咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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五十七本場:十万点差

 休憩時間に入った。

 穏乃は卓から離れずに椅子に座ったまま背もたれに寄りかかっていたが、衣、淡、湧は一旦卓を離れて対局室から出て行った。

 

 

 衣は自販機に向かい、糖分補給にと最近アニメを見てはまりだしたイチゴ牛乳を買おうとした。が、残念なことに売り切れていた。

 ちなみに、そのアニメは白夜叉と呼ばれる侍とか新選組とかが出てくるヤツだ。

「売り切れとは、なんだかケチをつけられたようだ。それにしても、いつも思うが、つぶつぶドリアンジュースを買う人間はいるのか?」

 一人いる。

 恐らく、その人のためだけに麻雀大会の会場には、必ずつぶつぶドリアンジュースが置いてあると言って良いだろう。

 衣は、無難にオレンジジュースを買うことにした。

 

 

 一方、淡は外の見える通路にいた。

 時間は午後六時くらい。真夏なので、まだ外は明るいが、淡には、どこにどの星があるのかが分かる。

 ここで淡は、宇宙から降り注ぐエネルギーを吸収する。

 

「今更ながらに思うわ。光が白糸台にいてくれて助かったって。もし、光が従姉妹のサキと同じ阿知賀にいたら、もう優勝は阿知賀に決まってたもんね。」

 たしかに、光の阿知賀女子学院編入の可能性もあった。

 もしそうなっていたら、先鋒が咲、次鋒が玄、中堅が光となり、この三人で決着がついていただろう。

「でも、光はうちに来てくれた…。だから、決着は大将戦までもつれ込ませることが出来た。でも、26400点差か…。」

 一応、点数的には、後半戦で衣をまくれる位置にいる。しかし、そう簡単に衣が逆転を許すとは思っていない。

 それに、相変わらず穏乃の攻略は厳しい。敵の能力をキャンセルさせるなんて、多くの能力者にとっての天敵である。

 加えて、永水女子高校の大将、湧が意外に強い。

 

 春季大会では、湧の代わりに数絵がいた。数絵も強敵だったが、南場限定である。淡なら十分東場で攻めることが出来た。

 しかし、湧には安定した強さがある。振り込んだのは、穏乃への一回のみ。あの永水女子高校で大将を任されるだけのことはある。

「それにしても、思ったよりもキツイな、この大将戦…。」

 そう言いながらも、淡の目からは活力が消えていなかった。むしろ、強敵と戦えることを喜んでいるように見えた。

 

 

 この時、湧はトイレにいた。

 別に、同じチームから二名も失禁者を出すのは避けたいとか考えていたわけではない。咲と同じで、何かの区切りにトイレに行く条件反射が付いていただけだ。

「(天江さんのオーラは、たしかに普通ならチビりそう…。大星さんのオーラも強大。だけど、やっぱり東四局からの高鴨さんのオーラが恐ろしい。あれって…。)」

 六女仙の湧には、東四局時点で既に穏乃の背後に火焔が見えていた。しかも、全てを焼き尽くすほどの強烈なパワー。

 当然、湧には、その火焔の主の姿も見えていた。

「(あれって蔵王権現よね…。)」

 巫女でもない穏乃が何故?

 家が神社の憧なら、まだ分かるが…。

 

 しかし、理由はともあれ、穏乃の中には蔵王権現の力が宿されており、それは後半になって目覚めてくる。

 ならば前半が勝負。

 だからこそ、淡は初っ端からダブルリーチで攻め、衣も東場から海底撈月で攻めてきたのだろう。

 それを知らなかったのは湧自身の情報不足。これは仕方がない。

 しかし、それが分かった以上、後半戦は東場での高得点を目指す。

 

 

 それから少しして、衣、淡、湧の三人が対局室に戻った時、穏乃の隣には憧の姿があった。穏乃の様子を見に来ていたのだ。

「(やっぱりシズは心が強いよね。これなら、きっと大丈夫。)」

 今、穏乃は暫定2位。当然、勝利を諦めたりはしない。むしろ、相手が巨大な山として聳えるなら、それを登り詰めて制覇してやろうと言う気持ちが強くなる。

 穏乃が登り切れなかった山は、憧が知る限り咲くらいであろう。

 

 もう休憩時間が終わる。

「じゃあ、シズ。後は任せた!」

 そう言うと、憧は対局室を出て行った。

 

 

