決勝中堅後半戦、南一局一本場。
この段階での後半戦での順位と点数は、
1位:咲 268100
2位:一 66100
3位:みかん 65800
4位:明星 0
前半戦の東三局九本場と同じで明星が持ち点ゼロにされた。まるでデジャブーを見ているようだ。
普通に考えれば、みかんも一も、明星以外からの出和了りを狙うしかない。明星が箱割れした途端に咲の勝ち星が確定するからだ。
しかし、前後半戦のトータルで考えれば、もはや逆転は不可能だ。
みかんも一も咲に直撃されたが、これは明星の得点を800点にし続けることが目的だろう。つまり、ターゲットは飽くまでも明星一人である。
ならば、超魔物のターゲットが、万が一にも自分に切り替わる前に今の点数で中堅戦を終わらせるべきだろう。得失点差勝負に備えたら、それが一番無難な考えだ。
つまり、明星をトバす。
みかんと一の目付きが変わった。
この二人の雰囲気から、明星は、全員が自分をトバしに来ていることを感じ取った。もう、死を覚悟するしか無いようだ。
ならば、自身も振り込み覚悟で和了りを目指す。怖いけど、それしか残された道は無いと明星は開き直った。
その直後のことだ。
急に明星のツモが変わった。能力が復活したのだ。
腹をくくったことで雑念が消え、心の乱れが緩和されたからであろう。
ヤオチュウ牌が来る。これなら、一矢報いることが出来るかもしれない。
配牌にヤオチュウ牌が四枚しかなかったため、手牌全てをヤオチュウ牌にするには九巡かかった。しかし、ここで{2}を切れば国士無双十三面聴の聴牌。
ここは、勝負!
明星は躊躇なく{2}を切った。
すると、
「カン!」
これを咲が大明槓した。嶺上牌は{3}。すると、咲は、
「もいっこ、カン!」
{3}を暗槓した。続く嶺上牌は{4}。咲は、これを引くと、
「もいっこ、カン!」
{4}も続けて暗槓し、次の嶺上牌………{8}を引くと、
「もいっこ、カン!」
四連続槓で、一瞬にして四槓子の必要条件を揃えた。そして、最後の嶺上牌で、
「ツモ!」
和了りを決めた。
開かれた最後の牌は………{發}。
「緑一色四槓子! 96300点です!」
後半戦も、明星の豪快なトビで終了した。
後半戦での順位と点数は、
1位:咲 364400
2位:一 66100
3位:みかん 65800
4位:明星 -96300
そして、前後半戦のトータルは、
1位:咲 796100
2位:一 123600
3位:みかん 123300
4位:明星 -243000
言うまでもなく咲の超特大トップで阿知賀女子学院が勝ち星を上げた。
星取り戦のため、大失点しても点数引継ぎ制ほどは戦犯として叩かれない。それが明星にとっては救いだろう。
2位だろうと4位だろうと負けは負け。得失点差勝負になって初めて戦犯になる。
まあ、それ以前に咲を相手に大敗しても、
『今日の被害者は彼女か…』
くらいにしか思われなくなった部分はあるのだが…。
それゆえか、掲示板では、
『明星ちゃんカワイイっス!』
『魔物に目をつけられてたのに、よくやったし!』
『オモチが魅力的なのです!』
明星を叩く人は基本的にいなかったらしい。相手が相手なので、これも仕方がないと言うのが共通認識のようだ。
急に映像が対局室から放送席に切り替えられた。
対局室では、恐怖から開放されたからなのか、
「チョロチョロチョロ………。」
明星のダムに亀裂が入ってしまった。
「(えっ? ヤダ…。)」
慌てて股に手を当てるが、一旦開放されたダムは、全て出し切るまでは中々止められない。放水量が増えることはあっても、止めるのは難しいのだ。
「イヤ――――――!」
そのまま、明星は、
「プシャ――――――!」
激しい音を立てて目いっぱい派手にヤらかしてしまった。トビ方も豪快だったが、こっちも豪快だった。
「「「あ…ありがとうございました」」」
咲とみかんと一は、慌てて対局後の一礼を済ませると、その場から逃げるように対局室を出て行った。
放送席より、アナウンサーの福与恒子が、
「ええと、対局後に事故が発生し、副将戦開始まで少々お時間をいただきます!」
と、まあ解りやすく説明してくれた。もっと上手に言えないのかとは思うが、仕方がないだろう。
当然、掲示板では、
『これは明星か?』
『明星、放水デビュー!』
『新人は、漏らしてなんぼ、漏らしてなんぼですわ!
