通常、前半戦と後半戦の間の休憩時間は五分から十分程度だ。それが、十五分以上経っているのに後半戦が開始されない。
それどころか、対局室から急に放送席に映像が切り替わった。
テレビ観戦していたファンの中には、
「これは、誰かが漏らしたな。」
状況を適格に察知する者も少なからずいた。
ネット上でも、
『被害者は妖艶美女の姫子な気がするし!』
『それはマジエロいっす!』
『姫子もイイけど痩身超絶美女のみかんだったらチョー嬉しい!』
『漏らしてなんぼ、漏らしてなんぼですわ!』
『みかんの泣き顔絶対かわいいと思…』
『妖艶&痩身超絶の両輪ならスバラ!』
『男装麗人の薫だったらイメージダウンだじょ!』
『幻滅…ダル…。』
勝手に盛り上がっていた。
この頃、光は、次鋒後半戦の牌譜を見ていた。
玄は大三元を和了った前々局で{中}を、前局では{中}と{發}を玄を全て持っていた。そして、大三元を和了った局では12枚全ての三元牌を手に入れていた。
しかし、オーラスでは、玄は三元牌を持っていなかった。あの大三元を和了ることで第二の龍支配も消え去ったのだろう。
「連荘しても大丈夫だったんだ。」
とは言え、ドラ支配を崩しても、その後に三元牌支配が来る。これはこれで面倒だ。対策を考える必要がある。
「でも、そんなの分からないじゃん。仕方ないよ。」
麻里香は、缶の『飲むフォンダンショコラ』などと言った劇甘ドリンクを飲みながら、そう光に言った。そんな飲み物があるのが恐ろしい。相変わらずの甘党だ。
そんなものを飲んで太らない体質が羨ましい。特にみかんは、
「(殺してやりたい!)」
などと半分冗談で思っていた。
一方の咲は、この頃、控室で電話をかけていた。相手は、どうやら京太郎のようだ。そして、咲は、
「京ちゃん。タコス、ありがとう。」
「イイってイイって。」
「今、食べてる。美味しいよ。でさ、京ちゃん。団体戦が終わったらさ、個人戦の前日に二人でネズミの国に行かない?」
「全然OKだぜ!」
「じゃあ、約束だよ!」
「おお。」
京太郎とのデートの約束にこぎつけた。京タコスも食べている。
当然のことだが、急に上機嫌になる。
暗黒物質は、既に痕跡すら消えていた。
前半戦終了から一時間が経過した。
各校控室に、十分後に試合が再開される旨の連絡が入った。
清掃し、椅子も卓も交換したらしい。また、薫のメンタル面も考慮し、休憩時間を長めに取ったと言うのもある。
「じゃあ、行くよ!」
「うん。では、憧ちゃん、お願いします!」
「了解!」
毎度の如く、咲は、憧に連れられて対局室に向かった。
この年齢になって一人で対局室まで行かせるのに不安があるのも何だかなと思われるだろうが…。
咲が対局室に入ると、姫子と薫が正座していた。
この時、薫は下半身がジャージだった。制服を汚したのだから仕方がない。そして、咲の姿を見つけると、二人は、
「「申し訳ありませんでした。」」
咲に土下座した。
これには咲も、
「ちょっと、やめてください。別に、土下座なんてされるようなことは…。」
正直困った様子だ。
もっとも、既に京太郎とのデートが約束出来て、嫌なことは全て頭の中から消去されていたし、怒りもとっくに忘れていた。なので、何故土下座されるのかが理解できていない様子だった。
「顔を上げてください。後半戦を始めましょう!」
咲は、明るい表情でそう言うと、早速場決めの牌を引いた。
長野の都市伝説に従い、咲は東を引いた。起家だ。
これには、姫子も薫も嫌な予感がしてならなかった。二回戦の-66600点事件を思い出させる。
テレビに対局室の様子が映し出された。
制服からジャージに着替えたのは薫。
当然、ネット掲示板には、
『被害者は男装麗人デー!』
