咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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百八十八本場:高校最後の世界大会4  去年の借り

「これは、やる前から勝負あったようなもんじゃのぉ。」

 ふと、まこが独り言を漏らした。

 次の瞬間、時間軸が飛び、中堅戦が終了した。

 

 前半戦も後半戦も、スウェーデンチームの二人が揃ってトビ終了。日本チームの圧倒的勝利であった。

 そして、毎度の如く、

「ジョジョ────────!」

「プシャ──────!」

 対局終了と同時にヒルデもアストリも派手に大放出してしまった。

 さすがに咲と光の『死神コンビ』を目の前にして、最後まで平静でいられる選手のほうが少ないようだ。

 

 

「「あ…有難うございました。」」

 咲と光は、対局後の挨拶を済ませると、逃げるように対局室から出て行った。これも見慣れた光景である。

 

 これで日本チームが勝ち星三で勝利したため、これで対局は終了となった。再び換気・清掃作業に移るが、これは明日の対局に向けての作業と言うことになる。

 

 この頃、某ネット掲示板では、

『大放出! 大放出ですわ!』

『やっぱり咲ちゃんと光ちゃんは凄いじぇい!』

『これと対等に戦えるんはドイツチームくらいやろ!』

『私達でも多分耐え切れないのよー』

『でも、先鋒戦ほど高視聴率にはなってないと思』

『スウェーデンの中堅達、特にヒルデがカワイソウなのです!』

『最初から結果は見えてたと思うッス!』

『たしかにあの二人とも卓を囲みたくはなか!』

『インターハイ個人準決勝では美和様と人魚姫が同卓だったし!』

『コクマは美和様と棘姫(ドイツ→長野)やったけど、棘姫は耐えられへんかったな…って先鋒戦の時と同じ書き込みしとるやん』

『やっぱり耐えられないのが正常で、耐えられるのが異常じゃ!』←まこ

 毎度の如く盛り上がっていた。

 ただ、今回もまこが書き込みに介入してきたため、さらなる時間軸の跳躍が起こった。

 

 大会五日目、三回戦。日本チームはアルゼンチンチームと対戦した。

 日本チームのオーダーは、

 先鋒:咲・美和

 次鋒:神楽・敬子

 中堅:咲・光

 副将:淡・光

 大将:穏乃・和

 

 先鋒戦は、またもや日本からは最悪コンビの参戦。当然、世界的に麻雀以外のモノが期待され、高視聴率の対局となった。

 アルゼンチンチームの先鋒は、ルチアナ(3年生:エース)とバレンティナ(3年生)。

 やはり二人とも、某ネット掲示板の住民達の期待に応えるが如く、ヒルデとアンネと同様に痴態を晒すことになった。

 言うまでもなく、先鋒戦は前後半戦共に日本チームの大勝利で終わった。

 

 次鋒戦では、この日、神楽は前半戦で十曽湧、後半戦で石戸明星の生霊を降ろした。

 アルゼンチンチームからはカレン(2年生)とティアナ(2年生)が参戦したが、神楽が降ろした永水ツインズと、敬子の読めない打ち筋には太刀打ちできず、ここでも日本チームに勝ち星を譲る結果となった。

 

 中堅戦では、アルゼンチンチームからはルチアナとジュリア(3年生:第二エース)が参戦したが、咲と光が相手では到底勝ち目は無い。

 スウェーデンチームの中堅選手達と同様に、咲と光に大敗し、派手にパインジュースを大放出する羽目になった。

 

 

 大会六日目の四回戦では、日本チームはイギリスチームと対戦することになった。

 日本チームのオーダーは、

 先鋒:咲・美和

 次鋒:神楽・和

 中堅:咲・光

 副将:敬子・光

 大将:穏乃・淡

 

 イギリスチームの先鋒は、フローレンス(3年生:エース)とアリア(1年生)。

 もはや、完全にお約束と言っても良いだろう。二人とも悪い意味で周りの期待に応えてくれた。

 勿論、対局自体も咲と美和の大勝利である。

 全てが二回戦、三回戦と同じパターンであった。

 

 次鋒戦では、神楽は前半戦で東横桃子、後半戦で真屋由暉子の生霊を降ろした。

 イギリスチームからはソフィア(2年生)とアメリア(2年生)が参戦。この対局の後半戦が、今までの日本チームの戦いで、もっとも普通の麻雀に近い対局となった。

 結果は、日本チームがギリギリのところで勝利を収め、これで日本チームが勝ち星二となった。

 

 そして中堅戦では、イギリスチームからはフローレンスとエルシー(3年生第二エース)が参戦した。

 しかし、日本の死神コンビには手も足も出ず、前後半戦共に、二人とも箱割れして日本チームが三つ目の勝ち星を取った。

 

 

 そして、大会七日目になった。

 この日は、ブロック準々決勝の日。

 日本チームの対戦相手は、ロシアチーム。

 昨年の世界大会では、日本チームに勝ち星を集中させないために、ステラがラス確定和了りした。それで淡は2位となり勝ち星を逃した。

 淡にとっては、まさに、そのリベンジ戦である。

 

