咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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四十四本場:決勝戦進出校決定

 淡は前半戦を圧倒的リードで勝利した。なので、本来ならば淡自身文句はない。

 しかし、彼女は腑に落ちなかった。

 何故、ここまで今日の穏乃は支配力が無いのか?

 もしかしたら、決勝進出が決まっているから力を温存して手を抜いたのだろうか?

 

 対局室を出てトイレに向かう途中、淡の脳内に誰かが語りかけてきた。淡に能力を授けてくれた異星人超能力者からのテレパシーだ。

「(穏乃さんは、真面目にやってますよ。手は抜いてません。)」

「じゃあ、なんで今日は、こんなに弱いの?」

「(勝利が決まっているので彼女のスイッチが入り難い。それだけです。恐らく、淡さんが変な刺激さえしなければ、後半戦も、ろくにスイッチは入らないでしょう。しかし、明日の決勝では間違いなくスイッチが入ります。その時が勝負ですよ。)」

「分かった。ありがとう。」

「(でも、ここから大ポカはしないでください。まだ決勝進出が決まったわけではないのですから。)」

「分かってる。気を引き締めて行くよ!」

 テレパシー通信なのだから黙って念じていれば良いのに、淡は、ついつい口に出してしまっていた。

 周りからは、当然、意味不明の独り言に見える。

 この様子を傍で見ていた人達は、

「(大星さんって電波?)」

 何か誤解していた。

 まあ、仕方がないだろう。これによって淡は、第三者からアホの娘プラス電波の称号が与えられたのであった。

 

 

 一方の晴絵は、この大将戦で、今日の穏乃ではスイッチが入らないであろう事を最初から予想していた。

 しかし、この準決勝戦では、無理に穏乃を焚き付けて勝利を目指させる必要も無いと考えていた。

 

 粕渕高校を決勝進出させた場合、A-Bブロックから龍門渕高校と永水女子高校が上がってくる以上、余程のことが無い限り、先鋒戦は小蒔が、中堅戦は咲が、副将戦は神楽が勝ち星をあげるだろう。

 勿論、憧にも灼にも余程のことをして欲しいとは思うが、2位を勝ち取るのがやっとの展開になると予想する。

 

 そして、大将戦では確実に麻奈が衣のカモにされる。

 恐らく序盤で衣が麻奈を狙い撃ちし、そのまま穏乃でも逆転できない状態になり、龍門渕高校が勝ち星をあげるだろう。下手をすればトビ終了すら起こり得る。

 そうなると、次鋒戦が勝負どころとなる。

 つまり、玄が勝てなければ100%阿知賀女子学院の優勝は無い。それどころか、次鋒戦を征したチームが優勝すると言っても過言ではない。

 そして、これくらいのことは自分の教え子達………、特に賢い憧ならば間違いなく予想できることだ。

 

 今の玄なら、本来ならば光以外の次鋒選手が相手なら勝てるはずだ。

 しかし、全ての勝負を決める戦いに耐えられるだけの精神力が玄にあるだろうか?

 加えて玄は、二回戦で粕渕高校の坂根理沙に負けている。むしろ、精神的には玄よりも理沙の方がずっと強い。

 準決勝戦で玄が善戦できたのは、恐らく相手が絶対的強者の光だったため、胸を借りるつもりで気楽に打てたからだろう。

 まあ、玄のことだから、

『光ちゃんには借りられるほどのオモチはありません!』

 と言うかもしれないが…。

 

 それはさて置き、決勝戦の舞台で全てを決める戦いは、性格的にも玄には荷が重すぎる。もし負けたら立ち直れなくなる。

 それならば、白糸台高校を決勝戦に連れて行き、中堅戦、副将戦、大将戦での勝利に全てをかける。

 絶対王者の咲、部長の灼、山支配の穏乃で勝ちに行く戦法の方が良い。

 晴絵は、そう判断していた。

 

 

 休憩時間が終わった。

 対局室では、いよいよ準決勝大将後半戦が開始されようとしていた。

 場決めがされ、起家は穏乃、南家が麻奈、西家が慧、淡は北家になった。

 

