咲-Saki- 阿知賀編入   作:いうえおかきく

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六十九本場:練習試合1 阿知賀vs旧朝酌女子

 この時、愛宕雅恵は夢を見ていた。

 話の前後関係は良く分からない。まあ、夢の中の話なら良くあることだ…。

 

 ただ、夢か現実か、その境界が分からないような雰囲気だけは感じていた。この夢の中で、彼女は昔の知人に会っていた。

「今年は、わざわざ墓参りに来なくてもイイからね。」

 その知人………露子が、雅恵にそう言った。

「でも、毎年行ってるし…。」

「来るなって言ってるんじゃなくて、代わりに別のところに行って欲しいのよ。」

「別のところ?」

「スケジュールは慕ちゃんに聞いてね。」

「白築プロに?」

「うん。ちょっと面白いことを考えてるから…。」

 丁度、ここで雅恵は目が覚めた。

 いったい、何だったのだろうか、この夢は?

 起きた後も記憶だけは、かなりハッキリしている。まるで、さっきまで本当に露子に会っていた気がしてならないレベルだ。

 ある意味、妙にリアリティさだけはあった。

 

 

 コクマ(国民麻雀大会)の翌日。

 この日も、阿知賀女子学院麻雀部では部活があった。

 

 インターハイが終わった時点で、三年生の灼と玄は既に部活を引退し、部長は憧が引継いでいた。

 また、昨年よりも大所帯になったため、副部長も選出された。

 残念ながら二年生………穏乃と咲では適任とは言い難いことから、副部長には小走ゆいが任命された。

 

 インターハイの後にコクマが控えていたため、結局は、部長を憧に引継いだ後も灼と玄は部室に来て毎日麻雀を打ち続けていた。

 それで、二人は今日、みんなに挨拶して部活をキチンと引退するつもりだった。

 ただ、玄は引退しても、週一回は顔を出すつもりでいたのだが………。

 

 玄の場合、この部室は阿知賀こども麻雀クラブの頃から、最低でも週一回は通った場所である。

 晴絵が福岡のチームに引き抜かれ、こども麻雀クラブが解体した後も、定期的に必ず部室に来て掃除をしていた。

 それで玄は、引退してもたまには部室に顔を出したいとの気持ちが強かったようだ。この部室への愛着が、玄は人一倍強いのだ。

 

 昨日、一昨日の大会で結構疲れており、咲達は、今日くらいは、まったりと麻雀を打ちたいと思っていた。

 ところが…、ここに晴絵が入ってきて、

「今週末、練習試合を行うよ!」

 と言ってきた。

「「「「へっ?」」」」

 部員達が一斉に晴絵のほうに目を向けた。

 練習試合が嫌なわけでは無いが、まだかったるい。

 でも、まあ、どうせ晩成高校辺りだろうと憧も穏乃も勝手に思っていたのだが、

「場所は朝酌女子高校。こっちから島根に出向くよ。」

「「「「えぇぇ!」」」」

 何故、わざわざそんなところに?

 そもそも、阿知賀女子学院の位置する吉野は、何処に行くにも名古屋か大阪に出る必要がある。正直、遠出するには結構不便さを感じている。

 しかも、行き先が島根。大阪からさらに乗り継いで行かなければならない場所。

 電車での移動だけで五時間くらいかかりそうだ。

「土曜日の朝7時15分に吉野口に集合。一泊二日になるし、全員と言うわけには行かないから、行くのはコクマに出た8人。それから私と恭子。イイね!」

 つまり、島根行きのメンバーは咲、穏乃、憧、灼、玄、ゆい、美由紀、百子、晴絵、恭子の十人である。

 

 これを聞いて灼は、何故部活引退組である自分が勝手に練習試合のメンバーに選ばれているのかが理解できなかった。

 それに、そろそろ頭を切り替えて受験勉強にも力を入れて行かなければならない身だ。

「でもハルちゃん、私も玄も引退して…。」

「それが、先方からの依頼でね。」

「先方って、朝酌の?」

「そう。それと、粕渕高校も来るって話だね。当然、石見神楽も来るだろうね。」

「あの巫女?」

「灼にとってはリベンジのチャンスだね。」

「そうだね…。」

 密かに灼の心に火が点いた。

 インターハイで勝てなかった一年生。相手の手牌を全て見切って………いや、透視してプレッシャーをかけて来る相手。

 当然、今度こそ神楽に勝ちたい。

 その一方で、玄は、

「また口寄せしてもらえるとイイのです!」

 母露子の霊に会えるのを期待していた。これはこれで、当然と言えよう。

 

 

 そして、週末になった。

 咲の寝坊が少々心配されたが…、それを見越して穏乃が、

「おはよう、咲!」

 6時に咲を迎えに行った。

 案の定、咲はまだ寝ぼけていたが…。

 まあ、穏乃のお陰で咲は遅刻せずに済んだらしい。

 

