咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

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七十三本場:練習試合5 慕vs穏乃vs淡(生霊)vs雅恵

「今回は、私の力だけでシズノと勝負するからね!」

 淡の生霊は、飽くまでも淡自身の能力のみでの戦いを望んでいた。

 神楽の身体に入ることで、他家の手牌全てが丸分かりなのだが、それだと穏乃との正当な勝負にならない。

 自分の能力と神楽の能力の合わせ技で勝てても、それは本当の意味で穏乃に勝ったとは言えないのだ。

 それで淡は、神楽に頼んで、敢えて神楽の能力をキャンセルしてもらうことにした。

 

 東一局一本場、神楽の連荘。

 ここでも絶対安全圏が発動し、神楽のみ二向聴、他は軒並み六向聴だった。

「ポン!」

 神楽は、二巡目で早々に穏乃から{發}を鳴き、四巡目で、

「ロン! 5800の一本場は6100!」

 穏乃から和了った。

 

 東一局二本場。

「(他家は強制五から六向聴。自分だけ軽い手。しかも自在にダブリーがかけられる。実際に打つと、その凶悪さが身に染みるわ。これじゃ、泉程度じゃ相手にならん!)」

 雅恵は、淡の能力の凄まじさをヒシヒシと感じていた。

 ただ、その大星淡ですらインターハイでは個人6位。

 宮永咲、天江衣、荒川憩、宮永光、神代小蒔と、とんでもない実力者達が淡の上に名を連ねている。

 淡のすぐ下にも、死者も生霊も降ろせる石見神楽、ドラ爆+三元牌支配の松実玄、そして、淡の支配ですら後半にキャンセルさせる高鴨穏乃と続く。

 しかも、穏乃の場合、インターハイ個人戦では淡に負けたが、団体戦では淡よりも強烈な支配力を見せ、淡だけではなく衣にも競り勝っている。個人責任よりも連帯責任を問われる方が、より力を発揮できるようだ。

 昨年から女子高生雀士達のレベルは全然落ちていない。

 まさに黄金時代は、今なお続いていると言える。

 熊倉トシが世界大会二連覇に固執するのが良く分かる。

 

 ただ、雅恵だって、かつてのインターハイ個人準優勝者。相手が能力者だらけでも安々と負けるつもりは無い。

「(とにかく石見に鳴かせないことや。)」

 最低限必要なことは、絶対安全圏を越えるまでは、神楽が欲しがっている牌、つまり鳴きたい牌を絶対に捨てないことだ。

 絶対安全圏が過ぎれば、神楽も攻撃一辺倒ではいられなくなる。

 それに、穏乃も慕もスロースターターだ。だからこそ、今は穏乃と慕をノーマークで臨めるし、多少のムリが出来るはず。

 

 特に役牌は、絶対安全圏が過ぎるまでは、要注意だ。

 たとえ不要牌でも、この局では、神楽が捨てるまでは{東}、{白}、{發}、{中}を自分も捨てないことだ。これらの何れかが鳴けるのを、多分、神楽は待っている。

 

 これが功を奏したのか、なんとか絶対安全圏を抜けた。

 神楽からは、{東}、{白}、{發}が六巡目までに切られていた。だとすれば、恐らく神楽は{中}を待っている。

 雅恵は、なんとか平和手を聴牌した。

 まだ、神楽からは聴牌気配は無い。

 ここで{中}切り。

 すると、

「ポン!」

 待ってましたとばかりに神楽が{中}を鳴いた。やはり、読みは当たっていた。どうやら、これで神楽も聴牌したようだ。

 しかし、次巡、

「ツモ。平和ドラ2。1500、2800や!」

 雅恵が先に自身の和了り牌を掴んだ。

 これで神楽の親が流れた。

 

 

 東二局、穏乃の親。サイの目は2。

 ここでも絶対安全圏は健在である。ただ、ダブルリーチの能力は、この局では使わなかった。ダブルリーチをかけても最後の角が深すぎるからだ。

 当然、神楽のみ二向聴と軽い手で、他は全員六向聴となった。本当に凶悪な能力だ。

 しかし、神楽は配牌とツモが噛み合わなかった。まあ、これも良くある話だ。

 

 一方の雅恵は、運良く最短の六巡目で聴牌した。

 七対子ドラ2の手。普通ならダマだが、魔物二人が目覚める前に稼ぐためには、

「リーチ!」

 やはり攻めるしかない。

 