 東一局、穏乃の親。

 今回、淡は絶対安全圏のみ発動した。

 ダブルリーチをかける必要は無い。とにかく勝ち星一の粕渕高校………そこの大将、麻奈にだけは稼がせてはならない。

 淡は、

「ポン!」

 穏乃が早々に切った{東}を鳴き、絶対安全圏のうちに、

「ツモ。東ドラ2。1000、2000。」

 和了って穏乃の親を流した。

 

 

 東二局、麻奈の親でも、

「チー!」

 淡は早々に鳴いて、

「ツモ。タンヤオドラ2。1000、2000。」

 さっさと場を流した。

 これも絶対安全圏内での和了りだ。これでは、他家はどうすることもできない。

 もう、麻奈は南場の親で連荘して稼ぐしか方法は無くなったに等しい。

 

 

 東三局、慧の親。

 ここでも淡は、

「チー!」

 慧が捨てた{8}を早々に鳴いて{横879}を副露し、その次巡、

「ツモ。發チャンタドラ1。1300、2600。」

 絶対安全圏内に慧の親を流した。

 これで新道寺女子高校が決勝進出するためには、親をあと一回残したこの状況で完全なる逆転劇を演じなければならない。

 それは、単に大将前後半戦の合計トップを取るだけではダメだ。

 総合得点で白糸台高校と600000点近い差があるのを逆転すると言う、とんでもない離れ業が必要になる。

 状況としては悲惨極まりない。

 しかし、それでも慧は決して諦める気配がなかった。しぶとい選手だ。

 

 

 東四局、淡の親。

 淡に能力を授けてくれた者の言葉が正しければ、この親で穏乃の能力がマトモに発動することは無い。

 しかし、念には念を入れて、淡はダブルリーチをかけずに絶対安全圏だけで対局に挑む。

「ポン!」

 淡は、序盤で麻奈が捨てた{東}を鳴き、ここでも絶対安全圏内に、

「ツモ。ダブ東ドラ1。2000オール。」

 さっさと和了った。

 

 東四局一本場も、

「ポン!」

 淡は早々に{中}を鳴き、

「ツモ。發中ドラ1。2700オール。」

 とにかく絶対安全圏内での和了りを目指した。今回は、手の中に{發}の暗刻があり、符ハネして40符の手になった。

 

 しかし、東四局二本場で、淡は鳴いて手を進めることができなかった。

 まあ、たまにはこう言うこともある。毎回、誰かが鳴ける牌を早々に出してくれるとは限らない。

 そして、絶対安全圏を越えての戦いになった。

 ここでは麻奈が、

「チー!」

 穏乃の捨てた牌を鳴き、

「ツモ。タンヤオドラ1。700、1200。」

 その数巡後に和了り、何とか淡の連荘を止めた。

 しかし、麻奈がピンチなのに変わりは無い。ここから淡との膨大な点差をひっくり返さなくてはならないのだ。

 

 

 南入した。

 南一局、穏乃の親番。

 未だ、後半戦では穏乃の和了りは無い。本人は勝つ気でいるのだが、何故か力が湧いてこない。

 当然、山を支配するだけの力は出てこない。

 

 いつもは、東四局辺りから山支配が徐々に見えてくるのだが、さっきの東四局二本場で麻奈に和了られている時点で、山支配は発動していないと言えるだろう。

 この局でも、

「ポン!」

 絶対安全圏を発動する淡が二巡目に{北}を鳴き、五巡目に、

「ツモ。北チャンタドラ1。1000、2000。」

 ツモ和了りを決めた。

 

 

 南二局、麻奈の親番。

 この時点で、麻奈と淡の点差は前後半戦併せると200000点近くになる。

 ここで麻奈が親の役満を和了れば、一気に点差が縮まるが、それでも逆転するにはシングル役満のみと言うわけには行かない。

 条件としては非常に厳しい。

 しかし、可能性はゼロじゃない。

 とにかく、高い手を和了れるチャンスが来るまで、安手で良いから麻奈は連荘するしかない。

 しかし、

「ポン!」

 先に仕掛けたのは淡だった。しかも、麻奈は配牌六向聴。安手の連荘すら実は苦しい状況だ。淡のスピードに付いてゆけない。

 結局、

「ツモ。1000、2000。」

 淡に親を流されてしまった。

 これで麻奈は、淡からトリプル役満以上を直取りするくらいしか決勝進出の方法は無くなった。もはや、それは非現実的と言えよう。

 麻奈の目から希望の光が失われた瞬間だった。

 もう、精神的に耐えられないだろう。これで完全に覇気が消えた。

 