でも、あの席にこれから座るのはイヤですわ!』
『パイで牌を倒すからですよー』
『たしかに、咲ちゃんの前であれだけはやっちゃダメだじょ!』
『新人歓迎だよモー!』
大変な賑わいだったようだ。
ちなみに中堅戦までの総合得点は、
1位:阿知賀女子学院 1250500
2位:白糸台高校 596200
3位:龍門渕高校 358200
4位:永水女子高校 195100
阿知賀女子学院が、2位の白糸台高校にダブルスコア、3位の龍門渕高校にトリプルスコア以上の差をつけた。
対局室に一人残された明星は、目に涙を浮かべていた。まさか、こんな目に合わされるなんて考えてもみなかった。
少しして小蒔が入室してきた。
六女仙を統べる者として、自ら明星を迎えに来たのだ。
「明星ちゃん。やはり、心が乱れてましたね。」
「姫様…。」
「王となるものには、必ず逆向きの鱗があると言います。これに触れることだけは控えなければなりません。」
「でも…。」
「霞ちゃんも明星ちゃんも、結果的に宮永さんの逆鱗に触れたと言うことです。それに明星ちゃんは宮永さんへの逆恨みで心が支配されています。」
「だって、去年の負け方は…。」
「あれも作戦のうちかも知れません。私達だって二回戦まで明星ちゃんに敢えて能力を使わせなかったでしょう?」
「でも、それとこれとは…。」
「同じですよ。先々、物事を有利に運ぶために作戦を考える。」
「…。」
「宮永さんは、最強の神様でさえ歯が立たなかったお人です。それを認めず、受け入れずにいた段階で明星ちゃんの負けだと思います。」
明星は、ただ霞の敵討ちをしたかっただけなのだが…、物事を都合良く解釈しすぎていた。咲の挙動が、自分を恐れているものと勘違いしたり…。
そもそも、小蒔に降臨した最強神でさえ咲に負けたことを知っていて、自分が勝てると思った時点でおかしい。
取り急ぎ、小蒔は明星を席から立たせ、
「うちの者が粗相して済みませんでした。清掃の方は、私達、永水女子にも手伝わせてください。」
と言いながら審判達に深々と頭を下げた。
しかし、立ち入り禁止状態にする対局室内に選手達を入れるわけには行かない。審判団は、小蒔の申し出を丁重に断り、控室に戻るよう命じた。
報道側も、さすがに清掃時間中に何も放送しないわけには行かない。
結局、準決勝戦の時と同じように、今までのダイジェストを放送することにした。
それで、映像を用意する間、アナウンサーと解説プロに引き伸ばしをお願いすることになった。
「今のところ、阿知賀女子学院、白糸台高校、永水女子高校が勝つ星を一つずつとった状態です!」
アナウンサー福与恒子の声だ。明るくて元気が良い。
「そうですね。大方の予想通り、牌に愛された子と周りから称される神代小蒔選手、宮永光選手、宮永咲選手が順当に勝利を挙げる結果となりました。」
対するは小鍛治健夜プロ。落ち着いた声だ。
「先鋒戦では、その神代選手の和了り手が非常に興味深いのですが…。」
「はい。全く同じ聴牌形から倍満、三倍満、役満を和了っています。前半戦では、そのたった三回の和了りで10万点以上も稼ぎました。」
「先鋒戦では役満が一回でしたね?」
「そうですね。」
「それが、次鋒戦ではなんと、大三元が合計六回って、なんですかこれ?」
「まあ、大三元は比較的出易い部類の役満ですが、同じ人が半荘二回のうちに六回と言うのは記録的です。」
「でも、それを成し遂げた松実玄選手から巧く直撃を狙い、最終的に宮永光選手が勝ち星を得てますから、力の松実選手を技の宮永光選手が征したって感じですかね?」
「たしかに宮永光選手の作戦勝ちな気がします。欧州で鍛えられただけのことはあると思います。」
「そして中堅戦では、石戸選手が、いきなり国士無双を和了ったと思いきや、チャンピオン宮永咲選手の怒涛の和了り。それも石戸選手への直撃狙いでしたね?」
「これも逆転するための作戦でしょうね。」