『絶対にヤラないと思ってたのに幻滅だよモー!』
『残念姫子じゃなか…』
『みかんと信じて全裸で待ってたのにあったかくない!』
『漏らしたところがあったかいのは放出直後だけだじぇい!』
勝手なことが書き込まれていた。
他の三人も場決めの牌を引き、南家が姫子、西家がみかん、北家が薫になった。咲とみかんの位置が変わっただけだ。
東一局、咲の親番。
「この半荘、東二局は来ない! なぁんちゃって、ちょっと優希ちゃんのマネしてみちゃった!」
妙に咲がハイだった。ただ、これが冗談に聞こえないから恐ろしい。
昨年の夏の県予選からこのインターハイにかけて、咲が対局中に、これだけの笑顔を見せたことは今まで一度もない。これはこれで不気味だ。
テレビに映るルンルン顔の咲を見て照は、
「(みかん、可哀想に…。)」
と思っていた。
過去に照は、この状態の咲の被害に遭遇したことがあったのだ。さすがに巨大湖形成までは至らなかったが、一瞬にして対局が終わった。
その時、大負けたのは母親だった。元プロの母親が、一瞬にして点棒を失う珍事が起きたのだ。
七巡目、薫が捨てた{東}で、
「カン!」
咲が大明槓した。そして、嶺上牌を引くと、
「これが、今の私の気持ちだよ! もいっこ、カン!」
連槓して{南}の槓子を副露した。続く嶺上牌を引いて、
「もいっこ、カン!」
さらに連槓して{北}の槓子を副露した後、その次の嶺上牌を引くと、
「もいっこ、カン!」
四つ目の槓子………、{西}を副露した。これで四槓子確定。
さらに、その次の嶺上牌で{白}を引き、
「ツモ! 大四喜字一色四槓子。144000点です!」
本当に東一局で終わった。東二局どころか東一局一本場すら来なかった。
この直後、対局室から放送席に映像が切り替えられたのは言うまでもない。
「大喜びで京ちゃん一色の私! 待ちは京ちゃん色に染めて欲しい純潔の白!」←咲なりに大四喜字一色四槓子白単騎とかけたつもり
咲は、和了った直後に、そんな訳の分からないことを口にしていたが、映像が切り替えられたため、その言葉が放送されるには至らなかった。
もし放送されていたら咲も京太郎も後々恥ずかしいだろうし、万が一、和が聞いたら大変なことになるだろう。放送されなくて幸いだった。
結局、機嫌が良くても悪くても瞬殺だ。
咲と普通に麻雀をしたければ、咲の機嫌を普通状態に保たせるか、怯えた状態にさせるかしかないだろう。
これで、後半戦の各選手の点数は、
1位:咲 244000
2位:姫子 100000
3位:みかん 100000(席順による)
4位:薫 -44000
そして、前後半戦の合計点は、
1位:咲 545400
2位:みかん 198800
3位:姫子 99000
4位:薫 -44100
言うまでも無く咲の超特大トップであった。これで阿知賀女子学院が二つ目の勝ち星をあげ、決勝進出を確実なものにした。
また、この段階で各校の合計点は、
1位:阿知賀女子学院 998100
2位:白糸台高校 746700
3位:新道寺女子高校 390600
4位:粕渕高校 264600
ダブル宮永の活躍(?)のお陰で、白糸台高校が3位の新道寺女子高校に350000点以上の差をつける結果となった。
今回、みかんは、ただ座っていただけだった。
「(これって、麻雀?)」
少なくとも、自分が知っている麻雀とは余りにも懸け離れた別のゲームのようにしか思えなかった。
一方、姫子は全身がガタガタ震えていた。
後半戦では、咲の副露の際に飛んでくる強大なエネルギー波を姫子がモロに受けた。まるで頭の上から何千発もの爆弾が降り注いでくるような感覚がしていたのだ。
これで対局は終わったのだが…。
