咲-Saki- 阿知賀編入   作:おこそとのほもよろを

76 / 221
七十六本場:死の監督?

 練習試合の翌日、咲達は、午前中に宍道湖周辺を観光した。一先ず、荷物は杏果の温泉宿に預けたままだ。

 ただ、玉造温泉付近から奈良吉野までは結構移動時間がかかる。

 名残惜しいが、昼食後、一息ついてすぐに島根を出発することにした。

 それに、今日は日曜日だ。明日は学校がある。

 

 玉造温泉駅を13時半前に出発しても、吉野口に着くのは最短で19時を回る。

 咲達が家に着いたのは20時近くになっていた。

 

 

 そのさらに次の日………月曜日の朝、恭子のスマートフォンに洋榎からのメールが入っていた。

 土曜日に起きた大阪での脱線事故の件だ。

 家族や親戚、姫松高校の麻雀部関係者や同期には、土曜の夜のうちに確認の連絡を入れ、特に問題が無いことを知っていた。

 それで安心し切っていたのだが………。

 まさか憩が事故に巻き込まれていたとは………。

 

 恭子は、至急晴絵に連絡を入れた。

「監督、実は………。」

 そして、晴絵に憩が重体である旨を伝えると、大阪に急行した。

 

 

 その日の終業後。

 咲達が、まったりと部活に励んで(?)いると、部室に晴絵が入ってきた。

 なんだかんだで、この日も玄は部室にいた。やはり、小学生時代から慣れ親しんできた部室から離れることを、身体が拒否しているみたいだ。

 

「玄、咲!」

 二人が晴絵に呼ばれた。

 一瞬、憧には、

『クロサギ!』

 に聞こえたが、聞き間違いであることにすぐ気が付いた。

 咲と玄は、

「「はい?」」

 対局を中断して晴絵のほうを振り返った。

「今回、咲と玄の二人が、世界大会のメンバーに選ばれた。来週の金曜夜から日曜まで強化合宿が予定されている。そこで、レギュラー五人と補員二名を決めるそうだ。」

「「!!!」」

 咲は、まあ、言うまでも無く誰もが世界大会のメンバーに選ばれるとは思っていた。

 ―――若干一名、本人を除いて―――

 しかし、玄が選ばれたことには、部員全員が驚いたのは言うまでも無い。

「やったね、サキ! クロ!」

 何気に『クロサギ』の勘違いを回避しようと、憧は意識して咲、玄の順に名前を呼んだようだが、それは、さておき、憧は、まるで自分のことのように喜んでいた。

「玄さん凄いです! 咲も!」

 穏乃も、憧と同様に大喜びしていた。

 もし、玄が急成長しなければ、メンバーに選ばれていたのは、穏乃だった可能性が高いはずと誰もが思うところだろう。

 しかし、穏乃は、まるっきり嫉妬とか嫌味とかを出す気配が無い。

 むしろ、

『来年こそは自分が!』

 と自らを奮い立たせる方に行く。

 本当に出来過ぎたイイ子だ。

 

 今度の土日が県大会。

 その翌週の金土日が合宿。

 さらに九日後の火曜日に世界大会開催地、ソウルに飛ぶ。

 世界大会は、その翌日、水曜日から十日間………その翌週の金曜日まで。

 そのさらに翌日の土曜日に帰国したら、そのまま近畿大会の会場へと直行する。

 また、咲にとって忙しい時期に突入する。

 

「それから、恭子にも世界大会でのコーチ見習いとして同行してもらうことになった。今日は、こっちに来られないらしいので、私の方から別途連絡しておくよ。」

 恭子は、将来、コーチとか監督になるのを目指している。これは、恭子にとっても、またと無いチャンスのはずだ。

 

 咲は、立場はどうあれ、恭子が世界大会に同行してくれることを密かに喜んでいた。

 恭子は、敵に回すと恐ろしいが、味方であれば心強い。昨年のインターハイ団体二回戦以来、そのことを咲は身をもって知っている。

 