「それにしても、宮永咲選手は、数え役満二回に四暗刻一回、四槓子が三回で、そのうち一回がダブル、もう一回がトリプルって、本当に確率無視してません?」
「しかし、確率としてゼロではありませんから…。」
「ええと…、では、そろそろダイジェスト映像の準備が整ったようですので…。」
テレビ画面に先鋒戦の映像が流れ出した。
観戦室の巨大モニターにも同じものが映し出された。小一時間の時間稼ぎだ。
その頃、一番緊張状態にあったのは、龍門渕高校控室だった。
大将の衣は、チームの勝敗のことなど考えておらず、ただ、穏乃や淡との対局を楽しむことしか頭に無かった。かなり自由人な発想だ。
一方、龍門渕高校の経営側の人間でもある透華としては、誰よりもチームの優勝に拘っていた。
このメンバーで優勝したいと言う願いが一番大きいが、やはり、経営側としての欲も入り混じる。
この試合が、もし星取り戦でなく点数引継ぎ型だったなら、既に次鋒戦で龍門渕高校はトビ終了している。
今までの点数推移だけを純粋に考えれば、恐らく優勝は白糸台高校、準優勝は永水女子高校だろう。
もっとも、点数引継ぎ型なら、各校別のオーダーにしているだろうし、違う結果になっているかもしれないが…。
ただ、今回は星取り戦である。副将と大将で勝利すれば、総合得点など関係なく龍門渕高校の優勝となる。
その一方で、副将戦で他校の何れかに勝ち星を譲ったなら、その時点で龍門渕高校の優勝はなくなる。
この追い詰められた状態で、突然、龍門渕高校控室内の温度が急激に下がった。
透華の中でのスイッチが入り、一の言う『冷たい透華』に切り替わったのだ。
少しして、各校控室に電話が入った。
副将戦が十分後に開始されるとの連絡だ。
これを受けて、各校副将選手は、対局室に向けて動き始めた。
灼が対局室に入室した時、麻里香と桃子は既に入室を済ませていた。一応、まだ桃子の姿は捉えられる。
「寒っ!」
灼の背筋を、凍るような冷たい何かが一気に走り抜けた。真夏なのに、恐ろしいほどの寒気を感じる。
急に対局室の気温が下がったのだろうか?
灼達は、対局室の扉の方から、まるでヘビのような冷たい視線を感じた。
三人が一斉に振り返ると、そこには感情の無い表情をした透華の姿があった。
これを見て桃子は、
「(スイッチ入っちゃってるっスか? でも、これは楽しみっス。私のステルスが止められるか勝負っスよ!)」
むしろ闘志が湧いた。相手がどんな化物でも、自分を捉えられなければ絶対に振り込むことは無い。
今まで、他校の選手でステルスが効かなかった人間は和だけだ。さすがに永水女子高校では最強神を降ろした小蒔には通用しなかったが…。
ただ、それ以外の人間に効かなかったことは無い。咲には破られこそはしたが、ステルス自体は途中まで効いていたはずだ。
たしかに、桃子に勝った人間は、それなりにいる。しかし、それらは基本的にステルスを破ったのではなく、飽くまでもツモ和了りによる勝利だ。なので桃子は、そう易々とステルスが破られるとは思っていない。
恐らく冷たい透華は、現在、女子高生雀士最強の化物だろう。それを相手にどこまで自分の麻雀が通じるかを試してみたい
桃子の中には、そんな気持ちがあった。
場決めがされ、起家が灼、南家が桃子、西家が麻里香、北家が透華になった。
「(変に寒いし、ここは糖分補給だね~!)」
麻里香は、缶の暖かいお汁粉を飲み始めた。これで少しは身体が温まるし、グルコースを摂ることで頭も回る気がする。
東一局、灼の親。
灼は、当然、筒子多面聴からの攻撃を狙う。しかし、まるで穏乃の山支配を受けている時のようにツモの流れがおかしい。
何者かに、意図的に有効牌が塞ぎ止められているみたいな感覚だった。
「ツモ。1300、2600。」
最初に和了ったのは透華だった。
タンピンツモドラ1の凡庸な手。
