咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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百九十九本場:高校最後の世界大会決勝戦7  神&本体vs分身&妹-1

「「「「有難うございました」」」」

 世界大会決勝次鋒戦が終了した。

 これより、エース対決とも言える中堅戦が開始される。

 

 

 淡と和は、重い足取りで控室へと向かっていった。

 勝てなかったのは仕方が無いにせよ、先鋒戦で咲と光で作ってくれた絶対的なリードを完全に溶かしてしまった。

 それに、本来の使命───フレデリカに負荷をかけることを達成できた自信が無い。

 これでは、何のために次鋒戦に立候補したのか分からない。

 二人は、そう思っていた。

 結構、落ち込む。

 

 途中で二人は咲と蒔乃に会った。

 顔を会わせ難い。

 しかし、開口一番、咲から

「二人のお陰でフレデリカを抑えるのは何とかなりそうだよ!」

 との言葉。

 これに続いて、

「さすが、立候補しただけのことはあります。見事でした。」

 との蒔乃の台詞。

 

 淡も和も、

「「(何だか嫌味にしか聞こえない!(ません!))」」

 としか思えなかったが、少なくとも咲が嘘をつける性格ではないことは分かっているし、リップサービスが出来る人間でもない。

 蒔乃も神に仕える血筋ゆえだろうが、基本的に嘘は下手だ。小蒔ほどではないが。

 恐らく、二人とも本心で言ってくれているのであろう。

 

 和は、俯きながら、

「でも、私も淡も、どれだけフレデリカを疲れさせたか自信がありません。」

 と咲に言った。

 やはり目を合わせ難い。

 

 一方の咲は、

「最後の四連続和了に使ったエネルギーは相当なものだよ。多分、フレデリカは中堅戦で、全体で三回くらいしか和了れないんじゃないかな?」

 と、むしろフレデリカを抑えられる自信があるように見えた。

 続いて蒔乃が、

「私自身は前後半戦併せて二回しか和了れない気がしますけどね。あの面子では。」

 と、自信無さげな発言をしていたが………。

 

 ちょっと待て。

 連荘無しの場合でも、前後半戦全部で十六局ある。そのうち、蒔乃が二局、フレデリカが三局なら、残りは十一局。

 すると、これを咲とクララが取り合う感じになると言うことか?

 

 それが真実かどうか分からないが、いずれにしても、淡と和には、咲の言葉の根拠が分からなかった。

 ただ、少なくとも咲も蒔乃も、淡と和がやるべき最低限の仕事はできたと認めてくれているようだ。

 今は、この言葉を信じよう。

 そう思う淡と和であった。

 

 

 それから数分後、

 対局室にクララ、咲、蒔乃の三人が入場してきた。フレデリカは、次鋒戦終了後から対局室を出ていない。まあ、漏らす側では無い者の余裕だ(本当かな?)。

 

 場決めがされ、起家が蒔乃、南家がフレデリカ、西家が咲、北家がクララに決まった。

 控室のモニターに映し出されるこの様子を、今までに無く心配そうな表情で慕が見詰めていた。

 

 

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 慕は、初めてクララの姿を開会式で見た時に、何だかイヤな予感がしていた。

 日本人とドイツ人のハーフだが、自分に顔つきが似ている。

 

 昨年の大会では、フレデリカ………クローン人間を作り出すために、咲の三ヶ月検診の際に、咲から皮膚片を採取していたとの話を淡から聞かされた。

 情報源は、淡に能力を授けてくれた宇宙人。

 そして、同じことを照が鏡で見抜いているし、神楽と小蒔も神から啓示を受けて知っていたとのこと。

 

 もしかして、クララは自分と何か関係があるのでは?

 そう思えて仕方がなかった。

 

 開会式が終わると、慕は淡を呼び寄せた。

「ねえ、あのクララって娘のことだけど、何か知ってる?」

「うーん。」

「その顔は知ってる顔ね!」

「困ったな………。」

「何か、例の宇宙人から聞いてるんでしょ?」

「聞いていない………って言ってもどうせ信じてくれないですよね。」

「まあね。」

「オーダー決めとかにも関わると思うので言っておきますが、心してください。」

 珍しく淡が敬語を使っている。

 咲とフレデリカの関係を報告してきた時と同じ顔をしている。

 やはり、多分、イヤな内容なのだろう。

「分かってる。」

「じゃあ、言います。クララは………種違いの監督の妹です。」

「えっ?(まさか、お母さんが不倫?)」

「監督のお母さんがニーマンに連れ去られていた間、何回か卵子を採取されました。それらは全て凍結保存されて、今から十七年前にドイツ人の男性麻雀プロの精子との人工授精が行われたそうです。」

