コクマの5位決定戦は、東京2チーム、大阪1チーム、鹿児島チーム、島根チームの対戦。先鋒戦は、片岡優希、二条泉、石戸明星、石見神楽の戦い。
この時、神楽は綺亜羅高校元エース、古津節子の霊を降ろしていた。
優希のパワーは今日の午前が最大だったが、正弦曲線の頂点を越えただけであって、まだ調子が悪いわけでは無い。
明星のヤオチュウ牌支配も健在。
節子は、これまでに地球上で時代の節目に起こってきた天変地異の映像を見せる。
この面子………三人の魔物に囲まれて泉はデク人形と化した。これは、止むを得ないだろう。決して泉を責めることはできない。
東初で優希が大きく稼いだが、その後、明星と神楽(節子)が追い上げて逆転。そして、オーラスを向かえる前に泉が箱割れして5位決定戦は終了した。
100000点持ちの点数引継ぎ制ルールなのに、先鋒戦でトビ終了する試合が意外と多い。それだけ、一般人と能力者の壁は高いと言うことだろう。
結局、5位から8位の順位は以下のとおりとなった。
5位:島根Aチーム
6位:鹿児島Aチーム
7位:東京A2チーム
8位:大阪A1チーム
そして、決勝戦は、奈良チーム、埼玉チーム、東京1チーム、長野チームの対戦。
奈良チームの先鋒は咲、埼玉チームの先鋒は美和、東京1チームの先鋒は光、長野チームの先鋒は栄子。
四人の魔物による戦いである。
起家が栄子、南家が美和、西家が咲、北家が光でスタートした。
東一局、栄子の親。
ただ、この半荘がスタートした段階で、既に栄子は、自らの敗北を悟っていた。
栄子は、相手が自分からどれだけの点数を奪える力量があるかを測ることができる。龍の球を集める話で出てくるスカウターを装備しているようなものだ。
対局直前に栄子が測定した値は、
咲:>25000(測定不能)
光:>25000(測定不能)
美和:>25000(測定不能)
全員が、どこまで自分を削れるか分からない。こんなフザケた面子に囲まれたのは生まれて初めてだ。
それに美和の値が、インターハイ個人戦の時とは違って25000超えでフィックスされている。これは、栄子が美和ワールドを経験してしまったため、自ら振込みに行ってしまう可能性を示唆しているためと考えられる。
六巡目、
「リーチ!」
美和が先制リーチをかけてきた。
咲も光も、一旦現物落としで対応する。栄子も守備麻雀の能力が発動しているので、当然、和了り牌を察知しており、振込むことは無い。
一発ツモは無かった。
その後も、二巡、三巡と過ぎて行く。
この時、咲は和了りに向かっていなかった。敢えて、美和に和了らせようとしていた。
美和が和了れば、例の淫猥な能力が発動する。咲自身は、その能力を跳ね返すことができるので被害者にはならない。
しかし、栄子は完全に美和ワールドで楽しまされるはずだ。
インターハイ個人戦の成績を見る限り、美和が和了った後に栄子の能力は停止する。そして、振込みマシーンと化す。
これまで、光は美和との対戦経験が無い。今回が美和との初対戦である。そのため、美和が和了った直後に光がどうなるか分からない。
美和ワールドに連れ去られるのか、それとも美和ワールド行きを阻めるのか?
もし、あの淫猥な能力に光が負けるようであれば、咲は、より一層有利になる。優勝は咲と美和の一騎打ちになる。
逆に光が美和の能力を跳ね返せるのであれば、咲、光、美和の三人で栄子からより多く点棒を奪った者が勝者となるだけだ。
それで、咲は一先ず様子見に回ることにしていた。
リーチから五巡後、
「ツモ!」
美和が待望の和了りを見せた。
咲に向かって巨大な触手群が襲い掛かってくるが、咲は、これを強大なオーラで跳ね返した。
隣では、光も咲と同様に美和の能力をシャットアウトしていた。
その様子を咲は、
「(やっぱり光にも効かないか。)」
光の全身から放たれる強大なオーラから感じ取っていた。
どうやら、美和の餌食となるのは栄子だけのようだ。
栄子の意識が淫猥なる幻の世界へと飛ばされた。
…
…
…
体感時間で約一時間、栄子は幻の世界で堪能させられた。
そして、
「2000、4000!」
美和の点数申告の声と共に、栄子の意識は現実世界へと戻された。
ただ、そう簡単に、この世界への免疫ができるわけではない。
綺亜羅三銃士達は慣れているようだが、それは、もう二年以上も毎日のように美和を相手にしているからである。
既に栄子は集中できなくなってきており、能力発動も大きく低下していた。
しかし、まだ多少は他家の和了り牌を感じられるようだ。完全にスーパーディフェンスが失われたわけではない。
東一局一本場。
ここでも咲は、様子見していた。
光も同様である。先ずは完全に栄子の息を止めることの方が先決と判断したようだ。
中盤に入ってすぐ、
「リーチ!」
またもや美和がリーチをかけてきた。
そして、数巡後に、
「ツモ!」
当然の如く美和が和了り牌を自ら引き寄せた。吸い込み式食虫植物パワーである。
これによって、再び栄子は幻の世界へと飛ばされた。
…
…
…
幻の世界の中で、どれだけ時間が経過したことだろう?