 

 南三局、慧の親。

 ここでも淡は、絶対安全圏のみで攻めた。迂闊にダブルリーチでは攻めたくない。

 麻奈が、ここでトリプル役満やクアドラブル役満(四倍役満)を和了るとは思えない。元々、彼女からは、それだけのパワーが感じられない。

 そもそも、狙ってクアドラブル役満を作れるような化物は咲くらいだと思うが…。

 

 また、慧の場合、この親を流されたら、オーラスで何を和了ろうと決勝進出は無い。

 それなら淡は、この親を流すことだけを考えれば良い。それで完全に慧は終わるはずだ。

 それに、慧は後半戦でヤキトリだ。恐らく、運は無い。

 

 やはり怖いのは穏乃だ。

 穏乃も後半戦は未だヤキトリだが、やはり慧と違って何をしでかすか分からない。それを去年のインターハイでも春季大会でも淡は身をもって経験している。

 万が一、ここで穏乃が急に山支配を発動したら…。そして、穏乃にダブル役満以上の和了りを二連続で振り込むようなことがあったら…。

 淡は勝ち星をあげられないし、得失点差で再逆転されて粕渕高校が2位抜けになるかもしれない。

 

 まあ、穏乃が狙ってダブル役満以上を連発できるとも思えないが、下手に穏乃を刺激するなと例の異星人から言われている。

 念には念を入れよう。

 ならば、絶対安全圏だけで進める戦法から変えない方が無難だろう。

 

 それにもし、ここで淡が白糸台高校を敗退させてしまったら…。

 普段なら自分が戦犯になるだけで済むが、今回は麻里香の立場もかかっている。だからこそ絶対に負けるわけには行かないし、下手な冒険はするべきではない。

 それもあって、淡は、後半戦はダブルリーチを封印し、しかも細心の注意を払いながら打つことに決めたのだ。

 

 とにかく、最後の二局も我慢して安くて良いから早和了を目指すのみ。目立とう精神からなるスタンドプレーに走らない。穏乃を絶対に刺激しない。

「ポン。」

 少し遅くなったが、五巡目で待望の{南}が鳴けた。そして、そのまま六巡目で、

「ツモ。ダブ南ドラ1。1000、2000。」

 淡が和了った。

 これで、完全に慧の逆転ストーリーは無くなった。

 

 

 そして、オーラス、淡の親。

 この局は、和了れなくても良い。常識的範囲で考えれば、穏乃がどんな和了りを見せようと問題ない。咲のような非常識な和了りを穏乃がしてこない限り、白糸台高校の決勝進出は揺るがないはずだ。

 それに、もはや麻奈も慧も完全に終わった雰囲気だ。

 

「ポン。」

 淡は、二巡目に麻奈が捨てた{白}を鳴いた。

 そして、六巡目に、

「ツモ。白ドラ1。1000オール。これで和了り止めにします。」

 決着をつけた。

 

 これで、後半戦の各選手の点数は、

 1位:淡 145000

 2位:麻奈 86700

 3位:穏乃 84300

 4位:慧 84000

 

 そして、前後半戦の合計点は、

 1位:淡 361400

 2位:穏乃 155200

 3位:慧 142600

 4位:麻奈 140800

 大将戦は圧倒的点差で、白糸台高校が念願の勝ち星を手にした。これで、決勝進出は阿知賀女子学院と白糸台高校に決まった。

 

 勝ち星で勝負が決まったため、得失点差を競うことは無くなったが、ちなみに、これまでの各校の合計点は、

 1位:阿知賀女子学院 1263400

 2位:白糸台高校 1165000

 3位:粕渕高校 1043000

 4位:新道寺女子高校 528600

 結果的に阿知賀女子学院、白糸台高校、粕渕高校の三強と言える結果となった。これは、咲、光、神楽、淡、玄と言った高得点者の存在が大きいと言える。

 特に神楽の稼ぎは咲をも越えていた。これは、優秀選手、最優秀選手を選考する審査員達の目には強く焼きついたことだろう。

 

 

「試合終了―――!」

 観戦室にアナウンサー福与恒子の声がこだました。

 