「(そっちか!)」←少しホッとした慕

「その後、今のクララの母と名乗る女性の体内に受精卵は移されて………、それで誕生したのがクララだそうです。」

「だから、私に似ているのね。顔も、麻雀のスタイルも。」

「そのようですね。なので、ドイツチームの中堅は、咲と監督のペアが相手になると考えてください。その上で、どうやって日本が勝つかを考える必要があります。」

 …

 …

 …

 

 

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 咲にあってフレデリカにないもの。

 フレデリカにあって咲にないもの。

 自分にあってクララにないもの。

 クララにあって自分にないもの。

 それらを全て抽出する必要がある。

 

 日本の中堅は、最高神と咲のペアで決まりだ。

 あとは、どのような作戦を授けるか次第だろう。

 

 一応、勝利するためには、これしかないと思う方法を慕は咲と蒔乃に告げたつもりではいるが………。

 ただ、咲も蒔乃も同じことを考えていたようだ。

 

 

 東一局、蒔乃の親。

 この親は、絶対に和了りたい。できれば最高の手で。

 サイを回した後、急に蒔乃の雰囲気が変わった。最強神が降臨したのだ。

 そして、

「両頭愛染と戦うのはインターハイ準決勝以来だな。それと、もう一人も孔雀明王を思わせる強者。楽しみだ。」

 と言うと、配牌を開始した。

 孔雀………つまり{1}と言うことだ。

 

 蒔乃の配牌は、

 {一一二四七九九①⑧29東南北}

 ここから打{2}。

 そして、毎度の如く順調に手を進め、七巡目には、

 {一一一二三四五六七九九九9}  ツモ{八}

 純正九連宝燈を聴牌した。

 

 このスピードに破壊力。

 咲としてもペアを組む相手として、これほど頼もしい存在はいない。現在日本チームで考えられる、真の最強ペアであろう。

 当然、蒔乃は、ここから打{9}で聴牌。

 

 一方のフレデリカは、全員の能力が拮抗する今、前局で能力を放出し過ぎてパワー不足となり、蒔乃よりも先に聴牌することが出来なかった。

 クララも、慕と同じで、どちらかといえば尻上がりなタイプ。東初では力が今一つ出ていない。

 

 そして次巡。

「ツモ。」

 蒔乃が当然の如く和了った。

「16000オール!」

 これは大きい。

 

 クララも蒔乃のことはフレデリカから聞いて知っていたが、まさか、いきなり純正九連宝燈が飛び出すとは………。

 彼女の顔からは、驚きの色が隠せなかった。

 

 東一局一本場。ドラは{8}。

 急に、場の空気が変わった。とんでもない重圧がかかる。

 発生源は咲。インターハイ団体戦準決勝次鋒戦でも、ここまで強烈なオーラは出していなかった。

 

 この雰囲気を直接経験するのは、フレデリカとしても初めてのことであった。

「(もしかして、これが?)」

 インターハイで、愛宕雅恵監督から、咲の最強の支配力の話を聞かされていたが、今の雰囲気こそが、まさにそれであることを確信した。

 同時に、フレデリカは、この力を押し返さないことには勝てないことを直感していた。

 

 次鋒戦のツケは大きい。

 しかし、何とかしなければ。

 フレデリカは、パワーを振り絞って聴牌に向けて動き出した。とにかく、咲や蒔乃よりも先に和了る。

 

 すると、これを察知した咲が、

「カン!」

 蒔乃から{③}を大明槓した。そして、嶺上牌を引くと、それを手に引き入れて打{北}。手が進んだようだ。

 これでフレデリカのツモが飛ばされた。

 

 そして、次巡。

 蒔乃が切った{6}を、

「カン!」

 またもや咲が大明槓した。再びツモが飛ばされるフレデリカ。

 一方、咲は嶺上牌を引くと、

「もいっこ、カン!」

 {西}を暗槓した。

 そして、引いてきた三枚目の嶺上牌で、

「ツモ!」

 嶺上開花を決めた。

 

 開かれた手牌は、

 {④⑥88}  暗槓{裏西西裏}  明槓{6横666}  明槓{③横③③③}  ツモ{⑤}

 

「西三槓子嶺上開花ドラドラ。12300。」

 咲は、フレデリカが聴牌する前に、蒔乃から和了ったのだ。

 相手チームに和了られるよりは相方から和了った方がマシ。その考えに基づいての和了りだろう。

 

 

 東二局、フレデリカの親。

「(クララが動き出すには、もう少し時間が必要よね。それまでは、私の方で何とかしないと………。)」

 フレデリカは、心を集中して能力を振り絞った。

 後半はクララに任せるつもりだが、その分、前半は自分が場を支配して失点を食い止めなければならない。

 既に、初っ端の親の九連宝燈で、チームとして32000点を失っている。まずは、これを取り返す!

