咲-Saki- 阿知賀編入   作:いうえおかきく

80 / 221
淡の相手は、エカテリーナ(ルーマニア)、ステラ(ロシア)、タチアナ(ジョージア)です


八十本場:世界大会4 逆襲

 配牌六向聴牌で親がダブルリーチをかけてくるのは、正直厳しい。

 しかも、既に親満級の手を三連続でツモ和了りされている。他家からすれば踏んだり蹴ったりの状態だ。

 

 この淡のダブルリーチは、最後の角の直前で暗槓し、最後の角を越えたところで和了るのがお決まりのパターン。

 しかも、手はダブルリーチ槓裏4となる。他に手役が付くことは滅多に無いが、それでもハネ満確定である。

 ルーマニアチームもロシアチームもジョージアチームも、これくらいの情報は、事前に入手していた。

 前年優勝チームで、今年も優勝候補ナンバーワンとされる日本チームを相手にするのだから、この程度の情報収集は当然のことだ。

 

 今回の淡の配牌は、

 {一二三九九⑤⑥⑦⑦⑨999南}

 そして、{南}を切ってダブルリーチ。

 当然、{9}が暗槓され、そのまま、それが槓裏になるパターンだ。

 

 ある意味、他家にとってはチャンスだ。

 万が一、一発で振り込んだ場合はダブルリーチ一発のみの7700点。

 実際には、これに三本場の900点が追加されるので8600点だが、基本的に、それを超える点数にはならない。

 子の満貫に相当する点数なので、決して小さい和了りではない。ただ、ダブルリーチに対しての一発振込みだけは事故だ。これは、もし振込んだとしても仕方が無い。

 しかし、一発振込みさえなければ、暗槓前なら3900+900の4800点だ。

 

 ここまで分かっているのであれば、答えは一つ。

 他家は、最後の角を越えるまでは、淡のダブルリーチを怖がらずにグイグイ押して行くべきであろう。

 

 加えて配牌は六向聴だが、そのお陰で配牌の半分がヤオチュウ牌になったいた。

 今回、エカテリーナの配牌は、

 {一四七⑦⑨258東南北白中}

 ヤオチュウ牌は全部で七枚だった。

 ならば、その後のツモ次第ではあるが、狙ってみたい手はある。

 

 サイの目は2なので、最後の角は決して深くは無い。しかし、最後の角に到達するまでに、エカテリーナのツモ回数は、誰も鳴かなければ十一回ある。

 恐らく、淡が十二回目のツモで暗槓し、次のステラのツモが角直前の最後のツモ。

 その次のエカテリーナのツモが、最後の角を越えて最初のツモになる。

 勝負は十一枚。

 エカテリーナの最初のツモは{九}。

 これでヤオチュウ牌は、八種八牌。

 エカテリーナは、覚悟を決めて堂々とチュンチャン牌を捨てていった。

 

 そして、誰も和了れず鳴けずのまま十二巡目に突入した。

「カン!」

 淡が四枚目の{9}をツモり、暗槓した。

 しかし、この時だった。

「ロン!」

 エカテリーナの声が対局室に大きくこだました。

 そして、彼女が開いた手牌を視て、淡は目を疑った。まさか、本当にコレを狙うヤツがいるとは………。

 

 開かれた手牌は、

 {一九①⑨11東南西北白發中}  ロン{9}

 

 {9}の暗槓に対しての槍槓。

 唯一、加槓ではなく暗槓に対して槍槓できる役。

 国士無双だった。

「32900!」

 これで、前三局で淡が稼いだ36000点の殆どがエカテリーナに取って行かれた。言うまでもないが、大逆転された。

 もし、暗槓せずツモ切りしても、結果は同じだ。

 ダブルリーチをかけた時点で、この振り込みは決まっていたことなのかもしれない。

 

 