ただ、非常に静かな和了りだった。清流を連想させる。
東二局、桃子の親。
ここでも、
「ツモ。1300、2600.」
透華が静かに凡手をツモ和了りした。
東三局、麻里香の親。
ここも、
「ツモ。1300、2600.」
やはり透華が、前局、前々局と同様の手を静かにツモ和了りした。これで三連続だ。
その後も透華は、同様の手を和了り続けた。
東四局、透華の親。
「ツモ。2600オール。」
東四局一本場。
「ツモ。2700オール。」
東四局二本場。
「ツモ。2800オール。」
東四局三本場。
「ツモ。2900オール。」
これだけ連荘が続けば、他家は焦る。しかし、焦れば焦るほど、視界が狭くなる。
そして、この時を待っていた者がいた。
東四局四本場。
桃子のツモが急に良くなった。
ようやくステルスが発動し、透華の視界から外れたのだろうか?
さっきまでの強烈な支配を感じなくなった。
そして、とうとう、麻里香の捨て牌で、
「ロン。5200の四本場は6400っス!」
桃子が和了った。
「えっ?」
麻里香は、一瞬何が起こったのか分からなかった。もう完全に桃子の姿が見えなくなっていたのだ。
まるで、幽霊に和了られた気分だ。ただでさえ冷気が吹き付ける環境なのに、さらに身体が冷えまくる。
休憩時間には、きちんとトイレに行こう。某掲示板でネタにされるのはイヤだ。
南入した。
南一局、親は灼。
ここでは灼が切った牌で、
「ロン。七対ドラ2っス。6400!」
桃子が和了った。すでに灼の視界からも桃子の姿は消えていた。
南二局、桃子の親。
「(もう、ステルスで誰からも私の姿は見えないはずっス。この親で、一気に稼ぎまくるっス!)」
もう、桃子は、相手の出方を考える必要は無い。自分の手だけを見て、最も効率良く手が進められる選択だけに集中すれば良い。
しかし、
「ツモ。1300、2600。」
先に透華にツモ和了りされた。一手遅かった感じだ。
南三局、麻里香の親。
「(ここは何としてでも和了るっス!)」
前局同様、桃子は、とにかく聴牌を目指した。そして、今回は透華に和了られる前に聴牌できた。
今の自分の姿は、誰にも捉えられない。自分の捨て牌も見えなくなる負の存在感。それを利用したステルス。
当然、
「リーチっス!」
聴牌即リーチをかけた。
発声はしたが、誰にも聞こえていないはず。
しかし、その次巡に桃子が捨てた牌で、
「ロン。タンピン三色ドラ2。12000。」
まさかの透華への振り込み。
どうやら、今の透華にはステルスが効かないようだ。和に続いて二人目だ。
恐らく透華は、敢えて自分の場の支配から桃子を外していたのだろう。だから桃子は聴牌できたと言うことだ。
オーラス。透華の親。
ここでも透華は、
「ツモ。2600オール。」
タンピンドラ1をツモ和了りした。
ここで、前半戦での順位と点数は、
1位:透華 174600
2位:桃子 78400
3位:灼 73500(席順による)
4位:麻里香 73500(席順による)
透華の圧勝だった。
副将戦で透華が勝てば、全チームの勝ち星が一ずつになって、大将戦を征したチームの優勝となる。
ならば、龍門渕高校が狙うのは得失点差ではなく副将大将の二連勝での優勝。
当然、
「これで和了り止めにします。」
透華は、連荘を拒否して後半戦へと進めることにした。
おまけ
咲 -Saki-とユリア100式のクロスオーバーです。
五十三本場おまけの続きになります。
本作は、マトモに書くと余裕でR-18になります。そのため、R-18に突入しそうになった時点で積極的に染谷まこが登場し、時間軸超光速跳躍を発動してくれます。R-18の描写を全てスっ飛ばしてくれる素晴らしい特殊能力です。
また、憧100式の発明者として阿笠博士に特別出演していただきます。灰原哀と江戸川コナンもムダに登場します。
憧 -Ako- 100式 流れ十本場 ウテルスはイかない?