 

 咲と蒔乃から繰り出される支配力を、フレデリカは全力で押し返す。

 最後まで場を支配し続けようなどとは思わない。東場だけで良い。

 それに、先の次鋒戦で学んだことがある。七対子狙いなら、どんなにヒドイ配牌でも最低六回のツモで聴牌できるのだ。

 対子があれば、もっと聴牌が早くなる。

 

 今回は、配牌で対子が二つある。

 そして、まさに四巡目。

 フレデリカは渾身のツモで何とか聴牌した。

 当然、ここは、

「リーチ!」

 攻めに出た。一枚切れの{西}待ちだ。

 すると、

「ポン!」

 咲が鳴いた。

 これで一発が消された。

 

 しかし、フレデリカには、咲の意図が分かっていた。

 全ての牌を見通せる者同士。

 共に、サイが振られ、山がせり上がってきた時に、どのようなパターンで打てば良いかを察知する。

 恐らくは、そこまでに大量の能力が使われる。

 

 どのように山が積まれるのか?

 サイの目が何になって、どこで切られるのか?

 そして、どこで鳴いて、もしくは鳴かせて、どのような形に全員の手が仕上がって行くのか?

 それらを全てコントロールして自分の都合の良い形に仕上げるのが、咲やフレデリカの持つ能力の根幹となるのだろう。

 

 勿論、常に一定の力が作用するわけではなくバラツキもある。

 それで、例えば小蒔や蒔乃が最強神を降ろした時の対局では、最強神の配牌が良くなったり悪くなったりもする。

 光を相手にした時も、当然、光の能力による干渉も受けるので、咲やフレデリカの配牌やツモが常に彼女達に都合の良い形になるわけではない。

 ただ、能力がより強い者にとって都合の良い形になる確率の方が、高いと言うことなのだろう。

 

 

 そして回ってきたツモ番。

 フレデリカは、

「ツモ!」

 当然の如く和了った。

 この時、次に引かれる牌も{西}であることをフレデリカは知っていた。つまり、一発を消すことで咲はフレデリカの手を1翻下げたのだ。

「リーツモ七対ドラ3(表2赤1)。6000オール。」

 もし、一発が付いていれば親倍だったのだが………、相手が相手だ。ここは親ハネが和了れたことを素直に喜ぶべきだろう。

 

 東二局一本場。

 良く分からないが、フレデリカの透視能力が優れない。今一つ、霞んで見えていた。

 このようなことは初めてだ。

 能力の使い過ぎか?

 それとも、他に何か原因があるのか?

 

 しかし、この局は、まだ何とか行ける。

 基本的に蒔乃は鳴かない。九連宝燈に仕上げることが全てのようだ。

 クララも、まだスイッチが入っていない以上、ムダに鳴いてこない。

 よって、ツモ番を狂わせに動いてくるのは咲だけ。基本的に、咲だけをマークしていれば良いはずだ。

 

 今回は、暗槓できる道筋が見える。

 咲の配牌やツモ牌を見渡す限り、咲が鳴いて邪魔できる形にはならない。よって、この暗槓は成立する。

 しかも、嶺上牌で和了れる形。

 これは全身全霊賭けて勝負するところだ。

 

 フレデリカは、最初に山を見通したとおりに手を進め、

「カン!」

 暗槓から、

「ツモ!」

 嶺上開花まで全てを予定通りに成し遂げた。

「ツモタンヤオ一盃口嶺上開花ドラ2。6100オール!」

 しかも、親ハネツモ二連発。

 

 これで、中堅前半戦の順位と点数は、

 1位:蒔乃 123600

 2位:フレデリカ 120300

 3位:咲 84200

 4位:クララ 71900

 

 さすがフレデリカである。

 彼女の活躍で、日本チームのトータルは202100点、ドイツチームのトータルは197900点と、その差を4200点まで縮めた。

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