咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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二百一本場:高校最後の世界大会決勝戦9  神&本体vs分身&妹-3

 世界大会決勝中堅戦は、これより後半戦が開始される。

 対局室に、選手四名が姿を現した。

 日本チームからは咲と蒔乃。既に蒔乃には最強神が再降臨されている。

 そして、ドイツチームからはフレデリカとクララ。

 

 当人達は知らないが、フレデリカは咲のクローン。三ヶ月検診の時に咲から採取された細胞より造り出された。

 そして、クララは慕の母親から取り出された卵子とドイツ人男性雀士の精子を人工受精させて作り出された、言わば慕の妹であった。

 なので、この戦いは最強神と咲、咲の分身、慕の妹のまさに全世界の女子高生頂上決戦であった。

 

 真実は知らずとも、咲はフレデリカが自分と特性が似通っていることは理解していたし、クララが慕に似た麻雀を打つことも前半戦で確認した。

 その上で、個人ではなくチームとして勝つ麻雀を前半戦では選択した。完全プラスマイナスゼロを用いた最強の強制力を利用したのだ。

 後半戦も、基本的に同じ戦略をとる。これ以外にフレデリカとクララを押さえ込む術は無いとの判断だ。

 

 

 場決めがされ、クララが起家、南家はフレデリカ、西家は咲、北家は蒔乃に決まった。

 咲からは、強大なオーラが放たれていたが、それを向けた先はフレデリカとクララ。配牌が終了するまで、蒔乃に干渉させないためだ。

 

 東一局、クララの親。

 咲の想いが通じたのか、蒔乃の配牌は、

 {一一二四五六八九九②7白發}

 大きく萬子に偏っていた。

 

 蒔乃のツモは、神の力により後付けで欲しい牌に変えてしまう。

 鳴きが入ると立て直すのに一巡かかるが、鳴きが無ければ、たった四巡で最高の手が仕上がるはずだ。

 神代小蒔の妹にして、この配牌。

 しかも、前半戦でも東初で純正九連宝燈を和了っている。

 当然、日本の多くの視聴者が、二度目の奇蹟に期待していた。

 

 蒔乃の第一ツモは{一}。ここから打{7}。

 

 第二ツモは{九}。打{②}。

 

 第三ツモは{三}。打{白}。

 

 そして、注目の第四ツモは{七}。

 視聴者達が大興奮する中、当然、蒔乃は打{發}で純正九連宝燈を聴牌した。

 

 すると、

「ポン!」

 これを咲が鳴いた。

 鳴きの発声を聞いて、フレデリカが露骨に嫌な顔をしていた。

 この鳴きで蒔乃に回るツモ牌が萬子だったためだ。もっとも、ムリに鳴かなくても蒔乃の次のツモ牌は萬子だったのだが………。

 

 前半戦では、東二局二本場からフレデリカは透視能力を失っていたが、後半戦が始まると、その能力は復活していた。

 やはり飲むモンブランが効いたのだろうか?

 当然のことながら、能力が復活したことで、フレデリカは次のツモ牌が萬子であることを知っていた。勿論、蒔乃の手牌の状態も知っている。

 それで、フレデリカは表情に出たのだ。

 

 ところが、ここで咲が捨てたのは{二}。

 まさかの差し込みである。

 これを逃さず、

「ロン! 32000!」

 二度目の奇蹟、純正九連宝燈を和了った。

 ただ、同士討ちである。

 

 クララの親を流すためとは言え、さすがにこれはフレデリカにも理解できなかった。

 素直に鳴かれない牌を切っておけば、それだけで次のツモで蒔乃は役満ツモ和了りだったはずである。その方が、親のクララから16000点、フレデリカから8000点の計24000点をドイツチームから奪えるので日本チームとしてはプラスになる。

 この差し込みは、フレデリカには完全に暴挙としか思えなかった。

 

 

 東二局、フレデリカの親。

 まだ透視能力は健在だ。

 ただ、この局は咲の支配力が高い。前半戦でもそうだったが、東一局が終わると同時に強烈なオーラが咲から放たれている。

 まさに前半戦で見た強制力そのものである。

 

 牌を見た直後、フレデリカは、この局は咲に持って行かれることを悟った。いきなり咲が和了るルートになっていたのだ。

 

 フレデリカの予想通り、咲は第一ツモを手に入れると、

「リーチ!」

 {北}を切ってダブルリーチをかけた。{北}は、誰も対子で持っていない。これを鳴いてツモをズラすことはできない。

 

 蒔乃は、普通に萬子染め手を狙って{⑤}切り。これはセーフ。

 クララは{北}を切って一発回避。フレデリカも和了り牌を避けて通した。

 しかし、これが全くの無意味であることが、フレデリカには分かっていた。

 

