「……えっ、そうですか……」
「はい……はい、わかりました。今すぐ、向かわせますので……」
「どうしたんですか?」
「……またですよ……レッスンの時間なのに、来てないそうです」
「あぁ、また……」
「全く……すみません、ちひろさん。ちょっと、迎えに行ってきます」
「え?どこにいるのか、わかるんですか?」
「えぇ。アイツの行動パターンは大抵、お見通しですから」
「ふふっ……♪流石は、プロデューサーさんですね♪」
「一回、二回じゃないですからね。ある意味、もう慣れてます」
「もしかして、プロデューサーさんを信用してるから、安心していなくなれるんじゃないですか?」
「勘弁してくださいよ〜……アイツが安心してても、俺が、気が気じゃないんですから」
「何かあったらとか、アイドルとしてやっていけるのかとか、その他にも色々と……」
「……あ〜もうっ!考え始めたら、止まらなくなってしまう……!」
「……だからですよ……何だか、私もあの子の気持ちが、少しわかったような気がします♪」
「えっ……?」
「あ〜あ、お仕事ツライなぁ〜。私もどこかにふらっと、いなくなっちゃおうかなぁ〜♪」チラッ
「ええっ!?冗談はやめてくださいよ!あいつもいなくなって、ちひろさんまでいなくなったら……」
「事務所の存続……スケジュール……アイドルたち……今後……うっ、目眩がしてきた……」
「……ふふっ……もし、私がいなくなったら、探してくれますか?」
「あ、当たり前じゃないですか!ちひろさんは、俺や事務所にとって、大切な人なんですから!」
「……そうですか♪では、前言撤回します♪プロデューサーさんと一緒に頑張っていきたいですからね♪」
「お願いしますよ?ちひろさんがいなくなったら、俺は……」
「大丈夫ですよ♪プロデューサーさんは少し、考えすぎだと思います。たまには、息抜きも必要ですよ?」
「……そう、ですね……反省します……」
「ですから……はいっ♪今なら、お姉さんが思いっきり、甘やかしてあげますよ♪」
「えっ……//」
「ほぉら……いいんですよ?私に甘えても……♪よしよ〜し、してあげちゃいます♪」
「……っ!す、すぐに、連れ戻してきます!では、行ってきますっ!//」
バタン
「あらあら、照れちゃって……かわいいんだから♪」
------------------------------------------------
「……よし、ここだな」
ピンポーン
「……」
「……反応がない……お〜い、志希〜?いないのか〜?」
ガチャ……
「えっ、開いてる……?……それに……うっ……何だ、この匂い……」
「アルコールか……?にしては、何だか甘いような、ツンとくるような……妙な匂いだな……」
「……まさか……!おい!志希!大丈夫か!!」
「……」
「……やっぱり、反応がない……悪い……入らせてもらうぞ……」
「うわっ!何じゃこりゃ……足の踏み場がないなんてレベルじゃないぞ、これ……」
「卯月の部屋……いや、それ以上かも……全く……アイドルな以前に、女の子としてだな……」
「って、それどころじゃなかった!今、行くぞ……お〜い!志希!いるなら、返事をしてくれ〜!」
「……ん?あそこに誰か……もしかして、志希か!?」
「……」
「志希……おい!志希っ!目を覚ましてくれよっ……!」
「……ん……」
「っ……!?志希……起きたのか!?」
「ん〜……プロデューサー……?何で……あたしの部屋に……?」
「どうしたもこうしたも、あるか!大丈夫なのか!?」
「……んにゃ?あたしは別に、大丈夫だよ〜……?」
「なら、よかった……全く……何事かと思ったんだぞ!」
------------------------------------------------
「いったいどったの〜……?そんなに、あせっちゃって〜……」
「あのなあ……ドアが開いていて、変な匂いがしたら誰だって、何かあったと思うだろ?」
「ん〜……ねむねむ……あぁ〜、それかぁ〜。にゃはは♪ごめんごめん♪」
「あたしさ〜、昨日から徹夜で、香りの研究をしてたんだよね〜」
「……研究?」
「そそ。とても、気持ちよぉ〜くなれるような、香りの香水を作ってたんだよ〜♪」
「あ、ちなみに、香水と言っても、あたしが作ってるのは「トワレ」なんだ〜」
「何か、違うのか?」
「そうだね。主に、エタノール濃度と、香りの持続力が違うの」
「パルファム、パルファン、トワレ、コロンの四種類あって、パルファムから順に、香る時間が短くなるんだ」