しかし、この恐怖から開放された瞬間、
「プシャ――――――!!!」
姫子が大放水してしまった。彼女にとっては初御披露目だ。
最後のインターハイで最低最悪の思い出だ。いや、さすがに、これだけは絶対に思い出したくない。
映像が切り替えられていたこともあって、当然、テレビ観戦していたファンの中には、
「また誰かが漏らしたな。」
状況を適格に察知する者も少なくなかった。
ネット上でも、
『今度こそ被害者は妖艶美女の姫子だじょ!』
『その場合イクの間違いじゃなかか?』
『姫子もイイけど痩身超絶美女のみかんが被害者のほうがヌケるっす!』
『妖艶&痩身超絶のダブル放水ならチョーうれしいよー!』
『放水してなんぼ、放水してなんぼですわ!』
『魔王にヤラれる美女二人ですのだ!?』
『仲間が増えるって先輩が喜ぶデー!』
『でももう一回薫だったらファンやめるし!』
『イケメン失格だよモー!』
勝手に盛り上がっていた。
これで再び、試合が清掃のため三十分以上中断されたのは言うまでもない。試合よりも清掃時間のほうが長い気がする。
テレビ映像が、先鋒戦から中堅戦までのダイジェストを放送し始めた。要は時間調整と言うか、時間稼ぎだ。
観戦室の巨大モニターでも同じものが映し出された。
先ず、先鋒戦のVTRが映し出された。
『先鋒前半戦は、新道寺女子高校の花田煌選手が、オーラスで、まさかの大七星を和了り大逆転!』
元気の良い局アナの声だ。
『この時、阿知賀女子学院の新子憧選手と白糸台高校の原村和選手は同点2位でした。』
対するは、落ち着いた声の女性プロ雀士だった。彼女は、世界二位に輝いたこともあると言う。とても麻雀がお強いお方だ。
その恐ろしい闘牌で、阿知賀女子学院監督の赤土晴絵を再起不能同然の廃人にまで追い込んだことがあるそうだ。
『そして、なんと先鋒後半戦でも新子選手と原村選手は同点。前後半戦のトータルは、この二人がトップでした!』
『結局、ルールに従って後半戦で上家となった新子選手が勝ち星をあげることになりました。』
『それも、最後は新子選手と原村選手のダブロン。これも上家取りで新子選手の和了りとなったわけです。』
『原村選手には、実に惜しい試合だったと思います。』
VTRが次鋒戦の映像に切り替わった。
『次鋒前半戦では白糸台高校の宮永光選手が終始圧倒!』
『しかも、東四局一本場では四暗刻を和了ってます。』
『ただ、立ち上がりは、何時もより点数が低かった気がしますが…。』
『ドラがありませんでしたからね。』
『たしかに!』
『ただ、和了る毎に点数が上昇している感じはしました。』
『そして、宮永光選手が四暗刻を和了った次の局で、今度は阿知賀女子学院の松実玄選手の数え役満が炸裂!』
『あれには驚かされました。』
『ドラ10の超ドラ爆ですね!』
『オーラスでは、宮永光選手がトップ確定でありながら連荘しました。多分、これは得失点差になった時のことを想定しての稼ぎだと思います。』
『なるほど!』
『そして、後半戦では初っ端に前半戦同様、宮永光選手が圧倒的な稼ぎを見せます。しかし、南一局で再び松実玄選手の数え役満が炸裂しました。』
『とんでもない超ドラ爆体質ですね!』
『松実選手は南三局一本場でも大三元を和了ってます。二半荘で役満を三回和了ったのですから、これは普通なら記録的です。』
『まあ、普通じゃないのが後ろに控えてましたからねぇ。オーラスは宮永光選手が和了り、そこで和了り止めしました。前半戦とは全然様子が違いましたね?』
『後半戦だけでは松実選手がトップでしたが、前後半戦のトータルでは宮永光選手が大きく上回っていましたので白糸台高校の勝ち星は確定でしたし、松実選手が上り調子になってきていたので得失点差のための稼ぎを諦めて、和了り止めにしたのでしょう。』