 咲は一発目の牌を引くと、

「カン!」

 {西}を暗槓し、引いてきた嶺上牌で、

「ツモ!」

 そのまま和了った。

「ダブリーツモ嶺上開花。2000、4000。」

 天和や地和と言った一巡目の和了りの次に不条理な和了りに属するだろう。

 しかも、偶然役以外の和了り役が無いに等しい。ドラもなし。それでいて満貫手だ。

 そう言えば、先鋒前半戦東四局五本場でも同じことをしていた。さすが牌に愛された子と呼ばれるだけのことはある。

 

 

 東三局、咲の親。

 今回はフレデリカにとって有利な形になっていた。前局の咲と全く同じ状況になっていたのだ。

 いや、厳密には同一では無い。タンヤオとドラ一枚がある分、自分の点数の方が高い。

 

 フレデリカは、第一ツモを取り込むと、

「リーチ!」

 ダブルリーチをかけた。

 

 咲は、平然とした顔で際どいところを通してくる。牌が見えているのだから当然だが、一発で和了り牌の隣の牌を通されるのは腹立たしい。

 蒔乃………最強神も相手の和了り牌を察知するので、当然振込まない。

 クララは字牌切りで一発を回避した。

 

 フレデリカの一発目のツモは{8}。

 これを、

「カン!」

 暗槓すると、前局の咲と同様に、

「ツモ!」

 そのままフレデリカは嶺上開花で和了った。

「ダブリーツモ嶺上開花タンヤオドラ1。3000、6000!」

 しかも、咲が満貫だったのに対して自分はハネ満。

 これで後半戦の点数は、たった6000点ではあるが、ドイツチームが日本チームを上回ることになった。

 勿論、まだ序盤である。先のことは分からないが、優位に立ったのは間違いないとフレデリカは感じていた。

 

 しかし、その直後、フレデリカの視界がぼやけた。

 厳密には、透けて見えている牌の像が霞んできたのだ。そして、そのまま前半戦の時と同様に、牌を透視する能力が封印された。

 やはり飲むモンブランを飲んだくらいでは完全には回復していなかったようだ。まだ、咲の強制力に対抗するだけのエネルギーは無いようだ。

 

 咲からすれば、場の完全支配にはフレデリカの透視能力が一番邪魔である。咲のゲームメイクに対して常に横槍を入れられるからだ。

 それで、強制力が発動した際に最初に潰しにかかるのが透視能力になる。

 体調が万全であれば、フレデリカも咲の力をある程度撥ね退けられるかもしれないが、次鋒戦で疲労したところに蒔乃の配牌への干渉で力を使っている。それで、咲の強制力に対抗するにはパワーが不足しているのだ。

 

 蒔乃への干渉を止めれば少しは透視能力が復活するかもしれない。咲に対抗できるようにもなるだろう。

 しかし、それをやったら咲の思う壺だ。咲が蒔乃の配牌への正の干渉を強め、それこそ蒔乃が九連宝燈を連続和了してしまうだろう。

 この決勝戦で、日本チームがエースポジションに光ではなく蒔乃を持ってきた理由を、今になってフレデリカはようやく理解した。

 

 

 東四局、蒔乃の親。

 卓上に風が吹いた。クララの能力が発動し始めたようだ。

 そして、クララは第一ツモを手に入れると、

「リーチ!」

 まさかのダブルリーチをかけてきた。

 

 東二局では咲が、東三局ではフレデリカがダブルリーチをかけていたが、それに続いてクララまでダブルリーチをかけてくるとは、史上稀に見る展開であろう。

 フレデリカも咲も蒔乃も和了り牌が分かる。当然、差し込み以外で振込むことは無い。まあ、ここには東初でいきなり役満を差し込んだ信じられない輩もいるが………。

 

 次巡、

「ツモ!」

 クララは一発で和了り牌の{1}を掴んできた。

「ダブリー一発ツモ! 2000、3900。」

 ただ、それ以外に役は無し。ドラも裏ドラも無しの30符4翻となった。

 

 

 南入した。

 前半戦と違って連荘が無いことに加え、東一局が序盤で決着、東二局から東四局までが実質二巡目で終了しているため、非常に早い南入となった。

 

 南一局、クララの親。

 中堅後半戦の、現在の点数と順位は、

 1位:蒔乃 123100

 2位:フレデリカ 106000

 3位:クララ 102900

 4位:咲 68000

 咲の一人沈み状態であった。

 

 そして、各チームのトータルは日本チームが191100点、ドイツチームが208100点とドイツチームがリードしている。

 前後半戦のトータルでは、現状、日本チームが402500点、ドイツチームが397500点で日本チームが5000点だけリードしているが、十分逆転圏内にある。

 当然、両チーム共、互いに点棒を奪いたいところだ。

 