「「「「ありがとうございました(だし!)」」」」

 

 対局後の一礼の後、対局室のドアのロックが解除された。もう、選手以外の人間が入っても良いからだ。

 すると、すぐにドアが開き、麻里香が涙を浮かべながら両手を大きく広げて対局室に駆け込んで来た。

 「淡ぃぃぃ―――!」

 目に溜まっているのは、副将戦直後に流したものとは違う。この上ない歓喜の涙だ。

 麻里香は、そのままダイブするように淡に抱き付いた。

「淡、ありがとう。」

「高校100年生だからね。」

「101年生でしょ? 去年100年生だったんだから…。」

「そっか。」

「でも、よかった。勝てて。」

 しかし、淡には分かっていた。今回は、阿知賀女子学院の決勝進出が決まっていたから穏乃の支配が無かったことを…。だから勝てた。

 しかし、決勝戦は分からない。

 

 ただ、このことは、麻里香やみかんには黙っておこう。もっとも、光あたりは気付いてしまうだろうけど…。

 

 

 この日、永水女子高校の宿舎では、明星と湧が今日の準決勝戦の放送を見ながら相手の打ち方をチェックしていた。

 大将前半戦南一局で淡が和了った時のことだ。

 この様子を、湧は、手に汗を握って見ていた。

「まさか、あれをやられるとはね。」

「あれって?」

「石の上にも三年…。」

「ローカル役満が得意な湧でも、さすがにいくつかは無理って言ったね。たしか…。」

「そう。その中の一つ。いくらなんでもダブリー海底ツモなんて無理だよね。でも、それをやられて、ちょっと悔しいかな。」

「このまま行くと、決勝は、うちと龍門渕、阿知賀、白糸台だね。そうすると湧の相手は天江さんに高鴨さんに大星さんか…。湧なら、何とかなるんじゃない?」

「そうあって欲しいけどね。明星の方は…。」

「あの悪魔!」

「だね…。チャンピオン宮永咲…。」

「あの、プラマイゼロやって遊んだ副産物で、霞姉さんをたった500点差で戦犯にした憎たらしい奴。」

「あれはヒドイよね。」

「だから、決勝では、私が霞姉さんの仇を討つ!」

 

 昨年のインターハイでは、二回戦で永水女子高校は、清澄高校、姫松高校に敗退した。

 あの時の永水女子高校は、小蒔と六女仙だけで構成された史上最強メンバーのはずだった。六女仙メンバーの中には、六女仙最強の霊力を誇る霞と、小四喜を和了る初美がいたのだから、二回戦程度で負けるなどとは思えない。

 少なくとも、ベスト4入りした一昨年のチームよりも間違いなく強かった。

 ところが、予想を裏切るまさかの敗退。

 しかも、それは、咲がプラスマイナスゼロを達成するために敢えて大明槓をして恭子に槓ドラをプレゼントしたことに起因する。

 

 あの点数調整が無ければ、永水女子高校は準決勝に進出していたであろう。

 そして、準決勝では副将戦で真屋由暉子を初美が役満ツモでトバし、決勝進出まで出来ていたかもしれない。

 

 明星も湧も、あの敗退は信じられなかった。まさか、霞の能力を余裕でかわし、やりたい放題できる人間がいたなんて…。

「今回、二回戦で他家三人を-66600点にして証明したよね。悪魔の紋章。自ら悪魔だってことを…。」

「だよね…。霞姉さんの仇。絶対に潰してやるから…。」

「要は、悪魔祓いだよね。」

「そうだね。」

「でも、その専門は、私や明星ちゃんよりも春さんや巴さんだけど…。」

「(絶対にゴッ倒す!)」

 どちらかと言うと、湧よりも明星のほうが咲への怒りが強かった。霞の従姉妹だから当然であろう。

 

 みかんと麻里香と和解しても、結局、咲には他に仇討ちを狙う輩が現れる。咲本人は、何故そう思われなければならないのか疑問に思うのだろうが…。

 これが強者ゆえの運命なのかもしれない。

 …

 …

 …

 

 

