咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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百九十二本場:高校最後の世界大会8  染谷まこ最後の活躍

 日本チームが決勝進出を果たしたのと丁度同じ頃、日本チームの最大のライバルであるドイツチームも、中堅戦までで三つ目の勝ち星をあげ、余裕のBブロック決勝戦進出を決めていた。

 

 この日のドイツチーム先鋒はフレデリカとカナコ。咲と美和の最悪コンビに対抗して殺し屋コンビと呼ばれていた。

 Aブロック準決勝先鋒戦が咲&美和コンビの試合ではなかったこともあり、先鋒戦の中では一番視聴率が高かったらしい。

 

 次鋒は千里と栄子。

 全ての牌が透けて見える千里と、絶対的ディフェンスを誇る栄子。この二人を相手にしてチームトータルで勝つのは至難の業であろう。

 ただ、これだけ強い選手の試合なのに、全然視聴率が取れなかったと言う。Aブロック準決勝先鋒戦が咲&美和コンビだったためだ。

 しかも、最悪コンビの相手はルーマニアチームのナンバーワン美女ナヴィアとナンバーツー美女エミリア。この二人の痴態見たさに多くの人が日本チームとルーマニアチームの試合にチャンネルを合わせていたとのことだ。

 

 中堅はダブルエースのフレデリカとクララ。まるで咲と慕がペアを組んだように見える。

 容姿だけではない。麻雀そのものも似ているように感じる。

 日本の守護神と呼ばれる咲と、百戦錬磨の光のペアでも勝てるかどうか分からない。それくらい恐ろしい相手である。

 

 

 大会九日目。

 この日は、AB各ブロックの決勝戦が開催された。

 

 Aブロック決勝戦は日本チーム対アメリカチーム。第一シードと第四シードの試合。

 そして、Bブロック決勝戦は第二シードのドイツチームと第三シードの中国チームの試合である。

 

「結局、ベスト4は去年と同じじゃのぉ。」

 実家の雀荘を手伝いながら、まこがテレビを見てそう呟いた。

 すると、例の如く、まこの最強の能力………時間軸の超光速跳躍が発動した。恐らく、本作でまこの能力が見られるのは、これが最後である。

 

 

 日本チームからは、例の如く咲と美和の最悪コンビが出場した。当然、この二人の姿を見て、某ネット掲示板では、

『いきなり北し!』

『今回もミックスジュースが出てナンボ、出てナンボですわ!』

『きっと素敵です!』

『期待するじぇい!』

『今回も、姫子以上を期待すると!』

『美和咲最高ッス』

『↑そんなオカルトありえません! 美和咲ではなく和咲です!』

『今日もお友達が増える予感がするよモー!』

『先輩が期待してるんデー!』

『今回も、いつもと似たような未来がみえるで』

 毎度の如く、相手チームの選手のあられもない姿を期待していた。

 

 対するアメリカチームの先鋒は、エースのエマ・スミス(3年生)とジェシカ・ジョンソン(1年生)のペア。

 ジェシカは、昨年のアメリカ代表選手だったオリビア・ジョンソンの妹であった。

 

 ただ、この二人の姿を見た途端、ネット掲示板は、

『イマイチッス!』

『つまらないじょ!』

『昨日がスバラすぎましたね。』

『ないないっ! そんなのっ!』

『まあ、今日も凄い未来が見えるけどな………』

『ルーマニアが素敵過ぎました』

『ロシアのイリーナと最悪コンビの試合も見たかったよモー』

『先輩が悔しがってるデー』

『イリーナと美和咲コンビを当てなかったのは罪が重いと思』

『ミワサマvsイリーナガ ジツゲンシナクテ ザンネンデス!』

『おかずとしてはイマイチだし!』

『主食としてもイマイチやろ! 串カツとから揚げ食いたい!』

『美和咲の相手の顔面偏差値が恐ろしいほどダウンしてるのよー』

『そんなことよりもオモチ画像をよこすのです!』

『チョー悔しいよー』

『ダル………』

 荒れ始めた。

 

