咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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憩の能力は、まだ原作で描かれておりませんので、ここでは先負の進化版みたいにしました。
PS Vita『咲-Saki-全国編』では『他家が和了った後の局で配牌が良くなる』となっておりますが…。


五本場:魔物vs超魔物

 咲達は、ホテルに戻った。

 特に大荷物は持っていない。実は、昨日のうちにチェックインして荷物の大半はホテルに置いて出ていた。今日は二泊目だ。

 各部屋二人ずつで、部屋割りは『穏乃と憧』、『咲と玄』、『灼と晴絵』に分かれた。

 玄は、

「(おもちのレベルでは憧ちゃんが一番マシですのだ!)」

 と思ってはいたが、さすがに口に出すのは遠慮した。

 下手に口にしたら最後、

「麻雀を楽しませなきゃいけないね!」

 と咲に言われて、きっとまた強制的ドラ切りの上に数え役満を振り込まされるのではないだろうか?

 あんな恐怖体験は、もうコリゴリだ。

 これは、ある意味、すり込みが入ったとも言えよう。

 

 翌日、近畿大会決勝戦が開催された。

 先鋒は咲、次鋒に憧、中堅に灼、副将を玄、大将を穏乃としたオーダーだった。

 

 憧に連れられて対局室に咲が入ってきた。

「ありがとう、憧ちゃん。」

「じゃあ、あとはヨロシクね、サキ!」

 要は迷子対策だ。いきなり先鋒戦の開始が遅れては洒落にならない。下手をすれば失格だ。それは避けたい。

 

 対するは千里山女子高校、三箇牧高校、姫松高校だった。

 千里山女子高校の先鋒は泉、三箇牧高校の先鋒は憩、姫松高校の先鋒は絹恵。漫は姫松高校の伝統に従い、エースとして中堅を任されていた。

 

 泉は特に能力者ではない。普通にデジタルで打つ。

 ならば、咲は泉を和の劣化版と思って打てばよい。

 

 絹恵はインターハイで筒子の染め手が増えてきた。これは、灼の実家がボーリング場であることが筒子多面聴につながったように、サッカーをやっていたことが筒子を呼び寄せる力になっているのかもしれない。

 ならば、咲は灼との対局をイメージすればよいだろう。

 

 憩は、先に聴牌した者に自分の和了り牌を掴ませる。この能力は、宮守女子高校の大将姉帯豊音の先負に似ている。

 ただ、豊音と違ってリーチは特に関係ないし、自分が先に聴牌すれば、自分に和了り牌を掴ませる。つまり、ツモ和了りする。その際に、豊音のように四副露する必要はない。

 これは対策が必要だろう。

 やはり咲がマークすべきは憩だ。

 

 場決めがされ、起家は泉、南家は絹恵、西家は咲、北家は憩となった。

 咲は靴下を脱いで本気モードに入った。対局者の中に憩がいる以上、全力を出さなければ勝てないだろう。

 

 東一局、泉の親。

 泉は、配牌に恵まれ、五巡目で、

「リーチ!」

 親の先制リーチをかけた。しかし、その二巡後、

「ロン! 7700ですー!」

 泉は憩に振り込んだ。初っ端から憩の能力の餌食となったのだ。

 

 東二局、絹恵の親。

 絹恵の手は筒子で伸びてきていた。能力が発動しているのだ。そして、

「ポン!」

 咲が切った{⑧}を鳴いて絹恵は聴牌した。タンヤオ清一色赤2の親倍の手。しかし、やはり二巡後に、絹恵は、

「ロン! 7700ですー!」

 吸い込まれるように憩に振り込んだ。

「二連続で和了れて幸先がいいわー!」

 憩は、明るい笑顔でそう言いながら咲のほうに視線を向けた。次はお前だと言わんばかりに…。

 

 東三局、咲の親。

 咲の配牌は

 {一二二三①②②⑤24[5]東西北}

 ここから打{北}。

 

 二巡目。ツモ{②}、打{西}で手牌は、

 {一二二三①②②②⑤24[5]東}

 

 三巡目。ツモ{二}、打{東}で手牌は、

 {一二二二三①②②②⑤24[5]}

 

 四巡目。ツモ{2}、打{①}で手牌は、

 {一二二二三②②②⑤224[5]}

 

 五巡目。ツモ{2}、打{三}で手牌は、

 {一二二二②②②⑤2224[5]}

 三色同刻を狙うにしても、親なら普通は{⑤}を切って一旦聴牌に取るように思うが…。

 

 そして、次に泉が切った{二}を、

「カン!」

 咲は大明槓した。

 嶺上牌は{2}。そして、打{一}。手牌は、

 {②②②⑤22224[5]}  明槓{二横二二二}

 一向聴のままだ。向聴数の変わらない大明槓。タンヤオがつくようにはなったが…。

 

 そして、次巡、咲は{②}をツモった。

「もいっこ、カン!」

 {②}を暗槓した。嶺上牌は{6}。手牌は、

 {⑤22224[5]6}  暗槓{裏②②裏}  明槓{二横二二二}

 聴牌した。

 