「言っちゃえば、香りってのは、揮発性の有機化合物だからね〜」
「って言っても、機械で細かく成分を分析しないと、気持ちよぉ〜くなる香りを作るのは、難しいんだけどさ」
「へぇ〜……色々と、種類があるんだな……って……そんなの、どうでもいいわ!」
「ふにゃあっ!」
「おい志希。今日は、何の日だっけ?」
「ン〜……新作ピザの、発売日……?」
「……し〜き〜?」
「じょ、冗談だよぉ〜、レッスンでしょ?あん・どぅ・とろわ〜♪ってね♪」
「全く……まあとりあえず、無事でよかったぞ。でも、次からはこういう変な実験は、禁止だからな?」
「はいは〜い♪気をつけま〜す♪」
「ふぅ……手のかかるアイドルだぜ……」
「……ねぇ、プロデューサー……あたしのこと……嫌いになっちゃった……?」ウルッ
「嫌いかどうかを聞かれて、嫌いって答える奴がいると思うか……?ほら、レッスンに行くぞ。準備をしろ」
「……にゅふふ……♪は〜い♪」
「そうだ、志希。一つ、聞きたいことあるんだが。研究してたのはいいとして、何でドアを開けてたんだ?」
「んにゃ……?ン〜……どうしてだっけ?わかんない☆」
「何だそりゃ……一人暮らしをしてる女の子がそんなんじゃ、色々と危ないぞ?」
「わかってるって〜♪もしかしたらキミが来てくれるって、信じてるからかも♪じゃあ、さっそく行こ〜う♪」
「あっ……おいっ!志希!俺の車の鍵を、盗むな!こら、待て!」
------------------------------------------------
「よ〜し!今日のレッスンは終わりだ!ご苦労だった!」
「あ〜……終わったぁ〜……」
「ふにゃあ〜……きっつ〜い……」
「フレデリカ、志希、お疲れ様。ドリンクを買っておいたぞ」
「わ〜♪プロデューサー、めるしぃ〜♪」
「……んにゃあ〜……」
「おい、志希……?大丈夫なのか?」
「ん〜……あたしぃ、普段から運動しないし、それに、徹夜明けだから色々ときつくて〜……あぅ〜……」
「ほら、言わんこっちゃない。サボって、徹夜なんかするからだぞ?」
「それは……そうだけどさぁ〜……」
「ほら。とりあえず志希も、ドリンクを飲んでひと休憩しろ」
「ふぁ〜い〜。確かに……プロデューサー分を補給しなきゃ、体に悪いしね〜……」
「うん、その通り。だから、補給を……は?」
「にゅふふ……えいっ♪」
ギュッ♪
「なっ……し、志希!?」
「わぁお♪シキちゃんってば、大胆だねぇ〜♪」
「クンカクンカ……ン〜……♪癒されるぅ〜♪」
「ちょっ……何をやってるんだ!志希!フレデリカが見てるぞっ……!//」
「ううん!アタシは見てないよ!指の隙間からだけしか、見てないから安心してっ!」
「がっつり見てるじゃねぇか!おい、志希!恥ずかしいからやめろって!」
「エ〜、あたしは別に、恥ずかしくないもん♪……クンカクンカ……ハスハス……//」
------------------------------------------------
「ばかっ……くすぐったっ……!//」
「……んふふ……♪こんなに息を切らして、汗だくな女の子が上目遣いで、抱きついてきてるんだよ〜?」
「だ・か・ら♪ねぇ……あたしと一緒に……「トリップ」しようよ……ねっ♪」
「なっ……!へ、変なことを言ってないで、ほら!さっさとドリンクを飲め!」
「う”に”ゃ”っ”……んもう〜、イヂワルなんだからぁ〜……」
「シキちゃ〜ん?あんまり、プロデューサーを困らせちゃ、だめだよ〜?」
「ふ、フレデリカっ……!よく言ってくれた!ほら、少しはフレデリカを見習え…‥」
「えっちなプロデューサーは、こういう方が喜ぶはずだよっ♪……えいっ♪」
ムニュッ♪
「ぐあっ……!?」
「えへへっ……♪あま〜いフレちゃんを、ぷれぜんとふぉ〜ゆぅ〜♪」
「な〜んだ〜、そういうのがよかったんだぁ〜、それじゃあ、ア・タ・シもっ♪……え〜いっ♪」
プニュッ♪
「ぐうっ……!お、お前ら……何をっ……!//」
「ふふっ♪しきフレサンド、かんせ〜い♪具材はプロデューサーだけどね〜♪」
「にゃはは♪こういうのが好きなんだネェ〜♪プロデューサーの、むっつりすけべ〜♪」
「……べ、別に……俺は、興味なんか……」
「あ、興味ないなんて、言わせないよ?そもそも男は子孫繁栄のために本能的に求めてるものなんだから」
「まず搾乳期間に女性の脳内で分泌されるオキシトシンって言うホルモンから始まるんだけどね」
