咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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五十八本場:インターハイ 団体戦決着!

 東四局一本場、穏乃の連荘。

 一気に靄が濃くなった。

 衣のレーダーも効かなくなった。さすが後半戦の穏乃である。

 しかし、衣は、これに備えて特訓してきた。何となくだが、七巡目に穏乃が聴牌したような気配を微かに受けた。

 

 恐らく待ちは、{①}、{④}、{⑦}辺り。

 ところが、そう思った矢先に湧が{①}を切った。

 しかし、これに対して穏乃は何の動きも見せない。

「(おかしい? 衣が読み間違えたか?)」

 その後、穏乃はツモ切りで手変わり無し。

 続くツモで、衣は有効牌を引き、{①}切りで聴牌できる形になった。

「(なら、{①}切りだ。これで衣が穏乃の親を流す!)」

 和了に向けて衣が{①}を強打した。

 しかし、これで、

「ロン。中ドラ2。7700の一本場は8000。」

 穏乃が和了った。ダンラスの身でありながら、穏乃は湧の捨て牌を敢えて見逃して衣から直取りしたのだ。

「(穏乃のヤツ~…。)」

 衣の顔が苦み走った。まさか、こんなことをしてくるとは思わなかったのだ。

 しかし、衣は深呼吸して平静を取り戻した。

 ここで心が乱れては、さらなる振り込みを誘発する。恐らく、それが穏乃の狙いだろう。逆転するためには衣から高い手を連続して直取りするのが最も効率的だからだ。

「(今度こそ衣達が勝つ。穏乃の思うようにはさせないぞ!)」

 再び衣が不敵な笑みを浮かべた。

 

 東四局二本場。

 湧は、

「(ちょっとマズイな私。前々局では振り込んでるし、前局も本当は振り込んでいたんだよね。和了りも大事だけど、今は振り込みも回避しないと…。)」

 そう心の中で呟くと、両頬を叩いて気合いを入れ直した。

 この局面で和了り出したのはダンラスの穏乃。ツモ和了りされても自分が振り込みさえしなければ衣との点差は変わらないはず。

 ならば、一旦能力の放出を止めて、力を蓄えようと湧は考えた。

 

 淡も衣も湧も手が進まない。明らかに穏乃の山支配による影響だ。

 そのような中で一人手を進め、

「ツモ。2600オールの二本場は2800オール。」

 穏乃がタンピンツモドラ1で和了った。

 

 東四局三本場。

 衣は、序盤から穏乃の手から恐ろしいほど強大なエネルギーを感じていた。

 既に穏乃に能力の大部分をキャンセルされているはずなのだが、それでも感じ取れるくらい、とんでもなく高い手と言うことだろう。

 これは、絶対に振り込んではならない。そう直感している。

 衣は、穏乃の安牌をひたすら切り続けた。

 これを見た淡も、

「(衣が降りるってことは、シズノの手は相当ヤバイってことだね!)」

 下手に攻めるのをやめた。

 

 数巡後、

「ツモ! ダブ東混一ツモ三暗刻ドラ3。12300オール。」

 平和形が多い穏乃にしては珍しい和了りだった。衣の予想通り、高打点の手だ。

 

 現時点での後半戦の点数は、

 1位:衣 128900

 2位:穏乃 94700

 3位:淡 91900

 4位:湧 84500

 穏乃が怒涛の和了りで一気に原点近くまで復帰してきた。

 しかし、前半戦の収支を加えると、依然、衣と穏乃の点差は50000点以上ある。そう簡単に逆転できるレベルではない。

 

 東四局四本場。

「(一局休んで力が随分蓄えられたと思う。ここは、和了りを目指す!)」

 湧が再びスイッチを入れた。そして、

「ポン!」

 穏乃が捨てた{白}と、

「ポン!」

 衣が捨てた{中}を早々に鳴き、

「ツモ!」

 その勢いで、湧は一気に和了りまで持って行った。

 

 開かれた手牌は、

 {一一一①①11}  ポン{横中中中}  ポン{白白横白}  ツモ{1}

 これは、宝紅開花と呼ばれるローカル役満である。しかし………、

「3400、6400!」

 ここでは白中混老頭対々和のハネ満止まりになる。とは言え、これで湧は前後半戦の総合2位に浮上した。

 