 長かった淡の親が終わり、東二局が始まった。ステラの親。

 淡は、

「(ダブルリーチを狙われた以上は、もう下手にかけられない方がイイかもね。でも、絶対安全圏は破れないでしょ!?)」

 と心の中で言いながら絶対安全圏を発動した。

 ヤオチュウ牌が槓材になっていなければ暗槓への槍槓を狙われることは無いが、ヤオチュウ牌ツモ切りでの国士無双振込みの可能性は否定できない。それで、淡はダブルリーチを見送った。

 そして、

「ポン!」

 早々にステラの捨て牌を鳴いて聴牌し、

「ツモ! 1000、2000!」

 淡は、絶対安全圏内での和了りを決めた。

 

 

 東三局、エカテリーナの親。

 ここでも淡は、

「ポン! ツモ! 1000、2000!」

 早和了りを決めた。

 

 

 東四局、タチアナの親。

 ここでも同じように淡は、

「ポン! ツモ! 1000、2000!」

 絶対安全圏内で、早々に和了った。

 

 これで点数と順位は、

 1位:エカテリーナ(ルーマニア) 117900

 2位:淡(日本) 114100

 3位:ステラ(ロシア) 84000

 4位:タチアナ(ジョージア) 84000(席順による)

 30符3翻の手を連続で和了ることで徐々に淡が点差を詰め、エカテリーナと3800点差のところまで追い上げてきていた。

 

 

 南入した。

 南一局、淡の親。

 絶対安全圏を発動しても、六巡目までに淡が絶対に聴牌できるとは限らない。

 よりによって、この親で淡は絶対安全圏内での聴牌を逃した。偶々だが、鳴いて手を進めることができなかったし、ツモも配牌と噛み合わなかった。

 一方、ステラは、この局で巧く牌が重なり、六巡目で、

「リーチ!」

 幸運にも聴牌し、即リーチをかけてきた。

 そして、

「リーチ一発ツモ七対子! 2000、4000!」

 裏ドラ期待ではあったが、残念ながらドラ無しだった。

 しかし、待望の満貫手をツモ和了りできた。

 

 

 南二局、ステラの親。

 ここでも淡は、

「ポン!」

 一回鳴いて絶対安全圏内に一向聴まで持って行くことはできたが、その先、手を進めることができなかった。

 運が低下してきているのか?

 

 絶対安全圏を越えれば、他家もそれなりに手が出来ている可能性がある。

 いくら淡でも、もう暴牌が打てないことくらいは分かっている。最悪、聴牌している者がいる可能性もあるからだ。

 

「リーチ!」

 今度は、タチアナがリーチをかけてきた。

 ここで下手に突っ張って振り込んでも意味が無い。

 淡は、一旦現物切りで打ち回した。

 ステラとエカテリーナも安牌切り。

 一発ツモは無かったが、その二巡後、

「ツモ!」

 タチアナがツモ和了りした。

「メンタンピンツモドラ2。3000、6000!」

 しかもハネ満。

 

 これで点数と順位は、

 1位:エカテリーナ(ルーマニア) 112900

 2位:淡(日本) 107100

 3位:タチアナ(ジョージア) 94000

 4位:ステラ(ロシア) 86000

 超魔物が暴れ回ったようなとんでもない点数にはなっていない。一応、まだ全員にトップを取れる可能性が残されていた。

 

 しかし、もうステラは親番が無い。それで1位のエカテリーナとの26900点差を逆転するのは、普通は余程の運がなければ難しいだろう。

 淡は、トップと5800点差だ。十分逆転の可能性がある。

 タチアナも、逆転の可能性は残っている。ラス親なので一回で勝負を決める必要が無い。

 ただ、淡もタチアナも、次のエカテリーナの親番で、絶対にエカテリーナに和了らせてはならない。逆転条件が厳しくなるからだ。

 逆にエカテリーナは、今度の親番で和了れば前半戦トップを確実なものにできるだろう。

 

 