「そのオキシトシンって言うホルモンと中枢神経系に存在する神経伝達物質であるドーパミンと共に機能してそれで……」
「真面目に解説をするな!あぁもう!お前らっ!いいから、離れろっ!//」
「い〜や〜♪フレちゃんも、プロデューサー分をた〜くさん、補充しちゃうんだから♪」
「こんなところを、誰かに見られたらヤバイって!//」
「大丈夫だよぉ♪トレーナーさんも、レッスンが終わって帰ったし、誰も見てないよっ♪」
カチャッ
「うふふ……失礼しま〜す♪」
「……多分ね♪」
------------------------------------------------
「うっ……ま、まゆっ……!」
「こんにちは〜♪まゆちゃんっ♪」
「うふっ♪志希さんもフレデリカさんも、こんにちは♪ところで今、何をしてるんですかぁ?」
「う〜ん……レッスン?」
「うふふ……♪とても楽しそうな、レッスンですね♪まゆ、お邪魔でしたかぁ?」
「そ、そんなことはないぞ……それより、まゆこそ何でここに?」
「えっとですね。この部屋から、プロデューサーさんの気配がして……見事に、当たってしまいましたねっ♪」
「成る程……そりゃ、奇遇だな……あはは……」
「それで……いかがですかぁ?両腕の温かさは♪と〜っても、温かそうですねぇ♪羨ましいなぁ〜♪」
「うぐっ……ご、誤解をしないでくれ!こいつらが勝手に、抱きついてきただけで俺は……」
「ん〜?にしては、喜んでた気がするんだけどなぁ〜♪特に、こういうことで♪」
プニュッ♪
「くっ……志希っ……!ば、ばかっ……!//」
「うふふ……♪男の人は……好きですもんね……♪」
「でもぉ、まゆもそれ以上に、プロデューサーさんを好きだと思う気持ちは、負けてませんよぉ?」
「……今、ここで……運命の赤い糸で、プロデューサーさんを、蝶結びにしちゃいたいぐらいにっ……♪」
「ん?蝶結びって……何を言ってるんだ?」
「うふっ♪このまま、まゆと一緒に……結ばれちゃいましょうか……♪……「永遠」にっ……♪」
「わぁお♪まゆちゃんってば、情熱的ぃ〜♪」
「まゆ……?何だか、目が笑ってないぞ……?」
「気のせいですよぉ♪うふっ♪……うふふ……うふふふっ……♪」
「まゆちゃん、ちょっといいかな?」
「……はい?」
「さっき、気配って言ってたよね?それってさ、もしかして……「香り」のことかな?」
「……っ!」
------------------------------------------------
「香り……だと?」
「……はい……実は、お恥ずかしながら……プロデューサーさんの香りを辿って、ここまで来ました……//」
「んふふ〜……やっぱりね〜♪」
「えっ……お、俺って……そんなに、臭うのか……?」
「ん〜……たぶん「アレ」のことかなぁ〜。ちょっと待ってて〜」
「スーツもクリーニングに出したばかりだし……体も毎日、洗ってるし……」
「もしかして、あれか……?いや、それとも……う〜ん……」
「はい、持ってきたよ♪じゃーんっ♪」
「ん?随分とかわいらしい小瓶だねぇ、シキちゃん」
「にゅふふ……えいっ♪」
プシュッ
「ひゃっ……ちょ、ちょっと、いきなり何を……ん?スンスン……わぁお♪いい匂い〜♪」
「でしょでしょ〜♪」
「ん〜、でも、この匂いって……プロデューサーの匂い……だねぇ……♪」チラッ
「えっ……お、俺のっ!?」
「……実はね〜、あの時に、香りの研究をしてたって、言ってたでしょ?」
「その時に、何と……プロデューサーの香りの香水を、作ってたのでしたぁ〜♪」
「っ……!!プロデューサーさんのっ……!」
「お、お前……なんてものを、作ってるんだよ!!」
「うーん……気まぐれでカナ?あっ、ちなみに、量産態勢を整えてるから、いつでもウェルカムだよ〜♪」
「ばかっ!そ、そんな変なものを、量産するなっ!!」
「……志希さん……ちょっと、お話しが……」
「ん〜?どったの?まゆちゃん」
「……」ゴニョゴニョ
「……んふふ♪りょ〜かい♪初回特典で、もう一本おまけしとくね……♪」
「うふふ……♪ありがとうございます……♪」
「……おい、まゆ?二人で、何を話してたんだ?」
「何でもないですよぉ。これは乙女の秘密ですっ♪ねっ♪志希さんっ♪」
「ウンウン♪これは、女の子同士の秘密だから、教えてあ〜げないっ♪」
------------------------------------------------
