休憩時間に入った。
灼は、席に腰掛けたまま目を瞑っていた。
控室に戻る必要は無い。晴絵からの指示は既に受けている。
決勝戦の次鋒には守りの弱い選手がいない。そのため、筒子以外の待ちに変えて出和了りを狙う手法は通用しない。
その証拠に、前半戦は全員振り込み無しのツモ和了りのみだ。
それで、灼はツモ和了りにかけて前半戦は筒子多面聴のみにしていた。後半戦も、この作戦は変わらない。これが指示事項だ。
とにかく、芝棒一本でも多く残して玄に繋ぐ。玄もまた、失点を最小限に抑えて阿知賀女子学院が誇る二人の魔物、咲と穏乃に繋げば良い。これも晴絵からの指示だ。
しかし、そうは言われても灼にも上級生としての意地がある。
不用意な振り込みは避けるが、憧に言ったとおり首位の座は狙う。
智紀も灼と同じで席に座ったまま目を閉じていた。
控室に戻ったところで、透華から、
「なんですの! この失点は!」
と言われるだけだ。
後半戦で取り返す。今は、それ以外に考えることはない。
一方、郝は一旦控室に戻った。
特に新たな指示が出るわけではなかったが、チームメンバーと一緒にいるほうが、気が楽なのだろう。
みかんも、一旦対局室を出た。
『あの女のような失態は犯さない!』
これが、みかんが毎々自分に言い聞かせていることだ。
絶対に馬鹿みたいな振り込みはしない。この決勝前半戦は勿論のこと、準決勝戦でも藍里への1600点の差し込み以外に振り込みは無い。
ましてや役満振り込みなど絶対にしたくない!
それと、魔物が相手でも失禁しないつもりだ。もっとも、今回の次鋒には魔物は居ないが…。
ただ、それでも一応、念のため休憩時間にはトイレに行き、用をたしておく。
トイレから出たところで、みかんは麻里香に声をかけられた。麻里香は、この行動パターンを読んで、みかんを待っていたのだ。
「みかん、お疲れ!」
「うん。でも、ちょっとマイナスだよね。」
「そう言うなって。臨海相手が相手だし、イイほうだよ。」
「そう言ってもらえると助かる。でも、そんな中でも阿知賀はプラスだからね。やっぱりインターハイ準優勝はダテじゃないかな。」
「まあ、宮永咲だけのチームじゃないってことだね。でも、うちだって淡と光だけのチームじゃないよ。それを二人で証明してやろう!」
「そうだね。」
「じゃあ、ガンバ!」
そう言いながら、麻里香がみかんの背中を思い切り叩いた。
「いったー!」
何気に準決勝の時のお返しだ。
ただ、これでみかんの気合いが入った。
休憩時間が終わり、場決めがされた。
後半戦は起家が智紀、南家がみかん、西家が郝、北家は灼と、灼と智紀が入れ替わる席順となった。
東一局、智紀の親。ドラは{6}。
とにかく自分にできることをやろう。
智紀の配牌は滅茶苦茶悪いわけではない。
{二四六八①②③⑨[5]69南西白}
ここから打{西}。
そして、ツモが割りと噛み合い、七巡目には、
{四五六六七八①②③[5]699}
平和手を聴牌。そして、
「ツモ。平和ドラ2。2600オール。」
親での和了を決めた。
東一局一本場、智紀の連荘。
ようやく智紀にツキが回ってきたようだ。前局よりも配牌が良い。ツモも比較的うまく噛み合う。
「ツモ! 2700オール。」
この局も、平和手の20符4翻を智紀はツモ和了りした。
東一局二本場。
ここでも、
「ツモ! 2800オール!」
智紀が和了った。大人しい智紀の声にも珍しく力が入った。
そして、この段階での各校点数は、
1位:臨海女子高校 107100
2位:阿知賀女子学院 101200
3位:龍門渕高校 97300
4位:白糸台高校 94400
龍門渕高校が最下位を脱出した。当然、逆転されて、みかんは心中穏やかでは無い。
「(この親を流さないと…。)」
安手でも良い。次は和了る。そう自分に強く言い聞かせた。