哀「メール?」
コナン「もう一人の俺からのグチメールだよ。風俗に行こうか迷っているらしい。」
哀「なら、博士に工藤君の分の憧シリーズを造ってもらうってのもアリかもね。」
コナン「でも、人間じゃねえし!」
哀「それはそうだけど、でも、人間と見た目は変わらないし、妊娠しないから安全だし、好みの顔を造ってもらえるし、イイコトずくめじゃない?」
コナン「そういう考え方もあるのか…。」
とは言っても、別に今の哀が妊娠するわけでもないし、見た目が気に入らないわけでもないし、コナンにとっては現状に不満は無い。
ただ、普通に保健体育の実習をするのが飽きてきただけだ。それで首輪をつけたりもしたのだが…。
不満があるとすれば、コナン自身のサイズ。
そこで、哀が作った怪しい薬を最近は飲んでいる。増大させる薬とのことだ。
服薬開始二週間で、約二センチ大きくなった。
コナンは、今、二十センチを目標に服薬を続けているらしい。
一方、阿笠博士の研究室中央に置かれた回転ベッドの上には、一体の美しいカラクリが裸で仰向けに寝かされていた。
顔も豊満な胸も尻も、間違いなく女性を象ったモノだ。
手足も長く、しかも全体的に引き締まったワガママボディ…。
ただ、何故か生殖器だけは男性だった。しかも、日本人平均の倍に達する長さ&太さだ。
これが、憧シリーズの最新型、憧123式だった。
博士「ジェンダーレス型パート2として造ってはみたんじゃが、やっぱり性器部分は造り直した方が良いかのぉ。」
博士「ワシが使うのにジェンダーレス型にする必要はないし、普通に女性型に作り直すとするかの!」
博士は、スイッチを入れずに付け替え作業を行おうとした。
が、しかし…。
この時、研究室が激しく揺れた。地震だ。しかも、大きい。
この揺れに博士はバランスを崩し、とっさに近くのモノを掴んだ。
ただ、この手に掴んだ感触は大きなオモチ…。
不幸にも、博士は憧123式の胸を掴んでしまったのだ。
激しい揺れの中で憧123式は目を覚ました。例によって、胸はオンスイッチ機能のみであり、オフスイッチは付いていない。
博士「な…なんと言うことじゃ。ワシとしたことが…。憧123式ver.絹恵が目覚めてしまったぞい!」
絹恵「うーん。おはようございますって、凄い揺れや!」
博士「地震じゃ、もうすぐ収まるじゃろ。間違って君のスイッチを入れてしまった。申し訳ない。」
絹恵「スイッチ?」
博士「君は人間ではないんじゃよ。」
絹恵「えっ? それじゃ、うちってなんなん?」
それから十数秒後、揺れが収まった。
ただ、博士にとっては、この地震は憧123式ver.絹恵の誕生を比喩する『衝撃的表現』であるかのように感じてならなかった。
絹恵「うちは、機械人間なん?」
博士「君は、ワシの科学力の全てを注ぎ込んで造り出した…。」
絹恵「…。」
博士「AI搭載の人型性欲処理具、自律型ダッ〇ワイフ、憧123式ver.絹恵じゃ!」
絹恵「マッチ、サイフ?」
博士「ダッチ〇イフ!」
絹恵「なんなん? それ?」
博士「じゃから、人型性欲処理具じゃわい! それに、君の場合は特殊仕様での。」
絹恵「特殊って?」
博士「女性をベースとした身体つきじゃが、生殖器だけ男性なんじゃ。」
絹恵「えぇ―――!!!」
絹恵が自分の股間に目を向けた。
たしかに余計なモノが付いている。しかも、巨大だ。
取扱説明書:憧123式ver.絹恵は男性用としても女性用としても使えます。
取扱説明書:男性用として使う場合は、女性器は付いておりませんので肛門部をお使いください。肛門部にてインプリンティング機能が発動します。
取扱説明書:女性用として使う場合は男性器部分を根元まで挿入してください。これによりインプリンティング機能が発動します。
