A-B下位卓は、前試合でヤらかした真祐子、麻里香姉妹が今一つ振るわず、1位数絵、2位憧、3位真祐子、4位麻里香で決着がついた。
咲は、対局室前で30分ほど待つことになったが、無事、憧と合流できた。
一方の、みかんだが、
「(ドジっ娘属性に迷子属性? 方向音痴? 地味で読書好きで…。なんか、全然イメージ違うなぁ…。そう言えば、以前、和が宮永はカナヅチって言っていた気がするし、卓についている時以外はポンコツってこと?)」
どうやら、咲の真の姿が見えてきたようだ。
一回戦では、咲は、たしかに自分達を本気で叩き潰そうとしていた。しかし、それは自分達に勝手に嫉妬していたことと、本気で麻雀を打つように和に言われていたこと。この二つが理由だ。
点数調整で全員0点にされたりもしたが…。
咲は、恐らく九割方は自分達が思っているような人間では無い。100%とは言い切れないが…。ただ、自分達が敵視していなければ、友好的な姿勢を示していれば、普通に接してくれるのではないだろうか?
大会が終わったら、麻里香とも話してみよう。
それから、淡や和、光にも、もっと咲のことを聞いてみよう。
他にも、淡と光には、
『今まで自分達と打つ時に手加減していないか?』
それも確認しなくてはならないだろう。それができなければ、自分達の本当の立ち位置が分からない気がしたからだ。
その上で、今後、魔物と戦うには何が必要かを考え直す必要がある。思っていた以上に、自分達と魔物の間には開きがあるようだ。
まあ、淡に確認するチャンスは、意外と早く来るのだが…。
その頃、C-D下位卓…松実玄、鶴田姫子、原村和、鷺森灼の対局では、玄のドラ爆が面白いように炸裂していた。
姫子は、個人戦では決勝卓に進出しない限りセルフリザベーションをかける必要はない。
ただ、攻守のバランスを考えて打っているのだが、ドラが無い状態では打点を上げるのに苦労する。小さい和了りをしたところで、玄に一回でも和了られたら全て取り返されてしまう。
灼としても、筒子多面聴の鍵となる{⑤}の半分…、つまり赤5筒が、最初から玄の支配下にある。非常にやりにくい。
この能力麻雀に対し、
『そんなオカルトありえません』
とマイペースでジデタル打ちができるのは、和だけだろう。
結局、C-D下位卓は、1位松実玄、2位原村和、3位鷺森灼、4位鶴田姫子で対局を終了した。
C-D上位卓は、大星淡、片岡優希、宮永光、高鴨穏乃の対決だった。
起家は言うまでも無く優希、南家は穏乃、西家は淡、光が北家になった。
東一局、優希の親。
優希は、団体戦準決勝を最高状態にするようにコンディションを調整していたため、今は、天和どころかダブルリーチをかけられるほどのパワーもない。
そもそも、淡の絶対安全圏が発動しているのだ。
一回戦の東一局では、絶対安全圏を破るだけの力があったが、今は、淡の支配のほうが遥かに上だ。もはや、絶対安全圏を打ち破るだけの力は無い。
とは言え、それでも決勝リーグ二回戦に進出しているのだから立派であるが…。
六巡目。
「リーチ!」
なんとか優希は聴牌し、リーチをかけた。そして、
「ツモ。4000オール!」
親満をツモ和了りできた。
しかし、東一局一本場からは、
「チー!」
絶対安全圏内での勝負を淡が仕掛けてきた。さらに、淡を越える支配力を持つ光も和了りに向かってくる。
結局、そこからは淡と光が和了り、優希は途端に原点を割った。
東四局からは穏乃の支配が強まってきた。そして、南場では淡も穏乃に逆転される。東場でのプラスを保てたのは、光だけだ。
結局、C-D上位卓は、光と穏乃が勝ち上がり、淡と優希が5位決定戦に回されることとなった。
それでも、この時点で既に優希は、玄、和、憧、数絵よりも上の順位が約束された。一回戦の組み合わせが良かった面はあるだろうが、これで臨海女子高校先鋒としての面目は立ったと言えるだろう。
一方、淡は、咲との対決を実現できず、悔しそうだった。
昼になった。
一旦、ここで休憩時間だ。休憩が終わったら、5位決定戦、9位決定戦、13位決定戦が同時進行で行われ、5位から16位までの順位を決める。
