる。なので、恐らく仮想プラスマイナスゼロで勝ちを狙うだろう。

 ならば、咲が厳密に何をしようとしているのか、どんな仮想プラスマイナスゼロを仕掛けてくるのか、東場のうちに見抜いておく必要がある。

 光は、そう考えていた。

 

 

 東一局、淡の親。

 いつものように絶対安全圏が発動する。

 淡のみ軽い手で、他家は軒並み六向聴になる。他家には最悪の配牌を強要する、実にイヤラシイ能力だ。

 ここから、鳴きも含めてさっさと聴牌し、他家が聴牌する前に和了る。これが淡のスタイルだ。

 

 ただ、咲も光も淡には中々鳴かせてくれない。淡には、どんなことがあっても絶対安全圏内に聴牌させたくないからだ。

 しかし、

「ポン!」

 四巡目に淡は、穏乃が捨てた{發}を鳴いた。穏乃としても、自らの手を進めるために、どうしても{發}を処理したかったのだ。

 

 そして、その二巡後に、

「ツモ。發ドラ3。3900オール!」

 親満級の手を淡がツモ和了りした。

 赤牌入りの場合、リーチをかけなくても全部でドラが8枚ある。なので、ドラを3枚含む和了りも決して珍しくは無い。

 ドラが多い分、和了った者勝ちな面が大きいとも言えよう。

 

 東一局一本場、淡の連荘。サイの目は9。ドラは{3}。

 ここでも当然、絶対安全圏は健在である。基本的に、無効化されない限り淡は絶対安全圏を使い続ける。

 また、今回、淡はダブルリーチの能力も併用した。

 

 しかし、最後の角の後にツモ牌が四枚しかない切れ方………最後の角が二番目に深い切れ方である。

 当然、ダブルリーチは見送って、ここから和了り役のある形に切り替えてゆく。

 

 淡の配牌は、

 {二三四七七七①②③⑤⑤79北}

 

 一先ず、ここから打{北}で聴牌に取った。

 

 二巡目、ツモ{④}、打{①}で聴牌維持。

 

 三巡目、ツモ{[5]}、打{9}で嵌{6}待ちのタンヤオドラ1に手を変えた。

 

 四巡目、ツモ{4}、打{7}で{36}の両面待ちに切り替え。{3}が来ればドラ2の手。

 

 五巡目、{⑨}をツモ切り。

 

 六巡目、{中}をツモ切り。この巡目で、最悪の場合、他家の誰かが聴牌する。

 

 そして、七巡目。

 ここで淡は幸運にもドラの{3}を引いた。

 

「ツモ! タンヤオドラ2。3900オールの一本場は4000オール!」

 これで淡は親満級の手を二連続で和了り、48700点の断然トップとなった。

 

 しかし、相手は咲に光に穏乃。

 淡は、

「(こんなの、リードのうちに入らない!)」

 現状に満足せず、まだまだ貪欲に稼ぐ姿勢を崩さなかった。

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