絹恵「うちは、男性なんですか? 女性なんですか?」
博士「性器以外は全て女性じゃ。AIも女性版として造られておる。それと、今までは取扱説明書を紙で用意していたが、君の場合は全て君のハードの中に記憶されておる。」
絹恵「えっ?」
博士「目を閉じれば思い出せるはずじゃ。君の仕様がのぉ。」
憧123式ver.絹恵が静かに目を閉じた。
たしかに、自分自身の仕様についての記憶がある。自分は、博士の言うとおり人間ではない。AI搭載の人型性欲処理具、自律型ダッ〇ワイフ、憧123式ver.絹恵だ。
博士「すまん。君を起こしたのはワシのミスじゃ。そもそも、造り直そうと思っていたんじゃよ。」
絹恵「じゃあ、うちは失敗作ってことなんですか?」
博士「まあ、そう言うことになるじゃろうな…。一先ず、ワシの若い頃の服を用意してあるのでな、それを着るが良い。」
絹恵「はい…。」
博士「それと、強制的にスイッチを切るしかなさそうじゃの。」
絹恵「強制的って、どうやるんです?」
博士「首を一気に切断するしかないじゃろうな。オフスイッチが無いんじゃから…。」
絹恵「…。」
男性器が付いているのはイヤだ。
しかし、それ以上に、折角誕生してきたのに首を切断されて強制終了となるのは、もっとイヤだ。なんでそんな目に合わなくてはいけないのだろうか?
絹恵「(イヤや! 殺されとうない!)」
憧123式ver.絹恵は、博士の目を盗んで博士の研究所から逃げ出した。そして、この街から姿を消し、姉妹機同様に例の街に逃げ込んだ。
午後八時を回った。例によって、憧123式ver.絹恵は公園のブランコに座っていた。
ただ、他の姉妹機とは違って取扱説明書を読む必要は無かった。全て、自分の頭の中に仕様についての説明は記憶されている。
絹恵「オーナー…、インプリンティング機能…。NTR機能…、男性仕様に女性仕様…。なんなんかなぁ、これ?」
絹恵「それにしても、おなかすいたな。」
取扱説明書:憧123式ver.絹恵も、他の姉妹機同様にエネルギーは普通に人間と同じ食生活で問題ありません。ロボ〇タンAを用意する必要はありません。
取扱説明書:憧123式ver.絹恵には、スリープモードが搭載されていません。完全にエネルギーが切れる前にエネルギー補給を行ってください。
咲「キャー!」
男「よぉ、姉ちゃん。この間は逃げられたが、今日こそ俺と遊んでくれるんだろうな?」
咲「そんな、イヤです。」
男「イイじゃんかよ、減るもんじゃないし。先っぽだけだからさ。(咲だけに)」
女性の悲鳴だ。
どうやら、近くで女性が男にいやらしいことをされそうになっているようだ。
憧123式ver.絹恵は、悲鳴が聞こえてきたほうに全速力で走っていった。
取扱説明書:憧123式ver.絹恵は高い身体能力を誇ります。そのため、ハードプレイにも対応可能です。
見つけた。
小動物のような雰囲気のかよわい女性が衣服を丁度剥ぎ取られたところだった。
あっちのほうは、まだセーフだ。
絹恵「死にさらせ!」
憧123式ver.絹恵は、その男性に思い切り蹴りを入れた。
無防備なところへの攻撃を受け、男性は、もだえ苦しんだ。
そして、さらに一発。憧123式ver.絹恵は、その男性を蹴り飛ばした。
この一撃で男性の身体は宙を舞い、ゴミ置場に落下した。まるで、人間がサッカーボールにでもなったようだ。
恐るべきキック力。
彼女の足には、キック力増強機能も付いていた。つまり、素足の状態でキック力増強シューズを履いているのと同じ状態にある。
すでに男性は気を失っていた。それだけ強烈な蹴りだったのだ。
絹恵「大丈夫?」
咲「ありがとうございます。」
