咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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二百本場:高校最後の世界大会決勝戦8  神&本体vs分身&妹-2

 世界大会決勝中堅前半戦は、東二局二本場。

 親はフレデリカ。

 しかし、ここに来て突然、フレデリカは牌を見通す力が発動しなくなった。

 

 たしかに次鋒戦で相当なエネルギーを使ったが、この程度の疲れ具合で能力が失われるなんてことは今まで無かった。

 第三者の何らかの力が絡んでいるとしかフレデリカには思えなかった。

 ただ、救いなのは、相手の和了り牌だけは、何となくだが能力で分かることだ。これなら少なくとも不用意な振込みだけは回避できる。

 

 一方の咲は、牌が見えている模様だ。

「ポン!」

 クララから{3}を鳴いた後、

「カン!」

 {中}を加槓し、

「ツモ! タンヤオ嶺上開花ドラドラ。2000、3900の二本場は、2200、4100!」

 当然の如く嶺上開花で和了った。

 

 この直後、うっすらと卓上に風が吹いた。

 フレデリカは、

「(いつもより早い気がするけど、待ってたよ、クララ!)」

 これでクララのスイッチが入ったのを確信した。

 ここからは、しばらくクララに任せられる。

 その間に、フレデリカは少しでも………牌を見通す力を取り戻すべく、能力を回復させるつもりだ。

 

 

 東三局、咲の親。ドラは{七}。

 山がせり上がり、サイを回した直後、咲は驚きの余り大きく目を見開いて、クララのほうに視線を向けた。

 

 配牌は至って普通だ。淡の絶対安全圏のようなクズ配牌にはならない。

 しかし、ツモ牌の方が問題だ。

 恐らくクララは、序盤でフレデリカから{中}を鳴くだろう。

 それによるツモ牌の変化も考慮に入れると、咲とフレデリカは第一ツモから第五ツモまで不要な風牌………クソツモしか来ないように積まれている。

 間違いなく、これはクララの能力によるものだ。

 

 蒔乃だけは、最強神の力でツモは萬子のみがくるようになっているが、配牌のほうには肝心の萬子が一枚も無かった。

 これは、フレデリカの能力干渉によるものだ。

 萬子の九連宝燈の聴牌を最大限遅らせるために、配牌が終了するまでの間、フレデリカは自らの能力を蒔乃への干渉一本に絞っていたのだ。

 これだと蒔乃の聴牌までの道のりは長い。牌の総入れ替えが終わるまで、萬子の純正九連宝燈を聴牌できないことを示すからだ。

 いずれにせよ、他家は明らかにスタートダッシュでクララに後れを取る。

 

 この局は、咲が予感したとおり、

「ポン!」

 二巡目でクララがフレデリカから{中}を鳴き、その後、クララが順調に手を進めて、

「ツモ!」

 中盤に入ってすぐ、クララがツモ和了りした。

 

 開かれた手牌は、

 {1155[5]77799}  ポン{中横中中}  ツモ{1}

 

 紅孔雀だ。

 ただ、本大会では紅孔雀を役として認めていない。これは、中混一色対々和三暗刻赤1として翻数がカウントされ、

「4000、8000!」

 倍満となる。

 

 元が大きく削られていたため、これでもクララは85700点と、まだ原点を割っていた。

 しかし、咲は、このクララの和了りから相当なレベルの底力を感じ取っていた。

 

 

 東四局、クララの親。ドラは{9}。

 咲の支配力、いや、強制力が強まった。

 これは、意図して強めたのではなく、元々尻上がりに強力になるもので、これまで多くの者達を不幸にしてきた咲の後天的な能力である。

 

 この力によって、フレデリカは牌を透視する能力を塞がれた。

 クララが起こす風も、この局では前局と比べて弱かった。この局では、咲の力がクララの能力を上回っていたようだ。

 

 蒔乃は、東一局で九連宝燈を和了って以降、全然聴牌まで到達できていない。

 フレデリカの能力が蒔乃の配牌に、萬子が全然行かないように制御していたためだ。蒔乃が九連宝燈を聴牌するためには牌の総入れ替えが必要になる。

 透視能力は消えたが、まだフレデリカは配牌への干渉はできるようだ。

 

 実は、東一局でもフレデリカは蒔乃の配牌に負の干渉を行っていた。しかし、この時、咲も蒔乃の配牌に正の干渉………つまり萬子が行くのを後押ししていた。

 通常であれば、フレデリカと咲の力が打ち消し合うだろう。しかし、次鋒戦での疲労もあり、フレデリカの力は咲の力で押さえ付けられてしまった。

 その結果、東一局では蒔乃には萬子が多い配牌が行ったのだ。

 

 