 その数分後、テレビに咲のインタビューの様子が映し出された。

「宮永選手。ええと、苗字ですと咲選手か光選手か分からなくなりますので、咲選手と呼ばせていただきます。これで、決勝戦の相手は龍門渕高校、永水女子高校、白糸台高校に決まったわけですが、今の心境をお聞かせください。」

「ど……どのチームも強くて、対戦が楽しみです。」←残念ながら照ほど営業スマイルは上手ではない

「中でも永水女子高校は、昨年夏のインターハイ二回戦での因縁がありますからね。あの時、咲選手と末原コーチと対戦した石戸霞選手を覚えてますか?」

「はい。とても強敵でした。」

「その霞選手の従姉妹の石戸明星選手が、今回、永水女子高校の中堅として咲選手と対戦することになります。」

「彼女も強いと思います。対戦が楽しみです。(あのオモチ女、許せないんだよね。一年生のクセに、あんな大きいの持ってて…。)」←笑顔を見せながらも全身から暗黒物質が湧き出ている

 

 これを見ていた明星は、

「ブチ!」

 テレビを消した。

「目が腐る!」

 非常に不機嫌な表情だ。

 この時、彼女は、

『これ以上、あの凶悪な悪魔の顔を見たくない!』

 そう目で語っていた。

 

 一方、和は、

「咲さん…。」

 一人で見惚れていた。

 この時、同朋の淡と光がインタビューを受けていたが、そっちには、まるで興味無しであった。良くも悪くもマイペースである。

 

 

 翌朝、八時から5位決定戦が開始された。いずれも名門。姫松高校、臨海女子高校、粕渕高校、新道寺女子高校の対戦である。

 決勝戦とは異なり、先鋒戦から大将戦まで、全てが半荘一回勝負となる。

 また、今回は、点数引継ぎではなく星取り戦のため、先鋒戦から大将戦までを全て同時に行われた。時間短縮のためである。

 実家の雀荘で、まこがテレビをつけた。まだ店を開ける前で少しヒマだったのだ。

「さて、5決はどうなるかのう?」

 すると、例によって時間軸の超光速跳躍が発動した。

 

 先鋒戦は、タコス力vs爆弾娘………優希と漫の二人がトップを争う戦いとなった。

 結局、準決勝戦を最高状態に設定していた優希のほうが、若干とは言えパワーが劣る結果となり、勝ち星は姫松高校があげた。

 

 次鋒戦は、中国麻将vs直感娘………勘の良い理沙が、郝のツモの流れをかき乱しはしたものの、やはり郝には敵わず、臨海女子高校が勝ち星をあげた。

 

 中堅戦は明華vs絹恵vs姫子vs薫の対局。美女三人&男装麗人対決と言われた。

 ここも、力が頭一つ抜きん出た世界ランカー………明華が終始圧倒し、臨海女子高校が勝ち星をあげた。

 

 副将戦は神楽vsネリーの魔物対決。神楽も準決勝戦の活躍から、とうとう魔物認定されることとなった。

 この戦いは、露子の力を借りた神楽が勝利し、粕渕高校が勝ち星をあげた。

 

 大将戦は数絵vs中田慧の一騎打ちの展開。

 東場では慧がリードしたが、南場になって豹変した数絵が親の連荘で大量得点をあげた。その結果、数絵が逆転して臨海女子高校が勝ち星をあげた。

 

 以上の結果、5位臨海女子高校、6位粕渕高校(得失点差6位)、7位姫松高校(得失点差7位)、8位新道寺女子高校に決まった。




おまけ
四十本場おまけの続き

大会四日目、咲達の二回戦が終わった日の夜のことだった。
京太郎が咲に電話した後、今度は優希から京太郎に電話がかかってきた。

優希「おお、京太郎か?」

京太郎「なんだよ、こんな時間に。」

優希「まだ宵の口だじぇ。」

京太郎「あのなあ…。」

優希「それでだな。明日の準決勝戦での兵糧を頼む。」

京太郎「タコスだな? 何個だ?」

優希「三つもあれば十分だじぇい! あとな、京太郎。今まで、しつこく迫って悪かったな。私とはタコスだけの仲にしてくれ。」

京太郎「おいおい、いったいどうしたんだ?(訳分かんねえな、こいつ。)」

優希「なんか、そういう気分なんだじぇい!」

初瀬の願いが叶い、京太郎と咲をくっつける方向に神の強制力が働いた。
その結果、その障害となるモノ………、つまり、優希の京太郎への想いが、突然消えてしまったのだ。
しかし、優希としては、タコスだけは確保したい。それで、こんな風になっている。
正直、優希にも良く訳が分からない。