絹恵「では、気ぃつけて。」
咲「あのぉ、お名前は?」
絹恵「憧123式ver.絹恵…。」
咲「えっ?」
絹恵「ええと、絹恵でエエです。」
咲「そうじゃなくて、憧123式って、もしかして阿笠博士に造られた…。」
絹恵「どうして、それを知ってるん?」
咲「友達なんです。憧さんと淡さんと…。」
絹恵「ちょっと、くわしく聞かせてくれへん?」
咲「イイですけど、ここじゃなんなんで、私のアパートまで来ませんか?」
絹恵「行ってもエエん?」
咲「はい。それと、食事のほうは?」
絹恵「目が覚めてから何も食べてへん。」
咲「じゃあ、あり合わせになりますけど、うちで食べていってください。」
こうして、憧123式ver.絹恵は食事にありつくことが出来た。
あり合せと言いながらも、冷凍食品でもなければ出来合いの揚げ物とかでもない。本当に咲の手料理だ。
このもてなしに、憧123式ver.絹恵は感激していた。
絹恵「ごちそうさまでした。」
咲「おそまつさまでした。」
絹恵「それでな、咲ちゃん。さっきの憧100式と憧105式ver.淡のことなんやけど…。」
咲「憧ちゃんは、私の同郷の友達のところにいます。近くのアパートですよ。」
絹恵「友達って、女性なん?」
咲「京ちゃんは男性ですよ。」
絹恵「じゃあ、その男がオーナーなんやな?」
咲「そう言ってました。あと、淡ちゃんは、京ちゃんの隣の部屋に住んでいる男性のところにいます。」
絹恵「そうなんや…。それからな、憧108式ver.姫子と憧110式ver.マホのことは、何か知ってへんか?」
咲「いいえ…。」
まさか、憧108式ver.姫子と憧110式ver.マホも同じアパートにいるとは、咲も知らなかった。
それ以前に、咲は憧108式ver.姫子と憧110式ver.マホとは面識が無い。そもそも、存在自体を知らない。
咲「憧ちゃんも淡ちゃんも阿笠博士専用機になるのがイヤで逃げて来たって聞いてますけど、絹恵さんも、やっぱり阿笠博士専用機になるのがイヤで逃げてきたんですか?」
絹恵「うちの場合は、強制終了されるのがイヤで逃げてきたんや。」
咲「強制終了って?」
絹恵「うちは、博士にとっては失敗作みたいでな。首切断して強制終了されるところやったんや。」
咲「そんな、ひどい…。」
絹恵「この身体が博士にとっては気に入らんかったみたいや…。」
咲「(こんなに綺麗なのに何処が気に入らなかったんだろ? オモチも大きいし、脚も長いし羨ましいくらいだよ…。こんな女性と楽しめたら…って、私、何考えてるんだろう?)」
咲は、先日、憧100式と憧105式ver.淡との三人プレイがキッカケで、女性同士でのHに興味を持ち始めていた。
何気に憧123式ver.絹恵の身体に目が行ってしまう。
絹恵「どうしたん? そんなジロジロ見て?」
咲「あ…あの、何でもありません。すっごく綺麗な方だなって思って見惚れてただけですから。」
絹恵「そんな、綺麗やなんて…。」
咲「すっごく綺麗ですよ。嫉妬するくらいです。」
絹恵「イヤやわ。そんな褒めても何も出ぇへんで。」
咲「でも、絹恵さんって関西弁なんですね。憧さんも淡さんも標準語でしたけど。」
絹恵「ああ、うちは初期設定は関西弁やけど、オーナーの要望でどこの方言にも変えられるで。勿論、標準語も可能や。」
取扱説明書:憧123式ver.絹恵は、標準語‐方言切り替えが可能ですが、憧108式ver.姫子とは異なり自動設定ではありません。
取扱説明書:オーナーが憧123式ver.絹恵と合体した際に、どの言葉を話してもらいたいかを言っていただくことで切り替え設定されます。
取扱説明書:なお、オーナー以外は切り替え設定できません。