 

 南入した。

 南一局、淡の親。

 後半戦で淡が和了れたのは、初っ端の二回のみ。まるで竜頭蛇尾だ。優勝するには、とにかく和了らなければ…。

 しかし、絶対安全圏もダブルリーチもキャンセルされている。本当に穏乃の能力は忌々しくてならない。

 それに打ち勝つつもりで春季大会以降、努力してきたはずだが、それでも勝利への道筋が見えない。

 

 ただ、自棄を起こしてはならない。そうなった時点で自分の敗北が決まる。

 安くても良い。この親で連荘する。

 そう淡が思っていた矢先だった。

「ロン。8000。」

 湧が穏乃に振り込んだ。

「(クッ!)」

 思わず淡の顔が歪んだ。大事な親番を流されてしまったからだ。

 しかし、まだ白糸台高校の優勝が無くなったわけではない。今の点差でも衣から役満を直取りすれば逆転優勝できる計算だ。

 それに、もし衣が誰かに振り込めば、それだけ逆転出来る可能性は上がるはず。まだ諦める必要はない。

 

 

 南二局、衣の親。ドラは{2}。

 この親番での衣の選択肢は二つ。

 一つ目は、ここでも稼ぎに出ること。もっと点差を広げられれば、穏乃と言えども衣に追いつくのは不可能になる。

 二つ目は、この局では能力を蓄え、敢えて誰かに安手を差し込むなどして自分の親を流し、続く南三局、オーラス共に衣が、どんな手でも良いからさっさと和了って優勝を決めること。それこそ、安手で流せば良い。

 しかし、虐殺一本で生きてきた衣だ。後者のような麻雀は、本来、衣の性に合わない。

 その手の打ち方は、むしろ点数調整に長けた咲の領分だろう。

 やはり穏乃の様子を見ながら、安手ではなく納得できる和了りを目指す。それでこそ天江衣だ!

 

 一層、靄が激しくなってきた。

 そのような中で、衣は穏乃から聴牌気配を感じ取った。能力で感じたのではない。穏乃の仕草を観察して、そう思ったのだ。

 穏乃の捨て牌から察するに、待ちは{258}。

 そこに湧が{5}を捨ててきた。

 しかし、特に穏乃からの反応は無い。

「(また、東一局一本場と同じように衣からの直取りを狙っての見逃しか? でも、衣は同じミスはしない。)」

 

 次巡、衣の手牌は、

 {二三四六七八[⑤]⑥⑦⑦588}  ツモ{4}

 これで聴牌。

 

「({36}待ち! この局は、衣がもらった!)」

 そして、ここから衣は勢い良く{⑦}を捨てた。しかし、

「ロン。」

 これで穏乃に和了られた。

「えっ?」

 衣は、信じられないとでも言いたげな表情を浮かべていた。

 

 開かれた穏乃の手牌は、

 {三四[五]⑦⑦22234[5]67}

 {⑦258}の変則待ちだった。衣の読みは間違っていなかったが、完全ではなかった。

 

「タンヤオドラ5。12000。」

 まさかのハネ満直撃。

 これで、穏乃と衣の点差は、前後半合わせて25900点まで縮まった。

 

 

 南三局、湧の親。ドラは{2}。

 サイの目は7。最後の角の後が最も長いパターンだ。

 

 後半戦での衣と穏乃の点差は5200点だが、前後半戦トータルなら普通の麻雀で言えば圧倒的なリードをしているはずだ。

 それなのに、衣には大きなプレッシャーがかかっていた。

『もう振り込めない!』

『一歩間違えば逆転される!』

 そう感じるほど穏乃の猛追が恐ろしかった。

 

 このまま恐れていては穏乃の思う壺。衣は、頭を切り替えることにした。

 自分の親番は流れたが、湧の親を流し、穏乃の親を蹴れば優勝できる。

 今は、能力に頼らずに打とう。もう、性に合う合わないは関係ない。チームの勝利のためだ。最も穏乃の支配が強くなるオーラスに向けてエネルギーを溜めておこう。

 なので、ここは安手で良いから和了れば良い。いや、手なりに打って安手を和了って流す。そう考えることにした。

 