もう、何も分からない。完全に栄子の頭の中は真っ白になっていた。
もはや、栄子には抗うだけの気力は無い。
「6000オール!」
美和の点数申告の声だ。これで、栄子の意識は現実世界に戻ってきた。
しかし、幻世界の体感時間が一回につき一時間とすると、既に合計二時間近くも美和ワールドに監禁されていたことになる。
精神力は、既に限界を超えた。
これで完全に栄子の戦意は消失し、同時に能力も停止していた。もはや、戦う気力も完全に失われていたのだ。
能力によって相手の和了り牌を察知していただけに、能力が失われると並以下の守備力しかなくなる。
これで栄子に勝ち目はなくなった。
そして、こうなることを待っていた者達がいる。咲と光だ。栄子退治を美和に任せて自分達は高みの見物をしていたのだ。
いよいよ二人も美和との戦いに参戦する。ここからが真の先鋒戦となる。
東二局二本場。ドラは{五}。
この局も美和が、
「リーチ!」
六巡目に先制リーチをかけてきた。
美和の手牌は、
{三四五五[五]六七③④[⑤]34[5]}
{二五八}の三面待ちだが、{五}を三枚使いしている上にドラ表示牌は{五}。つまり、事実上の待ち牌は{二八}だけとなる。
しかも高目の{八}で和了れば三色同順が付いて出和了りでも倍満が確定する。ここにツモと裏が付けば三倍満まで点数は上がる。
その二巡後、美和は{②}をツモ切りした。
すると、
「カン!」
その{②}を咲が大明槓してきた。
そして、
「もいっこカン! もいっこカン! ツモ!」
連槓から嶺上開花による和了りを決めた。
開かれた手牌は、
{⑤222} 暗槓{裏八八裏} 暗槓{裏二二裏} 明槓{横②②②②} ツモ{[⑤]}
美和の全ての和了り牌を取り込んでの和了りだった。これでは、美和が和了れない。
しかも、この和了りは美和の責任払いになる。完全に、咲に、してやられた感じだ。
「タンヤオ対々三暗刻三槓子三色同刻嶺上開花赤1。24600です。」
加えて三倍満と大きな手。
これで、咲が一気にトップに躍り出た。
東三局、咲の親。
まだ栄子は、ボーっとしている。何も考えずに惰性で打っている感じだ。当然、守備の能力は欠片も見せていない。
中盤に入った。
ここで栄子が切った{①}を、
「カン!」
咲が大明槓した。
そして、
「ツモ! 清一嶺上開花ドラドラ。24000です。」
そのまま王牌からツモった牌で、咲は親倍を和了った。
続く東三局一本場でも、
「ツモ! タンヤオ一盃口嶺上開花ドラドラ。6100オール!」
咲が門前タンヤオからの嶺上開花を決めた。
これで、点数と順位は、
1位:咲 165600
2位:美和 94600
3位:光 91900
4位:栄子 47900
絶対守備を誇るはずの栄子が、50000点以上にも及ぶまさかの大失点。
個人戦でも栄子は35000点以上削られたが、今回は、そのさらに上を行く。
まさにフレデリカにとっては、
「(いくら宮永さんでも、嘘でしょう?)」
不沈艦が沈む衝撃映像でしかなかった。
東三局二本場。
ここから、光の進撃が始まる。
「(これ以上、咲の好き勝手にはさせない!)」
光は、全身の力を指先に集中して次々と有効牌を引き入れる。
そして、とうとう、
「ツモ。平和ドラ3。2200、4200。」
待望の第一弾の和了りを決めた。これで、光は美和を抜いて2位に浮上した。
東四局、光の親。
光は、照と同じで一回和了ると連続で和了り続ける。しかも、偶然役とツモを除く和了り役の合計翻数がドンドン増えて行く。
ただ、咲が相手なので下手にリーチをかけられない。
リーチをかけたら、ツモ牌が和了り牌でない限り、たとえそれが嫌な雰囲気満載の初牌でも捨てなければならないからだ。
ただ、ラッキーなことに、この局の光の手は平和とタンヤオの合計2翻がついた。
そして、
「ツモ。タンピンツモドラ2で4000オール!」
序盤………淡で言えば、絶対安全圏内の巡目に当たる五巡目で、光は親満をツモ和了りした。
東四局一本場。
ここでも光は、
「ツモ。平和三色ドラ2。6100オール!」