 ところが、咲のやることは良く分からない。

 中盤に入り、蒔乃がツモ切りした{發}を、

「カン!」

 大明槓すると、

「ツモ! 發嶺上開花混一ドラドラ。12000です。」

 蒔乃の責任払いでハネ満を和了ったのだ。

 いくらクララの親を流すためとは言え、これではチームとしての点棒が増えない。まるで東一局の役満差込みを髣髴させる。

 

 天才の考えることは良く分からないと言うが、これは異常過ぎる。

 この様子を控室のテレビモニターで見ていた和も、

「こんなオカルトありえません!」

 毎度の名台詞を口に出した。さすがに成績優秀な彼女でも、この咲の暴挙とも言える思考は理解不能だった。

 

 勿論、例の某ネット掲示板の住民達も、

『咲様、何考えとると!』

『ありえませんわ!』

『エニグマティックだじぇい』

『まともじゃないと思』

『全然スバラくありません』

『そんなオカルトありません』

『やっぱり美和様に期待だし!』

『蒔乃ちゃん以外オモチがイマイチで見るに耐えられないのです』

『さすがに未来が見えへん』

『宮永意味不明! 馬鹿じゃねぇwwwwww by 高三最強』

『今回ばかりは降参再教育の言い分も理解できますね』←船Q

『降参再教育が賛同されるって初めてやなぁ』←セーラ

 批難轟々だった。

 

 

 南二局、フレデリカの親。ドラは{中}。

 フレデリカの顔には疲労の表情が浮かび上がっていた。

 次鋒後半戦の南場で能力を暴走させた自分が悪いのだが、それで疲労した状態で蒔乃の配牌を制御するのに力を使い、さらに、ここに咲からの重圧までもが加わり、全然回復する見込みが無い。

 他家の和了り牌だけは能力で察知できるのが唯一の救いだが、加速度的に疲労が溜まってゆく感じもあるし、それと同時に運も低下している感じがある。

 折角の親番だが、ツモが宜しくない。

 

 この局、クララが起こす風は止んでいる。咲の強制力が上回っているためだろう。

 少なくとも、クララの能力によって不要な風牌を掴まされることは無いが、それでも配牌にツモが噛み合わない状態に追い込まれている。

 

 クララもフレデリカと大同小異のようだ。見ている限り、ツモ牌が手牌に噛み合っていない。配牌後、全く向聴数が減っていない状態だった。

 蒔乃が九連宝燈を聴牌するのは、配牌にフレデリカが能力干渉している以上、最速で十三巡目のはず。

 しかし、全員の手が遅い中、咲だけは着々と手を進めていた。

 

 中盤に入り、

「カン!」

 とうとう咲が動き出した。

 ここでも副露されたのは{西}の暗槓。

 そして、嶺上牌を引くと、

「ツモ!」

 毎度の如く嶺上開花での和了りを決めた。

 

 開かれた手牌は、

 {二三四②④234中中}  暗槓{裏西西裏}  ツモ{③}

 

「嶺上開花ツモ三色ドラドラ。3000、6000。」

 ハネ満ツモだ。

 これでフレデリカの点数は丁度原点、クララの点数は原点から100点割った。

 よって、たった200点差ではあるが、後半戦チームトータルで日本チームがドイツチームの点数を上回った。

 

 

 南三局、咲の親。ドラは{4}。

 再び卓上に風が吹いた。クララの能力復活である。

 ところが、

「リーチ!」

 咲がダブルリーチをかけてきた。まさかの展開である。

 

 しかし、案の定、咲は不要な字牌しかツモれない状態だった。槓材を持っているようだが、多分、チュンチャン牌なのだろう。

 蒔乃にはオタ風牌が回らない。最強神の力で、基本的に萬子しか引かないからだ。

 ただ、その分、咲は不要字牌を多く引かされることになる。

 

「チー!」

 蒔乃が捨てた{⑧}をクララが鳴いた。

 副露されたのは{横⑧⑦⑨}。

 

 そして、数巡後、

「ツモ!」

 ここでもクララが{1}を引いて和了りを決めた。

 

 開かれた手牌は、

 {一二三①②③⑨⑨23}  チー{横⑧⑦⑨}  ツモ{1}

 

 鳴きジュンチャン三色同順。30符3翻の手となる。

「1000、2000。」

 これで咲は、リーチ棒を含めて3000点を失うことになった。

 

 中堅後半戦の、現在の点数と順位は、

 1位:蒔乃 107100

 2位:クララ 104900

 3位:フレデリカ 99000

 4位:咲 89000

 

 後半戦のチームトータルは、日本チームが196100点、ドイツチームが203900点だが、前後半戦トータルでは日本チームが407500点、ドイツチームが392500点と、日本チームが15000点リードしている。

 しかし、オーラスでクララかフレデリカがハネ満をツモ和了りすれば、たった3000点だがドイツチームが逆転する。

 

 まだどちらが勝つか分からない。

 そのような中、中堅後半戦はオーラスに突入した。

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