これらは、半荘一回のみの戦いで、1時間もあれば終わる。
その後、決勝戦が行われる。これは、前後半戦の半荘2回の合計点で競うことになる。共に、25000点持ち30000点返しの、オカありウマなしでの戦いだ。
咲達は、会場の食堂で昼食をとった。
昼食代は後援会から支給される。自分の小遣いに全く負荷がかからない。
そう言えば、宿泊費も移動費用も部員が負担する分は無い。清澄高校の頃は、自腹分も大きかったし、自分達のフトコロに優しくなるよう、宿泊先も安いところだった。
それが今では…非常にイイご身分だ。
「(こんな贅沢させてもらってるんだし、絶対に結果を出さなきゃ。)」
咲の中で、勝利を目指すべく、良い意味でのスイッチが入った。
少なくとも、今回は『相手を全力で叩き潰す』の延長上に、たまたま『勝利』があるのではない。阿知賀女子学院を応援してくれる方々のために全力を尽くしたい。そう本気で思っていた。
昼食後、5位決定戦、9位決定戦、13位決定戦が同時開催された。
5位決定戦は、A-B卓からは荒川憩と佐々野みかんが、C-D卓からは大星淡と片岡優希が参戦した。
早速、みかんに、淡の本気レベルを確認する機会が訪れた。
淡の絶対安全圏に苦しめられながらも、東初では何とか優希が和了りを決めた。しかし、その後、淡、憩の和了りが順に目立つようになる。
憩との対決と言うことで、淡は当然、本気で戦った。その迫力を目の当たりにして、みかんは、淡が部内戦では手加減していたことをイヤと言うほど痛感した。
この対局では、残念ながらみかんはヤキトリとなった。
最終的に順位は、
5位:荒川憩
6位:大星淡
7位:片岡優希
8位:佐々野みかん
に決まった。
9位決定戦は、A-B卓からは松実玄と新子憧が、C-D卓からは原村和と南浦数絵が参戦した。奈良vs旧長野の対決である。
さすがに、この面子では玄にドラそばやドラを切らせるために敢えて槓をする者はいなかった。
ドラ爆和了りが炸裂し、序盤から玄が圧倒的なリードを作った。
その後、牌効率の良い和と憧が和了り出した。しかし、ドラが来ない対局では玄のリードを巻き返すのは難しい。
和は、門前麻雀も鳴き麻雀も併用する。リーチをかけての和了もあるため、ドラがなくても満貫クラスの手を作ることが一応可能だ。しかし、鳴き麻雀に特化した憧は、3900にも満たない和了りばかりが続いた。
数絵は、南入りしてから和了れるようになったが、裏ドラが乗らず、思うように巻き返しができなかった。南場でのリーチツモ&裏ドラが彼女の持ち味だが、裏ドラ無しでは打点が上がらない。完全に自分のスタイルを封じられた感じだ。
最終的に順位は、
9位:松実玄
10位:原村和
11位:南浦数絵
12位:新子憧
となった。
数絵は、南三局で、なんとか憧を抜いたが、そのさらに上の順位まで食い込むことはできなかった。
「では憧。今回、私が勝ちましたので咲さんには手を出さないでください。」
「出さないってば! 迷子対策で手を繋ぐ程度だって。」
つまりは、団体戦決勝の続きである。いつの間にか憧は、和と咲を賭けた戦いをさせられることになっていた。
一先ず、和は憧に勝てて安心したようだ。
13位決定戦は、A-B卓からは多治比真祐子と多治比麻里香の姉妹が、C-D卓からは鶴田姫子と鷺森灼が参戦した。
さすがに、この頃になると多治比姉妹も、咲との対局後にやらかした事故のことから、ある程度頭が切り替えられた。
この対局は、灼の筒子多面聴牌リーチの際に、真祐子が姫子や麻里香に安手振り込むなどして上手に立ち回った。そして、ここぞと言うところで真祐子が和了る。本来、魔物が相手でない限り、真祐子は、そうそう負ける人間ではないようだ。
最終的に順位は、
13位:多治比真祐子
14位:鷺森灼
15位:鶴田姫子
16位:多治比麻里香
となった。
これで5位以下の順位が決まり、いよいよ決勝戦がスタートする。A-B卓からは咲と衣が、C-D卓からは、光と穏乃が勝ち上がった。誰の目から見ても魔物四人の対決だ。