「にしても、よくわかったね〜。ちょっとハンカチに染み込ませて、あたしのバックに閉まってただけなのに」
「うふふ……プロデューサーさんのことなら、何でも知ってますから……「何でも」……ね♪」
「おい……何で、ハンカチなんかに染み込ませてるんだ……?」
「……だってぇ……いつでも、どこでも……プロデューサーさんを、感じられますから……うふっ♪//」
「……っ!?」
「な〜んて♪少し、まゆちゃんのモノマネをして見ちゃいました〜♪」
「あははっ、ちょっと似てるぅ〜♪」
「んもう、まゆはそんなこと言いませんよぉ〜」
「……み、みんなから愛されて、俺は嬉しいぞ〜……は、ははは……」
「……あっ、それでは、そろそろお仕事の時間なので、失礼しますね」
「あ、あぁ……仕事を頑張ってきてくれ。頼むぞ」
「はいっ♪ところで、プロデューサーさん……これからも……ずっと、まゆのそばにいてくれますか……?」
「ん……?そんなの当たり前だろ?まゆも、俺の大事なアイドルだ。これからも一緒に、頑張っていこうな」
「本当!?本当に「一生」そばにいてくれるんですか!?えへへ♪まゆ、嬉しい……♪……失礼しま〜すっ♪」
タッタッタッ…
「……ん?まあいいか。とりあえず、一件落着だな……」
「にゃはは♪プロデューサー、おつかれ〜♪」
「おい、元凶。誰のせいで、こうなったと思ってるんだ」
「さぁ〜?……あ、ちなみに、プロデューサーの車に、あたしの香りの香水を置いといたからネ♪」
「……は?」
「……イ・ケ・ナ・イことに、使っちゃダメなんだからね……?や〜ん♪恥ずかし〜♪//」
「馬鹿!使うか!あとでお前に返す!絶対にな!!」
「あんっ……せっかく、作ったのに〜……」
「……シキちゃん、シキちゃん……」
「んにゃ?どうしたの?フレちゃん」
「アタシにも……その……しるぷぷれ〜……♪」
「……了解♪」
------------------------------------------------
「……」カタカタ
「……ふぅ、終わった〜……さ〜て、一息つくか……」
「ん〜と……あ、あったあった。それじゃあ、いただきま……」
「……ん?俺……飲み物なんか、買ったっけ……?」
「……」ジー
「……まさか……」チラッ
「……」バッ
「……おい、志希。この飲み物……お前が置いただろ?」
「ううん、あたしじゃないよん♪」
「ふ〜ん、そうか〜。でも、この部屋には、俺と志希の二人しかいないんだけどな〜」
「えっ、ちょっ……な、何をする気なの……?まさか……いやぁん♪プロデューサーの、ケダモノ〜っ♪」
「……」ビシッ
「ふ”に”ゃ”っ”!」
「いいから言え。これは何だ」
「え〜っと……元気になるドリンクだよ?」
「お前な〜……また俺で、実験しようとしてたのか?」
「そんなぁ、実験だなんて人聞きの悪い〜。ただ、味見をしてもらいたかっただけだよ♪」
「味見って……おい!言い方を変えただけだろ!こんな得体の知れないものなんか、飲めるか!」
「んも〜、ワガママだなあ〜。んじゃ、代わりにあたしが飲んであげるよ♪じゃあ、いただきま〜す♪」
「……ん〜♪おいし〜い♪ねっ?何でもないでしょ?ほら、キミも飲みなよ〜♪」
「ちょっ……わかったから、ストローを近づけるなって!それってお前が使った……んぐっ……!?」
「にゃはは♪た〜んと、召し上がれ〜♪」
「ん、んぐっ……ん……」
「……どう……?オイシイ……?」
「……ぷはっ……あ、あぁ……意外と……イケるな……//」
「そうでしょ?色んなフレーバーを調合して作った、あたしの自信作なんだから♪」
「少し、疑いすぎてたよ。悪いな志希」
「わかればよろしい♪でも……美味しいと感じたのは……「あたし」の、味のほうじゃないかな……?//」
「っ……!?な、何だか……急に、体が……熱くなってきてっ……!//」
「……ふふっ……あたしぃ、言ったよねぇ?……「元気になる」ドリンクって……//」
「ぐっ……ぜ、前言撤回だ……お前……このドリンクに、何を入れやがったっ……!」
「うぅん……何だかあたしも「アツク」なってきちゃったあ〜ん♪ねぇ〜……」
「……このまま……あたしと一緒に、気持ちよぉ〜く……「トリップ」しようよ……♪」
「ば、ばかっ……そんなに、近づいて来るなっ……!//」
「安心してっ……♪今から、あたしのことで……頭をい〜っぱいに、してあげるからっ♪」
「……ちょっ……や、やめろっ!……これ以上はっ……!//」
バタン!