 衣、淡、湧が卓に付き、場決めがされた。

 後半戦は起家が淡、南家が衣、西家が湧、ラス親が穏乃になった。

 この席順を見て衣は、

「(春季大会と同じで後半戦は穏乃がラス親か。イチゴ牛乳が売り切れていて嫌な予感がしていたが、まさか当たるとは…。)」

 と思っていた。

 多分、イチゴ牛乳と場決めには何ら相関は無いと思うが…。

 

「じゃあ、行くよ!」

 淡が元気な声でサイを回した。

 後半戦東一局、淡の親。

 サイの目は6。最後の角の後が二番目に長いパターン。

 当然、淡は絶対安全圏を発動し、ダブルリーチの能力も開放していた。穏乃を叩くにはスタートダッシュしかないとの判断だ。

「リーチ!」

 淡以外は全員、五~六向聴のところへのダブルリーチ。相変わらず強烈である。

 しかし、スタートダッシュを狙うのは淡だけではない。

 衣も一向聴地獄の能力を発動した。狙いは、湧の聴牌を遅らせることと、淡よりも先に和了ること。強烈な場の支配力だ。

 衣は有効牌を常に引き続け、六巡目で聴牌。

 対する湧は、ローカル役満を聴牌するパワーを発動した。これにより湧は、衣の能力を跳ね返し、九巡目で双竜争珠を何とか聴牌した。

 

 十巡目、

「カン!」

 淡が暗槓した。この十巡目で丁度最後の角を越えることになる。

 そして、次巡、

「ツモ。ダブリーツモ槓裏4。6000オール!」

 紙一重の差で、この局は淡が征した。

 

 東一局一本場。

 ここでも淡が、

「リーチ!」

 ダブルリーチで攻めてきた。

 サイの目は5。まだまだ最後の角の後が長いパターンである。

 ここでも、

「ツモ! ダブリーツモ槓裏4。6100オール!

 淡が和了った。これで前後半戦のトータルで淡がトップに立った。

 しかし、これでも淡は安心できなかった。衣がこのままでいるとは思えないし、湧もとんでもない手を作ってくるだろう。

 それに後半に入れば穏乃の強烈な支配が待っている。しかも、その支配力は前半戦よりも後半戦のほうが強力である。

 淡にとって、これくらいのリードはリードとは思えなかった。

 当然、まだまだ貪欲に和了りを目指す姿勢を崩せない。

 

 東一局二本場。

 ここではサイの目が11。最後の角の後の牌が計八枚しかない。

 さすがに淡は、ここでのダブルリーチは見送った。

 この時、湧の配牌には{北}が一枚、{發}が二枚あった。数牌は飛び飛びであったが、赤牌を含む{②[⑤]⑧}の筋を使って手を伸ばす。

 まるで神を降ろした小蒔のように狙った牌が次々と入ってくる。そして、七巡目には{北}単騎で湧は聴牌した。

 八巡目、

「カン!」

 湧が{發}を暗槓した。

 嶺上牌は{中}。これをツモ切り。そして、次巡、

「ツモ。ツモメンホン發一通赤1。4200、8200!」

 渾身の倍満一撃。湧が{北}をツモって和了った。

 

 開かれた手牌は、

 {①②③④[⑤]⑥⑦⑧⑨北}  暗槓{裏發發裏}  ツモ{北}

 

 ローカル役満の青函連絡船である。

 この和了りを見て、衣の心に火がついた。

「面白い! やはり、麻雀はこうでなくてはな!」

 そう言うと、衣の全身から今までに無い強烈なオーラが放出された。

 これだけ強烈なパワーは、湧も滅多にお目にかかれない。小蒔が最強の神様を下ろした時に感じるものに近い。

 幼少の頃から小蒔や初美、霞と行動を共にして、オカルティックなパワーに慣れているはずの湧でさえ、若干吐き気をもよおすレベルだった。

 

 

 東二局、衣の親。

「(あれ?)」

 第一ツモを手にしたところで淡が驚いた。

 ダブルリーチの能力を発動していたはずだ。それで、極力配牌で聴牌、最悪でも配牌で一向聴で第一ツモで聴牌してダブルリーチをかけるつもりだった。しかし、配牌一向聴で第一ツモでは聴牌できずの状態だったのだ。

 衣の支配力が淡の能力に影響したのだ。

 淡は、ここから最悪の一向聴地獄に突入する。

 