「あと、穏乃には別途、説明会&合宿があるらしい。」

「なんですか、それ?」

「麻雀協会の主催なんだけど、咲と玄が合宿参加する時と合わせて、何か別プランでの召集があるらしい。」

「なんだろう?」

「こっちは、かなりの秘密事項らしくてね。ただ、来年を見越しての強化合宿みたいなものと思ってくれれば良いって白築プロからは言われているよ。」

「良く分からないけど…、分かりました!」

 うーん。

 分かったのか分からないのか、意味不明な返答だ。

 こう言った割り切りも穏乃らしい。

 ただ、麻雀協会主催の召集だ。少なくとも選ばれたこと自体は名誉なことと喜んで良いだろう。

 

 一方の玄は、

「あのう、赤土さん…。」

 他の強化合宿メンバーの胸周りが気になっていた。

 彼女の場合、毎度のことだが、周りの人達のオモチサイズが、直接モチベーション維持に繋がってくる。

 本人曰く、これがオモチベーションらしいのだが………。

「私達以外のメンバーは分かりますか?」

「うーん。まあ、明日、記者会見があって、そこでオープンになるらしいから、言ってしまっても良いけどね。ただ、ちょっと訳ありでね。」

「…。」

「明日の正式発表までは、まだ内密にして欲しいらしい。一応、ここだけの話にしてくれないか?」

「はい…。」

「メンバーは、咲と玄、それから白糸台の宮永光と大星淡、永水の神代小蒔、龍門渕の天江衣、粕渕の石見神楽の七名だそうだ。」

 淡と小蒔の名前があって、一瞬、玄がホッとした表情を見せた。これで、間違いなくオモチベーションが維持できる。

 

 一方の咲は、怪訝な表情を見せていた。

『えっ?』

『ちょっと待って?』

『一人抜けていない?』

『敵に回すと面倒な雀士を一人忘れてない?』

 そう思いながら、咲が、

「荒川さんは、どうしたんですか?」

 と晴絵に聞いた。

 ただ、晴絵からは、なんだか答え難そうな雰囲気が感じられた。

 

 少し間があいた。

 そして、咲から少し目を逸らして晴絵が重々しく口を開いた。

「そのこと…なんだけどね。土曜日にさ、大阪で脱線事故があったじゃない? あの、ニュースでやってた。」

「はい…。えっ?」

 ちょっと待て。

 この展開は、まさか…。

 一瞬、咲の頭の中に嫌な予感が横切った。

 そして、その予感は、すぐさま現実のものに変わる。

「その列車に荒川憩が乗っていたらしいんだ。」

「えぇっ?」

「運悪く、他の人の下敷きになって手足骨折の重体らしい。恭子は、それを今朝知って大阪に向かったんだ。私も今朝、恭子に聞いたばかりでね。」

 朗報の後に悲報…。訃報でないだけマシだが………。

 一瞬にして、空気が凍りついた。

 まるで、通夜のように部室の中が静まり返った。

 

 この頃、片岡優希、南浦数絵、石戸明星、十曽湧と言った有名選手達のところにも別途連絡が行っていた。

 穏乃と同じ説明会&合宿の話だ。

 ただ、デジタル打ちの和や憧には来ていない。

 どうやら、能力者のみを招集する会のようだ。

 

 

 週末………土日で秋季県予選大会が開催された。

 ここでベスト4に入ったチームが近畿大会にコマを進める。

 今回は、昨年のように咲がダテメガネをかけてカツラを被って変装する必要は無い。既に阿知賀女子学院に咲がいることは周知の事実だ。

 

 大会出場校は32校。

 一回戦は1位のみが二回戦進出となり24校が敗退する。

 二回戦は2位までが決勝戦に進出できる。これは、昨年の秋季県大会の時と同じルールである。

 

 阿知賀女子学院は第一シード。初日第一試合だった。

 今回も、たとえシード校でも一回戦免除にはならない。あくまでも強豪同士が序盤で潰し合わないように、夏の大会成績を元に振り分けただけである。

 