 絶対安全圏は発動していなかった。しかし、

「リーチ!」

 淡がダブルリーチをかけてきた。どうやら、ダブルリーチの能力一本に絞って淡は勝負を賭けてきたようだ。

「ポン!」

 衣は、淡のリーチ宣言牌である{中}を鳴き、さらに次巡、

「ポン!」

 今度は穏乃が捨てた{白}を鳴いた。敢えて{白}を安牌として残さずに、早和了りを選択したのだ。

 もし、ここで淡に振り込んでも、暗槓前ならダブルリーチのみ。安手を振って流せる。

 

 既に役はある。

 あとは手を完成して和了るか、淡に安手を振るか、衣にとっては、それだけのはずだ。

 

 穏乃の山支配の中、普通に打っていては手牌とツモが巧く噛み合わない。そこで衣は、ツモの流れを重視して、元からあった嵌張や辺張を捨てていった。

 これが功を奏したのか、衣は、何とか索子の混一色手を聴牌した。しかもドラ3。ハネ満手だ。これなら自らが和了って場を流せるはず………。

 しかし、思いの外、時間がかかった。既に最後の角が迫っている。恐らく、同巡で淡が暗槓してくるだろう。

 

 衣の手牌は、

 {224[5]78南}  ポン{白横白白}  ポン{横中中中}  ツモ{6}

 当然、ここから打{南}。

 

 同巡に、

「カン!」

 やはり、淡が{⑨}を暗槓してきた。

 最後の角の直前の牌。これで丁度、最後の角を越える。

 となれば、次巡で誰かが振り込むか淡がツモるか…。それがお決まりのパターンだ。しかも、{⑨}は穏乃に能力をキャンセルされない限り槓裏になる。

 嶺上牌は{北}。これを淡はツモ切りした。

 

 続く衣のツモは、ドラの{2}だった。

 ここで、{8}切りで{347}の変則待ちに変えれば倍満になる。しかし、ここで衣は嫌な予感がした。

 人間としての第六感だ。

「(オーラスのために取っておいた力だが、ここで使わないとマズイ気がする。)」

 衣は、一気にオーラを開放して、他家の手牌を自前のレーダーで確認した。

 

 淡の手牌は、

 {一二三四五六①①56}  暗槓{裏⑨⑨裏}

 待ちは{47}。

 恐らく、ダブルリーチ槓裏4のハネ満。12000点。

 

 湧の手牌は、

 {1116688南南南北北北}

 待ちは{68}。ツモられたら四暗刻。ヤバい手だ。

 振り込んでも門前混一色南対々和三暗刻の親倍。24000点。

 ちなみに、この手は、{5}ならアメリカの役満、南北戦争になる手だ。ここでは認められない和了りだが…。

 

 穏乃の手牌は、

 {[五]五六六七七②③④[⑤][⑤]34}

 待ちは{25}。

 平和タンヤオ一盃口ドラ3のハネ満。12000点。

 

 まさか、手牌の全てが誰かの和了り牌になっていようとは…。

 全ては{白}を鳴いたことが原因であろう。手を進めることばかりに気を取られ過ぎていた。

 いや、いっそのこと暗槓前に淡に差し込んでおけば良かった。

 

 優勝するには穏乃への振り込みは避けなければならない。穏乃との前後半戦トータルの差が1900点まで一気に縮められてしまう。

 湧への振り込みは大き過ぎる。それこそ、穏乃に振り込んだのと同じで、穏乃との前後半戦トータルの差を1900点にする。

 いや、それ以前に湧に前後半戦トータルを逆転される。それは、さすがにマズイ。

 これは、淡に振り込むしかない。それで、あわよくば槓裏が乗らないことを期待するだけだ。

 

 衣は、

「これでどうだ!」

 と言いながら{7}を切った。

 当然、淡が、

「ロン!」

 見逃さずに和了った。そして、裏ドラを確認すると…たしかに槓裏表示牌は{⑧}。淡の能力はキャンセルされていなかった。

 いや、穏乃は敢えてキャンセルしなかったのだろう。衣との点差を縮めるために。

「ダブリードラ4。12000!」

 これで、淡の後半戦順位が4位から3位に上がった。

 