対局室に、四人が姿を現した。
この中で、一番堂々と振る舞っているのは、最も身長は低いが、唯一の二年生である衣だった。
対する咲は、被捕食者的な雰囲気でオドオドするかと思われたが、意外と落ち着いた感じを見せていた。応援してくれる人達のためにも勝ちたい。その気持ちが、彼女の心の中から無駄な緊張を吹き飛ばしてくれていたようだ。
場決めがされ、起家が穏乃、南家が衣、西家が咲、北家が光に決まった。咲は得意の西家を、光も得意の北家を引き当てた。
東一局、穏乃の親。
もし、誰も鳴かずに最後まで進めば、南家の衣が海底牌を掴むことになる。この局、衣は能力全開で、他家全員を一向聴地獄に引きずり込んだ。しかも、その支配力で誰も鳴けない巡り合わせになる。
そして、
ラスト一巡、
「リーチ!」
衣がリーチをかけた。これで、最低でもリーチ一発ツモ海底撈月の満貫を衣が和了る…はずだった。しかし、
「カン!」
咲が、暗槓した。今、四枚揃ったのではない。既に事前に抱えていた槓子を、このタイミングで副露したのだ。
そして、嶺上牌で聴牌し、残しておいた安牌を切った。これで海底牌は一枚前の牌に変わり、衣のツモは無くなった。
続く光はツモ切り。この牌では鳴きも和了りも無し。そして、海底牌は穏乃の手に回った。
穏乃は、無難に安牌を切った。ここまで来たら、一向聴も二向聴も同じだ。
「「聴牌。」」
衣と咲が手牌を開いた。
「「ノーテン。」」
一方、光と穏乃は聴牌ならず。
ただ、この局の意味するところ…、それは、咲に衣の海底撈月が封じられたことであろう。これは、衣にとっては厳しい。
しかも、局が進めば、東四局辺りから穏乃の山支配が強まり、海底牌まで辿り着けなくなる。それは、インターハイ前の阿知賀女子学院との練習試合で証明済みだ。
これでは、衣は海底撈月に頼るわけには行かないだろう。
かと言って、直撃を狙おうにも咲と光からの振り込みは期待できない。
となると、できることは、エンジンがかかっていない序盤の穏乃からの出和了りで稼ぐくらいか?
当初想定していた以上に、衣は東場で身動きが取れていない。
しかし、
「面白いな咲。やはり、衣の相手は、これくらい衣を苦しめてくれる者でなければ面白くない!」
むしろ、衣は喜んでいた。
対等以上の相手に打ち勝つことが楽しい。格下の者達をただ蹂躙しても面白くも何ともない。それが、今の衣の思うところであった。
東二局流れ一本場、衣の親。
衣の意識が咲に集中する。海底撈月を封じてきたのだから当然だろう。
ただ、この対局では気を抜いたら、とんでもないことをしでかす奴がいる。そう、北欧の小さな巨人…光だ。
自分への衣の支配が弱まると、すぐさま役無しだが門前聴牌まで持って行き、
「ツモ! ドラ3。2100、4000!」
光は、満貫級の手をツモ和了りした。
「(しまった! 咲ばかりに気をとられて、こいつの存在を忘れていた。衣は子よりも親のほうが好きなのに…。)」
これで、あっという間に衣の親が流された。
東三局、咲の親番。
まだ、穏乃の山支配は発動していない。しかし、東三局を過ぎれば、徐々に穏乃の支配が強くなる。
この局が、咲、光、衣の三人にとっての勝負どころになるだろう。衣は、そう思っていた。
ただ、どうしても衣は、今度は前局で和了った光に意識が集中してしまう。すると、咲への支配が弱まることになる。
支配が弱まれば、咲の手は進む。当然、
「カン!」
咲は門前聴牌すると同時に四枚揃いの牌を暗槓し、
「ツモ。嶺上開花ドラドラ。4000オール!」
そのまま、当然の如く嶺上開花で和了った。
この和了りを見て、衣は、
「(相手が咲一人だけなら咲の支配力と衣の支配力の勝負になるだろう。しかし、ここには咲と対等の支配力を持つ光がいる。そうなると、どうしても咲と光のうち、前局で動きを見せたほうに衣は意識を集中させてしまうようだ。この局では光、その前は咲に気を取られ過ぎた…。まだ、常に心を平静に保てるほど、衣は精神が成熟していないと言うことか。)」
と自己分析を始めた。