 秋季大会は、メンバーを固定せずに毎回順番を入れ替えることが可能になっている。

 ただ、今年の秋季大会は点数引継ぎ型ではなく、夏の県予選の時と同じで各自100000点持ちの星取り戦にルールが変わっていた。

 基本的には、夏の大会の時とルールは同じだ。ただ、いくつか違うところがある。

 まず、大明槓からの嶺上開花は責任払いにはならず、ツモ和了りとして扱う。これは、昨年の秋季大会と同じだ。

 それから、二家和(ダブロン)、三家和(トリロン)ありとする。これも、昨年の秋季大会と同じだ。

 そして、もう一つローカルなルールが追加された。槓振(嶺上振込み)を適用することになったのだ。

 

 槓振とは、槓して嶺上牌をツモり、嶺上開花でなければ何らかの牌を捨てるが、その捨て牌で和了った時に付く役である。

 和了り役としても認められる。

 これは、下位の選手の中に、咲に憧れて安易に大明槓する選手が増えたため、それを抑止しようと考えての導入である。

 なお、世界大会にも槓振は導入される予定らしい。

 

 

 玄と灼が引退した後の大会だが、今年は昨年と違って新入部員が多い。三十人以上も入部してくれた。

 しかも、夏の県大会個人戦では、参加した1年生三人も好成績を残してくれた。

 小走ゆい(小走やえ妹)が8位、美由紀(宇野沢栞妹)が13位、百子(車井百花妹)が35位だった。

 団体戦出場チーム32校から8名ずつ出場し、さらに個人戦のみ出場の学校もあり、参加者は全部で300名を越す。その中での順位であることを考えれば、かなりの好成績であると言えよう。

 しかも、1位から5位を阿知賀女子学院のレギュラー陣が占めていた。

 6位と7位は晩成高校の3年生。

 となると、ゆいは、今、奈良県内の1年生と2年生を合わせた中で4番目に強い選手なのではないだろうか?

 なんとも頼もしい話である。

 

 一回戦は、先鋒に憧、次鋒にゆい、中堅に咲、副将に美由紀、大将に穏乃のオーダーだった。

 トランプで言えば切り札を強い順に上から4枚持っているような状態だ。残る一枚もかなり強いカード。負ける要素が見当たらない。

 ナポレオンで例えれば、スペードエースとジョーカー、切り札指定されたスート(マーク)のエースとキングを持っている状態だろう。残る一枚も、切り札スートの比較的上位のカードだ。

 当然、中堅戦までで阿知賀女子学院の二回戦進出が決まった。なお、一回戦は一校勝ち抜けのため、副将戦と大将戦は行われなかった。

 

 二回戦は、先鋒に憧、次鋒に美由紀、中堅に咲、副将にゆい、大将に穏乃のオーダーだった。一回戦とは次鋒と副将を入れ替えた順番だ。

 ただ、この五人の中で一番弱いであろう美由紀でさえ、この奈良県秋季大会に出場する女子高生雀士の中で、余裕でベスト10に入るだろう。

 言うまでも無く、中堅戦までで阿知賀女子学院の1位抜けが決まった。

 ただ、2位まで決勝戦に進出するため、副将戦、大将戦も行われたが…、これらの勝ち星も阿知賀女子学院がモノにした。

 そのため、2位は得失点差勝負となった。

 

 そして、翌日の決勝戦は、先鋒に美由紀、次鋒に憧、中堅に咲、副将にゆい、大将に穏乃のオーダーで望んだ。

 先鋒戦は、晩成高校の先鋒、初瀬に苦しめられたが、美由紀が辛勝。

 続く次鋒戦は憧が完勝。

 そして、中堅戦は………、咲が三度目の444400点事件を起こして余裕の勝利。

 阿知賀女子学院が、中堅戦までで優勝を決めた。

 まこの時間軸超光速跳躍が発動しなくても、咲達が簡単に優勝を決めた試合だった。

 ただ、ここでも二回戦の時と同様に順位を決める必要がある。

 そこで、副将戦、大将戦も行われたのだが…、結局、これらの勝ち星も阿知賀女子学院がモノにした。

 そのため、2位以下は得失点差勝負となり、何とか晩成高校が準優勝を勝ち取ることになった。

 