 後半戦の点数は、

 1位:穏乃 108300

 2位:衣 101500

 3位:淡 100500

 4位:湧 89700

 

 そして、前後半戦の現段階でのトータルは、

 1位:衣 218700

 2位:穏乃 204800

 3位:淡 191300

 4位:湧 185200

 トップの衣とラスの湧の点差は33500点。一応、衣から倍満を直取りするか役満をツモ和了りすれば湧も逆転できる。そういった意味では、まだどのチームにも優勝の可能性が一応ある。

 

 淡が逆転するには、衣から倍満を和了るか三倍満をツモ和了りするかが必要だが…、ダブルリーチ槓裏4だけでは優勝できない。手作りが必要だ。

 穏乃はラス親なので一回で勝負を決める必要は無い。

 

 

 そして迎えたオーラス、穏乃の親。

 前後半戦通じて最も靄が濃くなった。いや、これは濃霧と言うべきであろう。穏乃の能力が最高潮に達したのだ。

 淡の絶対安全圏もダブルリーチの能力も完全にキャンセルされた。衣の能力の全ても、湧のローカル役満の能力も、全てが消えた。

 そして、たった四巡で、

「ロン。タンヤオのみ、2000。」

 穏乃が門前で湧から和了った。しかし、これでは、まだ前後半戦トータルで穏乃は衣を逆転していない。当然、穏乃は、

「一本場!」

 連荘を宣言した。

 

 オーラス一本場。

 卓上には濃霧がかかったままだ。しかし、牌が見えないわけではない。

 衣は、

「(衣が和了って勝負を決める!)」

 クズ手で良いから和了りだけを目指した。そして、穏乃が捨てた衣の自風である{西}を、

「ポン!」

 一鳴きした。これで二向聴。

 次巡、手が進んで一向聴、さらに次巡、衣は聴牌した。そして、

「(深山幽谷の化身! 勝負だ!)」

 勢い良く切った牌で、

「ロン。タンピンドラ1。5800の一本場は6100。これで和了り止めにします。」

 衣は穏乃に振り込んだ。

 

 これで後半戦の点数は、

 1位:穏乃 116400

 2位:淡 100500

 3位:衣 95400

 4位:湧 87700

 

 そして、前後半戦のトータルは、

 1位:穏乃 212900

 2位:衣 212600

 3位:淡 191300

 4位:湧 183200

 たった300点差、まさに一本場分の差で穏乃が逆転して阿知賀女子学院が大将戦の勝ち星を掴み取った。

 

 これで順位は、

 1位:阿知賀女子学院 勝ち星2(総合得点:1620600)

 2位:龍門渕高校 勝ち星1(総合得点: 935000)

 3位:白糸台高校 勝ち星1(総合得点: 904500)

 4位:永水女子高校 勝ち星1(総合得点: 539900)

 阿知賀女子学院が優勝の座を勝ち取った。

 

 

「「「「ありがとうございました!」」」」

 

 対局後の挨拶を終えると、大将の四人は、そのまま対局室で待機させられた。

 暫くして、先鋒から副将までのメンバーと補員、監督、コーチ達が対局室に入室してきた。これから表彰式が行われるのだ。

 

 白糸台高校メンバーの首に銅メダル、龍門渕高校メンバーの首に銀メダル、阿知賀女子学院メンバーの首に金メダルが順にかけられていった。その様子は、まるで春季大会のデジャブーであった。

 4位だけが違う。春季大会では、その場に居たのは臨海女子高校、今回の4位は永水女子高校だ。

 

 優秀選手には、永水女子高校の神代小蒔、白糸台高校の宮永光、龍門渕高校の龍門渕透華、阿知賀女子学院の高鴨穏乃が選ばれた。

 四人とも、決勝戦での活躍が高く評価されたと言って良いだろう。

 