 一方の湧は、淡の絶対安全圏により六向聴だった。ヤオチュウ牌が多く、風牌と{一}、{①}、{1}からなる七対子、世界一がローカル役満としては最短だった。

 しかし、この局は湧でさえも衣の支配に押され、一向聴まで手を進めるとは出来たが、その後、聴牌まで進めることは出来なかった。

 

「ポン!」

 衣が湧の捨て牌を鳴いた。これで海底牌を引くのが衣に変わった。

 当然、淡も湧も穏乃もツモ順をずらそうとしたが、鳴ける牌がでてこない。そのまま誰も鳴けずに衣の手に海底牌が渡った。

 

 三人とも、まるで身体が海底に引きずり込まれるような感覚に襲われた。

 そして、

「ツモ! タンヤオ対々三暗刻海底撈月赤2。8000オール!」

 当然の如く、衣が海底牌での和了りを決めた。

 この和了りで、穏乃は75700点まで点数を減らした。

 もし、これが25000点持ちであれば、残り700点である。

 それだけ他家の和了り点が大きいと言うことだ。

 

 東二局一本場。

 ここでも淡のダブルリーチの能力が、衣の能力に押さえ込まれた。配牌一向聴で、第一ツモでは聴牌できず。前局と同じパターンだ。

 それでいて絶対安全圏は発動している。湧は、ここでも六向聴だった。

「ポン!」

 またもや、湧の捨てた{①}を衣が鳴いた。これで衣が海底牌に向けてコースインした。

 衣の支配が強力過ぎて、誰もコースアウトさせることができない。そのまま海底牌が刻一刻と迫ってくる。そして、

「ツモ! 海底撈月!」

 またもや当然の如く、衣が海底牌で和了った。

 

 開かれた手牌は、

 {一一一111東東東白}  ポン{①①横①}  ツモ{白}

 

 ダブ東混老頭対々子三暗刻三色同刻海底撈月。親の三倍満だ。

「12100オール!」

 これで衣が断然トップに立った。

 

 現時点での後半戦の点数は、

 1位:衣 144000

 2位:淡 108000

 3位:湧 84400

 4位:穏乃 63600

 穏乃の得点が、既に25000点持ちであれば余裕で箱割れするところまで落ち込んだ。

 

 いくら他家がスタートダッシュに賭けているからと言っても、この穏乃の大失点は阿知賀女子学院一年生のゆいや美由紀にとっては余りにも衝撃的過ぎた。

 灼や晴絵、恭子にとっても想定外のようだ。

 それでも平静を装っていられる咲や憧、玄の神経が信じられない。

「先輩達は、どうして平気な顔をしていられるんですか?」

 ゆいが、思わず口にした。すると玄が、

「まだ対局は終わっていないのです! それに、穏乃ちゃんの表情。まだ諦めていないのです! なのに、私達が勝手に諦めてはダメなのです!」

 と力説するように答えた。

 まだ穏乃の勝利を信じている。いや、正確には、まだ穏乃が逆転劇を演じられる得点圏内にいる。だからこそ、普通にしていられるのだ。

 

 東二局二本場。ドラは{三}。

 これ以上の衣の連荘はマズイ。

 湧は、衣の親を流すため、ここで能力を全開にした。

 絶対安全圏によって配牌は最低最悪である。衣の一向聴地獄も健在である。しかし、言い換えれば一向聴までは手が伸びる。

 そして、一向聴から聴牌に進めるのは自分の能力。

 

 湧は配牌で、

 {一四七九②⑤27東南西北白}

 見事に六向聴牌だったが、ここから一切のムダツモ無しで、たった九巡で、

 {一二三三四[五]五五五六七八九}

 {四六七九}待ちで聴牌した。自らの能力で衣の一向聴地獄を吹き飛ばしたのだ。

 そして、次巡、

「ツモ! メンチンツモ平和ドラ3。6200、12200です!」

 またもや湧が渾身の一撃、{七}をツモって、三倍満を和了った。しかも、この形はアメリカの役満、ゴールデンゲートブリッジだ。

 

 この湧の和了りで、衣のモチベーションがさらに高まった。

「楽しませてくれるではないか! 前半戦では、安易に衣に海底牌を回していたので楽勝と思っていたが、なかなか面白い打ち方を見せてくれる!」

 衣から放たれるオーラの量がさらに増した。

 