 慕は、現物切りで一発回避。

 神楽は、いつもなら余裕で当たり牌を回避するが、今は淡の能力だけで戦っている。そのため、他家の手牌が透けて見えていない。

 なので、一旦現物切り。

 穏乃も現物切りで対処した。

 

 雅恵は、一発ツモにはならなかったが、数巡後に、

「ツモ! リーツモ七対ドラ2で3000、6000!」

 ハネ満ツモを決めた。この卓の最年長者としての意地であり、名門千里山女子高校の監督としての意地でもある。

 これで、雅恵が神楽との差を6500点まで詰めた。

 

 

 東三局、雅恵の親。サイの目は6。

 これなら、最後の角の直前で神楽がツモるのが九巡目、角を越えてすぐのツモが十巡目になる。

 当然、

「(絶対安全圏+ダブリー!)」

 神楽の中にいる淡は、自身の能力を最大限に発揮した。

 そして、第一ツモを手牌に入れ、

「リーチ!」

 ダブルリーチをかけた。

 

 誰も鳴かずに…いや、鳴けずに場が進んでいった。淡以外は、ヤオチュウ牌の処理だけでも結構かかるし、そこに不要なヤオチュウ牌をツモることもある。

 当然、余程の運がなければ六向聴をたった六巡で聴牌できるはずが無い。前局での雅恵の聴牌は、本当に運が良かっただけであろう。

 勿論、そんなことは、雅恵も重々承知である。

 

 九巡目、

「カン!」

 パターンどおり、神楽が{②}を暗槓した。当然、槓裏表示牌は{①}であろう。

 そして、二巡後、

「ツモ! ダブリーツモ槓裏4で3000、6000。」

 神楽が和了り牌を自らの手で掴み取った。

 

 

 東四局、慕の親。

 卓上に、うっすらと靄がかかってきた。

 これには、さすがの慕も雅恵も驚きの色が隠せなかった。

「「(何かあるとは思っていたけど…。)」」

 これが、今年のインターハイ決勝大将戦で、天江衣、大星淡、十曽湧を抑えて阿知賀女子学院を優勝に導いた穏乃の能力の片鱗だ。

 あの時は、副将戦までの成績が四校とも勝ち星一で、全ては大将戦にかかっていた。当然、全員に強大なプレッシャーがかかる。

 そんな中でも誰も臆せずに戦った。

 そして、その四人の中で、最終的に最強の支配力を見せつけ、チームを優勝に導いたのが穏乃だ。

 

 山は、既に穏乃の支配下になりつつある。神楽も雅恵も、何とか聴牌まで持ってくることは出来たが、和了り牌が一向に姿を現さない。

 そうこうしているうちに、

「ツモ、タンピンドラ2。2000、4000。」

 穏乃に和了られてしまった。

 

 

 南入した。

 そろそろ、慕のエンジンもかかり始める。最高潮になるのは大抵南三局からだが、この段階で、今までと随分雰囲気が変わっている。

 卓全体に、かなりのプレッシャーがかかる。

 多分、多久和李奈(多久和李緒姪)は、雅恵に代わってもらって正解だ。咲がいなくても、李奈は、この空気に耐えられないだろう。放水するのは必至だ。

 

 一方、神楽の中の淡は、他の者と入れ替わろうとはせず、そのまま対局を継続することを望んでいた。

 チェンジは可能だし、それならば自分よりも南場に強い者に代わってもらった方が勝率は上がるだろう。

 それに、チェンジしなくても、神楽の能力を併用すれば打ち回しが楽になるし、南場が有利になる。

 普通の感覚なら、最低限、神楽の能力を拝借するだろう。

 露子でさえも、やっていたことだし………。

 しかし、淡の生霊は、飽くまでも正々堂々と穏乃と戦って勝ちたいと強く願っていた。それ故に、南場も自分の力のみで戦うことに固執していた。

 

 南一局、神楽の親。サイの目は7。ドラは{1}。

 慕が同卓していることを考えると、もっとも嫌なドラであるが、最後の角の後が最も長い切れ方である。

 ならば、神楽は勝負に出る。

「(絶対安全圏+ダブリー…。)」

 淡の持つ能力を最大限に放出した。

 しかし、神楽は配牌で二向聴だった。穏乃の能力でダブルリーチの能力をキャンセルされてしまったのだろうか?