「「!!」」
------------------------------------------------
「Pチャン♪ただいまにゃ〜♪」
「っ……!み、みくっ……!」
「……ん〜……ざんね〜ん……」
「んにゃ?あっ、志希チャンも一緒なんだ♪こんにちは♪」
「にゃはは♪こんにちは♪」
「ところで、二人ともここで、何をしてたのかにゃ?」
「あ、あぁ……ちょっと、次の仕事の話をしててな……」
「そうなんだ……あ!そうだにゃ!Pチャンに、見せたいものがあったんだにゃ!……じゃ〜んっ!」
「ん?これは……香水?」
「うんっ♪新作の香水を、買ったんだ〜♪ねぇ、いい香りでしょ〜♪」
「スンスン……あぁ……確かに、いい香りだな」
「……ふふっ♪もっと、嗅いでもいいんだよっ♪えいっ♪」グイッ
「ちょっ……みく!近いって……!//」
「細かいことは気にしにゃい♪気にしにゃい♪ほらっ、もっと堪能してにゃ♪」
「お、おい!わかった!わかったから、少し離れろっ!//」
「……ねぇ、みくちゃん」
「んにゃ……?」
シュッ
「に”ゃ”っ”……!!ちょ、ちょっと!志希チャン!急に、何をするにゃ!!」
「んふふ……♪実はあたしも、香水を持ってるんだよねぇ〜♪」
「えっ……ふにゃあ〜……なんか……この香水も、いい香りにゃ〜……♪」
「そうでしょ?だってこれ、あたしをイメージした香水だからね♪」
「ん〜……それに……何だか暑く……って!いきなり、みくに吹きかけるなんてひどいにゃ!」
「ごめんごめんっ♪シキちゃんのファンを増やしたかったんだ♪」
「あの子もその子も、シキちゃんの香りに……そしたら、どこにいても……あたしを感じてくれるもんね♪」
「おい……何で今、俺を見た……?」
「さぁねぃ〜……♪」
「んにゃあ……マタタビを、食べたのかってぐらい……暑いにゃ〜……食べたことないけど……」
「う〜……あ、飲み物みっけ♪ちょっと、もらうにゃ〜♪」
「ちょっ……ば、ばかっ!お前、それはっ……!」
チュー……
「あっ……」
------------------------------------------------
「う〜ん……さっぱりしてて、美味しいにゃあ〜♪」
「……間に合わなかったか……」
「……あれ?おかしいにゃ……さっぱりした飲み物のはずなのに、むしろどんどん、体が熱くなってきて……」
「なあ、みく……?大丈夫か……?」
「にゃあ〜……♪Pチャ〜ン〜……♪何だか、みく……とても、ふわふわするにゃ〜……//」
「おいおい……しっかりしてくれよ。ほらっ、肩を貸してやるから一旦、ソファーに行こうぜ」
「ふぁ〜い……それにしても……Pチャンって……」
「?」
「……改めてみると……結構、イケメンにゃあ〜……♪」
「は、はぁっ……!?//」
「今のみくは、ネコチャンにゃ……だからぁ〜♪頭を……なでなでして、欲しいにゃあ〜♪」
「なっ……み、みく!一体、どうしちまったんだよっ!」
「にゃはは♪どうやら、香水とドリンクの相乗効果で、完璧に酔っちゃったみたいだね♪」
「お前……やっぱり香水にも、何か変なものを……!」
「知らなぁ〜い♪でも、何だか面白くなってきたねっ♪……えいっ♪」
「このマッドサイエンティストめ……!ていうか、お前までくっついてくるな!!//」
「エ〜、みくちゃんだけずるい〜♪しきにゃんも、キミでごろにゃんさせてもらうにゃん♪」
「にゃっ……!ちょっと、志希チャン!Pチャンのネコチャンは、みくだけなの!!」
「ごろにゃ〜ん……んにゃあ〜……♪プロデューサーって、温かいにゃぁ〜ん……♪」
「フシャ〜……!ネコは二匹もいらないのっ!ネコチャンは、一匹でいいのにゃ!!」
「お前ら何、変なことで争ってるんだ!とりあえず、二人とも一旦離れろっ!//」
「いやにゃ〜♪だってぇ、あたしはキミのネコチャンだからねぃ〜♪」
「違うもん!Pチャンのネコチャンは、みくだもんっ!だから、志希チャンには渡さないにゃっ!!」
プニプニ♪
「おい!さっきからあ、当たってるって……!お前らは女の子だろ!もうちょっと、恥じらいを持て!//」
「にゃふふ……♪」
「ふう〜っ……!」
------------------------------------------------
「……zzz」
「ほら、みく。ソファーだぞ」
「……Pチャン……もう……お魚、食べられないにゃ……zzz」
「やれやれ……やっと、落ち着いたか……」
「……ねぇ〜……あたしと一緒にぃ……気持ちよく、トリップしよぉ……?」
「あぁ。じゃあ志希、ソファーで一緒に……」