東一局三本場。
ここで、みかんが動いた。
「チー!」
ツキが上がることで、親の智紀は和了り優先の打ち方が自然と強くなった。みかんに鳴かせない配慮よりも自分の手を進めるほうに意識が傾いたようだ。
しかし、和了りを目指しているのは、みかんだけでもなければ智紀だけでもない。他の二人も和了りを目指してくる。
そして、今回は珍しく郝が、
「チー!」
みかんが捨てた{2}を鳴いた。
中国麻将と違って日本麻雀では鳴いたら成立しなくなる役がある。それに、日本麻雀には無い役が中国麻将には存在する。そのため、郝は間違いがないように普段は無難に門前で手を進めている。
ただ、鳴いても和了れる役が、当然、日本麻雀にもある。
「和ー。ツモです。」
この局は、郝がツモ和了りした。
開かれた手牌は、
{1235578899} チー{横213} ツモ{7}
染め手ならば鳴いても問題ない。
「2300、4300。」
ただ、日本の麻雀では、この和了りは鳴き清一色の満貫だが、中国麻将では一色双竜会と呼ばれる役で、字一色や四暗刻と同じ点数が与えられる役満級の和了り形だ。郝としては、正直損をした気分であろう。
とは言え、これで郝は、東一局から東一局二本場までの失点を取り返した。
東二局、みかんの親番。ドラは{⑧}。
ここで先制したのは、
「リーチ!」
灼だった。六巡目でのリーチ。
一発ツモはなかったものの、結局、数巡後に
「ツモ!」
得意の筒子多面聴を灼がツモ和了りした。裏ドラは{九}。
「2000、4000!」
和了り役はリーチとツモのみだが、{⑧}と{[⑤]}と{九}を一枚ずつ持った手だった。
満貫だ。みかんにとってはキツい親かぶりになった。
東三局、郝の親番。
ここでも、
「リーチ!」
灼が先制リーチをかけた。そして、
「ツモ! 2000、4000!」
この局も灼が征した。
各校点数は、
1位:阿知賀女子学院 114900
2位:臨海女子高校 110000
3位:龍門渕高校 89000
4位:白糸台高校 86100
この和了りで、灼がトップに躍り出た。
東四局、灼の親番。ドラは{中}。
ようやく、みかんにツキが回ってきた。ドラの{中}が配牌で対子だ。しかも、{二}と{8}も対子、{北}が暗刻になっていた。
不要牌は{九①南白}。
ドラを考慮しない郝から、早々に{中}が出た。みかんは、これをすかさず、
「ポン!」
鳴いた。これで、中ドラ3が確定。
しかも、このみかんの手に筋は関係ない。智紀からも{二}が出てきた。当然、
「ポン!」
みかんは、これを鳴いた。
次のツモで{①}を重ね、その数巡後に、
「ツモ! 中対々ドラ3! 3000、6000!」
みかんがハネ満をツモ和了りした。
南入した。
親は再び智紀。
ここでも、みかんのツキは続いた。ドラを含む平和手。出和了りで満貫ある。当然、無理にリーチはかけない。
聴牌気配を感じてか、誰からも和了り牌が出てこなかったが、
「ツモ!」
みかんは、自力で和了り牌を掴んできた。
「タンピンツモドラ3。3000、6000!」
各校点数は、
1位:白糸台高校 110100
2位:阿知賀女子学院 105900
3位:臨海女子高校 104000
4位:龍門渕高校 80000
この和了りで、今度はみかんが首位に立った。まさしく、順位の入れ替わりの激しい混戦状態だ。
南二局、二連続でハネ満を和了ったみかんの親。
みかんは、この局も配牌に恵まれていた。完全にツキを呼び寄せたと実感していた。しかし、
「ポン!」
ここでも郝が鳴いてきた。みかんが捨てた{發}を鳴いたのだ。
この時の郝の手牌は、
{一三九①②③13東東} ポン{發發發}
發チャンタ三色同順の一向聴だった。
しかも、中国麻将では、ここに五門斉と呼ばれる役が付く。