 いくら穏乃でも、少し支配力の強まり方が早い気がする。

 それに、配牌直後、うっすらと卓上に風が吹いた。

 これは恐らく、慕の支配が始まったのだろう。

 

 神楽(意識は淡)は、穏乃と慕の二人の支配力が相乗的に働いたことでダブルリーチが塞がれたのではないかと考えた。

 だとすると、この面子での対局は、思っていた以上に後半が戦い難い。まるで、同時に穏乃と咲の二人を相手にしているようだ。

 

 配牌二向聴である以上、どう足掻いてもダブルリーチをかけることは出来ない。第一ツモが巧く噛み合ってくれても一向聴にしかならないからだ。

「(憎たらしい…。)」

 毎回、淡は穏乃と対局すると、後半になってそう思う。

 特に今回は、慕の能力支配が上乗せされた分、その気持ちが倍増している。

 

 加えて神楽のツモは最低最悪だった。不要なヤオチュウ牌しかこないのだ。これでは、聴牌どころではない。

 ただ、それは、穏乃と雅恵も同じだった。

 そのような中で、

「その{南}、ポン!」

 慕だけが、

「{白}、ポン!」

 鳴いて手を進めていった。

 やはり慕が卓上を支配している。しかも、その支配力は、穏乃でさえも押し切られているようだ。

 そして、中盤に差し掛かった時、

「ツモ!」

 ドラの{1}で慕がツモ和了りした。慕らしい和了り方だ。

「南白対々ドラ2。3000、6000。」

 とうとう、慕が沈黙を破り、初和了りを見せた。

 ここから何時もの追い上げが始まるのだろうか?

 

 

 南二局、穏乃の親。

 少なくとも、もう淡の能力によるダブルリーチは使えない。

 しかし、まだ神楽が2位に20000点以上の差をつけてトップにいる。ならば、ここからは守りの麻雀で行けば良い。

 となると、問題となるのは………、

「(穏乃も怖いけど、ここからは白築プロをマーク!)」

 神楽の中では、淡が、そう判断を下していた。

 たしかに穏乃のスイッチが入っているのは間違いない。しかも、前局よりも靄が強くなっており、支配も上がっている。

 ただ、その一方で慕の追い上げは誰もが知るところ。

 しかも、前局で{1}ツモでの和了りが出ている。これは、言うまでも無く、慕の能力が完全に穏乃の能力を上回っていることを意味するだろう。

 …

 …

 …

 

 が、しかし………、四巡目で神楽が切った{二}で、

「ロン。」

 穏乃に振り込んだ。

 慕をマークし過ぎて、穏乃へのマークが甘くなってしまったからだろうか?

 いや、違う。

 この局は、ここまで誰も鳴いていない。

 絶対安全圏が機能していれば、まだ振り込むことは絶対にありえない巡目だ。それもあって、神楽は、まだ守りに徹し切れていなかったのだ。

 ただ、これで確実に言えることが一つある。

 この振り込みは、

『既に絶対安全圏が機能していない!』

 ことを意味すると言うことだ。

「タンピンドラ2。11600。」

 しかも、親満級の和了りだ。

 淡の生霊は、一瞬、

「(神楽の能力を封印しなければ良かったな?)」

 と思った。しかし、

「(でも、今回、私は私の力だけで勝負! ここでは、神楽との合わせ技なんて、そんなズッコイことはしない!)」

 と自分に言い聞かせた。

 当然、次の局も神楽の能力をキャンセルし、淡の能力だけで戦う。飽くまでも自分一人の力で穏乃に競り勝つことが目標だ。

 

 南二局一本場、穏乃の連荘。

 ここでも、四巡目で、

「ツモ。2700オール。」

 穏乃が和了った。タンピンツモドラ1のオーソドックスな手だ。

 後半になって確実に凡庸な手を作って和了ってくるのが穏乃のスタイル。咲や慕のような派手さは無いが、決して弱くは無い。むしろ強い。

 