 別にエマもジェシカも顔面偏差値が著しく低いわけではない。むしろ標準よりは綺麗な方だろう。

 しかし、昨日のナヴィアとエミリアが綺麗過ぎた。それで、掲示板の住人達も目が肥えてしまい、ちょっと綺麗レベルでは物足りなくなってしまったのだ。

 ムチャクチャ贅沢な話である。

 

 対局自体は、前半戦も後半戦も、いつものように序盤は咲が美和をサポートして相手の脳内をドピンク色に染め、美和が失速してきたら咲が暴れまるパターンだった。

 毎度のパターンで日本チームが勝ち星を取った試合だったのが、掲示板の住人達は、今一つノリが悪かった。

 

 

 次鋒戦。

 日本チームからは神楽と敬子のペア、アメリカチームからはマリー・ダヴァン(2年生)とエリザベス・ガルシア(2年生)のペアが参戦した。

 マリー・ダヴァン(以後、分かりやすいようにダヴァンと記載)は、メガン・ダヴァンの妹で、現在、臨海女子高校に留学している。春季大会とインターハイにも出場していた強豪選手である。

 

 前半戦では、神楽には節子の生霊が降りて、いきなりダヴァンとエリザベスに地球最期の日を思わせる恐怖映像を見せて戦意を奪った。

 その後、節子と敬子が面白いように和了り捲くり、日本チームの圧倒的リードで後半戦へと折り返した。

 

 後半戦では、美誇人の生霊が神楽の身体の中に降りた。

 序盤は敬子の独壇場。

 しかし、途中から綺亜羅三銃士最強の美誇人が場全体の動きを見切り、

「御無礼!」

 エリザベスから高い手を直取りするようになった。

 結局、後半戦も日本チームが圧倒的リードを作り、日本チームが余裕で二つ目の勝ち星をあげた。

 

 

 中堅戦は、日本チームからは毎度の如く、咲と光が登場。

 対するアメリカチームからはエースのエマと第二エースのシャルロット・ブラウン(3年生)が参戦した。

 ここでも日本の最強コンビが圧倒的な力を見せつけ、前後半戦共にアメリカチームを二人とも箱割れさせて三つ目の勝ち星を手に入れ、決勝戦進出を決めた。

 勿論、エマとシャルロットの大放水オマケ付だったのだが………、

『昨日の次鋒戦と比べますと、全然面白くありませんわ!』

『おかずにならないッス!』

『ナヴィア&エミリアを越える試合は、もう無いと思』

『普通の巨大湖じゃ飽きてきたし!』

『あたたかくなーい』

『もう、床は冷たくなってるじぇい!』

『放水が出たでぇ~って、イマイチやな』

『もうみんなが喜ぶ未来は見えへんなぁ』

 某ネット掲示板では、反応が今一つだった。

 やはり、ルーマニアチームとアメリカチームで、日本チームと当たる順番が逆の方が盛り上がったのだろう。

 

 日本チームは、副将に淡と光、大将に穏乃と和を配置していたが、今回も中堅戦まででカタをつけた。

 

 

 一方、Bブロック決勝戦では、ドイツチームは以下のオーダーで望んだ。

 先鋒:千里・栄子

 次鋒:フレデリカ・カナコ

 中堅:フレデリカ・クララ

 副将:ニーマン・ニーナ

 大将:クララ・エリーザ

 

 これまでも、ニーナとエリーザは副将戦または大将戦に配置されていた。

 ただ、ドイツチームも、日本チームと同様に全試合を中堅戦までで片付けていたため、本大会では、ニーナもエリーザも、これまで一回も手の内を披露していない。

 分かっているのは、ニーナが臨海女子高校監督アレクサンドラ・ヴェントハイムの遠い親戚であることと、もともと淡の家の近所に住んでおり、淡を慕って白糸台高校への入学を希望していたが、昨年末に急遽ドイツに渡ることになったことくらいだ。

 二人とも、どのような麻雀を打つのかはベールに包まれたままだった。

 それだけに、このブロック決勝戦で二人の対局が見られることを楽しみにしている人達も、決して少なくなかった。

 

 