 ここから、さらに、

「もいっこ、カン!」

 連槓した。{2}を暗槓したのだ。そして、嶺上牌を引くと、

「ツモ!」

 咲は和了りを宣言した。嶺上牌は{[⑤]}。単なる嶺上開花ではない。五筒開花だ。

「タンヤオ三槓子三色同刻嶺上開花赤2。8000オールです。」

 

 和了り形は、

 {⑤4[5]6}  暗槓{裏22裏}  暗槓{裏②②裏}  明槓{二横二二二}  ツモ{[⑤]}

 

 これで、咲が一気にトップに躍り出た。

 連槓により、捨て牌無く一向聴から聴牌、和了りへと持って行かれては、憩も手の出しようがなかった。

 憩には、咲の意図が分かっていた。五巡目で、咲は敢えて{⑤}切りでの聴牌を避けたのだ。この違和感ある打ち方は、憩対策に咲が選択した方法だった。

 

 今回の槓は、大明槓と暗槓だったが、これが、もし聴牌後に加槓するパターンだったら、憩に槍槓を和了られてしまったかも知れない。

 当然、咲は、その可能性を既に晴絵から指摘されていた。

 もっとも、それ以前に、インターハイ県予選で鶴賀学園大将の加治木ゆみに槍槓を和了られて以来、咲は槍槓には気をつけているのだが…。

 

 東三局一本場、咲の連荘。

 咲の配牌は

 {一三四①②④⑤⑧288東西北}

 ここから打{北}。

 

 二巡目。ツモ{4}、打{西}で手牌は、

 {一三四①②④⑤⑧2488東}

 

 三巡目。ツモ{二}、打{東}で手牌は、

 {一二三四①②④⑤⑧2488}

 

 四巡目。ツモ{8}、打{一}で手牌は、

 {二三四①②④⑤⑧24888}

 

 五巡目。ツモ{8}、打{⑧}で手牌は、

 {二三四①②④⑤248888}

 

 六巡目。ツモ{③}、打{①}で手牌は、

 {二三四②③④⑤248888}

 これで一向聴。

 

 そして、七巡目。ツモ{3}で聴牌すると、

「カン!」

 {8}を暗槓した。嶺上牌は{[⑤]}。

「ツモ! タンヤオ三色嶺上開花赤1。6100オールです!」

 またもや赤牌での五筒開花だ。

 

 和了り形は、

 {二三四②③④⑤234}  暗槓{裏88裏}  ツモ{[⑤]}

 

 憩への振り込みを回避した打ち方。槓材が集まる咲だからこその攻め方だろう。

 この和了りで憩を大きく引き離した。

 

 東三局二本場。咲の連荘。ドラは{⑨}。

 憩としては、これ以上、咲に和了らせたくはない。勿論、これは憩だけではなく、泉や絹恵にとっても同じことだ。

 なんとかして、この親を流したい。

 泉は、七巡目で、

 {三四五六七①②③④⑤234}

 ここに{[⑤]}をツモった。

「(ナイスツモ!)」

 泉は、心の中でそう思った。これで、{①}か{④}を切れば聴牌。当然、タンヤオ三色同順を狙って{①}を切った。すると、

「カン!」

 咲の大明槓だ。そして、

「ツモ!」

 和了り形は、

 {三四五[五]六七⑨⑨57}  明槓{①横①①①}  ツモ{6}

「嶺上開花ドラ3。4200オールです!」

 悪形の役なし。形式聴牌からの大明槓、そして嶺上開花のみでの和了り…。嶺上牌で和了れると分かっていなければできない強引な和了り方だ。

 この和了りは責任払いではなくツモ和了りとして扱われる。今回は五筒開花ではなかったが、三連続嶺上開花と言うレアな状況であることに変わりはない。

 

 これで各校点数は、

 暫定1位:阿知賀女子学院 154900

 暫定2位:三箇牧高校 98100

 暫定3位:姫松高校 74000

 暫定4位:千里山女子高校 73000

 既に姫松高校と千里山女子高校は阿知賀女子学院にダブルスコアの点差をつけられていた。2位の三箇牧高校も原点を割った。

 

「(これは本気でヤバイわ。)」

 さすがに、憩の顔からも笑顔が消えた。

 

 東三局三本場。咲の連荘。

 軽い配牌に助けられ、憩は三巡目で早々に聴牌した。ただ、ドラなしの上に役なし。しかし、親は流したいし…。ならば、取る手は一つ。

「リーチ!」

 攻めることにした。そして、

「一発ツモ! 裏が1枚乗ったでー! 2000、3900の三本場は、2300、4200!」

 これで咲の親を流すことができた。

 

 そして、今度は憩の親番。

 東四局。

 憩は、再び流れを掴めたのか、

「ツモ。2600オール!」

 タンピンドラ1の手をツモ和了りした。

 

 東四局一本場。憩の連荘。

 ここでも憩は、

「ツモ! 2700オールやでー!」

 連続で和了った。

 