 7時半ちょっと前の電車に乗り、そこから乗り継いで松江市に着いたのは12時40分を過ぎたくらいだった。

 穏乃と憧で、ガッチリと咲を挟んで、咲に異常行動(常識の範囲を超えた迷子)を起こす隙を与えないようにしていたのは評価されるべきところだろう。

 そのお陰で、予定通りの時間に到着できた。

 

 松江駅を出ると、

「赤土さん! 咲ちゃん! こっちだよ!」

 聞いたことのある声が聞こえてきた。

 そこには、何故か慕の姿があった。

 しかも、マイクロバスを貸切りにしてあるようだ。

 慕の隣には、これも『何故か』と言うべきであろう、千里山女子高校麻雀部監督である愛宕雅恵の姿があった。

 今回の練習試合に千里山女子高校は関係ないはずなのだが…。

 ここに雅恵がいることに、晴絵も少々驚いている様子だった。勿論、恭子も同じように驚いていた。

 

 

 阿知賀女子学院一向は、慕と雅恵と共にそのマイクロバスに乗り込み、慕の母校である朝酌女子高校へと向かった。

 咲達が朝酌女子高校麻雀部部室に通された時、既に午後1時を回っていた。

「はやや~。」

「赤土さん、久し振り!」

 これも『何故か』と言いたくなるところだろうが、そこには瑞原はやりプロと、稲村杏果の姿もあった。

 杏果は、今では実家の旅館を切り盛りする女将だが、非常勤で母校のコーチを依頼されており、週二~三回麻雀部に顔を出す。それで、今日の練習試合にも呼ばれていた。

 はやりのほうは、今回、慕に頼まれて来たようだ。

 まあ、事前に、この練習試合の意図を慕から聞かされていた晴絵は、二人がいても特に驚いた様子は無かったが…。

「では、これより阿知賀女子学院、朝酌女子高校、粕渕高校の練習試合を始めます。」

 そして、この練習試合そのものは、何故か慕が仕切っていた。

 どうやら、この練習試合は麻雀協会が裏で絡んでいるようだ。

 

 ただ、これだけだと三チームしかない。やはり、麻雀の試合なのだから四チーム必要である。さすがに三麻と言うわけには行かないだろう。

 すると、

「あと、十一年前の旧朝酌女子高校チームが加わっての四チームでの試合とします!」

「「「えっ?」」」

 この慕の言葉に、朝酌女子高校の部員達が、思い切り驚いていた。

 十一年前のチームと言えば、朝酌女子高校麻雀部最強時代。あの伝説のチーム。

 

 そう言えば、朝酌女子高校の監督は石飛閑無。

 粕渕高校の監督は本藤悠彗。

 そして、はやりと杏果と慕も来ているし、たしかに今、ここに十一年前の旧朝酌女子高校レギュラーメンバーが揃っている。

 

 その一方で、粕渕高校のメンバー達は、特に驚いた様子は無かった。神楽が事前に啓示を受けて、皆に知らせていたようだ。

 

 

 旧朝酌女子高校のオーダーは、以下の通りだった。

 先鋒:瑞原はやり(プロ雀士)

 次鋒:石飛閑無(朝酌女子高校麻雀部監督)

 中堅:本藤悠彗(粕渕高校麻雀部監督)

 副将:稲村杏果(温泉宿女将兼朝酌女子高校麻雀部非常勤コーチ)

 大将:白築慕(プロ雀士:ワールドレコードホルダー?)

 

 対する阿知賀女子学院は、以下のオーダーで望んだ。

 実は、これは玄の打ち方をはやりが確認できるようにと、慕が晴絵に依頼したオーダーであった。

 先鋒:松実玄(インターハイ個人8位)

 次鋒:新子憧(インターハイ個人16位)

 中堅:宮永咲(インターハイ個人1位)

 副将:鷺森灼(インターハイ個人18位)

 大将:高鴨穏乃(インターハイ個人9位)

 

 粕渕高校は以下のオーダーとした。

 今回、粕渕高校では、神楽が協会側の思惑を察して、それに合わせたオーダーを取っていた。

 先鋒:春日井真澄(春日井真深姪:非能力者)

 次鋒:石原麻奈(石原依奈姪:非能力者)

 中堅:坂根理沙(坂根千沙娘:非能力者だが勘が鋭い)

 副将:緒方薫(亦野誠子従妹:誠子と同様の能力を有する)

 大将:石見神楽(インターハイ個人7位:他家手牌の透視と口寄せができる)

 

 また、朝酌女子高校のオーダーは、以下の通りだった。

 先鋒:石飛杏奈(石飛閑無の姪:非能力者)

 次鋒:稲村桃香(稲村杏果従姉妹:杏果と同様の能力を有する)

 中堅:森脇華奈(森脇曖奈従姉妹:非能力者)