続いて、VTRが中堅戦の画像に切り替わった。
『そして、中堅前半戦では、宮永咲選手が、まさかの四連続役満!』
『数え役満、清一老、国士無双、大三元でした。しかも、その後、二校トバしをしています。』
『後半戦は、まさかの東一局親でのトリプル役満直撃!』
『しかも大明槓からの責任払いでした。』
『それも大四喜字一色四槓子。もっとも出現確率の低い四槓子入りですよ!』
『非常に珍しい和了りだと思います。』
『たった一回の和了りで後半戦を終了してしまいました!』
『これで、阿知賀女子学院の勝ち星が二となり、阿知賀女子学院の勝ち抜けが決まりました。』
『中堅戦は、宮永咲選手が全部で八回和了ってますが、そのうち七回が嶺上開花です。これって確率的にどうなんですか?』
『非常にレアだと思います。』
『確率重視の原村和選手と確率無視の宮永咲選手は、旧清澄高校麻雀部で非常に仲が良かったと聞いておりますが?』
『対極的な存在に、互いに惹かれる部分があるのかもしれませんね。』
VTRが放送席の二人に切り替わった。
『それにしても、この準決勝戦。何回役満が出たのでしょう?』
『先鋒戦で一回、次鋒戦で四回、中堅戦で五回の計十回ですね。そのうち一回がトリプル役満です。』
『とんでもない試合ですね。』
『そうですね。しかも、そのうち八回が阿知賀女子学院の選手によるものです。』
『無茶苦茶ですね~。頭オカシイですよ、きっと。』
『言い方悪いよ!』
『ただ、阿知賀女子学院って奈良の吉野の学校ですよね。たしか近くに神社があって、そこのご利益が凄いのでしょうか?』
『どうでしょう? その神社の娘は役満を和了っておりませんので。』←何気に個人情報漏洩。
『でも、同点で勝ち星を取ってますよ!』
『たしかにそうですね。ご利益があるかも…。』
『じゃあ、すこやんも参拝したらどうでしょう? もしかしたら、すぐに結婚出来るかも知れませんよ!』
『ええと…、インターハイが終わったら考えます………って何を言わせるのよ! 恒子ちゃん!』
『アラフォーになっても結婚願望は捨て切れていない、すこやんでした!』
『って、アラサーだよ!』
結局、いつものネタに収束するのであった。
各校控室に試合再開の連絡が入った。
粕渕高校控室では、
「それでは、行ってきます。」
副将の神楽が静かに立ち上がり、対局室に向かった。
決勝に残るには自分と大将の石原麻奈が連勝するしかない。
白糸台高校に勝たせてしまったら、その時点で準決勝敗退が決まるし、自分が勝てても得失点差勝負になったら現在総合得点ダンラスの粕渕高校には勝ち目がない。勿論、得点差は可能な限り縮めるつもりだ。
ただ、彼女は、神のお告げを受けていたが、対局内容は教えて貰えていなかった。勝敗に関係することは知らされていなかったのだ。
未来を完璧に知ってしまうと、人間誰しも努力する気が無くなってしまう。
それゆえ、神は完全には未来を教えてくれないのだ。
新道寺女子高校控室では、
「絶対に慧ちゃんまで回せよ!」
大将の中田慧が、副将の友清藍里にゲキを飛ばしていた。
その言い回しも雰囲気も、まるで風越女子高校の池田華菜そっくりであった。正直、存在そのものがウザイ。
その隣では、
「(慧は一生懸命な人ですが、何故かスバラな感じに見えないのでは何故でしょう?)」
と煌が心の中で呟いていた。聖人と誰もが認める煌にしては珍しい。
そして、さらにその隣では、下半身ジャージに着替えた姫子の姿もあった。
姫子は、この時、恥ずかしそうな表情で下を向いていた。やはり、あの大放水はショックだったのだ。
いや、大放水が気持ち良かったことが恥ずかしいのか?