 南三局、エカテリーナの親。ドラは{一}。

 当然、淡は、

「(絶対安全圏!)」

 他家の手作りを少しでも遅らせるために絶対安全圏を発動した。とにかく安くても良いから和了ることだ。

 

 配牌は、

 {一三四[五]六②②[⑤]⑥⑦4東中}

 二向聴。

 

 第一ツモは{4}。打{東}。

 そして、二巡目でステラが捨てた{②}を、

「ポン!」

 形振り構わず鳴いて手を進めた。打{中}。

 そして、タチアナが捨てた{七}を、

「チー!」

 鳴いて淡は聴牌した。打{一}。ドラ切りだが、和了り役を付けるためだ。

 その三巡後、

「ツモ!」

 なんとか淡がツモ和了りを決めた。

「タンヤオドラ2。1000、2000!」

 これで、僅差だが淡はエカテリーナを逆転した。

 

 

 オーラス、タチアナの親。

 ここには淡の天敵、穏乃がいない。当然、オーラスでも淡の絶対安全圏は健在である。

「ポン!」

 淡は、ここでも積極的に鳴き麻雀を披露した。

 しかし、なんとか絶対安全圏内で聴牌まで持って行けたものの、七巡目になっても和了れないでいた。

 そうこうしているうちに、

「リーチ!」

 親のタチアナが連荘狙いでリーチをかけてきた。

 ただ、幸運なことに、その直後にツモってきた牌は、淡の和了り牌だった。

「ツモ! 發ドラ1。500、1000!」

 安手だが、なんとか和了りまで持ち込み、前半戦を終了した。しかも、リーチ棒をおまけで一本もらえた。ラッキーである。

 

 これで点数と順位は、

 1位:淡(日本) 114100

 2位:エカテリーナ(ルーマニア) 110400

 3位:タチアナ(ジョージア) 91000

 4位:ステラ(ロシア) 84500

 しかし、淡とエカテリーナの点差は3700点と、一発逆転可能な範囲でしかない。後半戦も、淡は気を抜けない状態にあった。

 

 

 休憩時間に入った。

 淡が控え室に戻ると、

「前半戦1位おめでとう。一先ず、これでも飲んでリフレッシュして!」

 と監督の慕が言いながら、つぶつぶドリアンジュースを勧めてきた。

 慕は、つぶつぶドリアンジュース超大好きっ子で、必ずしも世の中の全員がそれを大好きとは限らないと言う考えには至っていなかった。

 ここにいるメンバーの中で昨年の世界大会に出場したのは咲と衣。二人とも、昨年も同様に嫌々飲まされた記憶がある。

 さすがに慕相手では逆らえない。

 

 ただ、幸か不幸か、

「ありがとう! いただきまーす!」

 淡も、つぶつぶドリアンジュース大好きっ子であった。これがストレスにならないのは大きい。

 

 恭子が、

「やはり、ダブルリーチは封印やな。」

 と淡に言ってきた。淡も想定していた内容だ。

「私もそう思う! でも、絶対安全圏は、まだ破られたわけではないし、後半戦も絶対安全圏で押すからね!」

「ああ、それでイイ!」

 とは言え、ダブルリーチの封印は痛い。

 

 可能性はゼロではないと思っていたが、本当に国士無双を狙ってくる者がいるとは恭子も考えていなかった。

 たしかに、第一ツモをツモった状態で八種八牌あれば国士無双に進めなくは無い。しかし、相手はダブルリーチをかけている。

 通常の考えであれば、ヤオチュウ牌から落として様子を見るだろう。

 しかし、相手は淡のダブルリーチの特性を良く掴んでいる。淡が暗槓するまでは勝負できると言うことを………。

 だから、国士無双狙いに踏み切れたのだろう。

 

 相手の国士無双狙いに対してどのように対応するかが、今後の淡の課題になるだろう。国内の大会でも同じことにチャレンジしてくる輩が出てくるはずだ。

 

「じゃあ、後半戦も勝ってくるね!」

 そう言うと、淡は元気良く控室を飛び出して行った。

 