 副将:野津楓(野津雫姪:非能力者)

 大将:多久和李奈(多久和李緒姪:非能力者)

 

 

 ルールは、今年のインターハイ団体戦一回戦と同じ。点数引継ぎ型ではなく星取り形式で、先鋒戦から大将戦まで半荘一回の勝負となる。

 ただし、トビ終了の可能性を下げるため、100000点持ちで行われる。

 オカやウマは付かない。先鋒から大将までの五人で、1位を最も多く取ったチームが団体1位となる。

 1位になった回数が同じだった場合は、全員の素点の合計で順位を決める。

 大明槓による責任払い、赤ドラ、ダブル役満以上ありになる。ただし、単一役満によるダブル役満は認められない。

 二家和(ダブロン)、三家和(トリロン)は成立せず、全てアタマハネを採用する。

 

 ここでは、時間短縮のため、先鋒戦から大将戦までを同時進行で行うことにした。

 記譜は、この団体戦に参戦しない朝酌女子高校麻雀部員、粕渕高校麻雀部員、ゆい、美由紀、百子が手分けをして行う。

 

 

 全卓、対局がスタート………するはずだったが、ここでちょっと問題が生じた。

 先鋒卓は、玄、はやり、真澄、それから閑無の姪の石飛安奈の四人での対局だが、魔物は玄一人であろう。そこに魔物と対峙できるレベルのプロが一人いて、魔物に対応できるかどうか怪しい普通の人が二人。

 しかし、真澄も安奈も、玄レベルの魔物が相手でも心が折れるほど弱くは無い。

 

 次鋒卓は、憧、閑無、麻奈、桃香。魔物と言える領域に達した者が一人もいない平和な卓。

 

 中堅卓は、咲、悠彗と魔物が二人。理沙と華奈は魔物では無いが、理沙は非常に勘が優れており、自分の麻雀が咲にどれだけ通用するか楽しみにしている節があるし、華奈は素で強く、やはり咲との対局を喜んでいた。

 

 副将卓は、灼、杏果、薫、楓。能力者が三人(楓以外)いたが、次鋒卓と同じで魔物と言えるレベルのプレイヤーは一人もいない比較的平和な卓。

 

 だが、大将卓はと言うと………。

 阿知賀女子学院からは深山幽谷の化身、高鴨穏乃。全国屈指の魔物の一人。

 旧朝酌女子高校チームからはワールドレコードホルダー、白築慕。当然、魔物達の頂点と言える存在。

 粕渕高校からは相手の手牌全てを透視する巫女、石見神楽。インターハイで魔物認定された能力者。

 この面子に囲まれて、朝酌女子高校チームの大将………李奈は、対局開始前に、すっかり萎縮してしまった。

 

 これを見て、

「顔色悪いけど、大丈夫か? なんなら私が代わりに入ってもエエかな?」

 と愛宕雅恵が申し出た。

 さすがに、第三者視点でも、超魔物三人に囲まれた一般人が不憫でならないし、この対局だけは、慕、穏乃、神楽と拮抗できる人間が相手でないと、慕の目的を果たすことが出来ないだろう。

 雅恵も、それを強く感じていた。

 とは言え、李奈は、

「はい…いえ…でも…。」

 逃げたいのは山々だが、試合放棄は許されない。

 雅恵の申し出に、一瞬『ラッキー』と思ったが、だからと言って、『はい、お願いします』とは言えない立場だ。一応、名門、朝酌女子高校麻雀部の代表の一人なのだ。

 すると雅恵が、

「朝酌の………石飛監督はエエか?」

 と離れた卓にいる閑無に聞いた。

 すると、

「OKです!」

 閑無は、即座に了承した。

 もし、自分が教え子の代わりにあの卓に入れと言われても、団体戦では嬉しくない。

 勿論、個人戦なら別だ。負けてもみんなの負けにはならない。飽くまでも自分一人の負けだ。腕試しに、あの卓に入ってみたい気持ちはある。

 しかし、団体戦では、さすがの閑無でも、あの卓に入るのは出来れば避けたい。自分の教え子に、そんな場所への出撃命令を出すほど、閑無も鬼畜生ではない。

 勿論、自分の教え子に、ムダにトラウマを植えつけられても困る。

 それに、今回の練習試合の目的も良く分かっている。

 そこから導き出される答えは唯一つ。

 雅恵に代わってもらうことだ。

 閑無の許可が出て、李奈は、

「は…はい。」

 ホッとした顔で卓を雅恵に譲った。

 

 

 いよいよ、全卓同時に対局がスタートした。

 この時、玄はドラ爆状態で対局に臨んでいた。これも慕から晴絵に依頼されていたことである。

 玄が対局に集中しようとしているのが良く分かる。はやりを目の前にしてオモチ発言が消えていたくらいだ。

 場決めがされ、起家は真澄、南家は玄、西家がはやり、北家が杏奈となった。

 