「……♪」
「……って……!何を言わせるんだよっ!ていうか、お前は起きてるだろうがっ!//」ビシッ
「に”ゃ”っ”……!あ〜ん……もう少しだったのに〜……まあ、面白かったからいいか♪にゃはは♪」
「……あのなあ……いつも思うんだけど、その頭脳をもう少し、いい使い方が出来ないのか?」
「……と、言いますと……?」
「変な香水とか、怪しげなドリンクを作るんじゃなくて、もっと、普通に人が喜ぶものをだな……」
「ん〜?あたしさぁ、子供の頃から「普通」って言うのがよくわからないし、興味がないんだよね〜」
「ほら、あたしってギフテッドアイドルじゃん?それに、天才は変人って言うしね♪にゃはは♪」
「あのなぁ……それじゃあ、頭の良い志希なら知ってると思うけどさ」
「「十で神童、十五で才子、二十過ぎれば只の人」って、諺を知ってるか?」
「……っ!」
「いや、別に、志希を只の人って言ってるわけじゃないんだぞ?お前の天才ぶりは、幾度となく見てるからな」
「だけど、お前だってあと二年で大人だ。色々と、思うところがあるだろう」
「それに、今のお前は変人なんかじゃない。色んなアイドルと一緒に輝いてる、立派なアイドルだ」
「だからさ、急に変われだなんて言わないから、もう少し……「普通」にならないか……?」
「……」
「……そうだね。今のあたしは、アイドルなんだよね……とても輝いてる……」
「よし、よく言った。俺がサポートするから、少しづつ頑張ろうぜ。なっ…?」
「……うん……そうだね……只の人……」
カチャッ
「し、失礼します!」
「はいどうぞ、って……ちひろさん?」
------------------------------------------------
「どうしたんですか?そんなに、慌てて……」
「プロデューサーさんっ!フレデリカちゃんは、来てませんか!?」
「フレデリカ……?いえ、まだですけど……」
「そうですか……困りましたね……」
「一体何があったんですか?」
「いえ……さっき、ニュースで速報が出て、刑務所から勾留中の、容疑者が逃走したそうなんです」
「それで、逃走した場所がその……この近辺の、刑務所だそうで……」
「っ……!?それは本当ですか!?では、すぐにフレデリカに連絡をしないと……!」
「それが……残念なことに……ここに、彼女のスマホがあるんです」
「えっ……!」
「どうやら昨日、事務所に置いたまま忘れて、帰ってしまったみたいですね……」
「くっ……こんな時に限ってっ……!」
「……プロデューサー?フレちゃんなら、大丈夫だと思うよ?待ってればすぐに来るって」
「……いや……俺、少し外に出て、フレデリカを探してきます!」
「えっ……外にですか……?」
「はい。すぐに戻りますので、みくと志希をお願いします。では、行ってきます!」
「ちょっ……プロデューサーさ……行っちゃった……」
「……」
「待ってろ……すぐに、探しだしてやるからな……!」
「……プロデューサー……」
------------------------------------------------
「はぁ、はぁ……いないな……いつも、フレデリカが行きそうな場所を、回ってみたのに……」
「まさか……逃走犯に……いや、変なことを考えるな……」
「……とりあえず……一旦、事務室に戻るか……目の前まで、来たし……」
「一体、どこにいるんだよ……頼む……無事であってくれ……フレデリカっ……!」
カチャッ
「ただいま、戻りました……」
「あ〜っ♪プロデューサーっ♪おかえり〜♪」
「っ……!?フ、フレデリカ……!?」
「プロデューサーさん、お帰りなさい♪フレデリカちゃんは無事ですよ♪あと、逃走犯も捕まったみたいです♪」
「Pチャン、おかえり〜。今、目が覚めたばっかでよくわからないけど、何か大変だったらしいね〜」
「……」
「……ねっ?だから、言ったでしょ?待ってれば来るって……」
「……フレデリカっ!」
ギュッ
「!!」
「ひゃっ……!?ぷ、プロデューサー……!?//」
「ちょっ……ぴ、Pチャン……!?」
「……よかった……無事でっ……!」
「やっ……ちょ、ちょっと……急に……恥ずかしいよ……//」
「……プロデューサーさん……大胆ですね……//」
「あっ……わ、悪いっ!つい、安心してしまって……」
「……んもう……心配しすぎだよ……えへへ……♪//」
「……」
「ぴ、Pチャン!フレチャンに何してるの!変態にゃ!ハレンチにゃ!」
「いいの、みくちゃん。プロデューサーが、アタシのことをそんなに心配してくれてたなんて……その……」