 本大会では、審査員特別賞が設けられた。惜しくも優秀選手に選ばれなかったが、その活躍が非常に目を惹いた選手に贈られることになった。

 受賞したのは龍門渕高校の天江衣、阿知賀女子学院の松実玄、粕渕高校の石見神楽の三人であった。

 衣は、準決勝戦までの大虐殺振りが、玄は決勝戦で見せた奇跡とも言える六回の大三元和了が、神楽は準決勝戦で見せた大活躍が評価された。

 

 最優秀選手には阿知賀女子学院の宮永咲が選ばれた。

 これは、言うまでも無いだろう。幻の役満とも言える四槓子を、あれだけ好き放題和了っていたのだから…。

 

 インターハイ団体戦は、大将戦での大逆転劇を演じた阿知賀女子学院の、春夏二連覇達成で幕を閉じた。

 しかし、まだインターハイは終わらない。一日置いて個人戦が執り行われる。




おまけ

咲 -Saki-とユリア100式のクロスオーバーです。
五十七本場おまけの続きになります。
本作は、マトモに書くと余裕でR-18になります。特に久HT-01は手が早い可能性があるため、ちょっとでもR-18要素が疑われた時点で積極的に染谷まこが登場し、時間軸超光速跳躍を発動してくれます。R-18の描写を全てスっ飛ばしてくれる素晴らしい特殊能力です。
これまで、憧100式の発明者として阿笠博士には、毎回特別出演していただいておりましたが、今回は登場しません。灰原哀と江戸川コナンも出番はありません。


憧 -Ako- 100式 流れ十三本場 みんながハイ 団体で淫活?

阿笠博士の研究室から、憧シリーズ最新型の設計図と、これまで作り出された五体の憧シリーズの資料が盗まれた。
盗んだのは黒の組織。そして、これらの情報を元に、黒の組織ではAI搭載人型性欲処理具、自律型ダッ〇ワイフ、久HT-01を作り出した。
ジン曰く、これはハニートラップ要員としてであり、自分が楽しむためではないとのことだったが…。
しかし、久HT-01が黒の組織の研究室から逃げ出す際に起こした火災でジンは帰らぬ人となった。


久「ここまで逃げてくれば大丈夫よね?」

久「この電磁波は、これからは絶対に出さないようにしないといけないわね。思ったより危険だわ。今回は、逃げ出すために必死で出したけど…。」

久「でも、あんな大火事にしちゃって、絶対に死人…、出たわよね。いくら悪の組織でも…。悪の組織と戦う最終兵器とか、一瞬、憧れたけど、それって結局、人殺しと同じなのよね…。」

久「でも、まあ、今回は仕方がないか!」←開き直った顔


久HT-01は、まだジンとアガサ博士が死んだことを知らなかった。
しかし、被害者ゼロはありえないと思い、自己嫌悪に陥って………はいなかった。
元々ハニートラップ要員としてAIに機械学習を施されているためだろう。
人を殺すのに躊躇いが無いようだ。
それはそれで危ない存在になり得ると思うが………。

例によって、久HT-01は、憧100式達が暮らす街に逃げてきた。元の設計者が阿笠博士だけに、行動パターンは似ているようだ。

また、久HT-01は、憧シリーズとベースは同じなので、何らかの形で食事にありつけさえすれば動き続けることが出来るように造られていた。
ただ、これからどうやって存在し続けようか?
どうやって食事にありつこうか?
それは大きな問題であった。今の久HT-01には頼れる相手がいないのだ。

この頃、咲は大学の先輩………美穂子と哩とゆみと一緒に雀荘にいた。
美穂子は、咲のアパートの近く………と言うか、京太郎のアパートの向かいのアパートに住んでいた。

彼女の人並外れた美しい容姿は、男性であれば殆どの者達が率先して自分の嫁にしたいと思うレベルであった。
世の殆どの女性達も、嫉妬を通り越して憧れの念しか抱かない。
そんな究極の美を与えられたような美穂子に、当然のことながら京太郎は強く憧れの念を抱いていた。
しかも、家事も一級品。
非の打ち所の無い存在だ。
問題があるとすれば、基本的に美穂子は男性には興味を示さないことであろうか?
ただ、これは言い換えれば、京太郎が美穂子の近くにいても、京太郎の一方通行にしかならない。つまり、京太郎が美穂子に取られることは無い。
これは、咲にとって安心材料であった。
まあ、それも過去の話だが…。