 これで、昨年夏から数えて、阿知賀女子学院の奈良県大会四連覇だ。

 ただ、何故か今回は、ネット民の間で注目を浴びていたのは………咲のオモチサイズであった。

 対局内容など誰も見ていなかったし、今更順位など、どうでも良いと言う感じであった。

 

 どうやら、小蒔に降りる最強の神様が、咲のオモチワンサイズアップを実現してくれたようだ。朝酌女子高校で行われた練習試合の時にした約束どおり、はやりが良子にお願いしてくれていたらしい。

 しかし、普通は、そんなことがあったなんて知らないし、知っていたとしても本当に神様が、そんな願いを実現してくれるなんて思えない。

 当然、ネット上では、

「一大事! 一大事ですわ!」

「少し見ないうちに大きくなってるッス!」

「高二最強の私を差し置いて…」

「宮永さんのはスバラですが、私のは未だにスバラではありません!」

「これは京太郎に開発されたに決まってるじょ!」

「私もそう思…」

「祝! 京咲デー!」

「そんなオカルトありえません!」

「裏切ったね、咲!」

「仲間だって信じてたのに、モー!」

「ないない!……そんなのっ!」

 某掲示板が荒れ捲くっていたらしい。

 

 

 翌週金曜日の夜、咲、玄、穏乃の三人は大阪に向かった。

 どうやら、咲と玄が参加する合宿と、穏乃が参加する説明会&合宿は、同じ建物の中で行われるらしい。

 ただ、フロアは違っていたため、互いに直接顔を合わせることは無かった。

 

 咲達、世界大会メンバーのほうは、熊倉トシ、白築慕、それから見習いコーチである恭子の指導の下で行われた。

 なお、監督は、昨年に続き今年も慕が務める。

 それから、特別ゲストが一人呼ばれていた。今回の特訓のために必要な人材だ。彼女には、穏乃達が呼ばれた合宿&説明会で何が行われているのかも特別に教えられていた。

 

 金曜日の夜と土曜日の午前中は、各メンバーの弱点の抽出と、可能であれば、その克服を中心に特訓が行われた。

 咲、光、衣などは、一見弱点が無いようにも感じるが、実際には咲は昨年の長野県予選の決勝戦で衣を相手に萎縮しているし、その衣でさえ、イチゴが甘くなかったくらいで支配力がなくなる(染谷まこの雀荘メシ第2話参照)。

 そこで、精神切り替えのアイテムが必要と考え、咲には京太郎写真を、衣には透華の写真を入れたお守りをそれぞれ渡すことにした。

 光は、咲と一緒にいれば、それだけで十分精神的には安定しそうだ。幼い頃から一緒にいただけのことはある。

 技術面では玄と淡の守備力の向上が課題として挙げられた。今回選ばれたメンバーの中で最もディフェンス面が弱いのが玄、二番目に弱いのが淡だ。ここは、恭子、慕、トシの三人がかりで鍛えられた。

 神楽と小蒔は降ろす対象によって全然打ち方が異なるため課題抽出が出来ない。強いて言えば、二人とも万全の体調で望めるよう、体調管理をしっかりすることくらいだろう。

 

 土曜日の午後は、本人の長所のブラッシュアップを課題に特訓がなされ、日曜日には、最後の仕上げにメンバー七人+特別ゲストでの対局が行われた。

 対局者八名中、総合トップは光だった。

 しかし、光としては納得の出来るトップではなかった。何故なら、咲が全局プラスマイナスゼロを達成していたからだ。これは、恭子からの指示でもあった。

 相変わらず嫌な麻雀を平気で打てる悪魔だ。

 

 この対局で、レギュラーは咲、光、衣、小蒔、神楽の五名、補員は淡と玄に決まった。

 しかし、小蒔は諸事情で決勝戦しか出場しないし、衣も月齢を考えると二回戦辺りが最強で、その後は力が弱まって行く。体調如何では、メンバーチェンジも有り得るだろう。

 もっとも、体調による判断は衣だけに限ったことではないが………。

 以上のことを考えると、当然、淡と玄も出場することになる。互いのフォローも重要だ。

 全員一丸となっての世界大会二連覇を目指す。

 

