「「「「有難うございました(じゃけぃ!)」」」」
K大学チームとM大学チームの試合は、中堅戦を終了し、対局後の挨拶が行われた。
まこのエセ広島弁が、一際大きく対局室内にこだました。これにより、さらに時間軸の進みが早くなるのは、いつものお約束である。
一先ず、いちごが聖水を放出してしまったため、対局室の清掃作業が入った。そして、約30分後に試合は再開された。
副将戦のメンバーが対局室に揃うと、すぐに場決めがされ、起家が園田栄子(K大学)、南家が成長結実(なりながみのり:M大学)、西家が天地聖美(あまちきよみ:M大学)、北家が宮永光(K大学)で対局がスタートした。
前評判では、結実は『仲間の能力を開花させる能力』を持ち、その力で次鋒の愛射が能力に目覚めたとされている。
また、聖美は『神のご加護を受けている』と言う噂だが、W大学チームとの戦いを見る限り、神代小蒔のように神懸かった闘牌を見せたわけではない。
二人の校内ランキングは5位と6位。
7位の美入人美や8位の水村史織よりは強いが、まこやいちごよりは弱いはず。
なので、前評判ほどは強くないだろうとは思われる。
しかし、愛射や弥生のように校内ランキングでは、まこやいちごより低くても、対外的には、まこやいちごより強いケースもある。
W大チームとの対戦でも、結実と聖美は、竜崎鳴海と鬼島美誇人のペアに負けたとは言え僅差だった。
なので、この二人の力を慎重に見定める必要があるだろう。
とは言え、取る戦法は、基本的にT大学戦の時と同じだ。
相手の力量によって栄子から削られた点数の上限が決まる。この二人の上限が無制限でない限り、この能力の特性を利用すれば光と栄子のペアが勝つはずだ。
東一局、栄子の親。
早速、栄子が結実と聖美の上限を測った。
「(この二人は、共に14000点程度ね。T大学の二人よりも、ちょっと上限が高いけど、それでも世界大会の選手に比べると、やっぱり落ちるわね。)」
ならば、栄子は敢えて光に満貫級の手を二連続で振り込めば良い。栄子の能力は、理屈抜きで他家の和了り牌を見抜くので、差し込み自体は容易なことだ。
それに、栄子の能力で抑え込めるのであれば、結実と聖美は、どんな能力を持っていようと和了れなくなるはず。
先ず栄子は、三元牌と光の自風である{北}を順次落としていった。
四巡目に栄子が切った{北}を、
「ポン!」
光が鳴いた。
その数巡後、栄子が敢えて切った{[5]}で、
「ロン。白ドラ3。7700!」
光が和了った。
これで、光は難無く第一弾の和了りを決めた。完全な差し込みであるが、互いの特性を上手に活かし合うのもコンビ麻雀では重要なファクターだ。
東二局、結実の親。
ここでも栄子は、三元牌と光の自風である{西}を順次落としていった。
「ポン!」
光は、栄子が三巡目に切った{西}を鳴き、その次巡、栄子が切った牌で、
「ロン。西チャンタドラ2。7700。」
早々に和了った。これも差し込みである。
これで、副将戦の暫定順位と点数は、
1位:光 115400
2位:結実 100000
3位:聖美 100000
4位:栄子 84600
栄子が15400点を失点し、結実と聖美が栄子から削れる上限を超えた。つまり、二人ともツモ和了りが封じられたことになる。
案の定、
「「ドドン!」」
結実と聖美に向けて栄子の身体から衝撃波が放たれた。この衝撃波は、結実も聖美もツモ和了りが封じられたことの警告であった。
しかも、光は高い精度で他家の手牌を読み取るし、栄子は理屈抜きで他家の和了り牌を見抜く。そう言った能力が備わっている。
それ以前に栄子の場合、ここから先はスーパーディフェンスの能力によって何を切っても結実と聖美に振り込むことは無い。
つまり、K大学チームからは、光の読み間違いでもない限り結実と聖美に点棒を奪われることは無いと言って良いだろう。
こうなると、結実と聖美は、互いに振り込み会うことくらいしか出来ない。
しかし、味方からの振り込みは、相手の親を流すのには有効だが、チームトータルを増やす方には進まない。
よって、光の全手牌が、結実か聖美のどちらかの和了り牌になるくらいの奇蹟が起きない限りM大学チームの勝ち星は難しいと言えよう。
その後、光は東三局で、
「ロン。タンピン一盃口ドラ3。12000。」
東四局で、
「ロン。ダブ東チャンタドラ2。18000。」
東四局一本場で、
「白対々三暗刻ドラ3。24300。」
と、三連続で結実から直取りした。
そして迎えた東四局二本場。
栄子の配牌はヤオチュウ牌に偏っていた。
ここで栄子は、ドイツチーム在籍時代から『リラの鉄槌』と呼ばれている大きな一撃を狙う。
能力発動により、万が一、結実か聖美が聴牌したとしても栄子は絶対に振り込まないのだから、何を切っても当たらないはず。
それに、ノーテン罰符も発生しないわけだから、強引に進めても必ず聴牌できるはず。
その前提で強引に手を進めて聴牌し、
「ロン!」
栄子は結実から直取りした。
開かれた手牌は、
{東東南南西西北白白發發中中} ロン{北}
大七星だ。
これは、通常の字一色と違って門前で作る必要があるため難易度が高い。そのため、本大会ではダブル役満として扱われていた。
「64600!」
これで、副将戦の順位と点数は、
1位:光 169700
2位:栄子 149200
3位:聖美 100000
4位:結実 -18900
結実のトビで終了となり、K大学チームが三つ目の勝ち星を手に入れた。
ただ、この対局を振り返ると、聖美は全然失点していなかった。原点から一度も点棒が動いていなかったのだ。
もしかして聖美の、
『神のご加護を受けている』
と言うのは失点しないと言うことだろうか?