しかし、この鳴きでツモが変わり、智紀の手の進みが良くなった。そして、
「タンピンツモドラ2。2000、4000。」
智紀が満貫をツモ和了りした。まだ一人沈みの状態が続いているが、これで点差を大きく縮められたことは言うまでもないだろう。
南三局、郝の親番。ドラは{北}。
郝の配牌は、
{一三四九③[⑤]⑥99東北北白白}
ここから打{東}。その後、{九四③9}と捨てて行った。
そして、数巡後、
「和ー。ツモです。4000オール。」
郝がツモ和了りした。
開かれた手牌は、
{一二三④[⑤]⑥79北北白白白} ツモ{8}
日本の麻雀ルールであればツモ白ドラ2赤1だが、中国麻将の場合は花竜(俗に言う三色一通)と五門斉がつく。
これで各校点数は、
1位:臨海女子高校 114000
2位:白糸台高校 102100
3位:阿知賀女子学院 99900
4位:龍門渕高校 84000
再び郝が首位を奪った。そして、同時に灼が原点を割った。後半戦では東一局三本場以来である。
南三局一本場。
ここでの郝の配牌は、
{二五八③⑥147南西北白發中}
一見、バラバラで、しかも九種九牌にもならないクズ手だが、これは中国麻将では全不靠と呼ばれる和了り役である。日本ではローカル役の十四不塔がこれに当たるが、十四不塔は一巡目限定の特別役であり、全不靠とは厳密には異なる。
中国麻将には天和に当たる役が無い。しかし、それでも配牌で和了っていると言う奇跡には変わり無いだろう。
ただ、それが中国麻将だったらの話である。
ここでは大会ルールに則る。
もし、全不靠が大会ルールで認められていたら、これで郝は天和を和了っていることになる。
しかし…、残念ながら、この手は本大会では和了り形として認められない。つまり、郝は、中国麻将なら配牌で和了っていると言う奇跡を無かったことにし、大会ルールで和了り形として認められる形に変えなければならなかった。
郝の中では天和放棄だ。これでは…、さすがに郝もツキを手放すことになる…。
逆にツキが上がってきたのは、
「リーチ!」
灼だった。筒子多面聴で先制リーチをかけた。そして、
「一発ツモメンホン赤1。3100、6100!」
一発で灼は和了り牌を引き、ハネ満を和了った。
開かれた手牌は、
{②②②③④[⑤]⑥⑦⑧⑨東東東} ツモ{⑨} ドラ{一} 裏ドラ{3}
高目なら倍満だったが、贅沢は言っていられない。
これで、各校点数は、
1位:阿知賀女子学院 112200
2位:臨海女子高校 107900
3位:白糸台高校 99000
4位:龍門渕高校 80900
今度は灼が首位の座を奪い返した。逆に、みかんが原点を割った。
オーラス、灼の親番。ドラは{⑤}。
灼の第一打牌の{中}を、
「ポン!」
いきなり智紀が鳴いた。次巡も、
「チー!」
智紀が鳴いて{横③④[⑤]}を晒した。そして、五巡目、
「ツモ。」
早和了りを智紀が決めた。しかも、
「中ドラ5。3000、6000。」
ハネ満だ。
開かれた手牌は、
{二三四五六⑤[⑤]} ポン{中中中} チー{横③④[⑤]} ツモ{一}
これで各校点数は、
1位:阿知賀女子学院 106200
2位:臨海女子高校 104900
3位:白糸台高校 96000
4位:龍門渕高校 92900
次鋒戦開始時点と比べて、智紀はプラス100点と実質変わらず、郝はプラス3300点、灼はプラス3400点、みかんがマイナス6800点となった。
「「「「ありがとうございました。」」」」
最後の一礼のあと、選手達は対局室を後にした。
みかんは、控室に戻る途中、自販機の前で麻里香を見つけた。
この時、麻里香は缶のお汁粉を二本買い、うち一本をその場で飲んでいた。どうやら、相当な甘党らしい。
「麻里香。また、それ飲んでる!」