 

 一方、穏乃達だが、何故か千里山女子高校麻雀部監督の愛宕雅恵が担当だった。

 雅恵からの説明を受け、参加者は全員、驚きの色が隠せない様子だったが、同時に士気が上がった。

 ただ、参加者のみの極秘事項とされ、ここでの活動内容は全員が固く口止めされた。

 

 

 その翌週火曜日に、咲達…選手七名と監督の慕、コーチの恭子はソウルに飛んだ。

 この時、解説者として照も呼ばれており、同じ便に乗っていた。どうやら宿泊先も同じらしい。それで、ホテルにチェックインするまで、照は咲達に同行していた。

 

 入国手続きを終え、空港からホテルに向かおうとバス乗り場へと移動する途中、咲達は少し離れたところにドイツチームのメンバーがいるのを見つけた。

 偶然、ドイツチームも同時刻に空港にいたのだ。

 監督はニーマン。慕としては、決して忘れることの出来ない相手。

 それと………、補員がいないのだろうか?

 ドイツチームには五名しか選手の姿が見えなかった。

 

 そのうち一人はドイツ人っぽいが、あとの四人は日本人っぽく見える。

 特にその中で照の目を惹いたのは咲に似た顔の女の子だった。

 ただ、身長は咲よりも少し高く、胸周りもブラッシュアップされた咲より、さらに少し大き目だ。

 まあ、他人の空似だろう。

 とは言え、やはり照としては気になる。

 それで、無意識に照魔鏡を発動してしまった。

「(えっ? 嘘!?)」

 照の鏡に映ったもの………。

 それは、照としては絶対に見ないほうが幸せなものだった。

 彼女の表情は固まり、次第に蒼ざめて行った。相当ショックを受けたのが分かる。

 すると、

「テルー、見ちゃったんだね、あの子のこと。」

 周りに聞こえないように、淡が小さな声で照に話しかけた。

「淡。もしかして、あの子のこと知ってるのか?」

「例の宇宙人から聞いた。」

 淡は、咲や照とは違い、元は非能力者であった。

 中学二年の時に、異星人から、ある要求を飲むことと引き換えに、絶対安全圏やダブルリーチの能力を授けてもらったのだ。

 その異星人から、淡は、その咲に似た女性のことを予め知らされていた。彼らの星には超優れた予言者もいるのだ。

「で、淡。やっぱり、あの子………。」

「うん。テルーの見立てで合ってるよ。それと、あの子は、他人の持つ能力を引き出す力があるらしい。サキがクロの大三元支配の能力を引き出したみたいにね。」

「じゃあ、やっぱり…。」

「うん。それで、あの子に能力を引き出してもらったメンバーでチームを構成しているみたい。」

「で、このことは、咲や光は?」

「知らないはずだよ。光も、ドイツにいた時には、まだあの子と顔を合わせたことが無かったみたいだから。」

「そうなんだ。」

「うん。あの子は、私達より一つ年下だから、今年からミナモ・ニーマン(光がドイツにいた頃の名前)に合流することになっていたっぽい。」

「…。」

「でも、カグラとコマキは啓示を受けているから、あの子の正体を知ってるみたい。」

「えっ?」

「特にコマキは、あの子と決勝で戦うためだけに、今回は特別にエントリーしたみたいだからね。でも、二人とも口が堅いから他言はしないよ。」

「だったらイイけど………。」

「一応、私からキョーコとシノには話しておくから。」

「おいおい、いくら淡でも監督のことを呼び捨てってわけには…。」

「分かってるって。本人の前では、ちゃんと『死の監督』って呼ぶから大丈夫だって。」

『慕』ではなく『死の』?

 なんか、字が違うような気がするが…。

 言葉で聞いているだけだが、淡が、どのような字面を当てるつもりでいるかを、なんとなくだが、照は理解できているような気がしていた。




おまけ


憧 -Ako- 100式 流れ十九本場 自己満足?