たしかに、この半荘ではツモ和了りが無く、栄子から光への差し込みと、結実から光への振り込みしかない。
個人戦に向けて、他チームと対戦した際の聖美の闘牌データをキチンと見ておく必要がありそうだ。
…
…
…
大将戦は、K大学チームからは宮永照、天江衣が、M大学チームからは染谷まこ、水村史織が参戦。
この時、衣は入室する前から殺伐としたオーラを全身から放っていたと言う。
理由は簡単。次鋒戦では生霊として弥呼に降りたが、愛射の能力に抑え込まれてヤキトリの上に大失点。
たしかに対局直後は、
「(こんな怪訝な奴らがいるとは、まだまだ衣も井の中の蛙だ!)」
と心の中で声を発し、表情は極めて朗らかだった。自分と遣り合える人間が、トリプル宮永以外にもいたことを喜んでいた。
しかし、負けっぱなしと言うわけには行かない。
衣は、この対局で思い切り暴れるつもりでいたのだ。
場決めがされ、起家が史織、南家が衣、西家がまこ、北家が照に決まった。ラス親が照と言うのは非常に危ない配置だ。
早速、史織がサイを回し、大将戦が開始された。
東一局は史織の親。ドラは{9}。
ここでは、
「ポン!」
いきなり衣が史織の第一打牌の{南}を鳴いた。
その二巡後、
「ポン!」
さらに衣は、照が捨てた{發}を鳴き、その数巡後、
「ツモ! 6000、12000!」
いきなり三倍満をツモ和了りした。
開かれた衣の手牌は、
11999白白 ポン{發横發發} ポン{横南南南} ツモ{1} ドラ{9}
南發混一色混老対々和ドラ3。
初っ端から、こんな和了を見せられて、史織は、
「いやーん!」
可愛い娘ぶった声を上げたと言う。
ただ、このブリッ娘調は計算されたものと巷では言われていた。
東二局、衣の親。
ここで、
「ロン! 24000!」
またもや衣の高打点の手が炸裂した。
振り込んだのは史織。たった二局で36000点もの大失点だ。
さすがに顔面蒼白し、全身は固まっていた。声を上げることも出来ず、もはやブリッ娘な仕種を見せることも出来ずにいた。もう、計算している余裕などない。
東二局一本場も、
「ロン! 18300!」
衣は史織から直取りした。
この三連続の和了りで、衣はすっかり上機嫌になっていた。
そして、東二局二本場。
「衣は、これで十分だ。後は照に任せるとする!」
こう言うと、衣は三巡目に、狙ったかのように{白}を切った。
すると、
「ポン!」
これを照が鳴いた。
まさに、照の手牌の中では、直前に{白}が対子になったばかりであった。
衣の{白}切りは、照に鳴かせるためにタイミングを見計らって切った打牌と言えよう。そんなことが出来ること自体、凄いことだ。
その数巡後、衣は{③}をツモ切り。
すると、
「ロン。1000点の二本場は1600点。」
これで照が第一弾の和了りを決めた。言うまでもない。これは、衣の差し込みだ。
ただ、過程はどうあれ、第一弾の和了りを決めた以上、ここからは照の怒涛の連続和了が炸裂する。
東三局、まこの親。
ここでは、
「ツモ。1000、2000。」
序盤のうちに、さっさと照が和了りを決めた。
東四局、照の親。
ここでも、
「ロン。7700。」
照が序盤で和了りを決めた。史織からの直取りだ。
東四局一本場は、
「ツモ。3900オールの一本場は4000オール!」
照のツモ和了り。
東四局二本場と三本場は、
「ロン。12000の二本場は12600!」
「ロン。18900!」
共に照は史織から直取りした。
これで、大将戦の暫定順位と点数は、
1位:衣 159700
2位:照 150800
3位:まこ 88000
4位:史織 1500
史織の点棒を、照と衣で半分ずつ奪い取ったような状態だった。
そして迎えた東四局四本場。
「ツモ。8400オール!」
右腕を中心に竜巻を発生させながら、照の親倍ツモが炸裂した。
これで史織が箱割れして大将戦は終了。K大学チームが余裕で四つ目の勝ち星を手中に収める結果となった。
同時開催されていた二試合のうち、W大学チームと H大学チームの対戦結果は、以下のとおりとなった。