 日本チームのオーダーは、

 先鋒:咲・淡

 次鋒:神楽・美和

 中堅:咲・光

 副将:敬子・光

 大将:穏乃・和

 

 今回は、最悪コンビではなく咲と淡のコンビを先鋒に持ってきた。

 対するロシアチームの先鋒はステラ(3年生)と第二エースのイリーナ(1年生)。今のロシアチームの中でイリーナは一番の美少女であった。

 その優れた容姿は、昨年の美貌対決で咲を涙目にしたナンバーワン美女ナタリアとイイ勝負である。

 しかも、オモチの方も形が美しく、全体のバランスを崩さない範囲で最大値と言える大きさだった。玄にとっても嬉しい限りだ。

 ナタリアは昨年3年生で、既に卒業したが、その入れ替わりでイリーナがロシアチームに入ってきた。恐らくイリーナが、本大会のナンバーワン美少女であろう。

 

 実は、日本チームは、ロシアチームのオーダーを事前に知っていた。毎度の如く、神楽が啓示を受けていたからだ。

 それで、淡がリベンジするために敢えて先鋒に淡を持ってきたのだ。

 

 対局室に先鋒選手四人が姿を現した。

 場決めがされ、起家が淡、南家がイリーナ、西家が咲、北家がステラに決まった。

 

 東一局、淡の親。

 ここで淡は、

「(絶対安全圏+ダブリー!)」

 能力を全開にした。

 卓上に宇宙空間が広がる。絶対安全圏が発動したためだ。

 淡のみが配牌聴牌、他家は全員六向聴からのスタートとなった。

 

 咲が淡に、

「(大丈夫だよ、淡ちゃん!)」

 目で合図を送った。咲が相手の手牌と山を見る限り、イリーナもステラも国士無双を聴牌できる巡り合わせになっていなかったからだ。

 これを受けて、

「リーチ!」

 淡がダブルリーチをかけた。

 

 サイの目は7。

 最後の角の後が最も長いパターンである。

 

 淡の暗槓は9巡目。そこまで、誰も鳴かずに場が進んで行った。

 そして、

「カン!」

 お決まりのパターンで淡が暗槓した。

 嶺上牌はツモ切り。

 すると、

「カン!」

 この捨て牌を咲が大明槓した。

 そして、嶺上牌をツモると、

「もいっこ、カン!」

 咲は当然のことのように暗槓した。

 ただ、嶺上牌を珍しくツモ切りした。

 

 次はステラのツモ番。ここで、彼女は聴牌した。

 しかも、ドラ、赤牌、新ドラに恵まれた手。

 一枚目の槓裏だけは淡が独占するだろう。しかし、他の裏ドラは自分の手に乗る可能性は十分にある。

 ならば、

「リーチ!」

 ここは勝負である。

 

 続く淡はツモ切り。ステラには振り込まず。

 イリーナは一旦安牌切り。ここでステラに振り込んでもチームとしてはマイナスにならないが、どうせならステラを淡から和了らせたい。

 咲も安牌切りで凌いだ。

 

 そして、ステラのツモ番。

 ステラが引いてきた牌は、彼女の和了り牌ではなかった。

 リーチ者なので、当然ツモ切り。

 すると、これを待ってましたとばかりに、

「ロン!」

 淡が和了った。

 

 開かれた手牌は、

 {九九②③④④⑤⑥88}  暗槓{裏二二裏}  ロン{九}  ドラ{2}  槓ドラ{①④西}  裏ドラ{5}  槓裏{二九8}

 

「ダブリードラ11。48000!」

 親の数え役満であった。

 淡と咲の連係プレイである。これで、ステラは持ち点の約半分を失った。

 

 東一局一本場、淡の連荘。ドラは{一}。

 サイの目は6。

 ここでも淡は、

「リーチ!」

 ダブルリーチをかけた。

 今回は、最後の角の後が二番目に長いパターン。淡の暗槓は、誰も鳴かなければ10巡目になる。

 

 イリーナの手もステラの手も、配牌は最悪だがツモはそれなりに噛み合ってくれる。

 そして、9巡目のツモでステラは聴牌した。

 まさか同じことが二連続で起こるとは思えない。

 ステラは、

「リーチ!」

 淡の親を蹴るためリーチをかけた。

 

 この時のステラの手は、

 {一二三四[五]六①②③[⑤][⑤]23}

 

 ドラは赤牌と合わせて4枚。高目で三色同順が付いて倍満になる平和手だ。

 当然、降りたくないし勝負に出たと言ったところだろう。

 

 そして、10巡目。

 淡は、山から牌をツモると、

「カン!」

 {8}を暗槓した。

 そして、嶺上牌の{9}をツモ切りすると、

「カン!」

 これを咲が大明槓した。

 嶺上牌を取り込むと、咲は安牌切りで通し。

 