哩「(ハネ満聴牌。咲が起家で親だけど、ここは攻める!)」

哩「リーチ!」

咲「それ、カンです。」

哩「えっ?」

咲「もいっこカン! もいっこカン! ツモ! 対々三暗刻三槓子ダブ東混一嶺上開花。二本場で36600! 哩先輩のトビで終了です。」

哩「あちゃー、やられたか。」

ゆみ「今日も咲ちゃんの一人勝ちか。」

美穂子「もいっこカンも出ましたしね。」

美穂子「ところで、咲さんのところに転がり込んだ子がいるって話を和ちゃんから聞きましたけど?」

咲「えっ? 何で和ちゃんは知ってたんでしょう?」

美穂子「咲さんの家に行ってドアを開けたら女の子がいたって。咲さんが寝取られたって嘆いていたわよ!」

咲「えっ? それって、もしかして、また勝手に合鍵を作ったのかな?」

美穂子「鍵を渡していたんじゃないの?」

咲「それは絶対有り得ません。ストーカーに鍵を渡す人間が何処にいますか?」

美穂子「和ちゃんって、ストーカーだったの?」

咲「もう、不動産屋さんにお願いして何回も鍵を付け替えたんですけど、いつの間にか合鍵を持っていて…。」

美穂子「それはそれで怖いわね。」

咲「そもそも、寝取られるも何も、和ちゃんのストーカー行為が怖くて、私の方から距離を置いてたんですけど…。」

美穂子「和ちゃんのことを避けてたってことね?」

咲「はい。」

美穂子「でも、和ちゃんは避けられてるなんて思っていないようだったけど…。それで、その女の子って、どんな感じの子?」

咲「絹恵ちゃんのことですか?」

美穂子「絹恵ちゃんって言うのね。」

咲「はい。とても美人な子です。でも、先輩にはあげませんよ。」

美穂子「先に言われちゃった。」←男性に興味なし

咲「咲だけに。」

哩「でも、なんか、最近、そう言うのが多いのかな?」

美穂子「えっ? もしかして、若い女の子が転がり込んで来るのが?」

哩「そう。」

美穂子「嘘? 私のところには来てくれていないけど?」

哩「実は、私のところにも一人いて。姫子って名前なんだけど…。」

美穂子「えっ? なにそれ? はじめて聞いたわよ!」

哩「言ってなかったからね、誰にも。それから、うちのアパートの同じ階、四部屋とも若い女の子が転がり込んでいるのよ。」

咲「そうなんですよね。京ちゃんのところの憧ちゃんが最初で、その隣の俺君のところに淡ちゃん。その後、哩さんのところにも、その隣の内木さんのところにも…。」

美穂子「そうなんだ…。それで、もしかして毎晩Hなことを?」

咲・哩「「まあ、それなりに…。」」

美穂子「(羨ましい)ええと、ゆみは桃子ちゃんと一緒に暮らしてるのよね?」

ゆみ「まあね。」

美穂子「なんか、私だけ孤独な感じ。」


丁度この時、雀荘のドアが開き、憧123式ver.絹恵と憧108式ver.姫子が入ってきた。二人とも、オーナーを迎えに来たのだ。


咲「絹恵ちゃん?」

哩「姫子?」

美穂子「えっ? この子達が二人の?」

咲「そうです。この子が絹恵ちゃんです!」

哩「こっちが姫子。」

美穂子「どっちもカワイくて、なんか羨ましいを通り越して悔しい。」

咲「では、哩先輩のトビで区切りが付きましたし、では、これで私は帰ります。」

哩「じゃ、私も。」

ゆみ「私のほうも桃子が待ってるしな。」

美穂子「これで終わり? まっ、仕方がないかしら。」


雀荘を出ると、美穂子は哩と憧108式ver.姫子と一緒にアパートに向かった。
方向が同じなのだから、まあ、別に普通の話だが…。
ただ、やはり美穂子としては哩と憧108式ver.姫子には気を使う。