 先鋒戦。

 中国チームからは、貂蝉(2年生)とエースの黄月英(1年生)が参戦した。

 ちなみに昨年の中心選手だった劉紅花、関芽衣、張鈴麗の三人………桃園の誓いトリオは卒業組だ。

 

 試合は、全ての牌を見切った千里が序盤で連続和了りし、栄子を限界まで削った。これにより、貂蝉も黄月英も互いからの出和了り以外は出来なくなった。

 その後も、千里が貂蝉または黄月英からの出和了りで場を進め、最期は栄子のリラの鉄槌が炸裂し、ドイツチームが中国チームに大差をつけて後半戦へと折り返した。

 後半戦でも、前半戦と同様の試合展開がなされ、ドイツチームが余裕で勝ち星を手に入れた。

 

 

 次先戦では、中国チームからは郝慧宇(3年生)と趙桂英(3年生)が参戦した。

 対するはフレデリカとカナコの殺し屋コンビ。

 中国チーム側も決して弱くは無い。むしろ強い。

 しかし、ドイツチームの二人は、そのさらに上を行く。

 結局、前後半戦通じて、ドイツチームが一方的に和了り続ける展開となり、あっと言う間にドイツチームが二つ目の勝ち星を手に入れた。

 

 

 中堅戦。

 中国チームからはエースの黄月英と第二エースの張春華(1年生)が参戦した。

 ここでも次鋒戦と同様、ドイツチームのエースコンビ、フレデリカ&クララが一方的に和了る展開となり、ドイツチームが圧勝。

 これでドイツチームが三つ目の勝ち星を手に入れ、決勝戦進出を決めた。

 

 

 そして、翌日。

 大会十日目となった。

 この日は、決勝戦と3位決定戦が同時開催される。

 

 本来であれば、中国チームとアメリカチームの3位決定戦は好カードであろう。

 しかし、もう一つの試合への注目度が高過ぎた。昨年、一昨年と世界大会の中心的存在だったと言える日本チームとドイツチームの試合だ。

 今年も、両チームともに全試合を中堅戦までで終了させると言う圧倒的な力を見せ付けて決勝進出を果たしている。

 アメリカ人や中国人でさえも、自国のチームを応援せずに決勝戦にチャンネルを合わせていたほどであった。

 

 

 丁度ここで、まこの能力による超光速跳躍が一段落ついたようだ。

 この時、決勝卓を日本・ドイツ両チームの選手達全員が取り囲んでいた。まるで、インターハイの団体決勝戦を思い起こさせる。

 そして、

「よろしくお願いします!」

 試合前の一礼を済ますと、先鋒選手だけをその場に残し、他の選手達は控室へと戻って行った。

 

 日本チームのオーダーは以下のとおりであった。今回は、中堅に神代小蒔の妹、蒔乃が入った。九人体制で望む。

 先鋒:宮永咲(3年生)、宮永光(3年生)

 次鋒:大星淡(3年生)、原村和(3年生)

 中堅:宮永咲(3年生)、神代蒔乃(1年生)

 副将:的井美和(3年生)、稲輪敬子(3年生)

 大将:石見神楽(2年生)、高鴨穏乃(3年生)

 

 対するドイツチームのオーダーは以下のとおりであった。

 先鋒:百目鬼千里(3年生)、園田栄子(3年生)

 次鋒:フレデリカ・リヒター(2年生)、西野カナコ(3年生)

 中堅:フレデリカ・リヒター(2年生)、クララ・ローゼンハイム(1年生)

 副将:ローザ・ニーマン(3年生)、ニーナ・ヴェントハイム(1年生)

 大将:クララ・ローゼンハイム(1年生)、エリーザ・バスラー(3年生)

 

 多くの人達が期待した、咲、光、フレデリカ、クララの4強対決は実現しなかったが、蒔乃が降ろすのは、当然、最強神である。

 恐らく、決勝中堅戦こそが全世界の女子高生の『真の頂上決戦』であろう。

 

 

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 昨夜のことである。

 決勝戦に向けて、日本チームではミーティングが行われていた。

 勿論、神楽にはドイツチームのオーダーがどうなるかの啓示が降りてきている。少々卑怯な気もするが、それを見た上で最良のオーダーで望みたい。

 