 いきなり東一局から、

「ロン! 16000!」

 ドラを占有する玄が親の真澄から和了った。

 そして、東二局も、

「ロン! 24000!」

 玄が杏奈から和了った。完全に玄のペースだ。

「はやや~。これはマズイかも。」

 高打点の和了りを連発されて、はやりの口から、ふと言葉が漏れた。しかし、そう言いながらも、はやりの表情には何処か余裕が見え隠れしていた。

 そして、

「ロン! 12300!」

「ロン! 18000!」

 連続して、はやりが玄を狙い撃ちした。

 やはり、改善されたとは言え、玄の守りは、まだ咲や光に比べれば劣る。そこを狙われたのだ。

 

 そして、東三局一本場。

 とうとう玄がドラを切った。やはり、ドラ支配のままでは、はやりには敵わないとの判断であろう。

 突然、場の雰囲気が変わった。

 玄の支配対象がドラから三元牌に切り替わったのだ。

 次局から大三元和了に向けて準備段階に入る。とは言え、三元牌支配完全形が発動し、玄が大三元に向けて動くのは、今から三局目。

 はやりは、朝倉南っぽい口調で、

「(見せてもらうぞ! 第二の龍支配!)」

 と心の中では余裕のブリッ娘声を出していたが、全身に、妙に冷や汗をかいていた。それだけ、玄から放たれるオーラが強大だったと言えよう。

 

 この局は、

「ポン!」

 はやりが早々と鳴いて、

「ツモ! 4100オール!」

 いっきに和了りまで持っていったが、その次の局…東三局二本場では、はやりは和了りに向かおうとはしなかった。

 その結果、

「ツモ。1200、2200。」

 杏奈が和了って、はやりの親を流すこととなった。

 

 

 東四局、杏奈の親。

 玄のオーラが、今までに無く強大になった。

 はやりは、

「(いよいよだね!)」

 この局に三元牌支配の完全形が飛び出すことを確信していた。

 今までの玄の牌譜から、三元牌支配は二局の準備期間の後に現れることを知っていたし、それに加えて、この玄の全身から放たれる並々ならぬ空気から、この局で、いよいよ玄が大三元の和了りに向かうことが容易に想像できた。

 

 玄の後で記譜していた朝酌女子高校麻雀部員は、その配牌には特に驚きはしていなかった。{白}が一枚、{發}が二枚、{中}が二枚と、少し三元牌が多いなくらいは感じたが、これくらいの配牌なら、誰でも半荘数十回に一局くらいは普通にあるだろう。

 そこから大三元に持って行けるかどうかは別だが…。

 

 ところが、その後のツモ牌には驚かされた。まるで狙ったかのように、三元牌しか来ないのだ。

 六巡目になると、玄の手牌には十一枚もの三元牌が揃っていた。{白}が三枚、{發}と{中}がそれぞれ四枚ずつである。

 そして、ここから、いつものパターンが始まった。

「カンです!」

 玄が{中}を暗槓した。嶺上牌は{白}。

 すると、

「もう一つカンします!」

 続けて玄は{發}を暗槓した。

 嶺上牌を引くと、

「もう一回、カンなのです!」

 さらに{白}を暗槓し、三枚目の嶺上牌で、

「ツモです! 8000、16000!」

 お約束の大三元を和了った。

 

「はやや~。」

 実際に生で見ると迫力がある。

 はやりは、予想していたこととは言え、現実に大三元を和了られると、それ相当に驚くものである。

 しかし、

「(破れないものでもないかな~。)」

 手の出しようが無いわけでは無さそうだった。はやりには、三元牌支配に対しても、それなりに勝算があると踏んでいたのだ。




おまけ

本編とも麻雀とも全く関係ないお話です。
咲-Saki-を敢えてネタにする必要も無いストーリーです。
苦手な方はスルーしてください。



練習試合の夜。
咲は玉造温泉の宿泊先(杏果の家が経営している宿)の部屋でテレビを見ていた。


咲「あっ! これ、やってるんだ! 『華菜の大チョンボ!』って映画!」


それは、京太郎に似た役者が出ている映画だった。
最後に自分に似た役者も出てくる。
さらに言ってしまえば、華菜に似た役者が演じる最低最悪の性格をした科学者が、恐竜に殺される。
珍しく咲が、是が非でも見たいと思っていた奴だ。
ギャグメインではない。ブラックなSFである。
………
……




華菜の大チョンボ!
プロローグ

ボストンでは、既に夜中の十二時を回っていた。
この時、京太郎はベッドでグッスリ眠っていた。
彼は、今年で十七歳になったばかりだが、非常に聡明で、既に飛び級でボストンの大学院に通っていた。
もし日本にいたら、こんな風に飛び級できない。年相応の学年に在籍することになる。
そうなると、彼にとっては不幸だろう。同年代の人達とは話が合わないだろうし、多分、浮くのは目に見えている。
父親の仕事の関係で無理矢理アメリカに連れて来られていたが、ある意味、彼にとっては幸運だったかもしれない。
専攻は化学で、グリーンケミストリーを専門分野にしている。環境負荷を軽減させた有機化学反応の構築が彼の課題だ。