 湧の能力を押さえ込むには、今まで出してきた程度のパワーでは足りないことを、衣は改めて認識した。

 しかも、次は湧の親。ここで湧に、連荘で高い手を連発させてはならない。

 当然、衣は湧の連荘を阻止しに行く。そのためにパワーを全開にしたのだ。

 

 

 東三局、湧の親。

 湧も、当然パワー全開で行く。

 

 この半荘は、淡の能力全開………いきなり宇宙パワーの爆発でスタートした。

 その後、湧も和了ったが、結局のところ、全体的には長野屈指の魔物に押さえ込まれている感じがある。

 

 しかも、もう少しすると、もう一人の魔物が目を覚ます。優勝するためには、その前に高得点を叩き出す必要がある。

 よって湧は、この親番で稼がなければならない。いや、ここで稼ぐしかない。

 

 しかし、衣の一向聴地獄が最高潮に高まり、淡も湧も聴牌できない。しかも、

「チー!」

「ポン!」

 衣が淡の捨て牌を二度に渡って鳴き、海底牌に向けてコースインしてきた。

 ここに来て、この支配。

 そのまま衣が海底牌を掴み、

「ツモ! 海底撈月タンヤオドラ4。3000、6000!」

 当然の如く和了った。

 

 現時点での後半戦の点数は、

 1位:衣 143800

 2位:湧 103000

 3位:淡 98800

 4位:穏乃 54400

 とうとう、穏乃の得点が原点の半分程度にまで落ち込んだ。トップの衣とはトリプルスコア近い。

 しかも、前半戦の収支も合わせた点差は、約110000点である。

 

 いくら穏乃の山支配が強力でも、これを逆転するのは厳しいだろう。役満でも出ない限り不可能である。

 さすがに、憧の顔からも平静さが消えた。

 これを見て玄が、

「これからなのです! ここからが穏乃ちゃんのホームグラウンドなのです!」

 意気消沈する控室に活を入れた。

 応援する側が先に諦めてはならない。

「そ…そうよね。今はシズを信じるしかないのよね。」

 そう言うと、憧は、両手を合わせて祈り出した。

 

 

 東四局、穏乃の親。ドラは{②}。

 ようやく卓上に靄が立ち込めてきた。この現象は、穏乃の能力のスイッチが入った証拠でもある。

「(やっと来たか。しかし、衣との点差は前半戦の分も合わせると110100点。今からこれを逆転できるかな?)」

 衣は、余裕の笑みを浮かべていた。

 ここから、穏乃は怒涛の和了りを見せるだろう。当然、衣も、コンピューター麻雀で特訓したとは言え、穏乃に振り込むこともあるかもしれない。

 もっとも、そう安々と振り込むつもりは無いが…。

 点差は十分。110100点差だ。衣が相手なら咲でも逆転は不可能であろう。

 既に衣は、龍門渕高校の優勝を確信していた。

 

 一方、淡は、

「(とうとう始まったか…。)」

 穏乃に全員の能力がキャンセルされ始めているのを感じ取っていた。

 視界が悪い。

 絶対安全圏も崩れ出した。前半戦よりも後半戦の方が穏乃の山支配は強力なのだ。

 しかし、そのような中でも淡は、

「(最初に二回和了ったきりで良いトコないな、私。でも、この親を流す! 衣も逆転する! 絶対勝つ!)」

 決して諦めることはなかった。

 

 湧も優勝を諦めていない。

「(この親を流す! ここで狙うは門前の東北自動車道!)」

 和了る意欲満々だった。

 この局、湧が狙っている東北自動車道は、{②}、{④}、{⑥}、{東}、{北}で作られた対々和。

 当然、これを門前で仕上げれば、ツモ和了りなら四暗刻、出和了りでもドラがあるので最悪でも三倍満に達する。

 

 しかし、湧が切った不要牌で、

「ロン。タンピン赤2。11600。」

 穏乃に後半戦初の和了りを決められてしまった。この時、湧は穏乃の聴牌気配に気付かなかった。

 