衣は、自分には、何かが起こると、それに意識が集中してしまって全体が見えなくなってしまう側面があることを悟った。これは、普通仕方がないことなのだが…。
ただ、これから場が進めば穏乃の支配が増してくるのは必至だ。
この現状から考えると、衣は、もう既に窮地に追い込まれているような気がしてならなかった。
東三局一本場、咲の連荘。
やはり、衣は意識が咲のほうに向いてしまう。これは、自分でも分かった。やはり、前局の嶺上開花の印象は拭えない。
早々に、光が門前聴牌したことに衣は気付いた。衣の支配が、卓全体ではなく咲に集中していることが原因だ。
ただ、光の手は高くなさそうだ。光も咲の支配を受けており、動きに制限がかけられているようだ。
「ツモ。ドラ1。600、1100。」
光が和了った。衣が感じていたとおりの安手だ。
しかし、衣は依然としてノー和了だ。和了ったのは咲と光のみ。
既に四局打っている。それに、衣は和了りに行っている。それでいて未だ和了れていないのだ。このようなことは滅多に無い。
さすがの衣も表情に焦りの念が見えてきた。
東四局、光の親番。
卓に、うっすらと靄がかかってきた。
光は、このような現象が起こることを咲から予め聞いていたし、個人戦決勝リーグの一回戦、二回戦で穏乃とは卓を囲んでいた。なので、穏乃の能力のことは一応分かっている。
それに、光は、もともと長野で育った。それも、穏乃の本拠地、吉野の山と同等以上の標高に位置する場所だ。なので、この程度の靄で、光が視界を失うことは無い。
しかし、支配力の強さは感じる。今思えば、一回戦か二回戦で穏乃を落としておけば良かったとさえ感じる。
一回戦では灼と和がいた。二人とも強いが、光に太刀打ちできるレベルではない。東四局まで持ち込まずに東三局までで和あたりを残して、灼か、まだエンジンのかかっていない穏乃をトバして終了すべきだったのかもしれない。
二回戦もそうだ。淡と優希を落すのではなく、そのどちらかを残せば良かったのだ。ただ、淡が相手だったため、絶対安全圏が発動し、当然光の配牌は悪かった。それで、自分が勝ち上がることだけに気が行ってしまったのだ。
今、明らかに穏乃の支配力が上がってきている。
しかし、良く考えると、その力で干渉されるのは、光一人だけではない。咲も衣も穏乃と支配力をぶつけ合っている。
つまり、穏乃の支配力は、咲にも衣にも分散している。よって、光の支配力が完全に打ち消されるわけではない。
「(今のうちに点数を伸ばす!)」
光は、この親でスパートをかけることにした。支配力を高める。
衣の一向聴地獄も、穏乃の支配が加わってきたことで弱められている。これなら聴牌できる。そして、
「ツモタンヤオドラ1。2000オール。」
30符3翻ではあるが、光が和了った。
これで各選手の点数は、
1位:宮永光 37000
2位:宮永咲 31400
3位:天江衣 16800
4位:高鴨穏乃 14800
東四局一本場、光の連荘。
さっきよりも靄が強くなった。光は、前局でエネルギーを放出し過ぎたのか、この局では支配力が、いま一つの状態だ。
視界が悪い。恐らく、雀力が弱い選手なら、既に相手の捨て牌を見落とすようになっているのだろう。
しかし、光には、きちんと牌は見えている。少なくともリーチをかけなければ振り込むことは無いだろう。
衣の一向聴地獄も弱まっている気がする。なのに、光は、何故か聴牌までの距離が長い気がしていた。これは、穏乃の支配力によるものだろう。
光は、ようやく一向聴まで辿り着いた。しかし、穏乃の手のほうが早いようだ。
「ツモ。1100、2100。」
結局、タンヤオツモドラ1を穏乃に先に和了られた。
南入した。
南一局、穏乃の親。
局が進むに連れて靄が濃くなる。
この時、衣のレーダーは機能しなくなり始めていた。団体戦決勝戦の時と同じだ。
団体戦決勝戦では、数絵の南風で南入した直後は靄が吹き飛ばされていたが、この対局では靄が濃くなる一方だ。
相手が聴牌しているのか、していないのか?
どの程度の手の高さなのか?
和了り牌は何なのか?