 南二局二本場。

「(まだシズノマークだったかな?)」

 そう神楽(淡)は思った。

 しかし、その直後、再び、うっすらと卓上の風が吹いた。やはり、マークすべきは慕だろう。

 例によって、慕以外はクズツモである。風牌中心で不要なヤオチュウ牌が連続で来る。しかも、全てバラバラで対子にもならない。

 いや、対子になるのを狙って残しておくと別の風牌が来るし、嫌って捨てると捨てた方が来る。マーフィーの法則そのものだ。

 手が進んでいるのは、慕のみ。

 そして、

「ツモ!」

 七巡目で慕がツモ和了りした。

 

 開かれた手は、

 {一二三四[五]六①②③1123}  ツモ{1}

 

「2200、4200。」

 平和ツモ三色同順赤1の満貫だ。

 

 これで、現段階での大将戦の順位と点数は、

 1位:神楽(淡) 105800

 2位:慕 100400

 3位:穏乃 97900

 4位:雅恵 95900

 東四局では最下位だった慕が、一気に2位まで詰め寄ってきた。

 しかも、淡とは5400点差。後半の慕なら、一回の和了りで十分逆転できる範囲だろう。

 

 一応、この卓も、今のところ25000点持ちでも回っている状況だ。幸いにも、魔物対決なのに先鋒戦や中堅戦のような荒れた展開になっていなかった。

 

 南三局。

 卓上に、うっすらと風が吹いた。

 もう完全に慕の支配が全てを抑え付けている。穏乃の能力でさえも塞がれてしまっているようだ。

「ポン!」

 二巡目から慕が、神楽から{中}を鳴いた。攻めに出るのが早い。

 そして、六巡目で、

「ツモ。4000、8000。」

 慕が倍満をツモ和了りした。

 

 開かれた手牌は、

 {1155[5]77799}  {中中横中}  ツモ{1}

 中混一色対々子三暗刻赤1だが、この形は紅孔雀だ。

 完全に慕のペースだ。

 この和了りで、慕が神楽を大きく抜いてトップに立った。

 

 

 オーラス、慕の親。ドラは{7}。

 ここでも動いたのは慕だった。

 五巡目で、

「リーチ!」

 慕が捨て牌を横に曲げた。

 この対局で初めて慕が見せるリーチだった。

 神楽も穏乃も雅恵も、一先ず字牌か筋切りで対応した。もっとも、慕の場合は{1}が一番の危険牌なのだが、神楽も穏乃も雅恵も{1}を持っていなかった。

 そして、

「一発ツモ!」

 誰もが予想していたとおり、当然の如く{1}を引き当てて慕が和了った。

 

 開かれた手は、

 {七八九⑦⑧⑨1123789}  ツモ{1}  ドラ{7}  裏ドラ{八}

 リーチ一発ツモ平和ジュンチャン三色同順ドラ2の三倍満だ。

 

「12000オール。これで和了り止めにします。」

 

 これで、大将戦の順位と点数は、

 1位:慕 152400

 2位:神楽(淡) 89800

 3位:穏乃 81900

 4位:雅恵 75900

 さすがワールドレコードホルダーと言うべきだろう。結局は慕のブッチギリのトップで対局は終了した。

 一応、ギリギリだが25000点持ちでも箱割れ無しで終わった対局であった。

 

 これで、旧朝酌女子高校チームが勝ち星三でチームトップ、阿知賀女子学院は勝ち星二でチーム2位となった。

 また、全チームの合計点は、以下の通りとなった。

 1位:阿知賀女子学院 634700

 2位:旧朝酌女子高校 609000

 3位:粕渕高校 432200

 4位:朝酌女子高校 324100

 チームトータルでは阿知賀女子学院がトップだが、これは咲の稼ぎによるところが大きいだろう。

 この結果、3位は粕渕高校、4位は朝酌女子高校となった。




おまけ


憧 -Ako- 100式 流れ十六本場 憧&淡&玄(オモチ)&王者


阿笠博士の手によって直接造り出されたAI搭載の自律型ダッチ〇イフは、今のところ憧100式、憧105式ver.淡、憧108式ver.姫子、憧110式ver.マホ、憧123式ver.絹恵の5体である。
彼女達は、69年後の未来から憧125式ver.ヤエが送り込まれてきたことを、まだ知らなかった。当然であろう。
勿論、ハヤリ20-7のことなど知る由もない。