 とは言え、トップの衣と穏乃の点差は、まだ100000点近い。とんでもない点差だ。普通はメゲて勝利を諦めるレベルだ。

 それに、もし、これを逆転出来るとしても、まだまだ道のりは長いし険し過ぎる。途中で息切れしかねない。

 それでも、

「一本場!」

 穏乃の目は、まだ希望に満ちていた。




おまけ

咲 -Saki-とユリア100式のクロスオーバーです。
五十六本場おまけの続きになります。
本作は、マトモに書くと余裕でR-18になります。そのため、普段はR-18に突入しそうになった時点で積極的に染谷まこが登場し、時間軸超光速跳躍を発動してくれます。R-18の描写を全てスっ飛ばしてくれる素晴らしい特殊能力です。
しかし、今回も、前回に引き続き、その必要がありませんので、まこは登場しません。まこファンの方には、大変申し訳ございません。
また、憧100式の発明者として阿笠博士には、毎回特別出演していただいております。灰原哀と江戸川コナンもムダに登場しております。


憧 -Ako- 100式 流れ十二本場 ジン 残念だ

この日の昼、憧100式と憧105式ver.淡は、咲のアパートに来て憧123式ver.絹恵と仲良く駄弁っていた。
そこに、玄関の鍵を開ける音がした。
当然、憧123式ver.絹恵は、愛するオーナーである咲が帰ってきたと思って玄関まで出迎えに行った。
しかし、ドアが開くと、そこにいたのは咲ではなく和だった。
憧123式ver.絹恵は、和に『あなたは誰?』と聞かれ、自分が咲専用性の欲処理具であることを告げた。


和「性欲処理って………。」

絹恵「私が毎晩、相手をしています!」

和「まさか、そんなオカルト………。絹恵さんですか。覚えておきましょう。それと、あなたの後にいる二人にも見覚えがあります。」

絹恵「憧と淡ですか? 二人は私の姉機です。」

和「姉貴? 妹の方が身体も大きくて成長が良いようですね………って、咲さんは、あの日、姉妹丼してたってことですか?」

淡「ちょっと誤解しないでよね! 私も憧も、あの日限りだからね! 魔が差したって言うか、咲さん専用は絹恵だけだから!」

憧「それより、あなた、咲さんのストーカーでしょ?」

和「別にストーカーではありません。咲さんを愛し、常日頃、咲さんを自主的に警護している者です。」

憧「いや、それって正直、ストーカーが『自分だけは違う』って感じで言う言い訳そのものだから。」

和「いいえ、私はストーカーではありません。咲さんを守る側の人間です!」

憧「あのね………。それに、そもそも、なんで咲さんの部屋の合鍵を持ってるのよ!」

和「咲さんが無事暮らしているかを確認するためです。」

憧「そうじゃなくて、咲さんから貰ったものではないでしょ?」

和「まあ、本人からは、貰っておりませんが…。」

憧「咲さん、何回も鍵を付け替えたって言ってたけど、その度に、どうやって鍵を入手しているのよ?」

和「それは、企業秘密です。」


実は和は、咲が暮らすアパートを取り扱う不動産会社でアルバイトをしていた。
そこで、咲の部屋の合鍵を拝借していた。
言うまでも無いが、これは、やってはいけないことだ。
ただ、そう言った善悪でさえも正しく認識できない状態になっていた。


和「それに、あなた達みたいな、どこのウマの骨か分からない存在に付きまとわれていないかチェックしなければなりません!」

憧「ウマの骨って…。」

淡「ウマ並はあるけどね!」


憧105式ver.淡が、憧123式ver.絹恵のズボンを下ろした。
随分と手馴れている。あっと言う間だ。
まあ、ズボンを下ろすのはダッチ〇イフである憧シリーズにとって朝飯前なのは言うまでも無い。

和は、憧123式ver.絹恵の巨大な性器を目の当たりにして硬直した。


和「お………男?」

絹恵「男なのは、ここだけです。あとは、全部…心も女です!」

和「咲さんは、毎晩、これで攻められているってことですか?」

絹恵「ま…まあ、そうなりますけど…。」

和「そんな………、咲さんは、男性には絶対に振り向かないって思っていたのに! こんなものの虜になっていただなんて! 不潔です! そんなオカルト…ないない! そんなのっ!!」


そう言うと、和は、その場から逃げるように泣きながら去って行った。
またもや、人格が和から初美に入れ替わった。それだけ和としては、憧123式ver.絹恵が一部男性だったことが衝撃的過ぎたと言える。
ただ、そのショックが余りにも大き過ぎて、今日のことは憧105式ver.淡が憧123式ver.絹恵のズボンを下ろしたところから何も思い出せなくなる。