「……すごい……嬉しかったから……//」
「そ、そうなの?フレチャンがいいなら、いいんだけど……」
「うふふ……♪それよりさっ、これからユニットの、打ち合わせがあるんでしょ?さっそく、始めようよ♪」
「あ、あぁ、そうだな……それじゃあ、始めるか……」
「とにかく、これで一件落着ですね♪何事もなくて、よかったです♪」
「……いいなあ……」
------------------------------------------------
「はい……えっ、また……」
「はい、わかりました。すぐに連れて行きますので、では……ふぅ……」
「どうしたんですか?」
「……ちょっと、迎えに行ってきます……」
「あぁ……はい♪行ってらっしゃい♪……ふふっ♪」
「どうしたんですか?」
「いえ、プロデューサーさんってすっかり、志希ちゃんと意思疎通してるなあと思ったんです♪」
「そんな高尚なことじゃないですよ。ただ、あいつは俺を、便利屋かなんかと勘違いしてるだけです」
「そうですか?私から見れば、あの子はプロデューサーさんのことをすっかり、信頼してる風に見えますよ?」
「どうですかねぇ。あいつは、自分のこと以外には興味なさそうですから。信頼なんか、皆無だと思いますよ」
「私だったら……こんな「気を引く」ようなことなんて、信頼してる人にしかしませんけどねぇ……」
「ははっ、それは言えてますね。愛する、トレーナーさんの気をもっと、引いてもらわないといけませんね」
「……そうですね……あ〜あ。本当に困った人ですねぇ、プロデューサーさんは」
「えぇ。本当に、志希には困りま……って……あれ……?」
「ほ〜ら。早く、迎えに行ってあげてください。女の子を待たせるだなんて、よくないですよ」
「何か違ったような……まあ、いいか。それじゃあ、行ってきますね!」
カチャッ
「……」
「……プロデューサーさんは、もう少し……乙女心をですね……」
------------------------------------------------
「よし、ここだな……」
ピンポーン
「……」
「……反応がない……お〜い、志希〜?いないのか〜?」
ガチャッ
「ん〜……相変わらず開いてるなあ……全く……仮にも、アイドルなんだぞ?これはまた、説教するしか……」
「……いやあっ!!」
「!?」
「いやっ!やめてっ……!……誰か……助けてっ……!」
「し、志希……志希なのか!?い、今行くぞ!志希!どこだっ!」
「……あっ……プロデューサー……来てくれたんだね……//」
「おい、志希っ!大丈夫なのか!?」
「うん……大丈夫……」
「よかった……ところで、お前を襲おうとした奴は、どこに行ったんだ!?」
「えっとね……目の前にいるの……」
「ん?……目の前?」
「スーツを着てて、お人好しで、意外と顔が整ってて……だけど……少し、オオカミな男の人なの……」
「……は?」
「……いやぁ〜ん♪プロデューサーにぃ、襲われちゃ〜う♪」
「……」ピンッ
「に”ゃ”っ”!」
「志希、そこに座れ」
「えっ、でも……」
「いいから座れ」
「……はい」
「さて、と……まず、どこから始めようかな……」
「……」ガクガクブルブル
------------------------------------------------
「……だから、以前に何回も言ってるが、お前はアイドルな以前に、女の子としての自覚がまるでなくて……」
「……む〜……」
「おい、志希。ちゃんと聞いてるのか」
「もういや!シキちゃん、たくさん聞いたもん!それに、レッスンに行くんでしょ?遅れちゃうよ!」
「あっ、そっか……って!お前が、偉そうに言える立場か!」
「シキちゃん、真面目だも〜ん。フレちゃんと立派に、ライブを成功させたいもんね〜」
「ったく……悪知恵の働く猫め……!じゃあ、ほら、行くぞ」
「……」
「ん?おい、志希。行くぞ……?」
「……ぎゅーはないの……?」
「えっ……?」
「あたしを思いっきり……ぎゅーって……してくれないの……?」
「なっ…!そ、そんなことを、するわけないだろ!馬鹿なことを言ってないでいくぞ!ほら!」
「……何でよ……何で、あたしにはしてくれないのさっ!!」
「ちょっ……急に、何だよ……」
「フレちゃんには何も言わずに、すぐに、ぎゅーってしたくせに!!」
「えっ……いや、あれは……本気で、フレデリカのことを心配してたから、つい……」
「ふ〜ん……それじゃあ、あたしのことは、どうだっていいってことなんだね……」
「そんなことないって、俺は志希の担当だろ?」
