咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

196 / 221
百九十六本場:高校最後の世界大会決勝戦4  姉妹

 世界大会決勝次鋒前半戦は、東二局三本場がスタートした。

 親は淡。

 ここでも絶対安全圏とダブルリーチの能力を発動し、今まで通り、流れに従って突き進むつもりでいた。

 ツキは自分にある。そう思うが故の判断だ。

 

 一方のフレデリカは、今までの配牌やツモのパターンと、過去の淡の対局事例を照らし合わせていた。

「(やっぱり、配牌が最悪なだけで、普通に手は出来上がって行くみたいね。)」

 本来、淡が能力を全開にした時、ダブルリーチをかけて最後の角を越えたところで和了り牌を相手に振り込ませる。

 言い換えれば、そこまでは他家の手は順調に進む。

 

 そして、相手を聴牌させることで振り込ませる。

 振り込んでもらえなければ自力でツモ和了りする。

 それが淡の本来のスタイルだ。

 はっきり言って性格が悪い能力麻雀だ。こんな極悪な麻雀は滅多にお目にかかれない。

 

 淡がサイを回した。

 出た目は9。

 この場合、もし淡がダブルリーチをかけたならば、海底牌近くまで場が進まないと淡の和了り牌が出てこない。

 勿論、淡はダブルリーチをかけずに役無し聴牌から役有り聴牌に形を変え、しかも待ち牌を変えるつもりである。

 しかし、それが厳しいケースもある。

 まさに今回が、そのケースであった。

 

 淡の配牌は、

 {一一一③⑤⑥⑦⑧456西西北}

 

 タンヤオに移行するのも、ジュンチャンやチャンタに移行するのも難しい。

 役牌は無い。

 染め手にも走れない。

 むしろ、今までが役有り聴牌に移行しやすい配牌に恵まれていたと言えよう。

 フレデリカを相手に、下手にリーチをかけたくないが、この場合は、良形聴牌に切り替わったらリーチをかけるくらいしか手がないだろう。

 淡は、一先ず{北}を落として役無し聴牌とした。

 

 ところが、二巡目からのツモは、

 {九2南91東}

 と全然手が進められるものではなかった。

 

 一方の和は、一巡目から三巡目までに、淡に鳴かせようと{白發中}を順に落としていたのだが、淡の手がこんな状態である。当然、鳴いてもらえるはずが無い。

 

 続く八巡目。

 淡は{⑦}をツモった。

 これなら{③}切りで{⑥⑨}待ちへと切り替わる。

 基本的に、裏ドラは期待できないが、連荘狙いで、

「リーチ!」

 淡が捨て牌を横に曲げた。

 

 しかし、この時、淡の背筋に冷たいものが走り抜けた。フレデリカのオーラが大きく膨れ上がっていたのだ。

 そして、

「ロン。」

 この{③}でフレデリカが和了った。

 

 開かれた手牌は、

 {八八②④白白白發發發中中中}

 

「32900!」

 一瞬、淡の目が点になった。

 まさかの門前の大三元であった。

 しかも、まだ八巡目だ。フレデリカは、七巡目で聴牌していたことになる。

 絶対安全圏の発動を考えれば、こんな和了りは通常不可能だ。一切のムダツモ無しで必要な牌だけを呼び寄せなければ出来ないだろう。

 

 フレデリカは、配牌で各一枚ずつ持っていた{八②④白發中}以外の牌を、全てツモ牌と入れ替えて聴牌していた。

 欲しい牌だけをひたすらツモり続けたのだ。咲や静香、小蒔(神降臨バージョン)を思わせる超鬼ツモである。

 しかも、同時に、いずれ淡から待ちが変わった際に{③}が出てくると予想して、敢えて{②④}を残したのだ。

 本当に恐ろしい敵である。

 

 これで、今まで淡が稼いだ分は、全てフレデリカに奪われた。

 一瞬で淡は、1000点だけだが原点を割ることになった。

 

 

 東三局、フレデリカの親。

 今回、淡は絶対安全圏を発動したが、ダブルリーチの能力は使わなかった。既にツキが離れたとの判断だ。

 今、ダブルリーチの能力を使ったところで、配牌が、前局のような役有り聴牌に移行し難い形の役無し聴牌にしかならないだろう。

 それでしばらく、絶対安全圏一本で行くことにした。

 

 淡の配牌は{發}が対子の二向聴。

 三巡目に、和が捨ててくれた{發}を、

「ポン!」

 鳴いて淡は一向聴へと手を進めた。

 しかし、フレデリカもカナコも、淡が鳴ける牌を出してくれないし、ツモもイマイチの状態。淡の手は、ここで止まってしまった。

 