その頃、咲は京太郎と一緒に大学で講義を受けていた。
一緒に交〇ではない。
決して〇尾ではない。
講義だ。

さて、一方の阿笠博士はと言うと…。
ちょっとトイレに行って研究室に戻ってきた。
そして、憧シリーズ新作の設計図を少し手直ししようとしたが、何故か、さっきまでそこにあったはずの設計図が無かった。
それだけではない。
憧シリーズ100式、105式、108式、110式、123式に関する資料も全て消えていた。


博士「哀君、新一…じゃなかった、コナン君。ワシの設計図とか資料とかを、どこへやったか知らんかね?」

哀「知らないわよ。あの後、私達、ここ(哀の部屋)に戻ってずっと交〇してたから。」←〇に入るのは『流』ですね、きっと

コナン「設計図とか資料がどうかしたのか?」

博士「トイレから戻ったら無くなってたんじゃ!」

コナン「設計図って、憧シリーズ最新式のヤツか?」

博士「そうじゃ。それと、資料のほうは、憧シリーズ五体に関するもの全てじゃ!」

コナン「じゃあ、あの超高性能ダッチ〇イフに関する情報を、全部誰かに盗まれたってことか?」

博士「そうなんじゃよ。」

コナン「あれはあれで、AI学習さえしっかり出来れば、欲しがるヤツは結構いるはずだからな…。俺だって哀がいなかったら…。」

哀「ユーザーになりたいってこと?」

コナン「あくまでも哀がいなかったらの話だぞ!」

哀「分かってるわよ。まあ、当然、コナン君には必要の無いものでしょうけど!」

コナン「も…勿論…。」

哀「なによ、その自信無さげな顔は?」

コナン「いや、別にそう言うわけじゃ…。それで博士、誰か盗もうとしているヤツの心当たりは?」

博士「それが、まるっきり…。」

哀「ちょっと待って。もしエロカワ君の言うように欲しい人間が多いのなら、商品価値は高いってことよね?」

コナン「当然、そうなるな。」

哀「それに、胸も大きくて男女兼用まで実現化している。だとすると、もしかしてクロの組織が…。」

コナン「黒の組織って、奴らが?」

哀「そう。ただ、厳密には、エロカワ君の言う『黒の組織』の下部組織に位置する『玄の組織』。オモチ教集団よ。」

コナン「なんだそりゃ?」

哀「たしか、『オモチの、オモチによる、オモチのための政治』が彼女達のモットー。」

コナン「彼女達って、女性集団?」

哀「女性だけしか入れないって聞いてるわ。モチベーションならぬオモチベーション維持が大事だとか、変なこと言ってたわね。」

コナン「訳分かんねー!」


しかし、盗み出したのは『玄の組織』ではなく、普通に『黒の組織』だった。
ちなみに、玄の組織は、いずれ本作に登場させることになるだろう。


ウォッカ「兄貴。こんなモノを盗んでどうするつもりで?」

ジン「俺が使うためだ。」

ウォッカ「兄貴が?」

ジン「誤解するな。飽くまでもハニートラップ要員として使うためだ。」

ウォッカ「…。」←疑いの視線

ジン「決して、俺の夜の楽しみのために盗んだわけではない。これを、我が組織のアガサ博士に渡すんだ。」


アガサ博士………アーント・アガサのコードネームが付いた機械工学の博士(男)が黒の組織にいた(ことにしてください)。
男なのにアーントなのは、ちょっと可哀想な気がするが、コードネームは上が勝手に付けるので、まあ仕方がない。
彼は、阿笠博士のクローンで、彼もまた優れた頭脳の持ち主だった。
しかし、オリジナルの阿笠博士よりは、若干発想力が低いようだ。

それから小一時間後、アガサ博士はウォッカから憧シリーズに関する資料一式と、最新作の設計図を渡された。


アガサ「これが噂に聞く憧シリーズか…。しかし、なんだ、このインプリンティング機能と言うのは。」

ジン「俺は、なかなか面白い機能だと思うがな」

アガサ「いや、これがあってはハニートラップ要員としては使い難いのではないか?」

ジン「そこは敢えてインプリンティング機能を残してくれ。飽くまでも俺の部下として育成するわけだからな。俺がオーナーになる。」

アガサ「(なんの部下だか…。)」

ジン「必要な経費は出す。大至急、取り掛かってくれ。」

アガサ「顔の好みとかはありますか?」

ジン「シェリーに似た…。」

アガサ「シェリー?」

ジン「いや、なんでもない…。そうだな、ハニートラップ要員として通用する美人顔なら何でも良い。」

アガサ「了解。(では、俺の好み顔で造るか)」


アガサ博士は、早速製作に取り掛かった。
そして数日後、阿笠博士の設計に、アガサ博士が改良を加えたニュータイプのAI搭載人型性欲処理具、自律型ダッ〇ワイフが完成した。
その名も、久HT-01。HTはハニートラップの略だ。決してHisa Takeiではない。