 しかし、東四局二本場で咲が動いた。

「ポン!」

 序盤で泉の捨てた自風の{北}を鳴き、続いて、

「カン!」

 絹恵の捨てた{白}を大明槓した。嶺上牌は{北}。当然、

「もいっこカン!」

 ここで引いてきた嶺上牌は{⑨}。

「もいっこカン!」

 咲は、手牌で四枚持ちの{西}を暗槓した。そして、

「ツモ!」

 嶺上牌は、またもや{⑨}。

「北白混一混老対々三槓子嶺上開花。6200、12200です!」

 当然の如く咲は嶺上開花で和了った。またもや一向聴から嶺上牌で聴牌し、そのまま連槓して嶺上開花を決めたのだ。

 

 開かれた手牌は、

 {①①①⑨}  暗槓{裏西西裏}  明槓{横白白白白}  明槓{北横北北北}  ツモ{⑨}

 

 これで東場が終了した。

 各校点数は、

 暫定1位:阿知賀女子学院 170000

 暫定2位:三箇牧高校 110600

 暫定3位:姫松高校 60200

 暫定4位:千里山女子高校 59200

 三箇牧高校がマイナスからプラスに転じた。阿知賀女子学院は、さらに得点を伸ばし、一方の姫松高校と千里山女子高校が得点を減らした。

 

 

 南入した。

 南一局、親は再び泉。

 泉としては連荘して少しでも点数を取り返したいところ。しかし、

「ポン!」

 咲が筒子を絹恵に鳴かせ、

「ツモ! 2000、4000!」

 そのまま絹恵に鳴き清一を和了られた。ドラが無かったのが救いだったが、それでも泉にとっては満貫の親かぶりだ。ラスの泉にとっては非常に痛い和了りだ。

 この局、憩は聴牌できなかった。正しくは、憩が聴牌する前に咲が絹恵の手を進めさせて、さっさと和了らせたのだ。

 

 南二局、絹恵の親番。

 さっきの和了りで絹恵は気を良くしたが…、しかし、この局では咲が、

「ポン!」

 今度は泉に{中}を鳴かせた。そして、

「ツモ! 中ドラ2。1000、2000!」

 泉に和了られた。

 ここでも、前局と同じで憩が聴牌する前に泉が和了りを決めた。ここでも、咲がそうさせたのだ。

 

 南三局、咲の親番。

 前の二局で、憩は自分の麻雀を打たせてもらえなかったからか、少々ツキが下がっていた。どうも配牌が悪く、ツモも巧く噛み合わない。

 そうこうしているうちに中盤に入った。

 泉も絹恵も、咲の槓を警戒して初牌切りを避けた。しかし、

「ロン! 平和タンヤオ三色ドラ3。18000!」

 咲が槓に頼らない平和手で泉から直取りした。

 

 南三局一本場も、

「ロン! 南ドラ3。12300。」

 咲が泉から和了った。今回も嶺上開花ではない通常の和了りだ。

 

 そして、南三局二本場。ドラは{東}。

「ポン!」

 四巡目で、咲が絹恵から{8}を鳴いた。

 一方、憩は同じ牌が重なり、八巡目で、

 

 {二二二①①①7999發發發}

 

 四暗刻を聴牌した。連続振り込みで泉のツキが下がった分、憩のツキが一気に向上した感じだ。

 

 現在の各校点数は、

 暫定1位:阿知賀女子学院 197300

 暫定2位:三箇牧高校 107600

 暫定3位:姫松高校 66200

 暫定4位:千里山女子高校 28900

 ここで憩が咲から四暗刻を直取りすれば、オーラスでの逆転も有り得る。憩はラス親なので、連荘での逆転を狙っても良い。

 

 咲の手牌は、

 {三四五⑥⑦⑧⑧西西西}  ポン{横888}

 

 ここに、{7}を引いてきた。槓材の{西}は次巡のツモ牌、嶺上牌は{⑧}。咲には、これが見えていた。




おまけ
春季大会終了後、淡に招待されて阿知賀女子学院メンバーが白糸台高校に向かう途中。

憧「あそこに見えるのが白糸台高校かな?」

咲「そうだよ。」

ふと、憧がある建物の看板を発見した。
一部が木で隠れて見えないが、見える部分に書かれているもの、それは…、

『ラブ ルネサンス』

憧「(ちょっと、これって、もしかしてラブホ? どうして学校の近くにラブホなんかあんのよ?)」

咲「あの看板さぁ。」

憧「ふぇ!」

咲「木で一部隠れていて、私、お姉ちゃんに連れられて前来た時に『ラブ ルネサンス? どうしてラブホテルが学校の近くに?』なんて思っちゃって。」

憧「そ…そ…そ…そうでしょ?」

妙に慌てる憧。

穏乃「でも、あの看板、良く見ると『スイミングクラブ ルネサンス』って書いてない?」

咲「そうなの。私って早とちりしてるって思って。」

憧「(スイミングクラブか…。焦ったぁ。でも、まあ、サキだけじゃなくて私もだけどね。)」

玄「(スイミングクラブなら、オモチ成分が期待できるかもしれないのです!)」

どんな時でもマイペースな玄でした。
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