いま一つ衣は読みきれない。捨て牌が見えないわけでは無いのだが…。
そして、より靄が濃くなる終盤で衣は{三}を切り、
「ロン。タンピンドラ2。11600。」
穏乃に振り込んだ。しかも、親満級の手。
これで衣は、一人沈みとなった。
現時点での各選手の点数は、
1位:宮永光 34900
2位:高鴨穏乃 30700
3位:宮永咲 30300
4位:天江衣 4100
いよいよ、衣が危ない状態になってきた。
チャンピオンである咲は現在3位と苦戦。まあ、1位とは4600点差なので、逆転できる範囲にはいるのだが…。
こんなに苦戦する衣は珍しい。団体戦の時でもそうだったが、振り込む衣の姿は滅多に見られない。やはり、穏乃は衣の天敵と言うことなのだろう。
それに、次に衣が振り込んだら本当にトビ終了の可能性がある。公式戦では、今まで誰も衣が箱割れする姿を見たことがないし、想像すらできないことだ。
下馬評とは違う展開に、観戦席は興奮状態になってきた。
おまけ
今回、失禁者は出ません。そっちが好きな方、ゴメンナサイ。
個人戦、予選全十回戦が終了した。
1位は咲で、プラス1382を叩き出した。これは驚異的な記録で、かつて小鍛治健夜プロが高校三年生時のインターハイ個人戦予選で作った記録を遥かに超える大記録だった。
ダブル役満を認めないルールでも、芝棒を無限に積むことが出来れば無限に点数が得られる計算にはなる。しかし、常識的に、一試合で百本場とか千本場とかは無理であろう。
六本場であれば、レアケースではあるが、一応、現実的な連荘回数である。
もし、全員を0点にし、かつ六本場にして親の役満をツモ和了りすれば、敗者三人がマイナス47になり、勝者はプラス141になる。
しかし、これは飽くまでも計算上の話であって、実際には141点も不可能であろう。
それ以前にプラス138も基本的には不可能だと思うが…。
2位はプラス1110で、衣であった。
3位はプラス1024で、光…。
三人とも、4位以下に400点近い差をつけての大記録だった。
そして、4位は、全試合で最低誰か一人をドラ爆でトバした玄だった。成績は、なんとプラス613。これが一昨年なら、予選1位を大きく上回る記録だ。
ちなみに昨年の予選1位は照で、プラス800以上を記録したが、まあ、これは一応例外的記録と言えよう。今年の方が例外的過ぎるが…。
ちなみに一昨年前は、世界大会に出場した照が、航空トラブルのため秋季都大会の一回戦大将戦開始に間に合わなかった。それで、白糸台高校は秋季都大会一回戦で敗退し、照は春季大会に出場出来なかった。
個人戦初日の夜、ホテルにて
晴絵「みんな、良く頑張ったと思う。全員が決勝トーナメントに出場できるなんて、凄いことだよ!」
憧「それに、阿知賀の生徒が個人戦で決勝トーナメントに出るのは初めてだしね。でも、嬉し過ぎて今日は、なかなか寝付けないかも。」
晴絵「まあ、ゆっくりお風呂に浸かって疲れをとりな。」
憧「そうだね…。そう言えば、咲はインターハイの時も個人戦に出てたじゃん。」
咲「うん。」
玄「それも、優勝したのです!」
咲「まあ、運が良かったと思います。でも、インターハイの時、阿知賀はどこに泊まってたんですか?」
穏乃「インターハイの時もここだよ!」
咲「えっ? いきなり、こんなに贅沢なところに?」
咲は、インターハイで準優勝するだけの活躍を見せたからこそ、この春から贅沢をさせてもらえているものと勝手に考えていた。
金は、あるところにはあるんだなと思った。
穏乃「でも、千里山は、もっと広くてイイホテルに泊まってたよ。」
咲「(これは、千里山の人達には麻雀を楽しませなきゃいけないね…って、もう二人楽しませたっけ。それに、千里山からは決勝トーナメントへの出場者はいないし…。)」
灼「清澄はどこだったの?」
咲「安い宿舎でした。お風呂も共同の…。」
穏乃「大浴場?」
咲「そんなに大きくはなかったけど…。」
玄「だ…大浴場に行きたいのです。」
憧「それはダメ! 玄は大浴場で、
『沢山オモチを見たいのです!』
とか絶対に言い出すから。
大浴場で大欲情するからね!」
玄「だって、決勝トーナメントで戦う前に、オモチ成分をたっぷり補給しておきたいのです!」
咲「思うんですけど、玄さんは、裸で鏡の前に立ってみてはどうでしょう?」
玄「自分の身体を見ても面白くも何とも無いのです!」
咲「でも、自分の顔が隠れてたら…。」
憧「それは面白いかも!」
玄「でも、他人のだからイイのであって…。」
咲・憧「「まあ、イイからイイから!」」
玄は、咲と憧に服を脱がされ、目のところに穴をあけた紙袋を頭に被らされて、鏡の前に立たされた。
たしかに、これなら鏡に映る自分が、玄には他人に見えた。
この姿を見て、
玄「これは…なかなかのオモチをお持ちで…。」
咲・憧・穏乃・灼・晴絵「「「「「(応急処置完了!)」」」」」
これで、阿知賀女子学院のみんなは、平和な夜を過ごせましたとさ。
ただ、この時以来、玄は自分の身体を見て喜ぶ『オモチ限定ナルシスト』の道に突入して行くことになるのだった。