久「んーん。」

アガサ「目を覚ましたか?」

久「おはようございます…って、なんで私、裸なの?」

アガサ「それは君が我々の科学力を結集して、たった今、作り出された超高性能…。」

久「(もしかして最終兵器?)」

アガサ「ダッチ〇イフだからだ!」

久「悪の組織と戦う最終兵器じゃないの?」

アガサ「それは無い。そもそも、ここが悪の組織だ!」

久「えっ?」

アガサ「君は、敵対組織の連中にハニートラップを仕掛けるために生まれてきたAI搭載人型性欲処理具、自律型ダッ〇ワイフ、久HT-01。」

久「では、一応目的を持って誕生したと言うわけね。善悪はともかくとして。」

アガサ「そう言うことだ。取扱説明書の内容は、君の頭の中に全て記憶されている。目を閉じれば分かる仕組みになっている。」

久「へぇー。」

アガサ「早速服を着てくれ。製作者の俺でも目のやり場に困るからな。」


久HT-01がベッドから降り、服を着はじめた。
(一応)男の視線を釘付けにする脚のライン。
ハニートラップを仕掛けてもなお、平然としていられるであろう強かな性格。
たしかに、黒の組織の一員として生きて行けるだけのキャラクターを持つ。

そこに、まるで生きた女性そのものの性処理用具がありながらも、アガサ博士は、久HT-01に襲い掛かる気配を一切感じさせなかった。
そもそも、阿笠博士と違ってエロに飢えている感じではなかった。それ故であろうか、久HT-01は、アガサ博士に特段嫌悪感を抱くことは無かった。

丁度、久HT-01が服を着終えた時、そこに突然ジンが乱入してきた。


ジン「完成したって聞いて飛んできたぞ! では、インプリンティングのため、早速俺が使って…。」

久「却下!(インプリンティング機能なんて無いし!)」


取扱説明書:久HT-01は、憧シリーズとは異なりインプリンティング機能は搭載しておりません。


アガサ博士は、ジンの要求を無視し、久HT-01にインプリンティング機能を取り付けなかった。ハニートラップ要員として使う以上、インプリンティング機能は邪魔になると判断したからだ。

普段クールなジンにしては珍しく、エロ丸出しの顔で久HT-01に近づいてきた。
対象が、作り物とは言え生きた女性そのものに見える性処理用具なのだから、いくらジンでも仕方がないのかもしれないが…。
ただ、これには、さすがに久HT-01も後ずさりした。
そして、久HT-01がの手が近くのコンピューターに触れた。
その直後、そのコンピューターは激しい轟音をあげて爆発した。


取扱説明書:久HT-01は、敵対組織のコンピューターを効率良く破壊するため、意図的に特殊な電磁波を出して機械類を爆発させることができます。


一つ、また一つと、研究室に設置された種々機材が次々に激しい炎を噴き上げた。
その場が火の海になるのは時間の問題だった。
久HT-01は、そのドサクサに紛れて研究室から外に逃げ出した。


久「でも、この電磁波を出す能力って、超機械オンチな娘がコンピューターを破壊しているみたい!」


まあ、そのうち、電磁波を出さなくてもコンピューターを破壊する超機械オンチな娘に出会えるであろう。

ジンは、久HT-01を追い駆けようとしたが、ここ…アジトに消防や警察が来ては面倒だ。
久HT-01よりも消火の方が優先。ジンはアガサ博士と共に、消火活動を始めた。
しかし、久HT-01が建物の出口に向かって通ったところから、次々と激しい火柱が上がってゆく。
彼女が通るそばから組織のコンピューター等が破壊されて派手に炎が吹き荒れたのだ。
これを意図的にやれるのだから、久HT-01は相当強かな性格なのだろう…。
それで、ジンもアガサ博士も業火で出口を塞がれ、帰らぬ人となってしまった。
これにより黒の組織内で久HT-01の顔を知る人間はいなくなった。



続く
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