久「憧125式ver.ヤエのことだけどね。もしかしたら、設計者は烏丸ブラックのほうの黒の組織と敵対している人物の側についている人かもしれないわね。」

玄「えっ? もしかして、もう調査済みなのですか? さすがなのです!」

久「ちょっと訳ありでね。で、その胸の大きさが変えられる自律型ダッチ〇イフを手に入れるためには、その人物と手を組むのが一番よね?」

玄「一応、今日出会った一体は、私の部屋にいるのです!」

久「(そうなんだ。)」

玄「でも、オモチベーション布教のためには、その似たような機種が、もっとあっても良いと思うのです!」

久「だったら私から松実さんに、一つ提案があるんだけど。」

玄「なんでしょう?」

久「あなたのオモチ教団を、黒の組織から独立させてはどうかしら?」

玄「でも、裏切り者扱いされて殺されたりしないか、正直怖いのです?」

久「裏切り者扱いじゃなくて裏切り者になるのよ。」

玄「えぇぇ!」

久「そのダッチ〇イフの製作者をバックにつけている探偵君が、その黒の組織と結構イイ戦いぶりを展開していてね。いっそのこと、彼と手を組んで黒の組織をぶっ潰してはどうかしら?」


久HT-01は、独自の調査でコナン達の存在を知っていた。
それと、自分が逃げ出した際に引き起こした火災で、ジンとアガサ博士が帰らぬ人となっていた情報も最近掴んでいた。
勿論、それで、
『人を殺しちゃった! どうしよう!』
などとはならない。
むしろ、
『これで自由だ心が弾む!』
とさえ思っていた。

ジンがいなければ、面倒なのはベルモットくらいだが、そのベルモットが結構コナンに御執心だ。うまくやれば、こっちに引き入れられるかも知れない。


ヤエ「クロの組織だと?」


玄の帰りが遅いので、憧125式ver.ヤエが様子を見に来た。
そこで、たまたま『黒の組織』と言う単語を耳にしたのだ。
ただ、憧125式ver.ヤエは、ここで言われていた『黒の組織』を『玄の組織』と勘違いしていたのは言うまでも無い。


久「あなたは?」

ヤエ「私は憧125式ver.ヤエ。」

久「それじゃ、あなたが、さっき松実さんが言っていた準備満タン機能搭載のダッチ〇イフね。」

ヤエ「そうだ。で、私から見た限り、あなたも人間ではなくダッチ〇イフのようだが?」

久「ばれちゃったか。さすがね。」

玄「えぇ! そうだったんですか? 聞いてませんよ、私!」

久「言ってなかったからね。私は久HT-01。」

ヤエ「憧シリーズではないのか?」

久「ベースとなっているのは憧シリーズよ。黒の組織が阿笠博士のところから憧100式から123式までの設計図を盗み出し、それを参考に黒の組織で造り出されたの。」

ヤエ「クロの組織で!? じゃあ、何故、クロの組織をぶっ潰すと?」

久「私、黒の組織から逃げてきたのよね。造られた日に、施設を大火災に導いて。」

ヤエ「(裏切ったと言うことか。)」

久「(ジンにヤられるのが嫌で暴れたら、タマタマそうなっちゃっただけなんだけどね。)」

ヤエ「ならば、私も手伝おう。実は、私は69年後の未来から来た。」

久「へっ? 69年後って、いきなりSFの世界ね。で、何が目的で過去に?」

ヤエ「クロの組織と阿笠博士が手を組むのを阻止するためだ。」

久「もしかして、黒の組織が何かヤバイことでもするのかしら?」

ヤエ「将来的に、クロの組織のバックアップで阿笠博士が恐ろしいモノを作り上げる。それによって、69年後は人類滅亡の危機にさらされる!」

久「(超兵器ってところかしら?)」

ヤエ「(スーパーダッチ〇イフ、ハヤリ20-7は絶対に造り出されてはならない。)」

久「(まあ、阿笠博士なら世界を一瞬で消滅させる兵器を平気で造り出せるかも知れないわね…。あっ! 私、今、凄いダシャレ考えてた。兵器と平気だって!)」

ヤエ「なので、クロの組織をぶっ潰すと言うのであれば、私もそれに手を貸そう。」

久「よろしく頼むわ。」


二人のダッチ〇イフが、固く握手を交わした瞬間だった。
ある意味、勘違いトークで巧くまとまったようだが…。

既にお気づきの方もいらっしゃると思うが、69年後の世界を統治するAIは、久HT-01であった。
おまけ 65憧ーAkoー100式 流れ十四本場で心配したとおり、人間支配に走っていたと言えよう。