美穂子「じゃあ、私、ちょっとコンビニ寄ってくので。」


そう言って美穂子は、哩と憧108式ver.姫子と別れた。
一応、言った手前、コンビニで明日の朝食を買った。まあ、食べないものでは無いから無駄にはならないが…。

公園の前を通った時、美穂子は公園のベンチに一人の女性が座っているのを見かけた。
こんな時間にどうしたのだろう?
ちょっと気になって、美穂子は、その女性に声をかけた。


美穂子「どうかしましたか?」

久「あら、綺麗な方。」

美穂子「(ヤダ、この人、私のモロタイプ!)」

久「ちょっと、行く当てが無くて困ってたとこなの。」

美穂子「(もしかして、これって!)」

久「(この女性、ホント、綺麗な人だけど、悪い人への免疫がなさそう。これなら簡単に落とせそうね。)」

久「一晩だけ泊めてもらうことは出来ないかしら?」

美穂子「(これってチャンスかも!)」

久「あと、できれば食事も。」←随分と図々しい

美穂子「イイですよ。」

久「じゃあ、お言葉に甘えて。」


突然、まこが腕まくりを始めた。


まこ「ここから先はマズイじゃろ! 久のことじゃから、アパートに入った途端にR-18確定じゃ!」

まこ「もう、この時点で時間軸を跳躍させる必要があるじゃろ!」

まこ「それにしても、久の相手はワシじゃないんか?」

春「私にして欲しかった。」

尭深「私でありたかった。」

洋榎「それ、ちょっとおかしいやろ! うちじゃないんか? 久の相手は麻雀で決めた方がエエんちゃうか?」

胡桃「うるさいそこ! 私じゃないの?」

明華「私は?」

揺杏「お姉さん、私じゃないの?」


取扱説明書:久HT-01にはインプリンティング機能はありません。そのため、オーナー制度はありません。

取扱説明書:久HT-01は男女問わずハニートラップを仕掛ける機能が搭載されています。そのため、ジェンダーレス仕様になっております。

取扱説明書:久HT-01は効率的にハニートラップを仕掛けるため、優れたテクニックをAI学習させております。

取扱説明書:久HT-01は、貞操観念を持ち合わせておりません。そのため、何人でも平気で相手にします。

取扱説明書:100人乗っても大丈夫です。

取扱説明書:100人に乗っても大丈夫です!


果たして、美穂子は久HT-01を自分だけのものに出来るのだろうか?




翌朝。


久「(チョロイ人。でも、綺麗な人を相手に出来て私も楽しいから、しばらくここに居つかせてもらおう。)」


どうやら、久HT-01は想像以上に性格が悪かったようだ。
さて、主人公の憧100式はと言うと、今日も憧105式ver.淡と一緒に咲のアパートに行って憧123式ver.絹恵と一緒に駄弁っていた。


絹恵「昨日、ちょっと激しくヤり過ぎて、咲ちゃん今朝寝坊してしまって。」

憧「まあ、京太郎もタマにあるよね、そう言うこと。」

淡「(タマだけにヤり過ぎってこと?)」

絹「でも、今日、一限が必修の英語で…。それ遅刻させちゃって、それで、ちょっと落ち込んでるのよ。ヤり過ぎたって。」

淡「(オチ〇コ出てる?)」←落ち込んでるを聞き違えてる

淡「(別に今は出てないけど? まあ、昨日の夜はオチ〇コ出てて、ヤり過ぎってのは分かるけど…。)」

憧「ねえ、話は飛ぶけどさ、俺君と淡、昨日、留守だったじゃない?」

淡「うん!」

憧「どこか行って来たの?」

淡「都内で各都道府県のお土産コーナーみたいなのがあって、そこに行ってきたのよ。そこで、美味しいマンゴージュースを買ってきた!」

憧・絹恵「「(マ〇コジュース? それって、もしかしてHする時に女性から出るヤツ?)」」

絹恵「そんなの売ってるんだ!!」

憧「で、どれくらいの量で売ってるの?」

淡「1リットルビンで売ってたよ! 俺君が気に入っちゃって、2本買ってきたの!」

憧・絹恵「「(リットルサイズ? じゃあ、もしかしてローションか何かかな? 美味しくて口に入っても大丈夫ってやつで?)」」





と、まあ、今日も平和に勘違いトークが続いていた。



続く?
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