そして、大会六日目の夜が来た。
夕刊に、
『宮永咲、熱愛発覚!? 相手は清澄高校イケメン男子生徒!?』
のタイトルで記事が載った。しかもスポーツ紙だけではない。お堅い方面の新聞にまで取り上げられていた。
読んでみると、文中には『京ちゃん』とまで書かれている。

京太郎「なんだこれ?」

京太郎は、早速咲に電話した。

京太郎「咲。なんか、新聞でとんでもないことになってるぞ!」

咲「ゴメンね、京ちゃん。インタビューの時に京ちゃんが電話してきたでしょ?」

京太郎「たしかに、そうだったな。あの時は、タイミングが悪くて済まなかった。」

咲「それでね、そいつは誰なんだぁって話になって、色々聞かれたのが捻じ曲がっちゃって、こんな風になっちゃったの。」←そうなるように話を持って行った人

京太郎「マジかよ(それって、俺が悪いんじゃ…)。」←本当は被害者

咲「今、テレビのニュースでも放送されてるよ。(これで公認だね!)」

京太郎「いや、俺は身バレしてないからイイけどさ。咲は大変だろ?(って、あれ? 俺はイイのか?)」

咲「でも、なんとか頑張るから。」

京太郎「他家全員トバした時よりも凄いことになってねえか?」

咲「あれね…。でさあ、明日も狙ってみようかな…、三人トバし。なんちゃって。」

京太郎「狙ってできるわけないだろ、あんなの?」

咲「でも、もう一回見てみたくない?」

京太郎「それは、見てみたい気はするけど…。」

咲「じゃあ、狙ってみるよ。でも、もしできたら、京ちゃん。私の言うこと、なんでも聞いてくれるかなぁ?」

京太郎「もしできたらな! まあ、三人じゃなくても、一人でもトバしたら、言うこと聞いてやるよ。(あれっ? こんなにハードル低くして大丈夫かな?)」←普通は決して低いハードルではありません

咲「前半戦と後半戦で、三人トバしを二回できたら、合計六回、言うことを聞くんだよ?」

京太郎「(まさか、そんなことできねえだろ!)おお、イイぜ!」

咲「じゃあ、約束だよ! それと、明日のタコスだけどね。前半戦前と後半戦前と対局後の御褒美分で、私のは三つ欲しいんだけどな。」

京太郎「優希からも三個頼まれてるからな。朝一で持って行くよ。」

咲「あと、みんなの分もお願い。評判良かったからさ、私もちょっと自慢したいなって思って。」

京太郎「なんでお前が自慢するんだよ。」

咲「こんなに美味しいもの作ってくれる旦那がいてイイねって言われてさ。」

京太郎「旦那じゃねえだろ!」

咲「私だって、今まで京ちゃんの嫁さんって言われ続けてきたんだよ。たまには逆になってもイイじゃない?」

京太郎「そんなこと言うのは、高久田だけだって。でも、そんだけ作るとなると、ちょっと数が多いからハギヨシさんに手伝ってもらった方がイイかな?」

咲「それはマズイよ。龍門渕高校の執事の方でしょ? 私達、龍門渕高校と戦うんだから、敵に塩を送るような真似させちゃダメだよ。(京ちゃんの〇〇〇じゃないと嫌だもん)」←〇〇〇はタコスです

京太郎「それはそうだな。じゃあ、明日持って行くから。」


その頃、和は夕刊を見ながら恐ろしい形相をしていた。そして、激しい怒りから身体が小刻みに震えていた。

和「(どうして京咲になっているのですか? 須賀君はタコスと共に優希に譲渡されたはずではなかったのですか?)」

神の強制力も、デジタルでオカルト超否定派の和には、中々効かないでいた。


その時、白糸台高校では決勝戦に備えて、これからミーティングを始めようとしていた。
麻里香とみかんが咲と京太郎の話をしていたが、怒り心頭している和の耳には届いていなかったのが救いだったかも知れない。