「……キミ、言ったよね……「二十過ぎれば只の人」って……」
「だから、このまま……あたしはキミに飽きられて、捨てられちゃうんだっ……!」
「ん?あぁ。あの時、俺が言ったことを気にしてたのか」
「……やれやれ……頭がよすぎるアイドルってのも、困りもんだな……」
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「あのな。お前は話を色々と、飛躍しすぎなんだよ」
「言ってしまえば、あんなのはただの諺だ。そんなに深い意味で、言ったつもりはないよ」
「……じゃあ……仮に、天才でもギフテッドでもなくなった「普通」のあたしでも、見てくれるの……?」
「当たり前だろ?俺は別に、志希の頭脳を見込んで、スカウトしたわけじゃない」
「それに、本当に志希に飽きてたら、今、ここに俺がいると思うか?だから、安心しろ」
「……そう、だね……」
「な?わかっただろ?俺は正直、ギフテッドだとか天才だとか、そういうのはどうでもいいんだ」
「ただ単純に、志希がアイドルとして活躍したり、その一瞬一瞬を、楽しんで欲しいだけなんだよ」
「……じゃあ……証明して……?」
「えっ……証明……?」
「その言葉が、本当だって言うなら……あたしを思いっきりぎゅっとして、証明してよ……ねっ……?//」
「なっ……!だ、だから、それは……!」
「……してくれないと……ここから、一歩も動かないモン……」
「……あ〜……わかったよ……輝いてもらうためにも、レッスンは受けてもらわないといけないしな……」
「ヤッタ〜♪それじゃあ……来て……?//」
「少しだけだからな……?……ほら、いくぞ……」
ギュッ……
「あっ……//」
「……何だよ……なんか言えよ……//」
「……キミの耳……すごく、赤くなってる……♪//」
「なっ……し、しょうがないだろ!女の子を抱きしめてるんだから!//」
「にゃはは♪プロデューサーってば、超乙女〜♪……でも……流石は、男の人だね……」
「……筋肉質だし……胸板も逞しくて、力強くて……とっても……安心する……//」
「……そりゃ、どうも。でも……そろそろいいか……?流石に、恥ずかしくなってきたんだが……//」
「……んも〜……しょうがないナァ〜。少し、名残惜しいけど……終わりにしようか♪」
「あ、あぁ……そうしてくれ……//」
「にゃはは♪プロデューサーってば、顔真っ赤〜♪そんなに、あたしのことを意識しちゃったのかなぁ〜?」
「くっ……約束は、ちゃんと……果たしたからなっ……!//」
「それじゃあ、最後にもう一つ、して欲しいことがあります。ちょっと、目を閉じて〜♪」
「ん……?まだ、何かあるのか?」
「いいから、いいから〜♪」
「……えっと……こうか?」
「うんっ、いい子だね〜♪それじゃあ……こうして、こうやって……♪」
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「おい……まさかまた、俺に何か変なことを、する気じゃないだろうな……?」
「そんなことしないよ♪それじゃあ、準備も出来たことだし……え〜いっ♪」
ムチュッ♪
「んっ……!?」
「……んふふ……♪」
「……ぷはっ……ちょっ……!い、今……俺の口にっ……//」
「んふっ……しちゃったね……♪あたしの、初めての……「人工呼吸」をっ……♪」
「は……?じ、人工呼吸……!?」
「うん、人工呼吸だよ♪ほら、これを見てよ♪」
「ん?何だ……?この、ペラペラのビニールみたいなヤツは……」
「これは、キューマスクって言うの。応急手当の講習ビデオとかで、見たことあるでしょ?」
「マスク……あぁ。確かに、見たことがあるな」
「だから、このマスクを使ってキミに、人口呼吸を施したのでした〜♪」
「な、何だよ……やっぱり、変なことじゃないかよ……//」
「……にゃはは♪どうだった?ドクターシキちゃんの「愛の」応急処置はっ……♪//」
「何が、愛の応急処置だ!馬鹿にするなっ!志希はアイドルなんだぞ!わかってるのか!?//」
「んっふっふ〜……もしかして……物足りなかった?それじゃあ、今度は……「ナマ」でしてみる……?//」
「っ……!またお前は、そういうことを……い、いい加減にしろ!ほら、レッスンに行くぞ!//」グイッ
「あんっ……つれないなあ〜……」
「全く!俺はいつになったら、このせわしない猫の世話が終わるんだろうな!本当、嫌になるぜ!!」
「……とか言いつつも……毎回心配して、来てくれるクセに……//」
「なっ……う、うっせ……!//」
「それに……案外、相性抜群だと思うよ?キミとあたしっ♪」