 一方の和は、配牌六向聴から順調に手を進めていた。

 勿論、ムダツモもあるので六回のツモで聴牌できるわけではないのだが、既に二向聴となっていた。

 しかし、

「ツモ!」

 ここには超鬼ツモの化物がいる。

 彼女───フレデリカは、最短の、たった六回のツモで聴牌し、

「ツモ七対ドラ2。4000オール!」

 七回目のツモで親満をツモ和了りした。

 

 そして、東三局一本場も、

「ツモ!」

 フレデリカは、

「タンヤオツモ七対ドラ2。6100オール!」

 前局同様に、最短の六回ツモで聴牌し、七回目のツモで和了って見せた。

 それは、まるで前局の和了りと同様の事が意図的にできることをアピールしているかのようにも見えた。

 

 しかし、この和了りの直後、淡はフレデリカのオーラが小さくなって行くのを感じた。

 フレデリカは、次鋒戦と中堅戦を連続で戦う。当然、ここでエネルギーを使い果たすわけには行かない。

 

 現在の点数は、

 1位:フレデリカ 153000

 2位:淡 88900

 3位:和 79700

 4位:カナコ 78400

 ドイツチームはトータルで日本チームに60000点以上の差をつけている。それで能力の放出を、ここで一旦セーブしたのだろう。

 

 東三局二本場。ドラは{西}。

 淡は絶対安全圏を発動したが、やはり自分にツキが向いていないのを感じていた。

 前局は{發}の対子があったが、今回は役牌の対子は無いし、タンヤオにも進め難い。どうも役有りの形に持って行くのが困難な状態だ。

 

 フレデリカからは特段脅威的な雰囲気を感じない。ここでも、まだ省エネモードで行くつもりのようだ。

 淡と和の特命は、たとえ負けても可能な限りフレデリカを疲れさせること。

 きっとそれが、中堅戦での咲達の勝利につながるはず。

 

 当然、省エネモードを止めさせなければならない。

 ならば、こっちは攻めまくってフレデリカに再びエネルギー放出せざるを得ない状態を作るのみ。そのために全力を尽くす。

 

 和は、この局、九巡目で聴牌した。

 しかも、和にとっては、この半荘で初めての聴牌である。

 

 和の手牌は、

 {六七八②③④⑤[⑤]13457}  ツモ{6}

 

 当然、ここから、

「リーチ!」

 打{横1}で聴牌即リーチをかけた。

 メンタンピンドラ1の満貫級の手。しかも{258}の三面聴。ドイツチームに大きくリードされている今、攻撃に出ない方がおかしいだろう。

 

 しかし、聴牌していたのは和だけではなかった。

 この和のリーチ宣言牌で、

「ロン。」

 カナコが和了った。カナコの方が一歩早かったのだ。

 

 しかも、開かれた手は、

 {三四[五]③④[⑤]1345西西西}  ロン{1}

 

「西三色ドラ5。16600!」

 まさかの倍満。

 これで和は、63100点まで落ち込んだ。もし、これが25000点持ちであれば、この振込みで箱割れしたところである。

 しかし、これで和はブレたりしない。すぐに気持ちを切り替えて次局に望む。

 

 

 東四局、和の親。

 ここでも当然、淡以外は強制六向聴。

 

 和の手牌は字牌が六枚。

 しかも対子が一つも無く最悪の状態だった。

 ただ、この字牌を順に捨てて行っただけなのだが………、偶々なのだろうが、幸運にも持っていたチュンチャン牌が次々と対子に変わって行った。

 勿論、一切のムダツモが無かったわけではないが、和は七巡目で七対子一向聴まで辿り着いた。

 

 八巡目。

 フレデリカは、未だに能力を抑えて、手なりに打っていた。

 もっとも、全ての牌を透視する力は働いていたので、通常、フレデリカが振込むことは無い。

「(親の原村が早そうね。)」

 フレデリカは、親を流そうと能力発動を考えた。

 そして、ここで手を進めて切った牌で、

「ロン。」

「えっ?」

 珍しくフレデリカが振り込んだ。

 

 和了ったのはカナコ。

 さすがのフレデリカにも、カナコの姿を捉えることは出来ない。ステルスは、フレデリカにも有効なのだ。

 残念なことに、フレデリカは、ステルス破りの方法を知らなかったのだ。今のところ、ステルス破りは日本チームだけのお家芸である。

 