それは本人にしか分からない。
また、白糸台高校では、
「補給完了! じゃあ、行ってくるね!」
缶のミルクセーキを飲み終え、丁度、麻里香が控え室を出て行くところだった。さっきの『飲むフォンダンショコラ』はどうした?
これで劇甘ドリンク何本目だろうか?
しかも、途中の自販機でお汁粉を買うのは明白。これで太らないのは信じられない。そのカロリーが、一体どこに消えるのだろうか?
ウエストも脚も腕も春季大会の頃から変わらない。細いままだ。
そう言えば、以前よりも胸が少し大きくなった気がする。このカロリーは、大部分が直通で体外排泄、一部が胸に付いたと言うことだろうか?
羨ましい限りだ。
「(殺す…!)」
日頃努力して体型を維持しているみかんの心の言葉だ。親友ではあるが、当然の反応だろう。努力せずに痩せていられるなんて不公平だ。
そして、阿知賀女子学院控室では、
「じゃあ、ハルちゃん。行ってくる!」
「頼んだよ、灼!」
灼が意気揚々と対局室に向かった。
二回戦の時とは違って縮こまったりしていない。
既に阿知賀女子学院の決勝進出は決まっている。しかし、だからと言って負けるつもりで卓に付くつもりはない。
今日は、勝つ気満々だ。
対局室に、副将四人が姿を現した。
「(今日は負けない!)」
灼は、そう心の中で力強く言いながら神楽にキツイ視線を向けた。二回戦の雪辱を絶対に果たすつもりだ。
今度は自滅しない。自分の麻雀で押し切る。
そう心に誓っていた。
対する神楽は、
「(やっぱり、今日は自滅に追い込むのは無理のようですね。でも、麻雀は勿論、世の中では色々不測な自体が起こることがあります。それを忘れていませんか?)」
こう心の中で言葉を発しながら不敵な笑みを見せていた。
彼女も最初から負ける気で対局に臨むつもりはサラサラない。むしろ、この灼の闘志をへし折るつもりでいる。
もっとも、気合が入っているのは、この二人だけではない。
「(ここで私が勝てば白糸台の決勝進出が決まる。当然、勝ちに行くよ!)」
そう心の中で声を張り上げながら、麻里香は缶のお汁粉のプルトップを開けた。多分、後半戦には別の超劇甘缶飲料を飲んでいるのだろう。
既に自販機で新たに見つけた『飲むモンブラン』に目をつけていた。後半戦は、それを飲むつもりだ。
そして、藍里も、
「(私と慧が勝たなくては決勝に残れない。同点得失点差だと、白糸台高校を抜くのは、とても無理…。だから勝ちに行く!)」
静かに燃えていた。
自分の勝利は必須だ。絶対に負けられない。
この頃、まこは、
「カランカラン!」
「いらっしゃいませー!」
「一人だけど。」
「あと一人で揃いますので、こちらでお待ちください。」
いまだ、自宅の雀荘で大忙しだった。これなら咲登場人物最強の超能力、時間軸の超光速跳躍は生じないだろう。
おまけ
準決勝戦、中堅戦の後。
憧に連れられて咲が控室に向かう途中、二人はマスコミに囲まれた。
彼らの目的は当然咲だ。
記者「今日は、もの凄い大記録達成ですね。前半戦で四回の役満。後半戦ではトリプル役満ですから。」
咲「とても運が良かったと思います。」
記者「八回の和了りのうち七回が嶺上開花です。いつも思うのですが、嶺上牌が見えているんでしょうか?」
咲「偶然です偶然。」
記者達「(嘘つくんじゃない!)」
記者「でも、これでチームとしては勝ち星を二つあげましたので決勝進出は決まったわけですが、現在のお気持ちはいかがですか?」
咲「とても嬉しく感じます。皆さんの応援のお陰です。」
突然、咲のスマホが鳴った。この着信音は京太郎からだ。
咲「ちょっとすみません。」
記者「どうぞ。」