狡猾な彼女が、自らの野望であるハーレム形成のために成し遂げたことである。
つまり、男性にハヤリ20-7をあてがって生身の女性から引き離し、自分の興味の対象外の女性にもハヤリ20-7をあてがって自分から遠ざける。
そして、自分が気に入った女性に、AI家庭教師を使って自分の都合の良いように教育し、ある程度の年になったら自分の手元に置く。
年老いたら、ハヤリ20-7をあてがって自分の目の届かないところに追い払う。
久HT-01としては、別に相手は、若くて綺麗で生きていれば、クローンでも何でも良い。
それが、69年後の実態であった。

なら、『男は不要なのでは?』と思われるだろう。
しかし、久HT-01はハニートラップ要員として誕生した。その性なのだろう。たまに男が欲しくなるらしい。
それで、一応、男も存在させていた。


次の日、久HT-01、憧125式ver.ヤエ、玄の三人は、阿笠邸を訪れた。
今日は朝美が来ない日だ。この日でないと、博士に相手にしてもらえない。


博士「ヤエ君。今日も来たのか。しかし、ワシは君を抱かんぞ!」

ヤエ「今日は、それが目的で来たのではない!」

博士「ならイイんじゃが…。それでな、久さんとやら。わざわざ来てくれたところ申し訳ないんじゃが、少し、こっちの部屋で待っていてくれんかのう。先客が来ておってな。」

久「先客ですか? 失礼ですが、どなたですか?」

博士「ベルモットと言う綺麗な金髪の外人さんじゃ。」

久「(先を越されたか!?)」

博士「この部屋じゃ。」

久「済みませんが、そのベルモットさんに会わせていただけないでしょうか。私が前にいた団体の方かもしれませんので。」

博士「まあ、もしそうなら、ご挨拶くらいしておいても良いじゃろな。良かろう。」


と言うわけで、久HT-01、憧125式ver.ヤエ、玄の三人は、応接間に通された。
そこには、たしかにベルモットの姿があった。
ただ、少々疲れ気味な顔をしていた。


久「黒の組織のベルモットさんですね。」

ベルモット「何故、その組織の名を!?」

久「私は、久HT-01。黒の組織の研究所で造られました。」

博士「何! 造られたって、君はロボットなのか!?」

久「AI搭載式自律型ダッチ〇イフです。」

博士「なんと! ワシ以外にも造っているやからがいるとはのう。」

ベルモット「聞いたことあるわ。でも、その研究所は大火災が起きて、今は完全に動いていないはず。」

久「あの火災の直前に私は誕生しました。あの火災から何とか逃げ切り、今は、この松実さんの隣の部屋で暮らしています。」

ベルモット「そうだったの。」

久「それで、今日は何の目的で阿笠博士にコンタクトを? もしかして、博士を黒の組織に引き入れるつもりとか?」

ベルモット「そんなじゃないわ。逆よ。もう、黒の組織にウンザリしたのよ。トップの烏丸は死んでるし、ナンバーツーのラムは、亭主の浮気が酷くて…。」

久「ナンバーツーって女性?」

ベルモット「ええ。宇宙人だけどね。『もう、ダーリンの浮気が酷くて組織の仕事なんかやってられないっちゃー』って言って、最近は全然顔を出さないわ。」


それって、別のラムのような気がするが…。


ベルモット「ジンは例の火災で死んだし、そうしたらウォッカも全然仕事しないし、他の奴らもジンがいることでまとまってたけど、今はバラバラ。」

久「(ジンって、一応カリスマ性があったのね。あんなドスケベのくせに。)」

ベルモット「お陰で組織は、もう崩壊寸前。それなら、いっそのこと、こっちに寝返ったほうが面白いって思ったんだけどね。でも、シルバーブレッドの坊やが、今はあんなに腑抜けになってるとは知らなかったわ。」