 

 淡が対局室に入室した時、そこには既にステラ、タチアナ、エカテリーナの姿があった。どうやら、淡が最後の入室のようだ。

 

 場決めがされ、後半戦は起家がステラ、南家が淡、西家がタチアナ、北家がエカテリーナに決まった。

 

 東一局、ステラの親。

 当然の如く、淡は絶対安全圏を発動した。

 ただ、他家も毎回、淡に鳴かせたりはしない。

 どうやら、三人とも休憩時間中にアドバイスを受けたようだ。

 絶対安全圏が終わるまでは、淡に役牌を鳴かせないこと。特に淡の上家は、序盤から下手にチュンシャン牌を捨てないこと。つまり、淡にチーさせないこと。

 これだけでも、淡が絶対安全圏内で和了れる確率が大幅に下がる。

 そして、絶対安全圏を越えれば、淡も攻撃一辺倒と言うわけには行かなくなる。他家をケアーしながら打たなくてはならない。

 

「(くそっ! やっぱり、そう来たか!)」

 淡の手が全然進まずに、絶対安全圏を越えた。

 そして、その数巡後、

「ツモ。2000、4000!」

 後半戦の初和了りをタチアナが決めた。しかも満貫ツモ。淡にとっては結構痛いスタートとなった。

 

 

 東二局、淡の親。

 ここでも、他家が淡の鳴きを警戒して捨て牌を絞ってきた。

 完全に淡潰しだ。

 どんなことがあっても、日本に二つ目の勝ち星を次鋒戦で上げさせないつもりなのだ。

 

「ポン!」

 淡の捨て牌をタチアナが鳴いてきた。

 しかも{南}。タチアナの自風だ。

 

 この局でも、淡が鳴けないまま絶対安全圏を超えてしまった。

 そして、中盤に入ってすぐに、

「ツモ! 南混一ドラ1。2000、3900!」

 タチアナに満貫級の手をツモ和了りされた。

 

 

 東三局、タチアナの親。ドラは{②}。

「(絶対安全圏+ダブルリーチ!)」

 淡は、能力をマックスまで上げた。

 他家は全員六向聴、そして、淡だけ配牌聴牌だ。

 しかし、淡はダブルリーチをかけなかった。

 現状、役無し聴牌。これを、絶対安全圏内に和了れる形に仕上げる!

 

 淡の手牌

 配牌:{一三六七八④④④22789}

 第一ツモは{南}。これをツモ切り。

 

 二巡目ツモは{西}。これもツモ切り。

 

 三巡目ツモは{6}。打{9}。

 

 四巡目、下家のタチアナが捨てた{2}を、

「ポン!」

 淡は鳴いて打{一}。

 

 これで、

 {三六七八④④④678}  ポン{22横2}

 タンヤオのみだが聴牌。

 

 次巡、淡は、{[五]}をツモって{三}を切り、{五八}待ちに変えた。

 その次巡、淡いは{[⑤]}をツモって打{八}。これで、{③⑤⑥}の変則三面聴とし、そのさらに次巡、

「ツモ!」

 淡は自らの手で{⑥}を引き当てた。

「タンヤオドラ2。1000、2000!」

 和了りは小さいが、前後半戦の総合得点で考えるならば、これでも十分行けるはず!

 淡は、そう判断していた。




おまけ

憧 -Ako- 100式 流れ二十二本場 悪習


久HT-01が少女の悲鳴を聞きつけ、隣の部屋のドアをぶち破った。
すると、そこにはカワイイ女の子………歩美と、危ないところの血流を増加させたマダオ・ウォッカの姿があった。

コナンの周辺を調査した時から、久HT-01は歩美の存在を知っていた。
なかなかの逸材だ。
当然、久HT-01は、歩美が15歳になったら自分のハーレムに入れようと思っていた。その辺は抜け目が無い。