「イイジャン。好きなんだから。」
「(でも、その食生活で、よく太らないわよね。)」
みかんと麻里香では、みかんのほうが細身だが、麻里香だって標準体型から考えたらやや細身だ。
一応、みかんは食事制限と日々のトレーニングで今の体型を維持している。彼女なりに努力しているのだ。
しかし、麻里香は食事制限を設けていないし、特段、トレーニングもしていない。ただただ、太らない体質なのだ。
白糸台高校麻雀部は、前エースの照が菓子好きだったこともあるが、その一学年上の栞達も部内でパンケーキを作ったりしており、元々、部全体が菓子で溢れているのだ。
みかんは、いつも菓子類を食べたいのを我慢して、付き合い程度に一口二口食べる程度だが、その横で麻里香は毎回菓子を馬鹿食いしている。それでいて麻里香の体型には、特段変化が無い。
「(ホント、羨ましいわ。)」
いや、羨ましいを通り越して妬ましくすら感じる。
「原点割ってゴメンね。」
「私も世界ランカーが相手だし…。」
「臨海の明華ね。」
「そう。それに、あの憎たらしいドラ爆もいるしね…。まあ、どれだけやれるか分からないけど、やれるだけのことはやってくるよ!」
「じゃあ、ガンバってね!」
そう言うと、さっきのお返しとばかりに、みかんが麻里香の背中を思い切り叩いた。一応、気合入れだが…。
ちなみに、麻里香は、二本買ったお汁粉のうちのもう一本は、ここで飲まずに対局室に持ち込むつもりのようだ。殆ど、優希のタコスと変わらない気がする。
一方、灼は控室に向かう途中で玄に会った。
玄は、
「さすがなのです。予告トップ。憧ちゃんから聞きました。」
「トップを取れたのは運が良かっただけと思…。玄も頑張って。」
「おまかせあれ!」
この時、玄は、気合い十分だった。対局者の中に世界ランカーがいても、特に動じていない雰囲気だった。
おまけ
咲「前回、結局、座布団進呈がありましたので、今回は、大喜利コーナーはお休みです。」
全員:嬉しそうに拍手
咲「今回は、私と京ちゃんの昔話です。」
和「(『昔』ではなくて、『無化し』であってください! なんか、嫌な予感がします。
もし、須賀君が咲さんに変なことをしていたら、須賀君に『無か死』を与えてあげることにします。)」
中学三年の夏が終わった。
京太郎はハンドボール部を引退し、これより受験体制に入る時期。当然、他のみんなも勉強に本腰を入れてくるだろう。
夏休み終了以降の成績の推移は、一般に、以下のように大別されるだろう(厳密にはもっと細かいだろうが…)。
①もう、上がりようがないハイパーな奴。
②今まで部活に熱中していたのが、勉強に集中して成績が上がる奴(少し上がる奴とグッと上がる奴がいる)。
③今までも自分なりに勉強と部活を両立しており、周りと同じスピードで出来るようになるため、相対的に成績が余り変わらない奴。
④受験に向けて一応勉強をするが、周りよりも出来るようになるスピードが遅く、相対的に成績が少し下がる奴。
⑤受験体制に入ろうとせず、相対的に成績が下がる奴。
⑥もう下がりようがない奴。
実際に、ケース⑥の人間の中には、受験直前になっても、
「英語の…heってナニ?」
と本気でほざく奴が存在した。信じられないが、たしかにいた。受験を舐めとりゃしないかと、友人達から罵倒されたレベルだ。
まあ、京太郎は、そこまで酷くはなかったが…。
反対に、ケース②のタイプの中には、九月、十月で一気に偏差値が10以上も上がる輩がいる。今まで、どれだけサボっていたんだと問われるかもしれないが、一つのことにしか熱中できないタイプなのだろう。
咲は、京太郎にタイプ②であって欲しいと願っていた。
清澄高校の偏差値は、咲には余裕だった。それこそ、10以上も余裕がある。
しかし、何故、そんなにレベルを下げて受験するのか?