眠っているはずなのに、急に彼の意識がはっきりしてきた。
しかし、身体は動かない。
目も開かない。
これが金縛りと言うやつか?
彼の頭の中に呼びかける声が聞こえてきた。
女性の声だ。
「私はアワイ…。」
彼の脳裏に髪の長い美しい女性の姿が浮かんできた。
しかし、特に恋愛感情は湧いてこない。
むしろ親とか兄弟のような身近な存在のように感じる。
ただ、その女性は顔色が真っ青で、今にも死んでしまいそうに見えた。
ちなみに、オモチは小さかった。
「私は、今、ガンに侵されています。あちこちに転移し、侵された箇所は全部で108箇所。至急、治療が必要です。抗生物質を手に入れる方法は、既に数十年前から考えています。あなたには、ガンの再発が無い世界を望みます…。」

京太郎の目が開いた。
それと、同時に体も動くようになった。
今まで動けなかったのが嘘のようだ。
上体を起こして辺りを見回したが、何の変化も無い。いつもの部屋だった。
いったい、これは何だったのだろうか?
『夢?』
それにして、よく分からない夢だ。
妙にリアリティさだけは感じるが、現実離れしている。
彼は、首を傾げながら再びベッドに潜り込んだ。


時は数十年前に遡る。
「ソンナオカルト号、現在位置を確認せよ。」
「位置確認不能。計器が異常を起こしております。」
「確認はできないのか?」
「無理です…。」
これが、貨物船ソンナオカルト号との最後の交信だった。
時は19XX年。もし順調に航海していれば、北大西洋フロリダ半島からバーミューダ諸島方面に800キロメートルの位置に差し掛かるはずであった。

それから十年の時が過ぎた。
ブラジルの大都市サルバドル沖400キロメートル付近を北上中の豪華客船ケンタ2号船長ミユキ・ツバキノが、航路前方から南下してくる貨物船を発見した。
貨物船のルートは、本来ここから外れた位置にある。ミユキは、急いで前方の貨物船に注意を促そうと警笛を鳴らした。
しかし、貨物船はルートを変えるどころかケンタ2号に突っ込んできた。
ミユキは、貨物船に連絡を入れようと無線スイッチを入れた。
「こちらケンタ2号。応答願います。こちらケンタ2号…。」
しかし、その貨物船からは何の応答もなかった。
このまま直進すれば貨物船と衝突してしまう。
ミユキは、やむをえず舵を切った。
まるで惰性で動いているかのように、ケンタ2号の横を貨物船がゆっくり、そして静かに通り過ぎて行った。
ミユキは、海上でのルールを無視した奴等の顔を拝んでやろうと貨物船の船室を双眼鏡で覗き込んだ。
すると、驚いたことに、そこには生きた人間など一人もおらず、何体もの白骨と化したミイラだけが転がっていた。
「な…何? あれ?」
その船には、『ソンナオカルト』の文字が記されていた。
十年前にバーミューダ諸島付近で消失した貨物船が、突然姿を現して海流に流されながら南下していたのだ。
ただ、もし単に海流に流されていただけなら、ソンナオカルト号はメキシコ湾海流から北大西洋海流、或いはカナリア海流に抜けるはずであり、サルバドル沖を南に流れるブラジル海流には基本的に入り込まないだろう。
何故ここにソンナオカルト号が姿を現したのか、全てが謎としか言いようが無かった。
そんなオカルトがあったのだ。


1. 先祖返り


時は現在に戻る。
南アメリカ某国に位置するP市は、海岸沿いに位置したリゾート都市で、海岸線に沿って海水浴場が延々と広がっていた。
街の中央部には、ホテルをはじめ、レストランやショッピングモール等が乱立しており、ホテルでは日々ディナーショーが繰り広げられていた。
どのホテルにも地下にはカジノがあり、一日中街の光が消えることは無い。今日も海外からのリゾート客で賑わいを見せていた。
海水浴場から少し離れた海岸線の遊歩道沿いには、何十もの売店が並んでおり、付近の建物には、常に何百羽ものペリカンが群れを成して止まっていた。そして、時折数羽のペリカンが餌を求めて水面ギリギリを飛ぶ。その姿を見ては、観光客達は喜んでいた。