咲「もしもし?」
京太郎「決勝進出おめでとう。凄いな、咲。トリプル役満なんて。」
咲「京ちゃんゴメン。今、インタビューされてて。」
京太郎「おお、そいつは悪かったな。」
咲「別にイイよ、京ちゃん。後でかけるから。」
咲がスマホを切ると、記者達はここぞとばかりに質問攻めしてきた。
記者「今の人は誰ですか?」
咲「清澄高校時代の友人です。」
記者「京ちゃんって言ってましたが、たしか、秋季大会のインタビューの時にも言っていた清澄高校麻雀部の男子部員ですよね。」
咲「は…はい。」
記者「やっぱり彼氏ですか?」
咲「い…いいえ…。そんな、私達は、まだ…。(『まだ』は布石だよ。ほら、聞いて聞いて聞いて!)」
記者「まだってことは、付き合う可能性があると?」
咲「(困った表情を見せながら)あの…困ります…。そんな…。(京ちゃんと付き合っているみたいな感じで嬉しいな! もっと聞いて聞いて聞いて!)」
記者「京ちゃんって方との出会いは何時ですか?」
咲「中学の時です。」
記者「どんな方ですか?」
咲「ええと、中学時代にはハンドボールをやっていて。とても上手でした。高校に入ってから麻雀部に入って…。」
記者「では、宮永さんに付き合う形で麻雀部に入部したのですか?」
咲「いいえ。私は、その頃、麻雀からは遠ざかっていて…。私は、京ちゃんに誘われて麻雀部に顔を出して、それがきっかけで入部しました。」
記者「では、その京ちゃんがいなければ、今の宮永さんは無かったかもしれないってことでしょうか?」
咲「多分、麻雀牌には二度と触らなかったと思います。」
記者「だとすると、その京ちゃんって男の人は宮永さんの恩人ってことになりますね。」
咲「麻雀に関しては、そうかもしれません。でも、高校受験の時は、私が一緒に勉強を見てあげたりしましたし、合格発表も一緒に見に行ってあげましたし、高校に入ってからだって、レディースランチが食べたいからって私に注文させるために一緒の学食に行こうって誘うんですよ。」←何気に記者にネタを与えて弄られるのを狙っている
記者「ラブラブじゃないですか! それのどこが付き合っていないと?」
咲「(そう言われると嬉しいな!)あの、別に普通に仲が良いだけで、それ以上の関係は今のところは…。(これも言葉尻に食いついてぇー!)」
記者「今のところはと言いますと、今後、その可能性はあると?」
咲「(来た来た来たぁ!)あの、そう言うの、困ります…。」
記者「でも、デートとかしたことはあるんじゃないですか?」
咲「まだ、ありません。」
記者「では、予定はあると?」
咲「ええと、団体戦の決勝が終わったら、『二人で』遊園地に行こうかなぁなんて…。」
記者「もう付き合っているじゃないですか!」
咲「いえ、ですから、普通に仲が良いだけで…。(もう、気分は京ちゃんと付き合っている状態! こう言うのもイイかな!)」←変に嬉しそうな顔
記者「(この表情は、絶対に喜んでいるな! 付き合っているの確定だろ!)」
…
…
…
その日の夕刊には、デカデカと
『宮永咲、熱愛発覚!? 相手は清澄高校イケメン男子生徒!?』
のタイトルで記事が掲載された。もう、大変な賑わい方だ。もはや社会現象とまで言える。
まさに咲の狙い通りになった。
あとは、ネズミの国でのデートを目撃されて新聞に載れば、周囲からは『京咲は確定!』と認識される。
その夕刊を見た初瀬は…。
初瀬「これって、私の祈りが効いたってことかも…。じゃあ、憧とのことも!」
初瀬は、早速、憧の実家の神社にお参りに行くのだった。
神「(願いを叶えるのは一生に一度だけと言っただろう!)」