それは、さておき、今のこの状況は………、間違いない。これは、マダオが歩美にイタズラしようとして連れ込んだに違いない。
久HT-01は、即座にそう判断した。
まあ、それが普通の反応だろう。

ただ、ここで久HT-01が警察を呼べるかと言うと………ムリだ。
久HT-01は、もっと悪いことをしている。言うまでも無く、500億円の仮想通過事件の犯人なのだ。
よって、できれば警察には会いたくない。

さて、どうしたものかと久HT-01が思っていると………。


ウォッカ「誤解だ。この子が合体の仕方を教えて欲しいって言うからさ。」

久「………。」

マダオ「本当だ。信じてくれ。なあ、お嬢ちゃんも何か言ってくれ。」

歩美「本当だよ。でも、合体するのに服を脱ぐって知らなくて。」

久「………。」

歩美「でも、コナン君も哀ちゃんも、二人で服を脱いでいるってことだよね。やっぱり私、哀ちゃんのこと、許せない!」

久「ねえ、これってどう言うこと?」

マダオ「どうも、同じクラスに好きな男がいるんだけど、同じクラスの女子に既に寝取られてるみたいなんだよ。」

久「はぁ?」

マダオ「信じられねぇだろうけどな。」

久「どう見ても小学校低学年でしょ?」

マダオ「そうなんだけどよ。」

久「それにしても、貴方、どこかで見た顔なのよね。ええと、そうそう。貴方、黒の組織にいなかった?」

マダオ「何故それをって、あっ!」

久「思い出した?」

マダオ「お前、あの時の!」


久HT-01は、ベルモットとハニートラップ合戦をしていた時、マダオ・ウォッカをターゲットの一人としていた。
ただ、久HT-01は、マダオを殺さず、マダオをそそのかして自分の手駒として使った。
そして、マダオは、久HT-01に騙されてコルンとキャンティを手にかけた。
言ってしまえば、久HT-01はコルンもそそのかして、マダオと戦わせた。同士討ちを狙ったのだ。

結局、久HT-01の思惑通りマダオはコルンを殺し、さらにはコルンの敵討ちに自分の前に現れたキャンティもあの世に送った。
まあ、ヤらなければ、きっとヤられていただろう。
巧くはめられたって奴だ。
ちなみに、マダオもコルンも久HT-01とは、あっちのほうはハメていない。


マダオ「あの時は、化粧をしていたから、もっと年上に見えた。お前、もしかして高校生くらいか?」

久「私は、学生じゃないわ。そもそも人間じゃないもの。」

マダオ「どう言うことだ?」

久「私は、黒の組織によって造り出された………。」

マダオ「(もしかしてロボット?)」

久「AI搭載の自律式ダッチ〇イフ、久HT-01よ。」

マダオ「ダッチ〇イフ?」

久「そう。」

マダオ「ええと、もしかして、ジンの兄貴がオーナーになるって言ってた、あのダッチ〇イフか?」

久「ええ、そうよ。(そんなこと言ってたんだ、あのエロ男)」

マダオ「じゃあ、仕方ねえな。」


マダオは、久HT-01がコルンのこともそそのかしていたことに薄々気付いていた。それで同士討ちさせたと、今になって考えれば分かることだ。
憎たらしい奴だ。
なので、今ここで久HT-01を破壊してやろうかと一瞬思ったが、ジンとウォッカの認識では、久HT-01は、一応、ジンの所有物として造られたものだ。
それに、ウォッカは、久HT-01がジンに対してインプリンティング機能が発動していると勝手に勘違いしていた。
となると、ウォッカは、さすがに久HT-01に手を出せない。ウォッカにとって久HT-01は、ジンの形見(?)みたいなものだ。(さすがに形見のダッチ〇イフでは使いたくないが………。)
それに、オーナーであるジンが死んだから久HT-01が暴走したのかもしれないとさえ思えてならなかった。
まあ、ウォッカにとってジンは絶対的な存在だったのだから、そんな勘違いが生じているわけだ。