娯楽と安らぎを人々に与えることを目的に造られたこの街にも、リゾートエリアから少し離れた地域には結構多くの人々が住んでいた。
その地域の産院で、今日もコシガヤ院長が、患者に恐ろしい宣告をしなくてはならなかった。
「ソフィアさん、心を落ち着かせて良く聞いて下さい。」
「…はい。」
「本来でしたら有り得ない話なのですが、残念ですが、お腹の中の赤ちゃんを摘出せざるを得ません。」
「摘出って。いったい…いったい、どういうことなんですか?」
「実は、赤ちゃんは、先祖返りのような変異を起こしております。」
「先祖がえ…それって、いったいどういう意味なんでしょう?」
「残念なことに…人間の形をしていないのです。」
「では、奇形…?」
「そうとも言えます。しかし、通常言われる奇形とは少しタイプが違います。奇形と言いますと、身体を形成するパーツの一部を欠いていたり逆に余計だったりする場合が多いと思います。例えば背骨が一本少なかったり多かったり、短肢症だったり。しかし、貴女の赤ん坊は、そう言うものとは違います。検査の結果、人間ではなく。どうもですね、先祖返りしていると言いますか、爬虫類か何かのような姿をしているのです。」
「爬虫類?」
「誠に残念ですが…」
この一年で、南アメリカでは大西洋岸の街P市を中心に、既に130例を越える先祖返りのような異常胎児が報告されていた。
産婦人科では定期的に検査を行なう。
ただ、奇妙なことに、それまで順調に育っていた胎児が、前回までの検査で問題が無かったにもかかわらず、二週間乃至一ヵ月後に再検査をすると、何故か孵化直前の恐竜らしき姿に変化してしまうのだ。
コシガヤの産院でも、これで25例目であった。
その原因を究明すべく、アメリカ理化学研究所を中心に、日米欧の三極で、この胎児の変異についての研究が開始されて既に十ヶ月が経とうとしていた。
G県海洋天然物研究所でも、この奇形について池田華菜博士をリーダーに研究が行なわれていた。
華菜のグループでは、この奇形が工場からの廃液等による公害物質、或いは環境ホルモンに起因するものと踏んでいた。
この案は、サブリーダーである岡橋初瀬の発案によるのだった。
本来ならば、リーダーである華菜から色々な案が出されなくてはならないだろう。
しかし、華菜は、リーダーと言っても年功序列的にそうなっただけで、能力的には、たいしたことが無かったし、ロジカルに物事を展開することが出来ず、事実上ノーアイデアだった。
もし初瀬の考えが正しければ、人間以外の生物も同じ公害物質や環境ホルモンを摂取しているはずである。
そこで、彼女達は、P市近海の魚から成分抽出を行ない、カラムクロマトグラフィーで成分を分離し、妊娠中のラットに注射して胎児の奇形発生の確認を行っていた。
そのアッセイを担当している新人の女性研究員安福莉子が、始業ベルがなるや否や華菜の部屋に飛び込んできた。
「池田さん、おはようございます。」
「おはようだし! で、どうかしたのか? そんなに慌てた顔をして。」
「フラクションT‐21‐33‐5に強い催奇形性が確認されました。」
「先祖返りみたいな変異は?」
「5例中5例が起こしております。」
「本当かにゃ!?」
「はい。これから追試して再現性を確認しようと…。」
しかし、華菜は、既に莉子の話を聞いていなかった。華菜は、大慌てで部屋を飛び出すと、向かい側の研究室のドアを開けた。
「岡橋君!」
「はい?」
初瀬が何事かとドアの方を振り返った。
この時、初瀬は、P市近海で捕獲した魚からの成分抽出と、その抽出物のカラムクロマトグラフィーでの分離を並行して行っていた。
研究の流れとしては、初瀬が分離した成分を莉子がアッセイすることになる。
「岡橋君。T‐21‐33‐5は単一成分だったかにゃ?」
「はい、各種スペクトルデータの結果、恐らく単一だと考えております。」