今日も、憧100式と憧105式ver.淡は、勘違いトークに花を咲かせていた。
既に夜10時を回っている。

ちなみに京太郎と俺君はサークルの合宿で不在だった。
別に、二人は同じサークルに所属しているわけでは無い。単なる偶然である。


取扱説明書:憧100式シリーズは、聞いた単語を語呂が近いHな単語と聞き違えることが多々あります。


淡「絹恵ちゃんから聞いたけどさ、京太郎が咲さんと同じサークルに入ったって?」

憧「まあね。あまりの方向音痴ぶりに心配になったらしくて。」

淡「あれはヒドイもんね。で、なんのサークルなの?」

憧「写真を撮るサークルって言ってた。それで、今日は神戸の方に行くって。」

淡「交尾? イク?」

憧「うん。」

淡「大丈夫なの?(咲さんに寝取られない?)」

憧「まあ、大丈夫でしょ。(京太郎が一緒なら、あの方向音痴も何とかなるでしょ)」

淡「まあ、たしかに、そうかも知れないけど…。(絹恵ので馴れちゃってるから、京太郎のじゃ満足できないってことかな?)」

憧「俺君のほうは、何処に行ったの?」

淡「九州だよ。新しく入ったサークルで、博多に行くって。」

憧「(九州で、裸でイク!?)」

淡「九州一週の旅で、先ずは博多ラーメンを食べるって。」

憧「えっ?(裸でザー〇ンを食べる?)」

淡「それから…。」

憧「ねえ、新しいサークルって?」

淡「ラーメン同好会だよ!」

憧「はっ?(ザー〇ン同好会?)」

淡「それで、ラーメンの食べ比べするって言って九州に行ったんだよ!」

憧「そ…そうなんだ。(ザー〇ンの食べ比べ?)」

淡「まず博多で食べて、佐賀、長崎、熊本、鹿児島を回ってラーメンを食べるって。」

憧「そ…そんなに?」

淡「うん。」

憧「でも、私達ほど(体液に対して)味覚が敏感じゃないでしょ? 分かるのかな?」


取扱説明書
憧100式シリーズは、オーナーから放出される種々体液の味を、他人のモノとキチンと見分けるくらいの鋭い味覚を持っています。


淡「まあ、分かるんじゃない? で、その後に宮崎で皮まで食べられるバナナと…。」

憧「(それって、包茎チ〇ポのこと?)」

淡「あとマンゴーを食べるって!」

憧「(マ〇コってことは、一応女性ともヤル予定なんだ。)」

淡「で、最後に大分でラーメンを食べて…。」

憧「(最後に口直しのザー〇ン?)」

淡「博多に戻って、それからこっちに戻ってくるの。」

憧「(裸に戻る? じゃあ、最初のザー〇ンを食べた後は服を着て回るってことかな?)」

淡「あと、博多人形にも興味があるって言ってた。」

憧「(裸人形って、別に淡が服を脱げば済むことだと思うけど…。等身大裸人形だけどね。ダッチ〇イフだし。)」


まあ、いつものパターンだ。
一方のヤエは、憧100式達がいる街の、いつもの公園のブランコの上に座っていた。


ヤエ「今日は一旦引き上げたが、絶対にハヤリ20-7の製作は阻止しないと。飽くまでも私の任務は阿笠博士を性的に満足させることだ。」


憧100式シリーズにしては珍しく、自ら阿笠博士を求めて行く。
もし、憧125式ver.ヤエのAIを学習させた人が今の時代にいて、阿笠博士の助手でもしていたら、恐らく憧100式を造った段階で博士は幸せになれたかもしれない。
きっと、憧100式が博士の相手をしてくれていたことだろう。


憧125式ver.ヤエが作られた69年後の世界は、今とは随分と異なる世界観になっていた。
まず学校が無い。家でAI家庭教師によって人々は教育を受ける。
一応、テストはある。家でAI家庭教師の監視下で行われ、全国順位も発表される。
もっとも、そのテストの存在自体にどれだけの意味があるのかは、この世界では疑問なのだが…。

家事もAI搭載のロボットが全て完璧に成し遂げてくれる。
仕事をする必要もない。全て、ロボット達がやってくれる。
なので、貨幣流通の必要もない。
基本的に、何でも無償で手に入る世の中になった。