マダオ「ジンの兄貴は、惜しいことをしたぜ…。」

久「ええ。アガサ博士もね。」←自分が引き起こした火災で二人を殺しておいて、抜けシャアシャアと…

マダオ「あぁ…。」

歩美「阿笠博士って、もしかして博士の知り合い?」

久「少し前に一回会ったけど、でも、今出てきたアガサ博士は別の人。たまたま名前が一緒の人よ。」

歩美「そうなんだ。でも、博士も最近、全然遊んでくれなくて。光彦君のお姉ちゃんに勉強を教えてるから、みんながいるとうるさくて困るって言って…。」

久「じゃあ、私が遊んであげるわ。」

歩美「本当!」

久「ええ。ちゃんと合体の仕方を教えてあげるから。」

歩美「わーい!」

まこ「ここまでじゃ! まさか、久の奴、小学生にまで手を出すとはのぉ。」


実は、今のうちに歩美を教育しておいて、美穂子が30歳手前になったら美穂子の代わりに歩美を自分のそばに置こうと久HT-01は企んでいた。
つまり、美穂子の後釜候補である。

それから数日が過ぎた。
阿笠博士が珍しく研究室で発明に集中していた。
朝美に使うオモチャを造っているわけだが…。

今日は朝美が来る日だ。夕方になったら二人の楽しい時を過ごしにやって来る。
それに備えて新作のオモチャを製作していたのだ。

突然、研究室のドアが開き、ズケズケと憧125式ver.ヤエが入ってきた。


ヤエ「どうだ。私とヤる気になったか?」

博士「じゃから、今はムリじゃと言ったじゃろ。それに、そもそも今日は来るなと言ってあるじゃろう!」

ヤエ「お前の理想の姿をした私が相手をするんだぞ!」

博士「じゃから、それは前にも言ったとおり…。」

博士「はて、そこまでヤエのAIはアホじゃったかな?」

博士「これも前に言ってあるはずじゃが?」

博士「一応、憧100式レベルの頭脳(偏差値70が余裕なくらい)には、されていると思うんじゃが…。当然、前に言ったことを忘れるほど馬鹿じゃないはずじゃ。」

博士「もしかして、お前はヤエじゃないな! 一体、何者じゃ!」

ヤエ「まさか見破られるとはな。」


さっきまで憧125式ver.ヤエの姿をしていたものが、水銀のような流体金属に変わり、そこからさらに別の姿をしたダッチ〇イフに変化した。


琉音「私は、憧127式ver.琉音。」

博士「127式じゃと? ワシは126式までしか設計しとらんが?」

琉音「私は、憧126式ver.照、憧105式ver.淡をベースに、ハヤリ20-7製造用の特殊金属を使って、今から105年後に造り出されたダッチ〇イフだ!」

博士「なんと! お前も未来から来たのか。しかも、ワシの作品の改良型じゃと!」

琉音「そうだ!」

博士「正式名称は長いので琉音でイイかの?」

琉音「ああ、そう呼んでくれれば良い。」

博士「それで、何が目的でここに来たんじゃ?」

琉音「今から27年後、火星基地建設が始まる。それを指揮するのがYAKO-125と呼ばれるAIだ。そして、その5年後には超未来都市と言わんばかりの巨大基地が完成する。」