「カン!」

 咲が{西}を暗槓した。

 オタ風牌の槓だが、咲が{西}を槓する時は、いつも以上に強力なパワーが飛び火してくるような感じを受ける。

 そして、そのまま嶺上牌を引くと、

「ツモ!」

 例の如く、咲は嶺上開花で和了った。

「嶺上開花ツモ一盃口チャンタドラドラ。3000、6000!」

 これで咲は、クララの親を流すと同時に、クララにハネ満を親カブリさせた。

 前局の倍満ツモのお返しとしては、若干点数が低いのだが、これも咲にとっては計算のうちのようだ。

 

 

 南入した。

 南一局、蒔乃の親。

 フレデリカの干渉を受けているため、蒔乃の配牌には、ずっと萬子が無い。

 これでは、最強神の縛り………萬子の純正九連宝燈以外は和了らないことを考慮すると、聴牌した時には既に終盤近くになっていることが予想される。

 

 ただ、今のフレデリカには蒔乃を抑えるのが精一杯のようだった。和了りに向かえるだけの力は無い。

 これも淡がダブルリーチでフレデリカを触発して暴走させ、エネルギーを大量放出させたお陰である。

 そして、淡がダブルリーチをかけたのは和の涙が起因する。

 経緯はともかく、淡と和の二人でフレデリカを疲労させてくれたことは大きい。

 

 この局、咲が全体を支配する力が若干下がったように感じた。

 そのためか、ここでは咲もフレデリカも序盤から不要な風牌を引かされ続け、場はクララが和了る方向に進んで行った。

 

 咲も手を進めるが、一歩、クララが早い。

「ツモ!」

 

 クララが手牌を開いた。

 {三三六六六③④[⑤]12233}  ツモ{1}  ドラ{③}

 

「ツモ一盃口ドラ2。2000、3900。」

 前々局と同様に{1}でのツモ和了り。

 咲は、この誰かに似た和了りを見て、

「(顔だけじゃなくて麻雀も似てる!)」

 と思っていた。

 それと同時に、咲は、

「(やっぱり顔が似てると麻雀も似るのかな? 私とフレデリカが似てるみたいに。)」

 とも思っていたが、核心までは到達していなかった。

 まさか、フレデリカが自分のクローンで、クララが人工授精により誕生した慕の妹だとは考えが及ばないだろう。それが普通だ。

 

 

 南二局、フレデリカの親。ドラは{二}。

 再び咲の強制力が強まった。

 クララが起こす風も再び止んだ。

 しかし、それでもクララの手は進んで行く。

 

 七巡目。

 クララの手牌は、

 {一二三②③2355[5]678}

 例の如く{1}が待ち牌になり得る一向聴。ドラは、{二}と{[5]}の二枚。

 

 そして、八巡目に、

「リーチ!」

 咲がリーチをかけてきた。

 同巡でクララは{①}を引いて聴牌。ここで{8}を落とした。

 

 次巡。

 咲は{4}を引いてきた。

 これは咲の和了り牌ではない。これを切ったらクララが平和ドラ2で和了る。

 しかし、

「カン!」

 咲は{4}を暗槓で取り込んだ。

 そして、嶺上牌を引くと、

「ツモ!」

 ここでも嶺上開花を決めた。

 

 開かれた手牌は、

 {六七八②②②④⑥99}  暗槓{裏44裏}  ツモ{⑤}

 

 穴五での和了り。ただ、引いてきたのは赤牌ではなかった。

「リーツモ嶺上開花。50符3翻は1600、3200。」

 この和了りで、ようやく咲は原点復帰した。

 

 

 南三局、咲の親。

 またもや卓上に風が吹いた。

 クララの集中力が上がったのか、それとも咲が前局の和了りを決めて若干気が緩んだためか、あるいはその両方か?

 いずれにしても、この局ではクララが誰よりも先に聴牌した。

 フレデリカは蒔乃を押さえるので精一杯。

 蒔乃は聴牌までに十三回のツモが必要な状態。

 唯一、クララに対峙できそうな咲も、この局は序盤のツモで不要な風牌を掴まされて出遅れていた。

 

 東二局二本場で和了ったのは咲。

 東三局で和了ったのはクララ。

 東四局は咲。

 南一局はクララ。

 南二局は咲。

 そして、この分で行くと、この南三局はクララが征しそうだ。

 まさにシーソーゲームだ。

 

 ただ、クララとしては違和感があった。

 いつもなら、尻上がりに手が高くなってゆく感じがあるのに、今回は逆にドンドン手が下がっている。

 東三局では倍満が和了れた。

 しかし、南一局では満貫級の手に留まった。

 そして今回は、さらに低い。

 とは言え、クララはラス親。最後に和了り捲くれば良いだけのこと。

 それに安手でも咲の親を流すことには意義がある。

 