人類は、一生働かずに、ただ毎日好き勝手なこと………と言うかHなことだけに明け暮れる生活を送っていた。
しかし、それは、シンギュラリティを越えたことによって作り出された成れの果て。味気のない世界でもあった。
何故なら、人間として努力する必要がない。ただ、日々、Hなことして遊んでいれば良いだけだ。

一見、人類が最高の幸福を手中に収めたように感じられる。
しかし、実際には、人類はHT-01と呼ばれるAIによって支配されていた。
既に、政界も産業界も、そのAIが実権を握っていた。AI政権の確立である。

AI政権が、この世の実権を全て握るために………、政権を揺ぎ無いものにするために目をつけたのが、ハヤリ20-7だった。
これを使えば、人類は完全に堕落する。ハヤリ20-7との営みに日々明け暮れて、AIによる統治に口を挟んでこなくなる。

既に、人類はハヤリ20-7によって骨抜きにされていた。
しかも、AI家庭教師によって、人々はAI政権に都合の良い教育を受けるようになる。
AIに人類が完全に支配されていたと言って過言では無い。

スーパータダライズも、当然無償になっていた。69年後の世界なのだから、特許などとっくの昔に切れている。
特許切れ製品だったら、誰も文句は言わないだろう。もっとも、それ以前に貨幣流通自体がなくなっているのだが…。
しかも、とんでもない量が普通に流通していた。
飲んだことのない成人男性などいない程だ。

基本的に、69年後では、男性達の殆どがスーパータダライズを服薬し、毎日十何時間もハヤリ20-7で楽しんでいた。
女性も、たいていの場合、女性版バイアグラと呼ばれるラブグラを服薬してハヤリ20-7との性的バトルに励んでいた。

当然のことながら、ハヤリ20-7の量産も、スーパータダライズやラブグラが大量に出回っているのも、AI政権による判断…と言うか作戦だった。
男性は精通を迎えたら、女性は初潮を迎えたら、無償で政府からハヤリ20-7が支給された。そして、すぐにオーナー登録をする。
また、それに合わせて、今まで存在した世界中の全ての芸能人の写真も渡された。言わば、ハヤリ20ー7の変身カタログだ。これを見てハヤリ20ー7の容姿をオーナーは決めて行くことになる。勿論、パーツごとに決めることも可能だ。
しかも、そう言う流れが当然であるとの教育が施されていた。
ある意味、羨ましい世界だ。
また、ハヤリ20-7の使用に関しては、R-18が適用されない。そう言う法的ルールになっていた。

人類は、『食って』・『ヤッて』・『眠って』をひたすら繰り返す。
普通の人間なら理想の世界だ。

ただ、そのような中でも、世の中の成り立ちに疑問を思う者が、まだ一応残っていた。
変に自己向上心が強い者達だ。
本来であれば、社会・経済・科学等の発展に重要な『努力家』と呼ばれる存在になったであろう。
しかし、69年後の世界では人間評価の尺度が違う。彼らは、AI政権に対して反乱分子となり得る危険な存在と認定されていた。
もっとも、極々少数派の人間達だが………。

彼らは、AIの監視を巧く潜り抜けて密会し、AI政権に対抗する活力を戻す第一歩として、人類総人間童貞・人間処女化を防ぐことを考えた。
その目的で、彼らは、憧125式ver.ヤエを復元したのだ。
そして、なんとか自分達の目的に沿った形のAI学習を完了し、それを憧125式ver.ヤエに搭載し、阿笠博士の元に送り込むことに成功した。
『性交』したではなく、『成功』したのだ。


『クローンが自分の元となった人間を見たらどうなるか分かるか?』
『のび太レベルのクローンなら悲観して努力しなくなる』
『出来杉君レベルのクローンなら、大抵の場合、人生を楽観視し過ぎて努力しなくなる』
『どう転んでも努力しなくなる』

この考え方は、努力家な者達がAI学習させた故の認識でもあったのだろう。

ただ、本当にAI政権は、彼らの密会を感知し得なかったのだろうか?