 中堅は、咲と蒔乃で決まりである。

 昨年の小蒔と同様、最強神のリクエストである。これは拒否できないだろう。

 ただ、蒔乃の話では、咲と最強神のペアでもフレデリカ、クララのペアに絶対に勝てる保障は無いとのことだった。

 

 咲はフレデリカを相手に勝利しているが、僅差である。

 加えて今回はコンビ麻雀だ。

 フレデリカの相方であるクララも、フレデリカと同等の力量を持つ雀士とのこと。咲・光ペアでも咲・蒔乃ペアでも厳しい戦いになる。

 

 そう言った背景もあって、蒔乃は、中堅戦のみの参戦を希望していた。中堅戦に全エネルギーをぶつけたいが故である。

 

 続いて、他のポジションに付いて決めようとした時、

「どーせならフレデリカとやりたい。」

「私もです。」

 淡と和が次鋒に立候補した。

 

 慕としては、先鋒に美和・敬子ペアを置いて、千里と栄子を淫猥なる快楽の世界に落とし、そこで一勝目を確保しようと考えていた。

 

 次鋒は咲・光ペア、中堅は光・小蒔ペアで、それぞれフレデリカ・カナコペア、フレデリカ・クララペアと戦わせ、出来れば三戦三勝のストレート勝ちを狙うつもりでいた。

 勿論、次鋒と中堅の両方を落とす可能性もある。これは賭けである。

 

 ところが、淡と和は、この考え方は危険と判断していた。

 それで、咲と光………特に咲の負担を軽くするために、敢えて自分達が捨て駒になるつもりで次鋒に立候補していたのだ。

 

 カナコ対策をしながらフレデリカとの戦いで勝利を目指すのは、咲でも相当疲労するだろう。その後、すぐに中堅戦に出てフレデリカとクララを相手にするのは酷だ。

 しかし、咲を先鋒にすれば、少なくとも次鋒戦の間、咲を休ませることができるし、千里・栄子ペアが相手なら、咲の負担も殺し屋コンビと戦わせるよりは数段軽くなる。

 それに、そもそも和にはステルスが効かないし、淡もステルス対策ができることはインターハイ団体決勝先鋒後半戦で証明済みだ。なので、カナコのステルスに翻弄されずに打ち回し、フレデリカを疲れさせることが出来るかもしれない。そうなれば、次鋒戦は落としても中堅戦が有利になる。

 

 この布陣なら中堅までに二勝をあげられる確率は高くなるだろう。

 そして、副将戦は美和・敬子ペアで勝ちに行く。

 ニーナがどのような麻雀を打つか分からないが、美和ワールドにさえ連れ込むことが出来ればこっちのものである。

 これが、淡と和が考えたストーリーであった。

 

 また、次鋒に美和・敬子ペアを配置する方法も考えたが、フレデリカが美和ワールドに連れて行けるかどうかは分からない。咲や光と同様に、美和ワールド行きの触手を強大なオーラで断ち切ってしまう可能性が高いだろう。

 それで美和・敬子ペアに副将を任せるべきと判断したようだ。

 

 二人の提案に、美和や神楽、穏乃も賛同した。

 今までの試合は、基本的に咲、美和、光の三人で勝ち進んできたようなものだ。

 特に咲の活躍は目を見張るものがある。チームの勝利のために、相方を上手に使う。常人には出来ないレベルで場全体をコントロールしているのだ。

 

 決勝戦でも咲は日本の要となる。ゆえに咲を必要以上に疲れさせないことが重要と、みんなは思っていたようだ。

 

 慕は、

『それが総意なら』

 と、淡と和の提案を受け入れた。

 それで、今回のオーダーになったのだ。

 

 

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 いよいよ先鋒戦が開始される。

 世界大会の決勝戦のはずだが、対局者は、咲、光、千里、栄子。何故か日本人四人の対決である。

 しかも栄子は、既に日本に帰国している。

 恐らく、誰の目から見ても、日本vsドイツの試合には見えなかったであろう。どう見ても日本国内の大会である。

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