交通機関が発達した都会や地方都市では、人口も多く高校も多い。公立高校だけではなく私立高校もある。
しかし、人口の少ない田舎では、滑り止めに受ける私立高校が無いところもある。それこそ、公立一本で勝負しなくてはならなくなる。選べる高校がないのだ。
中には、数少ない一校に通うためには山を越えなければならないため、原付通学OKとされるところもある。都市圏の方々には理解できないだろう。
まあ、咲に原付が運転できるとは思えないが…。
咲の成績なら、家から片道二時間もかければ、もっとレベルの高い高校に入れたであろう。しかし、
『まあ、別に地元の高校でイイや!』
と考えていたし、
『それに、京ちゃんも、そこを狙ってるし、一緒に通えばイイや!』
とも思っていた。
京太郎に想いを寄せる咲にとっては、後者のほうが重要だったのかも知れないが…。
ところが、京太郎は、部活を引退してからも、殆ど勉強に身が入らない。困ったことに限りなくケース⑤に近いケース④だった。
京太郎の偏差値は、受験情報誌(咲はネットが使えない)に記載された清澄高校の値にギリギリ足りないライン。
このままでは、京太郎は落ちる可能性のほうが高いと、咲は危機感を覚えていた。
何とかして京太郎にヤル気を出させなければ。
日々、咲は、そのことを考えていた。そして、
「(これは、もう、合格できたら、私が京ちゃんに一発ヤラせてあげるって約束をするしかないかな…。うん、これなら、その後、責任を取ってもらって京ちゃんと付き合えるようになるし、順番が逆な気がするけど、アリかも…。)」
と言う考えに辿り着いた。
ある日、咲は京太郎と一緒に図書室で勉強していた。
正しくは、咲は一応勉強していたが、京太郎は、ただ教科書と参考書を広げているだけで何も頭に入ってこない状態だった。
ここがチャンスだ。
言うしかない。
合格できたら一発と…。
しかし、いざとなると、
「(もし、『咲なんか魅力ないし遠慮する!』とか言われたらどうしよう…。)」
そんなネガティブな発想が咲の頭の中を横切った。
自分は胸がないし、暗いし、喪女ではないだろうか?
そんなのに、
『お祝いに一発!』
と言われて喜ぶのだろうか?
ヤル気が出るのだろうか?
逆に意気消沈しないだろうか?
そんな思考が生まれてきた。
そんな時、ふと、京太郎が、
「合格祝いに、誰か一発ヤラせてくれるとか言ってくれたら、きっとヤル気が出るんだろうけどな。」
と冗談めかして言ってきた。
これはチャンスかもしれない。
『じゃあ、私が…。』
と言えばイイ。
それで、もし京太郎に、
「チェンジ!」
と言われても、今なら冗談だって言えば済むかもしれない。
しかし、
「じゃ…。」
そこまでしか言えなかった。しかも、小声で、京太郎にキチンと聞こえるレベルの声量ではない。
すると、京太郎が、
「こう、胸がデカくて脚の綺麗な…。」
と、胸の辺りを誇張する振りを付けて言ってきた。
これを見て咲は、
「ばかぁ!」
ついつい、京太郎を突き飛ばしてしまった。
結局、京太郎は然程勉強できないままの状態で受験を迎えたが、咲は一つ見落としていたことがあった。
情報誌に記載された偏差値は、合格最低ラインではなく、合格者平均偏差値だった。つまり、京太郎よりも低いレベルでも合格は可能だったのだ。
咲は、入学後、麻雀部に入部して、京太郎よりもさらに成績の悪い優希に出会って、そのことを知った。
和「(まだセーフですね。では、須賀君は優希に任せて(押し付けて)、私は咲さんを…。)」
一先ず安心した和であった。