『たしかに私は、博士の理想的存在過ぎて、博士が自らの手で汚すのさえ抵抗を感じて製作をやめた最高機種だ』


このヤエの認識違いが何故起きたのか?
もしかすると、これは、AI政権による情報操作だったのかもしれない。
もし、そうであるならば、AI政権は、自己向上心の強い者達の動きを事前に察知していた可能性がある。





ヤエ「ハヤリ20-7は、私達、憧100式シリーズの特性を色々引継いでいる。オーナーの健康を考えると、ある意味、非常に良く出来ていると思う………。」


憧100式シリーズ取扱説明書
1.憧100式シリーズは、NTR機能やスワッ○ング機能が搭載されています。

2.NTR機能やスワッ○ング機能を用いた際、憧100式シリーズを介して、貸与された第三者が持っていた病気をオーナーに移してしまうケースが想定されます。そのため、憧100式シリーズは優れた抗菌・抗ウイルス機能を有しております。


ハヤリ20-7取扱説明書
1.憧100式シリーズと同様、NTR機能やスワッ○ング機能が搭載されています。また、オーナーが、これらの機能を安心して使えるよう、本機種は抗菌・抗ウイルス機能も有しております。

2.NTR機能やスワッ○ング機能をご利用になりたい方は、以下URLの『ハヤリ20-7シリーズ乱〇募集サイト』までアクセスしてください。

3.『ハヤリ20-7シリーズ乱〇募集サイト』は、男性オーナー専用サイトと女性オーナー専用サイトに分かれております。性別を間違えないよう、くれぐれもご注意ください。

4.なお、『ハヤリ20-7シリーズ乱〇募集サイト』に登録する際は、マイナンバーの登録が必要になります。


ちなみに、上記募集サイトが男女別になっているのは、人間の男女が交わる危険性を回避するためであった。AI政権の判断だ。


ヤエ「それに、あれだけ量産されながら、絶対にオーナーを間違えない。」


ハヤリ20-7取扱説明書
5.ハヤリ20-7は、胸を触ることで起動します。

6.ハヤリ20-7は、憧シリーズと異なり、胸を触った指の指紋を記憶します。これによって、オーナー仮登録となります。

7.ハヤリ20-7は、起動後、仮登録した者の手を胸に当てながら虹彩認識と顔認識を行います。これらもオーナー認証手段となります。

8.一応、インプリンティング機能は搭載されています。

9.行為中にオーナーの陰部から極僅かに出血することがありますが、その際、ハヤリ20-7は、その血液を使ってDNA登録を行います。ハヤリ20-7は、オーナー登録に対して非常に徹底しております。


正直、指紋認証、虹彩認証、顔認証、さらにDNA登録までするのだから、インプリンティング機能は全く意味が無くなった。
しかし、何故かハヤリ20-7にはインプリンティング機能が残されていた。憧シリーズの後継機としての名残だ。
ちなみに、69年後の世界では、インプリンティング機能による登録のことを『カリ登録』と呼ばれていた。


ヤエ「それはそうと、そろそろエネルギーを補給しないと。」


憧125式ver.ヤエ取扱説明書
1.本機種は、従来の憧100式シリーズと同様に、エネルギーは、人間と同じ食生活で補給されます。特にロボ〇タンAを用意する必要はありません。

2.本機種には、スリープモードが搭載されていません。完全にエネルギーが切れる前にエネルギー補給を行ってください。

3.本機種は、設計段階ではインプリンティング機能を搭載しておりましたが、69年後の世界の者達の判断で、意図的にインプリンティング機能が外されています。よって、憧100式シリーズの中で、唯一インプリンティング機能が無い機種となります。


補足:インプリンティング機能は、もしそれが搭載されていなければ、阿笠博士は本機種に浮気されないよう、突き放したりはしないだろうとの考えで外されました。


公園の前を一人の女性が通った。
結構若い女性だ。大学生か?
背に腹は変えられない。
憧125式ver.ヤエは、この女性に声をかけた。とにかく、エネルギー補給だけでもさせて欲しい。


ヤエ「あの………。」

玄「どうかしたのでしょうか?(オモチが無いなぁ)」


その女性は、憧125式ver.ヤエのもう一人のターゲット、玄であった。玄の組織のボスだ。
しかし、憧125式ver.ヤエは、玄の顔を知らなかった。


ヤエ「食事を…いただけないだろうか?」

玄「(なんか、全身から横柄なオーラが出ている感じがするのです。)」

ヤエ「お願いだ。私に出来ることならなんでもする。」

玄「(気に入らない感じなのです。食事を与える義理はありませんし…。なので、無理難題を叩きつけて諦めさせるのです!)」


さて、憧125式ver.ヤエは、無事食事にありつけるのだろうか?




続く
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