続く東四局二本場でも、
「ツモ。メンホン中ドラ2。6200オール!」
比較的早い巡目で高い手を連続して和了った。
普通であれば、完全に手のつけられない状態である。
これで、点数と順位は、
1位:光 149400
2位:咲 145100
3位:美和 76100
4位:栄子 29400
光が大きく稼いで首位に立った。まさかの逆襲である。
しかし、東四局三本場では、
「カン!」
光が聴牌に取るために捨てた{⑨}が狙われた。
そして、
「ツモ! 嶺上開花ドラ3。8900!」
通常有り得ないであろう。和了り役が嶺上開花のみで咲が和了った。
しかもドラが3枚で満貫である。
これは光の責任払いになる。この和了りで、咲が首位を奪還した。
南入した。
このコクマで咲の対局が南入したのは、これが初めてである。
今までの咲の試合は、南四局に入る以前に、どこかをトバして終了してきた。少なくとも、通常の感性では100000点持ちとは思えない展開だろう。
南一局、栄子の親。
やっと栄子は落ち着きを取り戻してきた。
とは言え、まだ相手の和了り牌が何となく分かるだけで、自分から奪える点数の上限を設定するとか、誰もトバさせない能力を発揮するとかまではできない。飽くまでも他家の和了り牌を見抜くまでに留まる。
もっとも、それらの能力が復活したところで、このメンツ相手では、まったくもって意味は無いのだが………。
美和が聴牌した。
栄子が感じた和了り牌は、{369}。
しかし、三面聴であるにもかかわらず、美和はリーチをかけてこなかった。
東一局二本場で、咲に大明槓からの嶺上開花を決められ、一気に24300も奪われたためである。やはり、咲の槓を恐れているのだ。
そして、数巡後、
「ツモ!」
咲に先手を打たれることなく、東一局一本場以来、三度目の和了りを美和が決めた。これによって、またもや栄子は美和ワールドへと意識が飛ばされた。
…
…
…
栄子に迫る触手群。またもや、栄子は触手プレイを嫌と言うほど堪能させられた。
完全に脳みそがバカになる。現実では経験できない快楽の世界に引き摺り込まれて、栄子は何回も絶頂を迎えた。
そして、
「3000、6000!」
美和の点数申告の声と共に栄子の意識は現行世界に呼び戻された。
これで栄子は、集中力も闘志も気力も完全に失い。再びデク人形へと戻った。
南二局、美和の親。ドラは東。
まるで罠に嵌った女子高生(栄子)のパワーを吸い取ったかのように、美和の手は異常に進みが早かった。
配牌で、
{五六七八③⑤[⑤]149西北白中}
ここから、七巡目で既に、
{四五六七八③⑤⑤[⑤]134[5]} ツモ{④}
高目で三色同順が付いてハネ満となる三面聴の手を聴牌していた。
美和は、{④}を取り込むと、
「リーチ!」
聴牌即リーチをかけた。
咲も光も安牌切り。
しかし、快楽の世界で骨抜きにされた栄子は、身体が美和ワールド行きを願っているのか、信じられないことに一発で高目の{三}を切ってきた。
美和は、ラッキーと思って和了ろうとしたが、ここで和了ると栄子が箱割れして終了となり、埼玉Aチームの3位が決定してしまう。
止むを得ず、美和は一発振込みを見逃した。
ところが、美和が一発で引いてきた牌は{六}。これは和了るしかない。
「ツモ!」
これによって、栄子の意識は淫猥なる世界へと飛ばされた。
…
…
…
そして、栄子の体感時間で一時間が過ぎた頃、
「メンタンピン一発ツモ。赤二枚に裏ドラが一枚({3})で、8000オール!」
栄子の耳に美和の点数申告の声が聞こえてきた。これで、ようやく栄子は美和ワールドから解放される。
これで、点数と順位は、
1位:咲 143000
2位:光 129500
3位:美和 112100
4位:栄子 15400
現在、美和は3位だが、次に親ハネをツモ和了りできれば光を抜いて2位に浮上し、しかも咲との点差を6500点まで縮められる。
また、埼玉チームの優勝の可能性は十分残されているのだ。
節子の悲願………綺亜羅メンバーでの優勝を目指して、
「一本場!」
美和は連荘を宣言した。