先鋒戦は、竹井久・福路美穂子vs佐々野みかん・多治比麻里香の対戦。
今回も、久と美穂子は美貌で負けた。言うまでもなく、美貌対決の一番の敗者は久であろう。
しかし、前回も今回も、久は美女に囲まれて非常に嬉しそうだったと言う。
肝心の麻雀では久・美穂子のW大学チームが勝利した。
次鋒戦は、西野カナコ・原村和vs大星淡・亦野誠子の対戦。
淡はステルス対策の準備は満タン(淡はアホの娘なので準備万端ではない)。しかし、ステルス初対戦の誠子はカナコの餌食となった。その結果、カナコ・和のW大学チームが勝利した。
中堅戦は百目鬼千里・西野カナコvs辻垣内智葉・大星淡の対戦。全員が世界大会経験者と言う、特に注目度の高い一戦。
ステルスの存在に智葉は驚いていたが、対策方法を淡から聞いていて準備万端。絶対安全圏を誇る淡と『相手を斬る麻雀』を打つ智葉のコンビが、千里・カナコの世界大会ドイツ代表コンビに僅差で勝利した。
対局中、カナコは智葉が見せる刃物の幻に、
「ゲロコワー!」
と声を上げていたとのことだ。
副将戦は竜崎鳴海・鬼島美誇人vs池田華菜・中田慧の対戦。
今回も、華菜と慧の二人がムチャクチャうるさい試合だった。結果は、鳴海・美誇人の綺亜羅コンビが余裕で勝利した。
大将戦は雀明華・百目鬼千里vs片岡優希・辻垣内智葉の対戦。
この対局も、中堅戦と同様にW大学チームとH大学チームの中でも特に注目される一戦とされた。優希以外は、全員が世界大会経験者である。
一応、優希も生霊として世界大会を経験しているが………。
H大学チームは、基本的に昨日のR大チームとの対戦と同様の作戦、つまり東場は東風の神と呼ばれる優希のスタートダッシュで、南場は智葉の全体支配で勝利すべく対局に望んだ。
明華と千里も自分の麻雀を展開するが、東場で優希に持って行かれた点棒を南場で完全に回収するには至らなかった。
その結果、H大学チームが大将戦を征する結果となった。
以上より、W大チームが勝ち星三、M大学チームが勝ち星二を獲得した。
また、R大学チームと T大学チームの対戦結果は、以下のとおりとなった。
先鋒戦は、多治比真佑子・椿野美幸vs小走やえ・新子憧の対決。
美貌では、真佑子・美幸のR大学チームに軍配が上がったが、肝心の麻雀ではやえ・憧のT大狡猾コンビが僅差で勝利した。
次鋒戦は、引世菫・数南数絵vs船久保浩子・樫尾聖子の対戦。
デジタル打ちの完成度が高いことが仇となり、聖子は終始、菫に狙い撃ちされた。しかも後半に数絵が覚醒。
結果としてR大学チームが勝利した。
中堅戦は加治木ゆみ・多治比真佑子vsの小走やえ・鷲尾静香の対戦。
例年であれば、T大学チームは、やえ以外にゆみや真佑子と対峙できる人材に恵まれず、どう足掻いてもエース対決である中堅戦で勝ち星を上げることは出来なかったが、今年は綺亜羅三銃士の一人、静香が入った。
ゆみ、真佑子、やえは同レベルと言って良いだろう。
そして、静香は、この三人を凌ぐ実力者。
この対決は大方の予想通りT大学チームが勝利した。エース対決でT大学チームが勝利するのは、十数年振りとのことだ。
副将戦は、東横桃子・加治木ゆみvs蔭山桜・島岡豊貴子の対戦。
さすがに桃子のステルスと、達人を思わせるゆみが相手では、桜も豊貴子も太刀打ちできない。手も足も出ない状態と言ったところだった。
結果は、桃子・ゆみのR大学チームが勝利した。
大将戦は、森垣友香・霜崎絃vs鷲尾静香・安福莉子の対戦。
友香と絃は、攻め一辺倒で勝ち星を狙う。これに対し、莉子は徹底した守備で失点を最小限に抑えた。
東場では、友香と絃のトータルのほうが上回っていたが、南三局で綺亜羅三銃士最強の豪運を誇る静香のトリプル役満ツモが炸裂し、T大学チームが大将戦の勝ち星を取った。
以上より、R大チームが勝ち星二、T大学チームが勝ち星三を取り、T大学チームがR大学チームに勝ち越す結果となった。
済みません。
ここで暫く休業します。
少しおいて復活できればと思っております。