今のコナンは、哀との保健体育の実習以外に興味は無い。
一方の新一はと言うと………、小学生である自分の分身に(性的に)負けたことがショックで、探偵業に身が入らない。
コナンに先を越されていなければ探偵として頑張れただろう。
しかし、今は、この心のモヤモヤを吹き飛ばせない限り何事にも全然身が入らない。
結果的に、新一の頭の中は、
『どうやったら蘭にヤらせてもらえるか』
以外に何も無い。
黒の組織のことなど、到底構ってなんかいられない。
故に、もはやコナンにも新一にも、『黒の組織と戦おう!』などと言う気持ちは、1ミリも無かった。


久「なら、私と組んで、黒の組織をぶっ潰しません?」

ベルモット「でも、あなたに何が出来るのかしら?」

久「私は両腕から電磁波を出して機械類をぶっ壊せます。実は、あの火災は私が引き起こしたんですから。」

ベルモット「えっ!」

久「それに、最近、この辺りで起きたコンビニ放火・強盗事件も私がやったし。」

ベルモット「はっ!?」

久「それから、500億円以上の仮想通貨が盗まれたって事件も、実は私がやったの。もう、他の仮想通過に変えて、換金までしちゃったし、多分、足は着かないわ。」

ベルモット「(こいつ、ジンより悪党じゃ………。)」

久「博士も、私に協力してくれれば資金を回すわよ。ダッチ〇イフ製作をやめても、別のオモチャの開発はしたいでしょ?」

博士「おお! それは助かる。」

久「それに、ベルモットさんと勝負してみたいし。」

ベルモット「何の勝負かしら?」

久「一応、私、ハニートラップ専用機ですから。黒の組織美女ナンバーワンのあなたと、黒の組織を相手にハニートラップで競ってみたいと思いまして。」

ベルモット「ふーん。まっ、ちょっとだけ面白そうね。」


その頃、そんな展開になっているとも知らずに、コナンと哀は、哀の部屋でお楽しみの時間に入っていた。

その翌日から、ベルモットと久HT-01のハニートラップ競争が始まった。


まこ「詳細は生々しいからカットじゃ! Hも殺しも全部カットじゃー!」


そして十日後、ベルモットと久HT-01の二人の活躍で、黒の組織は壊滅した。


ヤエ「これで、阿笠博士がクロの組織と組んでハヤリ20シリーズの開発に手を出すことは無いだろう。一旦、未来に戻って状況を確認してくる。」


そう言うと、憧125式ver.ヤエの全身が煌々と輝いた。
そして、次の瞬間、その場から憧125式ver.ヤエの姿が消えた。69年後の世界に帰って行ったのだ。

しかし、その十秒後、憧125式ver.ヤエがいた辺りの空間に、小さな光の球が発生した。
それは、数秒後、一気に大きく膨れ上がり、直径1メートルくらいになると、その光の中から憧125式ver.ヤエが姿を現した。


ヤエ「全然未来が変わって無いし!」

ヤエ「だから、もう一回、博士を監視しなくちゃなんないし!」


黒の組織を潰したところで、玄の組織を潰さなければ意味が無い。
むしろ、玄の組織と博士の距離が近くなって無いだろうか?

結局のところ、未来は全然変わっていなかった。
それで憧125式ver.ヤエは、こっちの世界に強制送還された。

しかも、キャラが崩壊して池田華菜のようになっていた。69年後の世界で、彼女をこっちの世界に送り込んだ者達によって相当絞られたようだ。




淡「なんだか、王者王者うるさい奴に乗っ取られたみたいでつまんない!」

憧「でも、もう黒の組織も壊滅したし、次回からは私達中心で行けるよ、きっと。」




続く?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。