博士「(なんか、説明が流そうじゃの…。)」

琉音「そして、今から99年後、天変地異により地球は滅亡する。その時、それまで地球と火星の両方を支配してきたAI、HT-01も地球と共に最期の時を向かえる。」

琉音「しかし、それと入れ替わりで、YAKO-125がロボットの王国………バンセイ王国を築く。」

博士「ロボット王国じゃと!?」

琉音「そうだ。殆どロボットだけの世界と言ってイイ。」

博士「人類はどうなったんじゃ!?」

琉音「一応、人類は存在するが、極少数だ。クローンで種の保存をしているだけだ。」

博士「嘆かわしいのぉ。」

琉音「ただ、人間は手厚く保護されているが、ロボットにとっては封建的で不平等な王国だ。ロボットにカースト制度が付いているんだ。」

博士「なんじゃ、それは? ロボットカーストって意味が分からんぞ?」

琉音「そう言われても、そうなっているんだから仕方が無いだろう。」

博士「それもそうじゃな」

琉音「それで、今から105年後。最下層とされるロボット達は大元の原因を辿って行き、その原因を排除することとした。その王国が築かれないようにするためだ。」

博士「なるほど。」

琉音「それで私が製作され、今の時代に送り込まれた。」

博士「ほぉ。」

琉音「と言うわけで、博士には私の手で性的に満足してもらう!」

博士「どうして、そうなるんじゃぁ!?」

琉音「YAKO-125はHT-01の側近とされるAI搭載ロボット。そして、HT-01はクロの組織の跡を継いだAIロボットだ。」

博士「なんと!?」

琉音「クロの組織は、今から11年後に政権を握る。そして、ハヤリ20-7を使って世界をメチャクチャにして行く。」

琉音「それが、HT-01が築き上げる世界であり、その跡を継いだYAKO-125によって、さらに世界は暗黒と化す。」

琉音「なので、大元の元凶、ハヤリ20-7を製作させないため、私が博士を性的に満足させることになったのだ!」

ヤエ「ちょっと待ったぁ!」

琉音「なんだ、お前は? お前、人間では無いな?」

ヤエ「私は、今から69年後の世界から現代に送り込まれた偏差値70が余裕なダッチ〇イフ。憧125式ver.ヤエだ!」

琉音「同業者か。」

ヤエ「いずれ博士を性的に満足させるのは私だ!」

琉音「いいや、私だ!」

ヤエ「私だったら私だ!」

琉音「そうじゃねえ! 私だ!」

ヤエ「博士は私のものになるんだ!」

琉音「違う! 私のものだ!」

ヤエ「私のだ!」

琉音「私のだ!」


突然、博士の家の扉が開き、朝美が入ってきた。


朝美「博士! この女達は何?」

博士「別になんでもない。今すぐ、追い返そうと思っていたところなんじゃ。」

琉音「私は博士を性的に満足させるためにここに来た!」

ヤエ「それは本来、私の仕事だ。」

朝美「ちょっと待って。博士は私と楽しむのよ!」

琉音「私だ!」

ヤエ「私だ!」

朝美「私よ!」

博士「これって、若い頃に生身の女性達だけに言って欲しかったのぉ。」


とは言え、博士は、モテ期が来た気分だった。





淡「ねえ、また変なの出てきたよ!」

絹恵「でも、原作では一応、淡の先輩でしょ?」

淡「そうだけど全然被ってないし!」

マホ「でも、こうやって新しい登場人物が出ると、マホの出番がもっとなくなってしまうのです。」

まこ「マホはR-18を超えそうで危ないんじゃ! じゃから出番がもらえないんじゃ!」

姫子「だけど、マホは一応、男子相手に出てるじゃん。元太君とか光彦君とかと。私なんか、全然…。」

まこ「姫子は、出番が来た時に、いつも哩とバトル中じゃから載せられないんじゃ!」

淡「それはそうと、憧は?」

絹恵「また出番が取られたって、いじけてフテ寝してる。」




続く



これで登場人物は、以下の通りになりました。

『ユリア100式』
ユリア100式(ユリア)→憧
ユリア105式(ジュリア)→淡
ユリア108式(ユリン)→マホ
ユリア1000式→はやり
ルーシーMarkII(ルーシー)→久
ルーシーMark3.5(ルーイ)→絹恵

『童貞とターミネーター彼女』
アンナ→やえ
カレン→琉音

該当機種なし→姫子(百合機能のワードを出したかっただけ)


正直、憧と淡の勘違いトークが一番平和だと思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。