「ポン!」

 咲が捨てた{南}をクララが鳴いた。これはダブ南だ。

 そして、その次巡。

「ツモ!」

 またもやクララは、{1}を引いて和了った。

「ダブ南ドラ1。1000、2000。」

 

 これで、中堅前半戦の現在の点数と順位は、

 1位:蒔乃 107900

 2位:フレデリカ 103000

 3位:咲 99100

 4位:クララ 90000

 トップトラスの差が17900点で、しかもラスのクララがラス親。まだ全員にトップを取れる可能性が残されている。

 

 初っ端に役満が飛び出したし、クララが一度70000点を割るなど、途中は荒れた試合を予想させたが、全体的に平らになってきた。

 まだ目が離せない戦いだ。

 

 

 オーラス。クララの親。

 フレデリカとクララが、珍しく吐き気を催した。今まで経験したことの無いレベルの、強烈なオーラが飛んできたためだ。

 ここに来て、咲の支配力が本日最大となった。

「(これが、愛宕監督が言っていた、咲さんの強制力が持つ本当の力?)」

 クララが起こす風は完全に止み、卓上は無風状態となった。

 

 フレデリカもクララも手が進まない。信じられないほどのクソツモが続くし、鳴くチャンスもない。

 この強制力には、誰も抗うことが出来ない。

 これが日本女子高生雀士最強の支配力だ。

 

 そして、とうとう、

「カン!」

 咲が{9}を暗槓した。

 嶺上牌を引くと、

「もいっこ、カン!」

 連槓で咲が{西}を暗槓した。

 続く二枚目の嶺上牌を引くと、咲は、それを表にして手元に置いた。

「ツモ………。」

 

 開かれた手牌は、

 {③④⑤2377}  暗槓{裏西西裏}  暗槓{裏①①裏}  ツモ{4}

 90符2翻の手だ。

 

「嶺上開花ツモ。1500、2900です。」

 

 これで、中堅前半戦の点数と順位は、

 1位:蒔乃 106400

 2位:咲 105000

 3位:フレデリカ 101500

 4位:クララ 87100

 25000点持ち30000点返しで考えた場合、これで咲はプラスマイナスゼロを達成したことになる。

 咲は、自らの強制力で蒔乃を1位、自分をプラマイゼロの2位にするべくゲームメイクしていたのだ。

 仮想プラスマイナスゼロでは、フレデリカとクララが相手では支配し切れないと判断したのだろう。

 それで、本家本元のプラスマイナスゼロで順位を調整したのだ。

 

 

 ここで一旦休憩に入った。

 フレデリカは、

「(まさか、最後に90符2翻なんて手を和了って、自らの点を105000点に調整してくるとは参ったわね。これがプラマイゼロか。)」

 咲のプラマイゼロを破らない限り、中堅戦での勝ち星は無いことを悟っていた。

 あれだけ強力な支配力を受けたことは、今まで一度も無い。

 むしろ誰も抗うことのできない強制力と言うべきことも十分理解できた。

 しかし、だからと言って何もせずに負けるわけには行かない。

 

 一旦、フレデリカは対局室を出た。

 そして、自販機コーナーへ急ぐと飲むモンブランを購入し、

「エネルギー充填120%!」

 取り急ぎ脳を復活させた。

 

 クララが、少し遅れて自販機コーナーに来た。

 彼女は、不人気商品………つぶつぶドリアンジュースを購入した。

 これを見てフレデリカは、

「そんなの飲むの!?」

 驚いていた。当然と言えよう。

「なんだか、ハマッちゃって。美味しいよ、これ。」

「そりゃ、不味くはないけど、ちょっとね。」

 どうやら、クララは味覚も慕に似ているようだ。

 

 

 一方の咲と蒔乃は、別の自販機コーナーにいた。

 今は、最強神は蒔乃の中から抜け出ていた。後半戦開始直前に再び蒔乃の身体に降臨する予定である。

「なんとか作戦通りに行きましたね!」

「そうだね。これも、淡ちゃんと和ちゃんがフレデリカを疲れさせてくれたお陰だよ。でも、クララって監督に似た麻雀を打つよね?」

「そうですね。何ででしょう?」

 蒔乃は最強神から真実を告げられており、クララの正体を知っていた。

 しかし、不用意に他言するわけには行かない。

 それに、万が一にも話の流れから咲とフレデリカの関係まで話が発展してしまっては困る。これだけは絶対に咲には告げてはならないことだ。

 

 それにしても、さすがに知らない振りをするのは疲れる。

「(ちょっと話題を変えたいなぁ。)」

 そんなことを思いながら、咲の話に合わせて、

「そうですね~。」

 適当に相槌を打っていた。

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