 次のツモ番はステラ。

 しかし、引いてきた牌は{西}。和了り牌ではないためツモ切り。

 すると、

「カン!」

 またもや咲が大明槓した。

 この時、咲の全身からは凄まじいオーラが放たれていた。

 嶺上牌はツモ切り。

 

 そして、ツモ番は再びステラ。

 ここで彼女が引いてきた牌は{北}。

 和了り牌でなければリーチ者はツモ切りしなければならない。当然、ステラは、これをツモ切り。

 すると、

「ロン。48300!」

 またもや淡に和了られた。

 しかも、前局と同様にダブルリーチドラ11の数え役満。

 これでステラの点棒は、1700点まで減らされた。

 

 東一局二本場。

 既にステラは箱割れ直前。

 ここでも淡は、

「リーチ!」

 ダブルリーチをかけてきた。

 リーチ宣言牌は{3}。

 

 今までは、淡が暗槓するまで、ステラは押して行けば良かった。

 一発振込みだと7700点と比較的高いが、これは正直事故である。

 しかし、一発さえ乗り切れば、その後はダブルリーチのみの3900点の手でしかない。それで、暗槓までは自分の手を進めることだけを考えていた。

 

 ところが、今、ステラの持ち点は3900点にも耐えられない。

 恐ろしい程のプレッッシャーがステラに圧し掛かってきた。

 

 こう言う時に限って、ステラの手牌は、

 {一二五八②⑤⑧⑨258南西}

 

 字牌が少なかった。

 ここに第一ツモは{九}。打{西}。

 

 二巡目はツモ{9}。ここから打{南}。

 

 三巡目はツモ{7}。

 上家………咲の河を見ると、連続で{3}を二枚捨てていた。共にツモ切りだった牌だ。

 

 ステラの手牌は、

 {一二五八九②⑤⑧⑨2589}  ツモ{7}

 

 ジュンチャンが狙えそうな流れに思えた。

 しかも、巧く行けば三色も付く。

 それでステラは、{3}の壁を信じて{2}を捨てた。

 ところが、

「ロン。ダブルリーチのみ。3900の二本場は4500。」

 まさかの振込み。

 

 今回、淡の手は{②}と{2}のシャボ待ち。ステラは、ジュンチャン三色を意識した時点で振込んでいたのだ。

 これで前半戦はステラのトビで終了となった。

 

 今回、咲は一度も和了らなかった。

 しかし、淡のドラを大量にプレゼントしたり、最後のステラの{2}切りを誘導したりと、コンビ打ちのパートナーとして最高の仕事をしたと言える。

 これをテレビで見ていたフレデリカ達は、やはり日本最強は咲であることを再認識させられた。

 

 

 休憩に入った。

「サキー。有難う! お陰でスッキリした!」

 淡は、そう言いながら咲にダイブして抱きついた。淡からすれば、昨年の借りに利子をつけて返せた気分である。

 これも咲がパートナーだからこそできたことは淡も重々承知している。

 敵同士の時は最高に恐ろしい相手だが、味方になるとこれ以上頼もしい存在は無い。

 間違いなく咲は自分達のエースだ。

 

 

 一方、某掲示板の住人達は、

『一大事、一大事ですわ! 誰も放出しておりませんわ!』

『ないないっ! そんなのっ!』

『そんなオカルトありえません!』

『スバラくないですねぇ』

『エニグマティックだじぇい!』

『後半戦に期待するし!』

『あたたかくなーい!』

『高校102年生の和了りじゃ放出はムリッスね』

『咲様、一応カンしてたんデー!』

『でも、やっぱり最悪コンビの方が面白いよモー!』

『相手を叩き潰すカンだったけど、自分で和了るカンじゃなかったからだと思』

『オモチの淡ちゃんが和了れて良かったのです!』

 オモチを語る人以外にとっては不完全燃焼な試合内容だったようだ。

 やはり、咲と美和の最悪コンビの破壊力を知った今、並大抵の内容では満足できないらしい。大会ナンバーワン美女であるイリーナが派手にヤらかしてくれないと気が済まないのだろう。

 

 

 休憩が終わり、再び先鋒選手達が対局室に姿を現した。

 そして、早速場決めがされ、今度は起家が咲、南家がイリーナ、西家が淡、北家がステラとなった。

 

 この時、咲の全身からは久々にどす黒いオーラが放たれていた。

 別に京太郎絡みで何かがあったわけではない。

 前半戦で大人しく(?)していた分、後半戦では思い切り暴れまくりたいと思っていたためである。

 勿論、ターゲットは大会ナンバーワン美女のイリーナ。

「(この娘、本気で超綺麗過ぎる。去年戦ったナタリアレベルだし、正直言って全女性の敵だよね。だったら、やっちゃってもイイよね!?)」

 どうやら、イリーナに最大級のオーラをお見舞いしなければ、咲も気が済まないようだ。

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