「そいつが催奇形性を引き起こす犯人だし! 全例でラット胎児が先祖返りっぽいの変異を起こしたって話だし!」
「本当ですか?」
「そうだし! 安福さんだっけ?」
「莉子ですか?」
「その新人の女の子から報告を受けたし! それでT‐21‐33‐5の構造決定はできてるかにゃ?」
「最終的には結晶スポンジ法で決定する予定ですが、現状、NMR(核磁気共鳴スペクトル)、IR(赤外線吸収スペクトル)、UV(紫外線吸収スペクトル)、MS(質量分析スペクトル)の結果から、このように構造を推測しております。」
初瀬が紙に書いた構造式を華菜に見せた。
しかし、華菜にとって本当は、そんな構造式などどうでも良かった。
確かに構造式が決定されていれば、『これが原因物質である!』と世間に大々的に研究成果をアピールできるだろう。
ただ、華菜にとって構造式は、あくまでもアピールのインパクトを強めるための道具でしかなかった。
そんなことよりも、自分のグループが大発見した事実があれば自分の株が上がる。
実際のところ、華菜は、それだけしか興味がなかったのだ。純粋に科学的事実を追及する心など無く、むしろ出世欲旺盛な俗人だった。
「よくやったし! じゃあ、結晶スポンジ法による構造決定と化学合成による検証を原村和のところにお願いするし! でも、その構造。オリジン(起源)はどうなんだし? やはり工場廃液か何かが原因にゃのかな?」
「それなんですが、昨日調べたところでは、このもの自体が何処かの工場で作られている製品とか、その残骸ではなさそうな感じなんですよ。それで昨日、原村さんと話をしまして…。構造的に興味深い物でしたから、先祖返りの原因物質であるなしに関係なく学会発表するだけの価値があると思いましたので…。」
「それで、君はこの構造をどう考えているし?」
「それなんですが、R社の農薬の部分構造とS社の洗剤の部分構造、それからY社の人口甘味料の部分構造をくっつけますと、このような形になるのではないかと想像しておりますが…。」
「じゃあ、それらが反応して出来たってことかにゃ?」
「そこのところは、私も半信半疑だったんですけど、原村さんの考えでは、あくまでも机上の空論ですけど、紫外線が関与すれば、もしかしたら反応して、この構造に成り得るかも知れないと…。」
「UV反応か…。確かに南半球…中でもアルゼンチンやチリでは、オゾンホールが原因で通常よりも紫外線がかなり強くなってるし!」
「はい。それと、調べましたところR社、S社、Y社の製品は南アメリカでも結構使われていますので…。」
「だったら、それらが体外排泄されたり洗い流されたりしたものが海に出て反応してもおかしくはないし! 決まりだし! 早速このことを所長に報告するし!」
「でも池田さん。現段階では、まだ勝手な推測の段階です。科学的検証は一つも済んでおりません。不明瞭な部分が多過ぎます。構造も確定ではありませんし、原村さんのところで構造決定の他に、実際に各社の化合物が反応するのかどうかを確認していただきませんと…。」
「そんなものは後回しだし! とにかく、中間報告と言うことで、現状を所長に説明しておかないといけないし!」
そう言いながら華菜は、まるで欲しかった玩具を手に入れた子供のようにキラキラと目を輝かせていた。これで100パーセント原因物質の構造もオリジンも確定できたと決め付けていたのだ。
実際には、これらは初瀬の言うとおり、まだ推定である。構造も生成メカニズムも机上の空論に過ぎないのだ。悪く言えば、まだまだ大嘘を吐いている可能性すらある。
しかし、せっかちで、しかも手柄に飢えた華菜は、その検証をきちんと行なってから次なる一歩を踏み出そうという姿勢を持ち合わせていなかった。
早く手柄を立てて他の研究者の前で格好良く振舞いたいとしか考えていなかったのだ。科学者として、しかも博士号を持つ人間として非常に問題のある行為である。