 しかも、カナコの手は、

「16000!」

 倍満と大きい。

 さすが殺し屋と呼ばれるだけのことはある。

 まあ、今回はチーム戦なので、ドイツチームの点数が減ったわけではないのだが、正直なところ振込んだこと自体は悔しい。

「ごめんねフレデリカ。原村が早そうだったから。」

「それは分かってる。」

 とは言え、和の親を流せたのだから良しとしよう。

 フレデリカは、そう思いながら気持ちを切り替えた。

 

 

 南入した。

 南一局、カナコの親。ドラは{四}。

 絶対安全圏は、まだまだ続く。

 そろそろカナコも、

「(マタマタマタマタ ヤマタノオロチ。ずっと配牌六向聴だもんね。ここまで続くとさすがにメゲてくるぅ。)」

 さすがに嫌気がさしてきた。

 まあ、その後、手が順調に進んでくれるのが救いだが、配牌だけは憂鬱になる。

 

 この局のカナコの配牌は、

 {一四七九①③⑦258東南西北}

 まごうことなき、素晴らしき六向聴。

 彼女は、ここから{一北西南①東九}と順に落としていった。

 

 そして、八巡目。

 カナコの手牌は、

 {三四七七③④⑥⑦23458}  ツモ{[⑤]}

 

 タンピン三色ドラ2が見える。

 当然のように、ここから打{8}。

 

 しかし、これが、

「ロン! タンヤオ一盃口ドラ2。8000!」

 和の和了り牌だった。

「えっ?」

 淡に続いて和にもステルスが効いていないとは………。

 

 勿論、カナコは、和もステルス耐性を持つ可能性があるかも知れないとは思っていた。

 しかし、それが証明されるまでは、やはり大丈夫であると信じたい。故に、この振込みは、カナコにとって衝撃的事実となった。

 

 今までステルスに守られてきたこともあって、カナコは、守備を考える必要が一切無かった。それもあって、カナコは攻撃一辺倒の打ち方をする。

 今回も、{8}を捨てずに一旦アタマ落としで様子を見るとかが出来ていれば、結果は違っていたかも知れない。

 ステルスが効かない相手との戦いに備えて、守備力向上は、カナコの今後の課題になるだろう。

 今後、日本に帰国して麻雀大会に出場するつもりなら尚更である。

 

 

 南二局、淡の親。ドラ{2}。

 そろそろ、

「(もう、東二局以来、和了れてないからね、私…。)」

 淡としても和了りたい。

 次鋒戦のチームトータルは、現在、日本チームが丁度80000点負けている。

 ここは一つ、カナコかフレデリカから役満でも直取りして一気に逆転したいとか思うところだ。

 勿論、それが単なる妄想であることも重々承知だが………。

「(こんなことなら、ダブリーの能力だけじゃなくて天和の能力も欲しかったな!)」

 そんなことを考えながら、淡は絶対安全圏を発動した。

 

 ここに来て、再びフレデリカのオーラが膨れ上がった。

 エネルギー消費を極力抑えながらも、要所要所では、キチンと和了りを決めたいと言ったところだろう。

 見ていて、ある意味、咲よりも恐ろしい空気を身に纏っている。まるで、照のような気迫がヒシヒシと伝わってくるのだ。

 

 一回ツモる毎に、卓上に竜巻を巻き起こすような錯覚を感じる。満貫以上に打点上昇した時の照と大同小異だ。

 淡は、このフレデリカの様子を見ながら、

「(やっぱり、姉妹だよね、これ。)」

 と思っていた。

 照に憧れ、照のことを良く知る彼女ならではの感想だろう。

 

 そして、六巡目。

「リーチ!」

 この半荘で、フレデリカが初めてリーチをかけた。

 和は、一先ず安牌落とし。一発回避だ。

 カナコは、まあ最悪振り込んでも構わないつもりでヤバそうなところを切ってきたが、これはチーム内で点棒が動くだけなら問題ないためだ。

 淡は、字牌のアタマ落としで様子を見た。

 

 しかし、一発回避など無意味と言わんばかりに、

「ツモ!」

 フレデリカは、即ツモで和了り牌を引いてきた。

 淡は、この時、フレデリカの全身から照の麻雀のような圧倒的パワーを感じていた。

 

 開かれた手牌は、

 {二二五[五]八八③③⑥⑥228}  ツモ{8}  ドラ{2}  裏ドラ{八}

 

「リーチ一発ツモタンヤオ七対子ドラ5。6000、12000!」

 まさかの三倍満。

 

 これで、現在の点数は、

 1位:フレデリカ 161000

 2位:カナコ 97000

 3位:淡 76900

 4位:和 65100

 

 日本チームのトータルは142000点、ドイツチームのトータルは258000点。

 実に116000点の差をつけられた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。