咲「今日は、うちでゆっくりしていってください。私、後片付けしますので、少しくつろいでいてください。」
咲がエアコンのリモコンを弄った。
ただ、このリモコンは調子が悪い。それを理由に何度もスイッチを連打した。前回の憧100式と憧105式ver.淡の時と同様だ。
咲「(もう、後戻りできないよね、多分…。)」
咲は、憧123式ver.絹恵の誤作動を狙っていた。
先日の快感が忘れられず、憧123式ver.絹恵をハメようとしていたのだ。
見た目には単なるドジにしか見えないのだが…。意外と腹黒い。
咲の狙い通り、急に憧123式ver.絹恵が股間を押さえ始めた。憧100式と憧105式ver.淡の時と同じで反応してしまったのだ。
絹恵「(なんなん、これ!?)」
絹恵「(もう耐えられへん。無茶苦茶Hしたくて、もう、抑え切れへん!)」
憧123式ver.絹恵は、生殖器官だけ男性だ。
しかも、その長さも太さも共に尋常ではない。この器官だけは、ただ女性オーナーを喜ばせるためだけに作られた逸品。
取扱説明書:憧シリーズは、テレビ、ビデオ、エアコン等のリモコンで反応することが稀にあります。
取扱説明書:その場合、1~2回のリモコン操作では然程影響はでませんが、連続でリモコンのスイッチを押しますと急激にHを要求するように変貌する恐れがありますのでご注意ください。
取扱説明書:憧123式ver.絹恵は、男性、女性、どちらも相手をすることが可能です。
取扱説明書:憧123式ver.絹恵には射〇機能が付いております。放出されるのは人工的な液体で、受精機能はありません。
取扱説明書:憧123式ver.絹恵は、どんな女性も虜にする身体的装備とテクニックを持ち合わせています。未経験者も安心して使えます。
取扱説明書:憧123式ver.絹恵がリモコンによる誤作動を起こした時は、射〇機能が発動するまで元に戻りません。
絹恵「これ、どうすればエエ?」←完全に肥大化している
咲「どうかしたんですか?(やっぱり憧ちゃん達と同じだね!)」
絹恵「ゴメン、咲ちゃん。もう、うち、耐えられへん!」
憧123式ver.絹恵がズボンを脱いだ。
そこで咲が見たモノは…。
女性のものでは無い。これは計算外だ!
ネット情報とかで知っていたものとは違う。長さも太さも倍だ!
まこ「ちょっと待ちんさい。これ以上はマズいじゃろ!」
まこのお陰で、一気に時間が飛び………、小一時間が過ぎた。
憧123式ver.絹恵は、落ち着きを取り戻していたが………、それイコール射〇機能が発動したと言うことだ。
つまり、咲は憧123式ver.絹恵のオーナーになった。
絹恵「ゴメンな、咲ちゃん。」
咲「いえ、私が悪いんです。憧ちゃんと淡ちゃんも、このリモコンでおかしくなったことがありますから…。」
絹恵「堪忍して!」
咲「私、(男の人(?)とは)初めてだったんだよね。」
絹恵「えっ?」
咲「なので、責任とってもらうからね。」
絹恵「責任って…。」
咲「(もう、京ちゃんのことは、どうでもイイや! 憧ちゃんにあげる!)」
取扱説明書:女性の方が憧123式ver.絹恵をご利用された場合、その装備・テクニックから男性に興味を無くす可能性がありますのでご注意ください。
取扱説明書:特に未経験者の方はご注意ください。
咲が再びリモコンを連打した。
これから咲と憧123式ver.絹恵は、夜のバトル再試合に突入する。
まこ「ここまでじゃ!」
何はともあれ、憧123式ver.絹恵は、このまま咲のアパートに同居することになった。
そして後日、憧100式は、咲から京太郎の妻の座を譲渡されることになる。
続く
次回の憧100式は、56本場のおまけになる予定です。