麻里香「新聞でもテレビでも凄い取り上げられ方だね、宮永さん。」←淡が勝って決勝進出できたので落ち着いた

みかん「まあ、女子高生歴代最強って言われているくらいだからね。」

麻里香「でも、相手の人って、どんな人だろう?」

みかん「結構イケメンだったよ!」

麻里香「なんで知ってるの?」

みかん「スマホで写真見せてもらったからね。」←いらぬ誤解を受けたことはスルー

麻里香「いつの間に?」

みかん「対局前にね。でも、鶴田さんは、宮永さんの彼氏をイマイチみたいに言ってさ…。」

麻里香「えっ?」

みかん「それと、緒方さんがモーションかけようかなとか言っちゃったから、宮永さんの怒りのスイッチ入っちゃってね。」

麻里香「それで、ああなったか…。」

みかん「お陰で私は助かったけどね。」

麻里香「で、話を戻すけど、明日の決勝戦、十中八九、先鋒は神代、次鋒は光、中堅は宮永さんが取るよね?」

みかん「多分ね。」

麻里香「大将は、どこが勝つかマジ勝負だけど、これって副将が結構重要じゃん?」

みかん「そうかもね。」

麻里香「こんなんだったら、私が中堅でみかんが副将の方が良かったよ!」

みかん「私も麻里香も大差ないでしょ?」

麻里香「でも、春季の個人戦は、みかんの方が順位上じゃん!」

みかん「あれって、一回戦の席順で決まっただけじゃない? それに、宮永さんが後で白状してくれたんだけど、あれって、席順が違っていたら、私を100点差で2位にするつもりだったって。点数調整されてたのよ、私達。」

麻里香「ちょっとなにそれ? そんな点数調整できるの?」

みかん「先ずタコスを食べて起家になって………、ここは意味が分からなかったんだけどね。それで、麻里香から2400(親の50符1翻)、私から2000の一本場、次に親倍二本場を嶺上開花でツモ和了りする。」

麻里香「そんな都合よく和了れるの?」

みかん「じゃあ、麻里香は、私達レベルを相手に、宮永さんが都合よく和了れないって言うの?」

麻里香「…和了れてるよね?」

みかん「まあね。それで、続いて麻里香のお姉さんから1500の三本場を和了る。そうすると、私が残り14500で、麻里香と麻里香のお姉さんは残り14400点になる。さらにそこから8000オールの四本付け、3900オールの五本付け、1000オールの六本付けを嶺上開花でツモ和了りすれば、私だけ100点で、麻里香と麻里香のお姉さんは0点になる。」

麻里香「嶺上開花で和了るの前提?」

みかん「そうらしいんだけど。」

麻里香「…。(でも、宮永さんならありかも…。それで、その後に役満和了るんだよね、きっと…。)」

みかん「これって、宮永さん本人が言ってたことだからね!」


和「(そろそろミーティングが始まります。気持ちを入れ替えないといけませんね。)」

頭に血が上っていては何も考えられない。
和は、冷静さを取り戻そうと深呼吸した。
そして、周りの声………麻里香とみかんの会話が耳に入ったきた。


麻里香「………でも、なんで、みかんを2位にさせたかったの?」

みかん「今は和解したけどさ、あの時、私のことがあの個人戦一回戦のメンバーの中で一番気に食わなかったんだって。だから、私を宮永さん、天江さん、荒川さんの三大魔物対決に連れて行ったってこと。」

麻里香「たしかに、あの時は一回戦負けして良かったと思ったよ。でも、なんで宮永さんはみかんのことを気に食わなかったの?」

みかん「私も自分じゃ言い難いんだけどね。私が和よりも細くて小顔だからだって。」

麻里香「もしかして、和よりも綺麗な女性が存在しちゃいけないってこと?」

みかん「そこまでは、ええと…。(本当は、和よりも細くて小顔で美人で、和ほどじゃないけど胸もあって、完全に女性の敵って言われたんだよね。宮永さんの過大評価なんだけどなぁ。)」←美人の自覚なし


この会話を聞いて和は、
和「(では、やっぱり咲さんは私のことを一番と思ってくれているってことでしょうか? だとすると、この記事はガセネタですね? 京咲なんて、そんなオカルトありえません。)」



神「(この女、どうやって宮永咲を諦めさせようかのぅ…。)」
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