また、初瀬の提示した考えが間違っていた場合、結果的にR社、S社、Y社への営業妨害とか名誉毀損にもなるだろう。それこそ国際的な問題にもなりかねない。
それを考えると華菜が変な突っ走り方をしないだろうかと、初瀬は不安にならずにはいられなかった。

その頃、所長室では福路美穂子所長が深刻な顔でテレビの臨時ニュースに見入っていた。
そこに華菜が、先程の構造式を書いた紙を片手に意気揚々と入って来た。
「失礼します。例の変異の件ですが…。」
「華菜。丁度良いところに来ました。今、華菜を呼ぼうと思っていたところでした。」
「はぁ…。」
「実は、さっきアメリカ理化学研から電話があって、一時間程前、現地時間でだいたい夜七時頃なんですが、P市の海岸でプテラノドンの群れが観光客に突然襲い掛かったそうです。」
プテラノドンは、白亜紀後期に生息していた獰猛な肉食翼竜で、白亜紀が終ると同時に絶滅した種である。しかし、そのプテラノドンが何故、今頃地球上に存在しているのか、華菜にはピンと来なかった。
「プテラノドン…ですか?」
「はい。恐らく例の先祖返りライクの変異によって発生したものでしょう。」
「でも所長。変異した胎児は、全て産院で中絶しているはずだし!」
「そうなんだけど、でもそれは人間だけでしょ? 今回のプテラノドンは、まだ両翼を伸ばした長さが2メートルから3メートル程度で、まだ小型…と言うか子供(成長すると両翼を広げた長さは、6から8メートル)のようなの。それがどうもペリカンの群れの中から突然現れて人に襲い掛かってきたらしいのよ。多分…ペリカンの雛が変異を起こしたのではないかしら…。」
「ちょっと待つし! そんなことは、今まで報告が無かったし!」
「確かね。しかし、人間が変異を起こすのだから、同じメカニズムで他の生物が変異を起こしてもおかしくはないでしょ? 実際に、華菜のところでもラットで変異の実験を行なっているわけですし。」
華菜の頭の中では人間以外の変異まで頭が回っていなかった。自分のグループの研究内容とリンクできなかったのだ。
頭の血の巡りの悪い人間である。
しかし、美穂子に言われて、そのことに気付き、取り繕うように答えた。
「そうですけど…所長。私が言いたいのは、ペリカンが変異を起こしたのなら、他の生物…例えば野良猫や野良犬、ネズミなんかからも変異を起こした生物がうじゃうじゃ誕生している可能性があるのではないかと言うことだし!」
華菜の台詞は、本当に行き当たりばったりで見せ掛けだけだ。
当然、美穂子は華菜の本質を見抜いていた。しかし、面倒なので、あえて追求しようとはしなかった。
「多分そうね。で、華菜。用事って何かしら?」
「あ…はい。実は、T‐21‐33‐5が、例の変異を起こす原因物質であることを突き止めたし! ラットの試験では5例中5例に先祖返りっぽいの変異が確認されたし!」
「で、構造は?」
華菜は、初瀬が構造式を書き記した紙を自信満々な顔で美穂子の机の上に広げた。
「各種スペクトルデータから、華菜ちゃんは、このように構造決定しちゃったし!」
「んーん…。」
「多分、天然物じゃないし!」
「じゃあ、化学合成品?」
「それなんですが、数種類の化学合成化合物が偶然反応してできたものではないかと考えてるし! 多分、R社の農薬とS社の洗剤とY社の人口甘味料がオゾンホールを通り抜けた強い紫外線照射によって反応して出来に間違いないし!」
「…。」
「一応、原村のところで化学的な生成メカニズムの検証をお願いするつもりだし!」
華菜は、さっき初瀬から聞いた推論を全て断言形で、しかも一から十まで全てを自分で解決したような言い方をしていた。
しかも、結晶スポンジ法による構造決定の話もすっ飛ばしている。完全に構造決定できたと大風呂敷を広げていた。
華菜は、この発見が高く評価され、美穂子から褒めちぎられるものと思い、既に顔が綻んでいた。
しかし、美穂子は労いの言葉一つ言わずに、この構造式を見詰めたまま静かに考え込んでいた。そして、暫くして、
「じゃあ、原村さんには、私の方からお願いしてみるわ。」
とだけ言うと受話器を取って内線をかけた。
薬理系(アッセイ系)出身の美穂子は、構造式や化学反応に疎い。
しかし、今回の発見だけは、目的とするものがハッキリしているだけに美穂子としても判断しやすい内容であった。
ただ、美穂子は、この発見を少なくとも現段階では大声を出して喜ぼうとはしなかった。
美穂子は、華菜とは対照的に石橋を叩いて渡る慎重派であり、次なる研究に向けて打ち立てた仮説の信憑性を確実に押さえ、揺るぎ無いものにすることを重要視していたのだ。
つまり、美穂子が喜ぶのは、仮説が事実として確定してからと言うことになる。


一方、P市では、この時既にプテラノドンの被害者が数十名にのぼっていた。
この日だけで確認されたプテラノドンの数は、二十匹を越えていた。
彼等は、まるで鷲が小動物を捕らえるように硬い鉤針のような爪で上空から猛スピードで人間に襲い掛かり、鋭く尖った嘴で人間の頭や胸を攻撃してくる。獲物が怯んで倒れ込むと、そこに何羽かのプテラノドンが援護に飛んできて獲物の身体中をついばみ、とどめを刺すのだ。
被害者達は、目玉が飛び出したり鼻がえぐりとられていたり、中には心臓や腸が食い破られたりと、見るに耐えない姿に変わっていた。
そこから更にプテラノドン達は、死肉に群がるハゲタカのように、獲物の身体を貪り食らってゆくのだ。

警官達が通報を受けて駆け付けるが、動物保護が盛んな今、相手が獰猛な殺人鬼でも、むやみやたらに撃ち殺すことには抵抗を感じていた。
相手は、一応ライオンやトラと同じ単なる肉食動物であり、その本能に従って生きているだけなのだ。彼等の殺人に罪は無い。
しかし、人命救助も最優先事項である。警官達は、人に群がるプテラノドンを追い払うために、先ず威嚇射撃を始めた。
ところが、プテラノドン達は威嚇射撃に怯むことなく、今度は警官達に容赦無く牙をむいて一斉に襲い掛かってきた。これでは、警官達も威嚇だけでは自分達の命が危ない。
さすがにプテラノドン達の頭や身体を狙って鉛玉を撃ち込まざるを得なくなった。
しかし、暗闇の中、猛スピードで飛び交うプテラノドンを全て撃ち落とすのは、至難の技であった。
結局、何匹かをやっとのこと仕留めただけで、大半のプテラノドンは、取り逃がしてしまった。

プテラノドン達は、海に向かって逃げて行った。近くに巣があるのだろう。
そして、彼らは、明日には再び闘争本能を剥き出しにして戻ってくるに違いない。


続く

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